138.勇者グスカス
グスカスの夢の中に、ジューダスが出現した。
「…………」
また、先ほどのように、罵倒されるのかと思った。
しかし新しく現れたジューダスは……。
「グスカス……久しぶりだな」
目元をゆるませて、優しく語りかけてくる。
その姿は、自分の知ってる、ジューダスその人だった。
「ジューダス……なのか?」
「おう。今はジュードって名乗ってるよ。あれ、言わなかったか?」
水の国で一度、グスカスはジューダスとであってる。
そのときに、確か聞いたような気がした。
「グスカス……おまえ、聞いたぜ。この嬢ちゃんから。人助け……したんだってなぁ」
じわ……とジューダスの瞳に涙が浮かぶ。
それは、先ほど二度目の人生のなかでみたのと、同じリアクションだ。
師が、弟子の成長を喜び流す、そんな涙。
だが……二度目の時と違って、グスカスは素直に喜べなかった。
「よしてくれよ……ジューダス。俺なんかのために、そんなふうに泣かないでくれよ」
「なんでだよ? うれしいよ。おまえの成長が」
成長……。
そんなことは……ない。
「おれは……! 成長なんて……してない!」
グスカスは胸に秘めた思いを、ぶちまける。
「おれは全然ちっとも! 成長してない! おまえたちを残して! 魔王の元からおめおめ逃げ帰った! あのときから! 一ミリも! おれは……」
二度目の人生、やり直せると思った。
でもだめだった。結局自分は……。
「おれは……臆病な、弱虫……なんだよぉお……」
グスカスは、そう認めたのだ。
自分の弱さを。自分という人間の、本質を。
「そっか……」
ジューダスの声は柔らかだった。
顔を見ると、彼は微笑んでいた。
……おかしい。なんで?
ここは笑うところではなかった。現に、二度目の人生では馬鹿にされた。
でも……本物は違った。
「えらいなあ」
と、ジューダスは褒めたのである。
「えら……い?」
「おう。自分の弱さをきちんと、向き合ったじゃあないか」
「弱さ……」
こくん、とジューダスはうなずく。
「人間、成長するためには必ず、自分と向き合う必要がある。でも大抵のやつは途中で逃げ出す。自分の弱さと向き合う必要がある。それを認めるのは……難しいことなんだ」
でも、と彼が続ける。
「でもおまえは、ちゃんと向き合って、認めたじゃあないか。自分の弱さと」
ジューダスは近づいてきて、グスカスの頭をなでる。
……温かい。
今まで感じたことないくらい、温かな感覚に……心地よさを覚える。
「弱さとちゃんと向き合ったおまえは……十分強いよ。グスカス。おまえほんとうに……成長したなぁ」
【★☆★読者の皆様へ 大切なお知らせです★☆★】
新作投稿しました!
タイトルは、
『【連載版】俺だけステータスオープンできる件~はずれスキル【開】のせいで実家を追放されたが、ステータス確認できる俺はチートスキルもS級アイテムも選び放題で気づけば世界最強。俺を虐げた皆ねえ今どんな気分?』
ページ下部にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。
https://ncode.syosetu.com/n9203ii/




