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仇敵

今後も本作を宜しくお願い致します。資料としてリステバルス王国軍の概略編成とヴァイスブルク派遣軍の編成を後書きに記載しておきます。


大陸歴438年霧の月二十八日・リステバルス王国・王都グロスロマーネス・王宮・秘匿謁見室


昨年に勃発したリステバルス戦役の結果新たに誕生した国リステバルス王国、その王都グロスロマーネスに駐留していたロジナ候国の特使はヴァイスブルク派遣軍の要請を受けたロジナ候国本国より送られた長距離秘匿魔法通信を受け取ると、リステバルス王国の首脳陣との緊急会談を要請しリステバルス王国側は即座にそれを受け入れ特使を非公開の会談に利用される秘匿謁見室に案内した。

特使が席に着いて暫くするとドアが開かれ金髪碧眼の狐人族の美男子、リステバルス王国の若き国王リチャード1世とリチャード1世の魔導学院時代の同級生で王妃候補のプラチディアそしてリチャードやプラチディアと魔導学院時代の同級生であった銀髪紫眼の美男子、王国宰相マヨリアヌス・ド・リッサ(侯爵)に同じく魔導学院時代の同級生の赤毛赤目の野性味に富んだ美男子、王国近衛騎士団長、バジリスコス・ド・キレナイカ(伯爵)そしてリチャード達の2年先輩にあたりエメラーダの実兄でもあった青髪碧眼の優男、神殿長アンテミウス・ド・トラジメーノ(侯爵)、そしてリチャード達の一年後輩にあたる金髪緑眼の眼鏡美男子、魔導局長、リキメロス・ド・アルバニア(伯爵)の6名からなる王国首脳陣が姿を現し、リステバルス戦役の経緯を知る特使は胸中に生じた彼等に対する失笑をおくびにも出さずに立ち上がると恭しく一礼しながら口を開いた。

「急な呼び立てを行いました事御許し下さい、そして御自ら御出ま頂きましてありがとうございます。リチャード陛下」

「何を言うのだ特使殿、大恩あるロジナ候国の特使の申し出だ、我等総出で出迎えるのは当然だ」

特使の言葉を受けたリチャード1世は鷹揚に応じた後に特使に座る様促し、特使が着席した後にプラチディア達と共に特使の前に座った。

「さて、特使殿、本日は我国に取って火急の一大事が生じたとの事ですが一体何事でしょうか?」

全員が着席した後に宰相のマヨリアヌスが特使に向けて質問し、特使は頷いた後に厳しい表情を浮かべながら口を開いた。

「……はっ、その話をする前に現在我国が連邦瓦解の陰謀を企ておりました悪逆なる叛徒と戦っております事は御存知でしょうか?」

「……ヴァイスブルク戦役の事なら聞いてるぜ、大恩あるロジナ候国に弓引く連中がいるなんて信じられねえ話だ、許可さえ得られれば一兵卒としてでも馳せ参じたい所だったぜ」

特使の言葉を聞いたバジリスコスは顔をしかめながら返答し、特使はその言葉に頷いた後に言葉を続けた。

「……その御言葉頼もしい限りです、実は戦役は我等の勝利に終わったのですがその直後に不逞なる輩が非道にも我等に襲いかかり、その輩の中にリステバルス戦役の元凶たるアイリーン・ド・リステバルスが含まれておるのです」

「何!?アイリーンだとっ!?」

特使が重々しい口調で告げた衝撃の報せを受けたリチャードは思わず声を荒げ、傍らのプラチディアが不安気な面持ちになりながらリチャードに視線を向けるとそれに気付いたリチャードは表情を穏やかな物へと変えた後に優しげな口調でプラチディアに語りかけた。

「心配するなプラチディア、あやつは最早妹でも何でも無い、あやつは皇国滅亡の元凶となった大悪女だ、この私が必ずやそなたを護ってやるぞ」

「……陛下、ありがとうございます」

リチャードの力強い言葉を受けたプラチディアは頬を仄かに赤らめながら返答し、リチャードが頷いているとマヨリアヌス達も次々と口を開いた。

「……この事態は血筋に拘り続けた愚かなあの女に情けなどかけた我々の落ち度、陛下が仰った様にあの女は最早皇女でも何でもありません、また我々の前に立ちはだかると言うなら今度は完全に息の音を止めてやります、ですからどうか御安心下さいプラチディア様」

「……安心しな、プラチディア俺は王国の剣であり盾、つまりはお前やリチャードの剣であり盾だ、あの勘違い女が何かして来たとしても叩き潰してやるぜっ!!」

「……プラチディア様、どうか御心を安らかにして下さい、あの女や私の愚妹により受けた心の傷や痛みを思い出してしまったかもしれませんが今や貴女様は国母となる身、我々は全力で貴女様を御護り致す事を誓います」

「……ホント、あの高慢女は最低の女だね、優しいプラチディア様の御心遣いで贖罪の機会を頂いたのにそれを無下にしたんだから、安心して下さいプラチディア様、僕達は全力でプラチディア様を御護りしますよ」

「……皆さん、ありがとうございます」

マヨリアヌス達の言葉を受けたプラチディアは綻ぶ様な笑みを浮かべながら感謝の言葉を述べ、失笑を押し隠しながら出来の悪い寸劇の様なやり取りを眺めていた特使は話が一段落したのを確認すると改まった表情と共に口を開いた。

「……恥ずかしながら我等は大きな損害を被ってしまいました。その為にヴァイスブルク派遣軍の増強を行いたいのですが他の諸侯国も警戒せねばならぬ為、大規模な増援は中々に難しいのが現状、故に恥ずかしながらも貴国との友誼に縋るべくこうして恥を偲んで参りました」

特使は沈痛な表情でそう述べた後にリチャードを見詰め、リチャードは大きく頷いた後に微笑を浮かべながら口を開く。

「特使殿、お話は良く分かりました、我が愚妹により大恩ある貴国に損害が生じる等我国に取って痛恨の汚点です、汚点は濯がねばなりません、マヨリアヌス、現在の国軍の状況はどうなっている?」

リチャードは力強く宣言した後にマヨリアヌスに国軍の状況について尋ね、マヨリアヌスは暫しの間を置いた後に滑らかな口調で現在の国軍の状況を告げ始めた。

「現在、王国十五騎士団の内、第五騎士団及び第十三から第十五騎士団に関しては先の戦役による解隊を経た後の新規編成の為錬成途上にあります。第六、第八、第十騎士団については西方国境にてヴァルティーリア王国の動静を監視しており、第九、第十一騎士団が後詰めとして控えております。第七及び第十二騎士団はロジナ候国の自警団の協力を得つつ東方地帯の治安維持任務についており、現在王都に駐留しておりますのは第一から第四までの騎士団に近衛騎士団、神殿騎士団となります、魔導士団につきましては第五、第七、第九魔導士団が西方地帯に、第八魔導士団が東方地帯に展開しており、第四、第六魔導士団が錬成途上であり王都周辺に展開するのは第一から第三までの各魔導士団、及び近衛魔導士団になります、軽装歩兵、軽騎兵、弩砲兵に関しては軽装歩兵4個大隊、軽騎兵、弩砲兵は各2個大隊が王都周辺に展開しております」

「神殿騎士団に関しては4個大隊の内1個大隊が新規編成の為錬成途上で実動戦力は3個大隊になります」

マヨリアヌスに続いてアンテミウスが自身が統括する神殿騎士団の状況を報告し、それを聞き思案を始めたリチャードに対してバジリスコスが鋭い表情で口を開いた。

「陛下、俺に行かせてくれ、あの高慢女を叩き潰してやる」

「……僕に行かせて下さい、身の程知らずにはしっかりと自分の身の程を思い知らさなきゃなりませんから」

バジリスコスの出撃志願に続いてリキメロスも志願を志願し、リチャードは暫し思案した後にリキメロスに視線を移しながら言葉を続けた。

「……今回はリキメロスに行って貰おう、差し迫った危機がある訳では無いが隣国のヴァルティーリア王国との関係が確定していない状況でバジリスコスとリキメロスの2人を留守にさせる訳にはいかんからな、リキメロスの魔術の才があれば我が愚妹程度容易く倒せるであろう」

「……仕方無えな、リキメロスなら大丈夫だ、頼んだぜリキメロス」

「……ありがとうございました。陛下、バジリスコス団長」

リチャードの決断を聞いたバジリスコスが肩を竦めながら賛意を示すとリキメロスは笑顔とリチャードとバジリスコスに感謝し、そのやり取りを確認したマヨリアヌスは微笑を浮かべたが直ぐに表情を引き締めながら言葉を続けた。

「リキメロスには第三騎士団、第二魔導士団に近衛騎士団と神殿騎士団から抽出された各1個大隊に軽装歩兵2個大隊、軽騎兵、弩砲兵各1個大隊を加えた約9000からなる兵力の部隊を指揮して出撃してもらう事になる、出撃予定は今月末、ヴァイスブルク到着は来月中旬頃だ」

マヨリアヌスの説明を聞いたリキメロスは自信に溢れた表情で頷き、そのやり取りを聞いていた特使はリチャードに対して深々と頭を垂れながら口を開いた。

「早速に援軍の出撃を御決断下さいました事、深く感謝致します我国は貴国の協力と友誼に対して深く御礼申し上げます」

「気になさるな特使殿、ロジナ候国の御恩情があればこそ、我国があるのでこの程度で感謝されては少々面映ゆい物があるぞ、我国に潜伏しているとされている大罪人どもの捜索に関しても更に協力させて貰うぞ」

「……ロジナ候国とならば下手な腹の探り合い等せず胸襟を開いて意見を交わす事が出来ます、今後もこの様な関係を続けていきましょう」

特使の言葉に対してリチャードとマヨリアヌスはにこやかな表情で言葉を返し、それを受けた特使は元から高くは無い彼等に対する評価を容赦無く下げつつもそれをおくびにも出さずに笑顔で頭を下げた。

その会談から2日が経過した霧の月三十日、リキメロス率いるヴァイスブルク派遣軍約9000はプラチディアとリチャードが挙行した盛大な出陣式に見送られながら出撃し、ロジナ候国の信託統治領がある東方地帯ではロジナ候国の組織した自警団とリステバルス王国軍、そしてラインラント公国軍の天馬騎士団選抜部隊からなる特殊捜索隊が編成され東部山岳地帯にて潜伏が噂されているルフトラント候国の残党狩を開始した。



ヴァイスブルク派遣軍の援軍要請を受けたロジナ候国軍は先の戦役の結果誕生した傀儡国家リステバルス王国に援軍を要請し、アイリーンの生存を知ったリステバルス王国国王リチャード1世はアイリーンへの敵愾心をたぎらせながら側近リキメロス率いる軍勢の出撃を決した。

新たに魔王のダンジョンへと出撃した敵部隊、それはダンジョンに庇護されているアイリーン達リステバルス皇国亡命政権にとって因縁深き仇敵……


資料・リステバルス王国軍概略編成



騎士団(1個騎士団は2個大隊約1600編成、1個大隊は騎乗騎士・1個大隊は4個中隊約800名編成)


15個騎士団(第五騎士団は女性騎士団、現在第五騎士団を含む4個騎士団が錬成途上)



魔導士団(2個大隊約1600名編成、1個大隊は4個魔導士中隊約800名編成)


9個魔導士団(現在2個魔導士団が錬成途上)



近衛騎士団(4個大隊約5000名編成、各大隊は5個騎乗騎士中隊1200名編成で1個中隊が騎乗魔導騎士中隊)


1個近衛騎士団



神殿騎士団(編成は近衛騎士団と同じ4個騎士団の内1個大隊が女性神殿騎士大隊)


1個神殿騎士団


近衛魔導士団(4個大隊約4000名編成、1個大隊は5個中隊約1000名編成)


1個近衛魔導士団



軽装歩兵大隊(4個中隊約800名編成、編成は軽装歩兵、軽騎兵、弩砲兵各大隊共通)


15個軽装歩兵大隊(4個大隊が錬成途上)



軽騎兵大隊


15個個軽騎兵大隊(リステバルス戦役による馬匹払底により内8個大隊が錬成途上を名目に軍馬保有皆無)



弩砲兵大隊


15個弩砲兵大隊(5個大隊が錬成途上)




リステバルス王国軍ヴァイスブルク派遣軍編成



総指揮官・リキメロス・ド・アルバニア



編成


第三騎士団


第二魔導士団


第四近衛騎士大隊


第三神殿騎士大隊


軽装歩兵2個大隊


軽騎兵1個大隊


弩砲兵1個大隊



総兵力約9000名


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