邂逅・女戦士(アマゾネス)傭兵隊編・闇の軍勢
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ダンジョン・第一階層・女戦士傭兵隊
ダンジョンに突入したクーリア率いる女戦士傭兵隊は10名の尖兵とユーティリアを先頭に慎重な足取りでダンジョン内を進み、クーリアは後続集団の先頭に立って尖兵集団の後に続いていた。
尖兵集団が進んでいると前方から10体程のスケルトンとボーンウルフの混成集団が出現し、それを目にしたユーティリアはクーリアに合図を送った後に集団に向けて右手を突き出しながら言霊を解き放つ。
「ファイヤーブリッドッ!!」
ユーティリアが言霊を解き放つと同時に突き出した手の先に紅蓮の炎弾が具現化して放たれ、放たれた炎弾は先頭を進むスケルトンを直撃して近くにいたスケルトンとボーンウルフを巻き込みながら炸裂した。
「行くぞっ!ジルッ!!」
「ええ、行きましょうっ!ジュディッ!!」
ユーティリアの先制攻撃を目にした女戦士達の中から褐色の肢体の各所に古傷が刻まれた歴戦の女戦士2名、両手持ちの戦斧を装備したジュディと両手に長短2本の剣を握るジルが鋭く言葉を交わしながら躍動してユーティリアが集団の鼻先に穿った綻びに突入し、戦斧と2本の剣を巧みに操り付近のスケルトンやボーンウルフに襲いかかった。
ジュディとジルの引き締まった褐色の肢体が躍動する度に粉砕されたスケルトンやボーンウルフの骨が飛散してユーティリアが穿った綻びを風穴へと拡大させ、それに乗じる形で他の女戦士達も各々の得物を手にアンデッドの集団に襲いかかり瞬く間にアンデッド達を駆逐してしまった。
「……アンデッド系ダンジョンか……確かこれまでの襲撃にもアンデッドが大量に出現していたな」
「……ですが、ダンジョンに出現するモンスターはダンジョンの外に出る事は出来ない筈です」
尖兵集団の戦闘を目にしたクーリアが小さく首を傾げながら出現したアンデッドと伝え聞いた襲撃との関連性について呟くと後続集団を率いる扶桑皇国伝来の刀、閃電を装備するベテランの女戦士、ヴァルが思案顔で意見し、クーリアが難しい顔付きで頷いていると新手のアンデッドの集団が出現して尖兵集団が再び戦闘を開始した。
新たに出現したアンデッドの集団に対してユーティリアと尖兵集団に参加していたダイナが攻撃魔法を放ち、放たれた攻撃魔法が着弾して炸裂すると同時にジュディとジルを先頭に尖兵集団の女戦士達が突撃してアンデッドの集団を一掃した。
(……確かに発生して1ヶ月程のダンジョンに出現するモンスターの戦力はこの程度だ……この程度なのだが……)
出現するモンスターを鎧袖一触で粉砕していく尖兵集団の様子を見詰めるクーリアは順調な進捗状況にも関わらず胸中に疑念が生じるのを防ぐ事が出来ず、後続しているヴァルも同じ様な疑念を感じたらしく難しい顔付きでクーリアに話しかけて来た。
「……順調、ですね」
「……ああ、恐い位にな」
ヴァルの言葉を受けたクーリアが難しい顔のまま応じていると態勢を立て直した尖兵集団が前進を再開し、クーリアはそれに追従する為に後続集団に前進を命じた。
マスタールーム
ダンジョンルームではダンジョンを進むクーリア率いる女戦士傭兵隊の様子が魔映像によって鮮明に映し出されており、その映像で女戦士達の戦いぶりを確認していたアイリスは感嘆の笑みを浮かべながら口を開いた。
「……見事な戦いぶりね、流石は女戦士と言った所かしら」
「……そう言えば、まだ宝箱が出ておりませんわね」
アイリスが呟いていると共に女戦士達の映像を見ていたアイリーンが首を傾げつつ宝箱が未だに登場していない事に疑問の呟きをもらし、アイリスは事も無げな口調でそれに応じた。
「……宝箱なら今回は登場しない様に設定してあるわ、今回は女戦士さん達と御話してみるからそれが終わるまでは彼女達が余計な損害を被らない様にしているのよ」
アイリスの説明を聞いたアイリーンは得心の表情になりながら頷き、それを目にしたミリアリアは表情を引き締めながら口を開いた。
「女戦士達の事はそれで良いとして、問題はこいつらをどうするかだな」
ミリアリアはそう言いながら使い魔から送られて来ている獣人族の傭兵隊の映像を見据え、アイリスは頷いた後にその映像に視線を向けて口を開いた。
「……到着まで2時間程度と言った所かしら、襲撃は連中が合流して野営の準備を始めたタイミングで行う様にしましょう、襲撃隊に増援を送るわ」
アイリスがそう言いながら右手の指を軽く鳴らすとそれに呼応する様に虚空に黒い揺らぎが発生して漆黒の鎧を纏った死霊騎士が2体姿を現し、アイリスはその姿を一瞥した後に涼しげに笑いながら言葉を続けた。
「死霊連隊の指揮官達になるわ」
……第一死霊連隊指揮官、マントイフェル……
……第二死霊連隊指揮官、クノーベルスドルフ……
アイリスが説明したのに続いて右胸の部分に紅の星が1つ描かれた鎧を纏った死霊騎士、第一死霊連隊長マントイフェルと同じ部分に紅の星が2つ描かれた鎧を纏う死霊騎士、第二死霊連隊長クノーベルスドルフが名乗りをあげ、その光景を目にしたマリーカは呆れと驚きがない交ぜになった表情を浮かべながら傍らのアナスタシアに囁きかけた。
「……第一階層の死霊騎士を見てたからそこまでの驚きは無いけど、こう言う光景を目にするとアイリス様の規格外さを改めて痛感するわね」
「……アイリス様が言うにはアイリス様の製作される中位以上のアンデッドは基本的にちょっと小粋でアドリブが利く様にしているそうです」
「……いや、明らかにアドリブ利き過ぎでしょこれまで出てきたアイリス様のアンデッド達」
マリーカの囁きを受けたアナスタシアは何とも言えない表情で囁き返し、それを受けたマリーカが同じ様な表情で囁いているとアイリスがマントイフェルの方に視線を向けながら口を開く。
「マントイフェル、第一死霊連隊から抽出した部隊を率いて襲撃隊に参加しなさい」
……御意、ボーウォーリアー大隊二骸骨軽騎兵、ボーンマジシャン各1個小隊ヲ加エタ部隊ヲ指揮シテ襲撃隊二参加致シマス……
アイリスの指示を受けたマントイフェルは恭しく一礼した後に出撃する部隊の詳細を告げ、アイリスは頷く事でそれに応じた後にアイリーンの方に視線を向けて口を開いた。
「襲撃の規模が大きくなったからリステバルス皇国亡命政権からも人員を派遣して貰いたいわ、襲撃隊の指揮は襲撃隊指揮官のフィリアスに行って貰うつもりだからその点を考慮して人員を派遣して頂戴」
「……畏まりました、アイリス様、サララ様、宜しくお願い致しますわ」
アイリスから人員派遣を要請されたアイリーンは快諾の返事をした後にサララに人員の選別を一任し、サララは一礼した後に威儀を正してアイリスを見詰めながら口を開いた。
「アントーネとリリーネを派遣します。彼女達はフィリアス殿達と共に囚われておりましたので適任かと」
「決まりね、マントイフェルは直ちに部隊の準備を整えなさい、クノーベルスドルフは予備隊として第二死霊連隊及び第一死霊連の留守部隊を併せて指揮して待機しなさい」
……御意、直チニ出撃シフィリアス様ノ指揮下ニテ行動致シマス……
……承知シマシタ、第二死霊連隊並ビ第一死霊連隊留守部隊ヲ指揮シ待機致シマス……
サララから派遣する要員の名を告げられたアイリスはマントイフェルとクノーベルスドルフに指示を送り、2体の死霊騎士は復唱した後に掻き消す様に姿を消した。
「……それとこれは珊瑚龍のカプセルよ、指揮官のフィリアスに渡す様伝えて頂戴」
「……了解しました、お預り致します」
2体の死霊騎士が姿を消したのを確認したアイリスはサララに話しかけながら珊瑚龍のカプセルを手渡し、サララは深く一礼してそれを受け取った後にアイリス達の前を辞した。
「……外の連中への対処はこんな感じで良いとして、後は彼女達ね」
サララを見送ったアイリスはそう呟きながらダンジョンを進む女戦士傭兵隊の映像に視線を向け、ミリアリアは頷いた後にアイリスに話しかけた。
「分岐点で彼女達がどう行動するかだな」
「……そうね、これまでダンジョンに侵入して来た連中みたいにそこで狼狽えてしまうだけなら残念だけどその場で彼女達を抹殺して捕虜だけを救出するわ、何らかの対応を行った上で攻略を続行するか、撤退する、そのどちらかを選択した場合に彼女達と話をしてみるつもりよ、ミリアを護る為に戦力は欲しいけどミリアを護る為だからこそまともな戦力にならない連中を抱え込む気は無いわ」
「……ッ」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは映像を見ながら返答し、ミリアリアがその中に籠められた己に対するアイリスの想いに頬を赤らめながら絶句してしまうのを目にしたマリーカとアイリーンはやれやれと言う様に微苦笑しながら頷き合った。
やがてサララから出撃を命じられたアントーネとリリーネが完全武装でダンジョンルームを訪問し、アイリスはアイリーンが彼女達に激励の言葉を送った後に転位魔法で彼女達をダンジョン外に展開するフィリアス達の所に転位させた後にダンジョン外の部隊をフィリアス戦闘団と呼称し、同戦闘団にロジナの下級将校達と増援の獣人傭兵隊に対する夜襲の実施を命じた。
アイリスの命を受けたフィリアスは遠巻きにロジナの下級将校達を包囲しながら獣人傭兵隊の合流を待ち受け、一方ダンジョン内ではクーリアが順調に進捗している様に見えるダンジョン攻略に疑念を燻らせながらユーティリアや女戦士達と共に前進を続けていた。
ダンジョンに侵入したクーリア率いる女戦士傭兵隊は迎撃の為出現するアンデッド達を容易く蹴散らし、クーリアは一見順調に見えるダンジョン攻略の推移に疑念を燻らせながら女戦士達を更に前進させた。
一方、アイリスはダンジョンを進む女戦士傭兵隊の行動を注視しつつ、新たに出現した獣人傭兵隊に対する夜襲を決意して襲撃隊に増援を送り、増援を受けた闇の軍勢は虎視眈眈と標的の到着を待ち受け始めた……