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誰が幼女を殺したのか?

作者: かんな月

 勇者の振るった剣が魔王の首をねる。

 しかし、これで終わりではない。

 勇者達は、傾国の女がいる隠し部屋を探し当て、中へと踏み込んだ。


「これが傾国の女……」


 室内にいたのは、たくさんのクッションとぬいぐるみに埋もれた年端もいかぬ人間の少女であった。

 少女は何も分からないのか、突然乱入して来た勇者達をきょとんと見上げている。


「本当に、これが傾国の女なのか?」


 勇者の問いかけに仲間の戦士が答える。


「そのはずだが……」

「もしかしたら、替え玉かもしれませんよ」


 そう言うのは、仲間の魔法使いだ。


「先程捕らえた魔王の側近に訊いてみましょう」


 魔法使いの提案にのり、ただちに魔王の側近が連れて来られた。

 魔王の側近は、少女を一瞥すると「間違いなく本物」だと告げた。

 驚く勇者一行に、側近は皮肉な笑みを浮かべて、傾国の女のことを話し始めた。


 ある日、お忍びで人間界に行っていた魔王が、大木に縛られ虫の息だった人間の子供を拾ってきたらしい。

 長らく人間界では日照りが続いていたため、恐らくその子供は生贄だったのだろう。

 魔王は気紛れで拾った人間の子をまるでペットのように可愛がった。

 しかし、その子は感情が極端に乏しく、魔王が何をしても泣きも笑いもしなかったそうだ。

 何とか可愛いペットの感情を刺激しようと、魔王は幼い少女を人間界へと連れて行った。

 少女を拾った場所まで来た時、たまたま出くわした人間の男が騒ぎ立てたため、魔王はその男を殺した。

 男が胸から血を吹き出し倒れていく。

 その光景を見て、魔王の腕に抱かれた幼子はキャッキャッと声を立てて笑った。

 それから魔王は少女を喜ばせたい、ただそれだけの理由で人間の村を襲い、残虐非道の限りを尽くしたらしい。


「元はといえば、お前達人間のせいだろう。自業自得だ!」


 高笑いする側近の首がいきなりね飛んだ。

 戦士が斧で切りつけたのだ。

 困惑する仲間達に戦士が声を張り上げる。


「こんな話に惑わされるな! 俺達の目的は何だ? 魔王と傾国の女を倒すことだろう」


 戦士の言葉に勇者達は互いに見つめ合う。

 戦士の言うことは最もであるが、傾国の女が年端もいかぬ元生贄の少女ということにみんな割り切れないものを感じているらしい。

 そんな仲間達に戦士がさらに言葉を重ねる。


「俺達はいったい何のために、幾多いくたの苦難を乗り越えて魔王城までやって来たんだ? みんな、使命を思い出せ!」

「しかし……」

「俺達が命を受けたのは、魔王と傾国の女を倒すこと。傾国の女のなりや生い立ちは関係無い。――それとも、使命を果たした後の約束された生活をむざむざドブに捨てるのか?」


 その一言が決定打だった。

 勇者はいまだきょとんと自分達を見つめている幼い少女に近付くと、一気に剣を振るった。

 音もなく、少女の首が床に転がる。


 これが傾国の女の最期にして、語られることのなかった真実の歴史である。


(完)


幼女を殺した犯人候補一覧


①生贄にしようとした人々

(理由)生贄に選んだ時点で殺す気満々だから。


②魔王

(理由)愚かな自己中だから。


③魔王の側近

(理由)幼女に入れ込む魔王を諫めなかったから。


④勇者

(理由)保身に走ったから。しかもトドメを刺した。


⑤戦士

(理由)悪魔の囁きに耳を貸し、仲間を唆したから。


⑥魔法使い

(理由)空気。


⑦その他

(理由)生まれた国や時代が悪かった的な。



①~⑦の中から、お好きな番号をお選びください。

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