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短編集

眠っていた宝物

作者:陽南
――時は、四〇一七年、全世界に衝撃が走った。

「えー、世紀の大発見が、今時珍しい古民家から見つかった……と言う訳ですが、一体どんな物なのか、発見者の坂本さんに聞いてみましょう!」

 リポーターが目を輝かせて、坂本さんと言われた一人の男性にマイクを向けた。マイクを向けられた男性……坂本さんは、恥ずかしそうに目をキョロキョロさせながら答える。

「えっと……えっとですね、本、円盤、ノートなどなど……今の時代っぽくない物が沢山……えぇ、はは」

 坂本さんは、はにかみながら頭を搔く。

「本……!? それってかなり古い物ですよね!? 確か……今現時点で残っているのが千年前の物だとか……坂本さんが見つけた本は、いつくらいの物なんですか?」
「えっと……、鑑定人の人が言うには二千年程前の物になるんじゃないかって……因みに、タイトルは『腐女子生態学』って書いてありました」
「『腐女子生態学』……はぁ~、なんか難しそうな本ですねぇ、流石昔の本ですね!」

 リポーターは、ちらりとカメラを見てワザとらしく大きな声で言う。

「それ以外にも『平成カタストロフィー』とか『小さな片思い、大きな不幸』とか……色んなジャンルの本がありました」
「平成……間違いないって感じですね! いや~ご先祖様の趣味が良く分かりますねぇ!」
「ですね、どんな人だったのかが気になりますよ」
「きっと個性豊かな人でしょう!」
「あ、そろそろ家の方に行きますか? 妻が準備して待ってるんです」

 坂本さんが、木造の家を指差す。
 その家は、今この時代を生きている人達から見てみれば、時代に取り残されていると感じる物だった。今時、木造住宅に住んでいる人など殆どおらず、居たとしても、この坂本夫妻の様に最新設備がしっかりと整った住宅に建て替えていく人ばかりである。別に、木造住宅に危険がある訳では無い。人々が便利な物を選んで行くのは当然の事だ。

 リポーターと坂本さんが家へと足早に向かうと、玄関前に女性が立っていた。カメラとリポーターに対してペコリとお辞儀をする。

「こんにちはー! 奥様ですか? お綺麗ですねぇ~気品を感じます!」

 リポーターが笑顔で坂本さんの奥さんにそう言った。

「や~お世辞は止めて下さい~! あっははは!」

 そう言いながらもかなり嬉しそうである。

「奥様! 此処にその世紀の大発見があるんですね!?」
「えぇ、持ってきますんで、ちょっと待ってて下さい!」

 奥さんはドタドタと玄関を上がって、廊下へと消えていった。その様子を見て、坂本さんは呆れ笑いを浮かべる。

「いや~気品の欠片も無くてすみません」
「いやいや、奥様は気品の塊ですよ」
「昔はなぁ~……はぁ……」

 奥さんを待つ間、二人がそんな会話をしていると、廊下の向こうから奥さんが笑顔で走って表れた。その手には箱がある。

「お前、落とすなよ~、怒られるぞ~」
「落としません!」

 奥さんは、リポーターと坂本さんの前にまでやって来て、箱を開いた。

「おぉぉぉぉお!」

 リポーターの声は裏返り、興奮しているのが伝わってくる。
 箱の中には、先程紹介された本だけでは無く、ケースらしき物に入った状態の円盤、黄ばんではいるが比較的綺麗なノート、四角い黒い物が入っていた。

「凄いです! 歴史の授業や博物館で見た事が無いような物が沢山、今この瞬間、目の前にあります! 信じられませんが事実です! 凄い!」
「自分達も見つけた時はびっくりしましたよ……夢でも見ているのかと」
「ほんと、まさか貴方のご先祖様がこんな物残してるなんて」
「あ、知ってますか! 皆さん、平成時代の物で残っているのは、あの歴史でよく見た『スマートフォン』と呼ばれる物だけですからね、今此処にある物全て超絶お宝です! もう触れるのが勿体ないくらい!」

 リポーターがカメラに向かって、そう説明する。

「それにしても、何でなんでしょうかね? 平成時代より前の物は多く残ってたりするのに……」
「あ、その坂本さんの疑問解決致します! まずは、こちらをご覧下さい」

 リポーターは、空気に触れて指を動かす。すると、そこから突然画像が現れた。さらに、リポーターが指を動かすと、デフォルメ化された人のイラストが表示される。

「えー、簡単に説明しますと平成時代には、このように、今我々が世紀の大発見だと騒いでいる、これらの物は当たり前にあった訳です。さらに、次から次へと新しい物が出てくる物だから、人々はそれに乗り換えて、自分達が生み出した古い物は切り捨てていった……だから平成時代の物は殆ど残っていないのではと多くの専門家の方が分析されています」

 リポーターのその説明を聞いて、坂本さんは、頷きながら言う。

「成る程……今、私達が当たり前に使っている物もいつか、こんな風になってしまう時が来るのかもしれないですね」
「そうねぇ……、きっと貴方のご先祖様だって、たまたま部屋に置いていた物がそのまま放置されていただけで、こうなった……って可能性も高そうだものね……」
「家を建て替えるのはまだ先でいいかな、だって今この時代まで、ずっと丈夫に私達をずっと守ってきてくれたんだから」

 坂本さんは、にっこりと優しい笑顔でカメラに向かってそう言った。

 そして、この番組が放送され、坂本さん夫妻の最後の発言が注目された。これにより、平成時代の建物の歴史的価値が多くある事などから見直されることになるらしい。
 また、平成や平成以降の時代の物がないか、政府は国民に呼びかけている。
 平成時代の博物館もオープンし、平成ブームは暫く続いたようだ。

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