3話 ~ 不安だらけ ~
~ 不安だらけ ~
―― 王都 城下町広場 ――
どす黒い空に国民も不安を隠せない中、広場に兵士が数名走ってきた。
「王様より伝令!!」
大きな声に広場にいた人々が振り向く。
「ただ今からこの黒い空に関する話がある!!」
「皆、直ちに城門に集まるように!!」
そういうと、兵士達は城に戻っていった。
「いったい何が起こってるの!!」
女性が声を上げる。
「それの説明を聞きに行くんだろ!!」
「そうよ!! 早くいきましょう!!」
その会話を聞いていた人々が次々に城門に向かって走り出した。
―― 王都 王室 ――
「あわわわわわ大臣。 集まってきてしまったぞ。」
震える王様。
「なぁに言ってるんですか!! このままでは民は大混乱。 さらに大変なことになりますぞ!!」
「そ、そうじゃな。 よし。 気合を入れるわい。」
そう言うと、王様は腰を落とし全身に力を入れた。
「はああああああああああ」
と、次の瞬間。
『ばふんッッッッッ!!!!』
勢いよく黄色い煙が上がる。
「王様!!!! こんな時になぁにをやっておるんですか!!!!」
「よぅ~し気合も入ったところで大臣よ。 参ろうか。」
「まったく…… うちの王様は……」
大臣は呆れつつも王様と城門の上に向かっていった。
―― 王都 城門前 ――
城門前は国民で埋め尽くされていた。
人々は口々に不安を現している。
「急に空は暗くなっちゃうし、黒い雨は降ってるし……」
「いったいどうなってるのよ!! 王様はまだなの!?」
広場でも叫んでいた女性が言うと、城門の上に王様と大臣が姿を現した。
「皆、静粛に!! これより王様から話がある!!」
大臣が引き、王様が前に出る。
「うぉっほん。 皆、急に空が暗くなり慌てていることだろう。」
いつになくまじめな顔で話し始める王様。
「そしてあの城。 皆にも見えておるな?」
そう言って、山のほうに指をさす王様。
そこで男が声を上げる。
「王様!! あれはいったい何なのですか!!」
「まぁ慌てるでない。 まずはあれの話からじゃな。」
そう言って振り返り大臣を呼ぶ。
「王様。 これを。」
「うむ。」
大臣から渡された本を開き話し始める。
「この国に残された古い書物を見つけてきた。 この本にはこう書いてある。」
「古に封印されし魔族の王よみがえりし時、世界は暗闇と化し悪の軍勢に支配された。」
一文読み終えると、人々がざわめき始める。
「魔族の王ってなんだ…?」
「私たち、食べられちゃうのぉ?」
「あぁ…… 一体どうしたらいいんだ……」
大臣が前に出て鎮める。
「静粛に!! 皆の者、まだ先がある。 落ち着くのじゃ!!」
大臣が下がると、王様が続きを読み始める。
「世界が暗闇に覆われし時、異世界より現れし勇者が、魔族の王を打ち滅ぼすであろう。 とある。」
城門前は感嘆の声で包まれた。
先ほどの男が王様に問う。
「しかし、異世界より現れし勇者というのはどこにいるのですか!!」
「そうよ!! いつ現れるの!?」
男に続いて女も声を上げる。
「そう慌てるでない。 この本には一つの魔法が記されておるのじゃ。」
「魔法…… ですか…?」
別の男が頭にはてなを浮かべながら言った。
「そうじゃ。 この魔法によって勇者を召喚することができるのじゃ。」
「おぉ!! ではさっそく!!」
「もう召喚したわい。 各地で雷が鳴っとったじゃろう。」
「あの雷は魔法だったのですか!!」
「そうじゃ。 予定では5人召喚されたはずじゃ。」
城門前はまた感嘆の声で包まれる。
「場所はもちろんわかっているのですよね?」
その質問に、王様は黙り込む。
数秒後、頭を下げた。
「すまん!!!!!」
「はああああああああああ!?」
王様の姿を見た人々は一斉に叫んだ。
「それじゃどうするんですか!!!」
一人が咎める。
「これから雷の落ちた方角に兵士を派遣する算段をたてる。」
「そんな闇雲な探し方でよいのですか……」
人々は肩を落とした。
「とにかく今は城壁の外に出ることを禁ずる!! 皆は各自の家で待機じゃ!!」
人々がざわめき始める。
「ほんとに見つかるの…?」
「不安だ……」
「静かにせいっ!! これにて王様からの話を終わる!! 各自速やかに帰宅するように!!」
大臣が言うと、集まった人たちは肩を落としたまま城門を去っていった。
「わしらも初めてのことじゃからのぉ…… 皆厳しいことを言うてくるわい……」
「お疲れさまでした王様。 あとは勇者を待つしかないですね。」
「そうじゃのぉ…… 大臣、至急兵士を集めて向かわせるのじゃ。」
「かしこまりました。 兵士長に指示を出しておきます。 ささ、お部屋に戻りましょう。」
「うむ……」
投稿大分おくれました。
のんびり書いているので気長にお待ちいただけると幸いです。
王都編終了になります。
次回は最果ての村に戻ります。






