137.勇者グスカス
ボスの精神攻撃を受けている、グスカス。
自分のやってしまったことを、責められて、彼はもう消えようと決意した。
……だが。
「消えないで、グスカス……!」
「てぃ、ミス……」
先ほど自分が助けた、奴隷少女ティミス。
彼女が必死になってグスカスに声をかけてきたのだ。
「死なないで! あなたにちゃんとお礼を言いたいの!」
「……お礼」
「そうよ! アタシを助けてくれたじゃあない!」
……確かに、グスカスはティミスを助けた。
だがそれは……。
「……別におまえのタメじゃあねえよ」
単にティミスが、昔の自分と重なって、ほっとけなかっただけだ。
誰も助けてくれなかった過去があるからこそ、自分が助けなきゃって思ったのだ。
「結局おれのためだった。おれが変わったわけではないんだ。……おれはわかったよ。結局おれは今も昔も、愚図でカスなやつだって」
ジューダスに、仲間に、国に大迷惑をかけても……。
その手柄を自分のものにして、偉そうに振る舞っていた。
「おれの性根は、腐ってんだ。こんなやつは生きててもしょうがないんだ。もう……疲れたよ……もうほっといて。おれはもう……死にたい……」
ティミスにあきれて欲しいから、そんな言葉で彼女を突き放そうとした。
でも……。
「グスカスさん! あなたが……昔どんな人だったかは知らない。でも! あなたが人を助けたのは事実! 変えようのない、事実だよ!」
「…………」
確かに。
そこは、事実だ。
今までのグスカスなら、やるわけがない行為だった。
そこは、事実として存在してる。
あのときの自分はどうして……。
「グスカス」
気づけば、誰かが自分に声をかけてきた。
それは優しい、恩師の声。
「じゅー……だす……」
振り返るとそこには、勇者パーティの指導者、ジューダスが立っていたのだった。
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