アルター・ミラージュ

　1983年9月20日　地球は未曽有の事態に晒されていた。
科学の支配するそれまでの常識では測れない全くの未知なる世界……後に"荒野"と呼ばれるようになる異世界が出現したのである。

　その世界からもたらされた魔力と魔法という概念、常識の枠外の存在足る"禍"、そして時を同じくして地球上で生まれ始めた異能の力を持つ"ミラージュ"と呼ばれる者達、等々。
それらの存在は直接的にも間接的にも大きな被害と混乱をもたらしたが、最終的には各国の団結と協力による世界連合特殊機関GRIDの結成により収束することとなった。


　それからおよそ140年後、2124年の4月半ば。
学園の高等部一年に転入したばかりの少女……藍川彼岸(あいかわ ひがん)はその日、何の前触れも無しにGRIDに所属することになってしまった。
しかも研究部門や対処部門といった後方支援ではなく、防衛部門や調査部門のバリバリの武闘派。
それも何やらGRID内部では怪しい噂の飛び交う少数精鋭の特殊任務小隊……通称、特務小隊にである。

　特務小隊は想像以上の場所だった。
人外魔境、超人の巣窟……異名に違わず、所属するメンバーは皆して常識外れでめちゃくちゃな奴らばかり。
特務小隊のリーダー格にして、隊内でもトップレベルの異常者、そこまで特徴が多くないからこそそのおかしさが際立つ″天崎光″。
常識人と見せかけてやっぱりどこかズレている無表情系美少女″朧夜雪″。
もはや常識は通用しない、こいつだけ別次元に生きている、人竜種の″天崎蓮″。

そんなところに放り込まれてしまった純一般人たる彼岸は、当然のことながら日夜繰り返される無茶ぶりと謎行動に振り回されることになる。

　これはそんな彼らが紡ぐ物語。