97.
《ジュードSide》
「ふぁ~……ねむぅい~……」
いつもの昼下がり、喫茶ストレキャットにて。
時刻はランチタイムを過ぎたくらい。
店内は閑散としてる。
「一時期よりは客が減りましたね~」
ハルコが床掃除しながら言う。
キャスコは同意するようにうなずいた。
「……今まではジュードさんの弟子入り志願者が大勢きてましたからね」
俺は前に、鬼ごろしとして凄い有名になってしまった。
そのせいで、俺に教えて欲しいって人がたくさん押し寄せてきたのだ。
でも俺はそれを全部断っていた。
結果、弟子入り志願者は徐々に減っていったって次第。
「よかったんだに? 全部断って」
「うん。俺、もう第一線から下がった身だしねえ。それにもう戦いたくないからさ」
魔王を倒した瞬間、指導者としての俺の役割は終わったのだ。
あとのことは、次の世代の人たちに任す。
「適当に戦いを教えるのは、教えを請うひとたちに申し訳ないしね」
「……なるほど。さすがジュードさん。適当に教えて黄金を稼ぐような、あくどいまねはせず、次世代のことを信じて、あえて何もしないなんて。すごいです」
「いや別にすごくないだろ~」
「……いえ、すごいことです。普通だったら楽してもうけるチャンスを、彼らのために使わないのですから」
そこまで深い考えがあるわけじゃあないんだがなぁ。
「パパ~」
お外で遊んでいたタイガが、店へと帰ってきた。
ふわ、と俺の前にやってきて抱きついてくる。
「おかえり」
「パパに、おきゃくさん!」
「俺に? 客?」




