112.勇者グスカス
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
グスカスは魔力を感知を使い、安全な道を選びながら、奥へと進んでいく。
怪我人を背負いながら、少しずつ歩を進めていく。
「なあ……グスカス……」
「あ? んだよ……」
「なんで奥へ進むんだ……? 戻った方がいいんじゃあないか?」
たしかに、奥へ進むことはすなわち、ボス部屋に近づくと言うこと。
ボス。迷宮主。
ダンジョンに生息する、最も強い魔物のことだ。
ダンジョンは奥へ行くほど強い魔物が出現するようになる。迷宮主は言わずもがなだ。
なるほど、たしかに怪我人がいうとおり、戻った方が良いかもしれない。
進む都度魔物が強くなるのならば。
「ダンジョン内で迷子になったらよぉ、戻るんじゃあなくて進むのが正解なんだよ」
「それは……どうして?」
「高ランクダンジョンってのは、ルートが常に変動するんだ。来た道を戻ったところで出口に到達できないんだよ」
単純に来た道を戻っても、無駄だということだ。
「低ランクのダンジョンなら変動が少ないから、戻るのはありだ。けどこれは見たところ高ランクダンジョン。戻ろうとしたらさらに迷子になって、無駄に体力を使う。高ランク攻略で迷子になったら、転移結晶を使うか、奥へ進むの二択なんだよ」
転移結晶は持っていないので、奥へ進むしかない。
「入口は複数あっても、ゴールは一カ所だ。戻るより、立ち止まるより進んだほうが、いい。他の冒険者たちと合流できる確立が高くなるからな」
……グスカスの話を聞いて、怪我人が黙りこくる。
「んだよ」
「いや……あんた、物知りなんだな」
「ちっ……。師匠の受け売りだよ」
師匠。つまりジュードのことだ。
グスカスは、ジュードから教わった知識を使っていた。
教えてもらったときは、必要ない物だと思っていた。
でもそれが今、凄く役に立っていた……。
「…………」
ほとほと、自分の馬鹿さ加減にいやけがさした。
無意味だと勝手に決めつけて、まじめに授業も訓練も取り込んでこなかった。
「悪かったよ……ジューダス……おれが間違ってたよ……」
こうして知識を活用する段階になって、グスカスはようやく、反省していた。
「ジューダス……ていうのがあんたの師匠。すごいな、色々知ってて」
「ああ……今思うとすげえやつだったよ。でも……教えてもらった当時は、気づかなかった。馬鹿にしてたよ」
そうか……と怪我人がつぶやく。
「じゃあ……ここを出て、謝りに行かないとな」
「…………!」
グスカスは目を剥く。
怪我人は、この場から脱出できると思ってるらしい。
……楽観的に過ぎないだろうか?
いや、待てよ。たぶんちがうんだ。
「……もしかして、励ましてくれてるのか、おめえ」
「まあ、それもあるけど……あんたがいれば、なんとかなるかなってさ」
「おれが……?」
こくん、と怪我人がうなずく。
「高ランクダンジョンにいきなり入って、大ピンチだっていうのに、あんたは冷静に対処してる。怪我人を助ける余裕も感じられる」
「…………」
「あんたと一緒なら、大丈夫かもって、生きて帰れるかもって……希望が持てるんだよ」
……なんだ、それは。
まるで……勇者にむけるような言葉ではないか。
人に信頼されていた。
誰からも、信頼されてこなかった……グスカスが。
今……この場で。
職業をうしない、地の獄に落とされて……。
何もかも失って……。
ようやく、人からの信頼を、一番欲しかった物を、手に入れられた。
「うぐ……ぐすう……」
「な、なんで泣いてるんだよ……?」
「う、うるせえ! 泣いてねえよ!」
グスカスは怪我人を背負いなおし、前へ進む。
弱気になりかけていたグスカスだが、気づけばしっかり前を向いて歩いていた。
……ぜったいに、地上に帰る。
そう決意を強くして、前へ進むのだった。
【★新連載はじめました!★】
タイトルは――
『「学園トップの美少女【雪姫】と付き合ってるなんてウソだよね!?」と王子さま系元カノが泣きながら僕に謝ってくるけどもう遅いです~浮気され傷心中の陰キャ高校生をめぐる壮絶な溺愛合戦~』
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