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邂逅・女戦士(アマゾネス)傭兵隊編・戦女神

175000PVアクセス及び37000ユニークアクセスを突破し、ブックマークが290を突破しました。今後も本作を宜しくお願い致します。


ダンジョン・第一階層


クノーベルスドルフ率いる第二死霊連隊によって退路が遮断されてしまったクーリア率いる女戦士傭兵隊は遮られる事無く粛々とダンジョンを進み続け、クーリアは厳しい表情で全くモンスターが登場しないダンジョン内を見据えながら呟いた。

「……先程からスケルトン1体すら現れずか」

「……間違いなく、罠だな」

クーリアの呟きを耳にしたユーティリアが厳しい表情でクーリアに話しかけていると前方から夥しい数の骨と骨がぶつかり合う音が響き始め、それを耳にしたクーリアは腰に指していた一対の緩やかに湾曲した片刃の剣を両手に持ちながら号令を発した。

「……来たぞっ!!総員戦闘配置!!」

クーリアの号令を受けた女戦士達は素早く展開し、それから暫くした後に前方から多数のボーンウォーリアーとボーンマジシャンが姿を現した。

「……中々の歓迎だな」

その光景を目にしたクーリアが厳しい表情で呟いていると前進を続けていたアンデッド達が突然歩みを止め、唐突な停止に訝しみかけたクーリアの鼓膜を背後から響く多数の軍靴が揺さぶった。

「……ちっ、ヴァルッ!!後方警戒!!」

「……了解!!べティッ!!」

クーリアの指示を受けたヴァルは叩きつける様な口調で応じながら扶桑皇国由来の薙刀、瑞雲を手にしたベテラン女戦士、べティに声をかけ、頷きいたべティと彼女の指揮下にある10名程の女戦士と共に後方に視線を転じた。

ヴァルとべティ達が後方に視線を転じて暫くするとロジナ候国軍の軍装を纏ったスケルトンとボーンマジシャンの一団が2体のブラッディマンティスと共に出現して女戦士傭兵隊の退路を遮断した後に停止し、それを確認したヴァルは表情を険しくさせながらクーリアに報告を行う。

「ロジナ候国軍の軍装を纏ったスケルトン及びボーンマジシャンの集団及びブラッディマンティス2体が出現、退路を遮断されましたっ!!現在集団は停止して此方の様子を窺っていますっ!!」

「……大型モンスターにロジナの軍装を纏ったアンデッドの集団、どうやらこのダンジョンは地獄の入口だった様だな」

ヴァルの報告を受けたクーリアは淡々とした口調で呟き、その傍らで身構えていたユーティリアはその呟きを聞いて沈痛な面持ちになりながら口を開いた。

「……すまない、クーリア殿」

「……気にするな、エルフの騎士よ、この様な血の滾る状況を用意して貰い感謝している位だ」

ユーティリアの謝罪を受けたクーリアは涼し気な笑みと共に応じていると前方に展開しているアンデッド達の前方の虚空に揺らぎが生じ、それを確認したクーリア達が身構えた身体に更なる力を込めていると揺らぎから死霊伯爵が姿を現してクーリア達に向けて口を開いた。

……我ハ尊キ御方ノ命ヲ受ケテコノ階層ヲ守護スル者、猛キ女戦士達ヨ、ヨクゾコノ道ヲ選択シタ、コノ道ヲ選択出来タノハ、オ前達ガ初メテダゾ……

「……死霊伯爵が第一階層の守護獣とはな、相当に規格外な様だなこのダンジョンは」

死霊伯爵の言葉を受けたクーリアはどこか納得した様な表情で呟き、ユーティリアが同じ様な表情で頷いていると死霊伯爵は更に言葉を続けた。

……ソシテオ前達ハソノ御方ノ盟友ノ一員ニ対シテモ礼ヲ失スル事ガ無カッタ、ソノ御方ハソノ事ヲ感ジイッテオリ、オ前達トノ会談ヲ希望シテイルゾ……

「……盟友の一員?」

死霊伯爵の言葉を聞いたクーリアは戸惑いの表情で呟きながら傍らのユーティリアに視線を向け、ユーティリアも同じ様な表情を浮かべていたが直ぐに何かに気付いた表情になり身を乗り出しながら口を開いた。

「……まさか、ヴァイスブルクの者達が!?」

「……その通りよユーティリア副団長」

ユーティリアの言葉に呼応する様に死霊伯爵の傍らに生じた揺らぎからアナスタシアと共に姿を現したマリーカが万感の籠った表情でユーティリアを見詰めながら声をかけ、マリーカの姿を目にしたユーティリアは慌てて片膝を着くと叩頭しながら言葉を続けた。

「マリーカ様、まさか再びこうして御会い出来ますとは……」

「……ユーティリア、よく生き残っていてくれたわね」

ユーティリアから微かに震える声で呼びかけられたマリーカは目尻に浮かんだ雫を指先で拭った後に言葉を返し、それを聞いたユーティリアが叩頭しながら込み上げる雫を拭っているとクーリアが両手の剣を腰に戻した後にマリーカと死霊伯爵を交互に見ながら口を開いた。

「……ロジナを敵に回す事も厭わずにヴァイスブルクに手を差し伸べる存在がいるとはな」

「……正確に言うとあたし達が庇護して頂いているのは付属品の様な物なのだけどね」

……ソノ御方ニトッテ、ロジナノ愚カ者ドモ程度、物ノ数デハ無イ、直ニオ前達モソノ御方ト御会イスル事ガ出来ルゾ……

クーリアの万感の呟きを聞いたマリーカが苦笑しながら返答したのに続いて死霊伯爵がマリーカ達を庇護している存在との会談がある事を告げ、クーリアは頷いた後にヴァル達に向けて号令を発した。

「総員!!武器を収めて整列しろっ!!」

「「了解!!」」

クーリアの命を受けたヴァル達は鋭い口調で応じた後に各々の得物を収めると後方に展開するアンデッド達やブラッディマンティスに背を向けて死霊伯爵達と相対する形で整列し、その光景を目にした死霊伯爵は愉快そうな口調でクーリアに向けて口を開いた。

……背後ヲ晒ス事モ厭ワズカ、流石ハ女戦士ト言ッタ所ダナ……

「背中の傷は戦士の恥だ、だが会談する相手に背を向けるのも戦士がすべき事では無い、ロジナを敵に回してもなおヴァイスブルクに手を差し伸べる事を選んだ者との会談で背をむける訳にはいかん、例え、背中に傷を負ったとしてもな」

死霊伯爵の言葉を受けたクーリアは淡々とした口調で言葉を返し、それを受けた死霊伯爵は楽し気に頷いた後に威儀を正して言葉を続けた。

……ソノ覚悟、正ニ女戦士ニ相応シイ、我ガ主モ大イニ好ムデアロウ……

「……ユーティリア、頭を上げなさい、今からあたし達を庇護して下さっている御方が御出になるわ」

死霊伯爵が告げたのに続いてマリーカが穏やかな口調でユーティリアに語りかけ、ユーティリアがそれに従い深く垂れていた頭を上げると死霊伯爵達が数歩後退りした後に威儀を正し、それに応じる様に死霊伯爵達の前の虚空に揺らぎが生じてそこからミリアリアとアイリスが姿を現した。

「はじめまして、女戦士の傭兵さん達、あたしはアイリス、このダンジョンの主よ」

アイリスが涼し気な口調でクーリア達に呼びかけるとアンデッド達とマリーカ達が一斉に跪いて深々と頭を垂れ、ユーティリアはその光景からアイリスの規格外の力を感じながら傍らのクーリア達の様子を窺った。

クーリア達女戦士達は無言で佇みながら食い入る様に佇むアイリスを見詰めており、その様子からただならぬ様子を感じ取ったユーティリアが戸惑いの表情を浮かべているとクーリア達は一斉に跪き、クーリア達の突然の反応を目にしたアイリスは小さく首を傾げながらクーリア達に声をかけた。

「……どうしたの、いきなり?」

「……尊き御姿を拝顔出来させて頂きました事、この上無く嬉しく思います、戦女神様」

「……はい?」

アイリスに声をかけられたクーリアは深く頭を下げたまま迷い無い口調で告げ、その予想の斜め上を突き抜ける言葉を受けたアイリスが何時もの飄々とした雰囲気からかけ離れた呆気に取られた表情で戸惑いの声を上げると深く頭を垂れたまま言葉を続けた。

「……森に住まい、隔絶した力を持つ美しき女神、戦女神、我等女戦士が崇め傅く偉大なる存在が戦女神、崇め傅くべき存在とも言える戦女神が我々の前に御光臨下さったのです、女戦士たれば頭を垂れ跪くは当然を通り越して必然です」

「……い、戦女神って」

クーリアの礼賛の言葉を受けたアイリスは予想外の言葉の連続に戸惑いの声をあげ、傍らでその様子を見ていたミリアリアはアイリスの反応に新鮮味を覚えながら無意識の内に呟きをもらしていた。

「……確かにアイリスなら戦女神に相応しいな」

「……み、ミリアッ!?」

ミリアリアが無意識の内に呟いた称賛の言葉を受けたアイリスは不意打ち気味のその言葉に頬を赤らめながらミリアリアに呼びかけ、それを受けたミリアリアは自分が無意識の内に呟いてしまっていたのに漸く気付いて真っ赤な顔で取り繕い始めた。

「……い、いや、アイリスは魔王なんだが、規格外の力があるし、め、女神みたいに綺麗だから戦女神の言葉が相応しいとおもっ……あっ、いや、ちが……あ、アイリスが女神みたいに綺麗と言う言葉は違わないんだが違うんだ」

ミリアリアは真っ赤な顔でしどろもどろに取り繕おうとして更に深みにはまってしまうがアイリスもミリアリアの言葉に耳まで真っ赤になって絶句してしまい、マリーカが跪いたまま混迷を増す状況に嘆息しているとアイリス達と同時にこの場に到着したアイリーンがマリーカの傍らに跪きながら声をかけて来た。

「……大混乱ですけどアイリス様嬉しそうですわね」

「……そうですね」

アイリーンのどこか楽し気な口調の囁きを受けたマリーカは苦笑と共に相槌を打ち、その後にミリアリアとアイリスの様子を穏やかな眼差しで見詰めつつ言葉を続けた。

「……もう暫くこのままにしてみましょうか、面白そうですし」

「……そうですわね、彼我の状況はクノーベルスドルフ様が掌握されておりますのでもう暫くこのままにしておきましょう、面白そうですから」

マリーカの提案を聞いたアイリーンは微笑みながら賛意を示し、それからマリーカとアイリーンはしどろもどろなミリアリアと真っ赤な顔のアイリスを笑顔で見守った。

それから暫くした後にクノーベルスドルフから獣人族傭兵隊が接近して来た事が告げられ、それを告げられたマリーカとアイリーンによってミリアリアとアイリスのグダグダな状態は収拾された。

マリーカとアイリーンに状態を収拾して貰ったアイリスは改めてクーリア達に自分が魔王である事を伝えたが、クーリア達からは例え魔王であったとしてもアイリスが戦女神の名に相応しい存在であるとの答えが返され、その後に行われたアイリスの陣営への参加打診に対しても全員が即決で参加を決定した。



異形のダンジョンを進んでいた女戦士傭兵隊の前に現れたアンデッドの軍勢とヴァイスブルク伯国の最後の拠マリーカ、そしてダンジョンを統べる女魔王アイリス、アイリスの姿を目にした女戦士達はその美貌と規格外の力に信奉する戦女神の姿を重ね会わせ進んでその参加に加わる事を選択した……


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