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閨の語らい

今後も本作を宜しくお願いします。本作はガールズラブ作品ですので閲覧は自己責任でお願い致します。

大陸歴438年霧の月二十三日夜半・ダンジョン・マスタールーム階層・ミリアリア私室


ダンジョンに突入した陣営再建部隊残党が喰い尽くされたその日の夜半・ミリアリアは私室のシックなデザインのクイーンサイズのベッドに横たわっていたが中々寝付かれずに悶々としながら何度も寝返りを打っていた。

「……アイリス」

ミリアリアは何度目かとなる寝返りを行った後に幾度と無く脳裏に浮かぶひとの名を呟きながらゆっくりと上体を起こし、ベッドサイドの小さなデスクに置かれた照明用魔具の灯りを灯した後に自分の部屋を改めて見渡した。

室内にはゆったりとしたクイーンサイズのベッドにベッドサイドに置かれた水差しと照明用魔具が置かれた小さなデスク、そして落ち着いたデザインの執務机に姿見添えつけの化粧台に大収納の箪笥が配置されていたが室内はそれらの品々が置かれていてもなお余裕のある広さを持ち、ミリアリアは国を喪った元騎士団長と言う現在の自分の境遇からは分不相応な寛ぎ空間を見ながらこの部屋を含めた規格外のダンジョンとそれを製作してくれたアイリスに想いを馳せた。

(……私を追手から護る、アイリスはただそれだけの為にこんな規格外なダンジョンを製作してくれた……いや、それどころか囚われの身となった戦友達や逃亡中のマリーカ様や娼奴隷に身を窶していたアイリーン様やクラリス殿達までも救出、庇護してくれた、更にそれだけに止まらずヴァイスブルクとリステバルス両国亡命政権の樹立と後見にまで尽力してくれた)

ミリアリアの脳裏にアイリスが自分の為にしてくれた事が走馬灯の様に過った後に既に日課となっているにも関わらず全く馴れる事が出来ないでいる同伴しての入浴の際の生まれたままの姿のアイリスが浮かびかけ、ミリアリアは頬を赤らめながらも慌てて頭を振って意識を保たせた。

(……私は武骨な女だ、だが木石では無い、アイリスの想いは理解しているし、それに関しても……か、掛け値無しに嬉しく思っている)


貴女はあたしの許可を得なくてもこの部屋に入れる様になっているから、あたしに夜這いをかけたくなったら何時でも夜這いに来て構わないわよ


ミリアリアがアイリスの自分への想いとそれに対する己の心情に思いを馳せていると唐突に以前アイリスから告げられた誘いの言葉が脳裏を過り、瞬時に顔どころか笹穂耳まで真っ赤になってしまったミリアリアは顔の火照りを散らす為に大きく頭を左右に振った後に少し躊躇いがちにベッドから立ち上がった。

ベッドから立ち上がったミリアリアは真っ赤な顔で自室の出入口のドアを凝視し、暫く悶々とした後に自分に言い聞かせる様に呟き始めた。

「……ち、違うぞ、こ、これは、だ、断じて、よ、よ、夜這い等では無い、し、少々寝苦しいから訪ねてみて……お、起きていたら、す、少しだけ、ほ、本の少しだけ話をするだけだ……だ、だから……夜這い等では無い……だ、断じて無い……無いったら無い」

ミリアリアは懇々と自分自身に言い聞かせる様に暫く呟いた後に出入口へと向かおうとしたが足を一歩踏み出した所でその動きが止まり、足を止めたミリアリアは顔を更に真っ赤にさせながら錆びた音が聞こえてしまいそうな程に硬くぎこちない動きで箪笥に視線を向けた。

箪笥に視線を向けたミリアリアはその姿勢のまま暫く悶々と思い悩んだ末に真っ赤な顔のまま箪笥の方に向けて歩き始めた。

それから約20分が経過した後、ミリアリアは寝間着姿でマスタールームの前に立ち、暫し逡巡した末に躊躇いがちにマスタールームのドアへと手を伸ばした。

マスタールームのドアはミリアリアの手が戸板を叩く前にミリアリアを迎え入れる為に自動的に開き、ミリアリアは小さく深呼吸をして己を落ち着けた後にマスタールームに入室した。

アイリスはミリアリアの予想に反してまだ起きていてソファーに座っており、ミリアリアが入室した事に気付いたアイリスは立ち上がると小さく首を傾げてミリアリアを見詰めながら口を開いた。

「どうしたの、ミリア?」

「……い、いや、その、だ……な、中々寝付けなくてな、も、もしアイリスがまだ起きていたら少し話せないかなと思ったんだ」

アイリスの問いかけを受けたミリアリアは頬を赤らめさせたままもごもごと返答し、その答えに聞いたアイリスは弾ける様な笑顔と共に口を開いた。

「……嬉しいわっ、勿論OKよ、ソファーに座って待ってて、紅茶を用意するわね」

「……あ、ああ」

アイリスのあどけない笑顔を目にしたミリアリアはどきまぎしながら応じた後に勧められるままにソファーに腰を降ろし、アイリスはそれを確認した後に上機嫌に鼻唄を歌いながら簡易キッチンへと移動して紅茶の用意を始めた。

(これだけの事であれほどに喜んでくれる……そんなアイリスを見るのとてもは嬉しい……そして、とても、愛しい……)

ミリアリアがアイリスへの想いを噛み締めながら上機嫌で紅茶の用意を進めるアイリスの姿を一瞥した後にテーブルに視線を向けるとそこには数枚の書類が並んでおり、ミリアリアがそれを見詰めていると紅茶を満たしたカップを載せたトレイを運んできたアイリスがトレイをテーブルの上に置きながら口を開いた。

「先日の襲撃の成果を礎として増強された部隊と既存の部隊の編成表よ、明日リリアーナに清書ししてもらってヴァイスブルク伯国亡命政権側とリステバルス皇国亡命政権に写しを渡す予定なの」

「……それじゃあ今まで起きていたのは、これを作る為だったのか?」

アイリスの説明を聞いたミリアリアはアイリスの尽力に驚きながら問いかけ、アイリスは頷く事で応じた後に言葉を続けた。

「……説明、聞く?」

「……そ、それは」

(き、聞くべきなんだろうが、は、初めてアイリスの寝室を訪れた時の会話の話題が増強された魔王軍の編成についてと言うのはどうなんだ?いや、まあ、確かに他に何か話題があるのかと言われれば返答に窮してしまう訳だが、それにしたって初めてアイリスの寝室にお邪魔した時の話題がこれなのはおかしいだろう)

アイリスに問いかけられたミリアリアは増強された軍勢の概略を掴んでおきたいと言う思いと、意を決して初めて夜半のマスタールームを訪問してアイリスと交わす話の話題としては色気の欠片も無い内容な事に関する複雑な思いのせめぎ合いによって返答に詰まり、その様子を目にしたアイリスはミリアリアを安心させる様に微笑みながら言葉を続けた。

「フフフ、あたしは気にしてないわよ、初めて夜に来てくれたミリアとあたしの会話が増強された魔王軍の編成に関してだなんてあたしとミリアらしくて良いと思うわ」

「……そう言われればそうかもしれないな」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは苦笑と共に応じ、アイリスは笑顔で頷いた後に表情を改めながら言葉を続けた。

「軍勢の増強に関してはアンデッド部隊が主になるわ、先ずスケルトン部隊が約4000体増員されて1個大隊約1000体から5個大隊約5000体に増強されたわ、続いてボーンウォリアー部隊が約600体増強されて、1個中隊約300体から1個大隊約900体に増強、ボーンマジシャン部隊には約400体増強されたから1個中隊約150から2個中隊約600体に、骸骨軽騎兵隊に関しても同じ様に約400体増強出来たから1個中隊約150体から2個中隊中隊約650体に増強されているわ、これに加えてワイト約200体とボーンビショップ約400体が確保出来たからワイト1個中隊及びボーンビショップ2個中隊で編成される火力支援大隊を新設したわ」

「……相当に増強されたな、取れる選択肢が増えるな」

アイリスから増強された魔王軍の戦力を聞かされたミリアリアは我が身のみで逃走していたヴァイスブルク陥落直後と比べると雲泥の差とも言える戦力の増強ぶりに感慨の呟きをもらし、アイリスは頷く事でそれに同意した後に更に説明を続けた。

「スケルトン2個大隊とボーンウォリアー1個大隊に骸骨軽騎兵、ボーンマジシャン各1個中隊で第一死霊連隊を、残るスケルトン3個大隊と骸骨軽騎兵、ボーンマジシャン各1個中隊で第二死霊連隊を編成したわ、火力支援大隊は状況に応じて適時部隊を派遣して火力支援任務に従事する事になるわね」

アイリスから再編されたアンデッド部隊の情報を聞かされたミリアリアは頷きながら資料を一読し、その後に少し表情を曇らせながら口を開いた。

「……本当に何時もすまない、私達はアイリスに頼りっ放しだな」

「っもう、何時も言ってるでしょ、あたしは魔王と好き勝手にやってるだけよ」

ミリアリアの言葉を受けたアイリスは少し困った様に微笑みながら返答したが、次の瞬間にはその笑みを悪戯っぽい物へと変えつつ言葉を続けた。

「でも、ミリアが申し訳無く思ってるんだったら今夜は一緒に寝て貰おうかしら」

「……っ」

半ば予期していたアイリスの言葉を受けたミリアリアは頬を赤らめながら言葉に詰まり、暫し逡巡した後に笹穂耳まで真っ赤になりながらか細い声で返答した。

「……わ、分かった」

「……え?」

予想外の答えを受けたアイリスは思わず戸惑いの声をあげ、ミリアリアは更に真っ赤になりながら消え入りそうな声で続けた。

「……そ、そのつもりで来たんだ……だ、だから……こ、これも着て来たんだ」

「……み、ミリア?」

真っ赤な顔のミリアリアは消え入りそうな声でそう告げながら寝間着の襟元に手を伸ばし、その光景を目にしたアイリスが瞬く間に真っ赤になり掠れかけた声で呼びかけると頷く事で応じた後にぎこちない手つきで自分の寝間着を脱ぎ始めた。

微かな衣擦れの音と共にミリアリアの寝間着が床に落ちると以前アイリスから渡された扇情的なデザインの下着を纏ったミリアリアの肢体がアイリスの目の前に晒され、アイリスは耳まで真っ赤になりながらも愛しげにミリアリアを見詰めながら口を開いた。

「……その下着、着てくれたのね」

「……あ、アイリスになら見せたいと言っただろ、い、良い機会だからき、着てみた……んだが……わ、私みたい武骨な女が着て、大丈夫なのか?」

(……あ、アイリスの視線、あ、熱い)

アイリスの言葉と視線を受けたミリアリアは身体の奥が甘く痺れかけているのを自覚して更に真っ赤な顔になりながら言葉を返し、アイリスはゆっくりとかぶりを振った後に愛しげにミリアリアを見詰めつつ口を開いた。

「……とっても綺麗よ、ミリアリア、本当に綺麗、何だか悔しい、もっともっと褒めちぎりたいのに綺麗としか言えなくて」

「……そ、その言葉だけで十分だ……そ、それ以上言われたら……は、恥ずかしすぎて……どうにかなってしまいそうだ」

アイリスの称賛の言葉を受けたミリアリアは誇らしさと羞恥が入り交じった複雑な表情で応じ、アイリスはそれに対しては愛しげに下着姿のミリアリアを見詰めながら言葉を続けた。

「……ねえ、ミリア、見て、くれる?」

「……あ、ああ、み、見せてくれ……あ、アイリス」

アイリスの問いかけを受けたミリアリアは掠れた声で返答し、それを受けたアイリスは蠱惑の笑みを浮かべながらゆっくりと扇情的な装いを脱いで扇情的なデザインの下着だけとなった魅惑的な肢体をミリアリアに晒した。

「……何時見ても思う、本当に、本当に、綺麗だと」

「……嬉しい、ありがと、ミリア」

ミリアリアの称賛の言葉を受けたアイリスはその言葉を噛み締めながら嬉しそうに応じ、2人はそれから暫く扇情的な下着姿となった互いを見詰め合った後に互いに足を踏み出して近付き合った。

「……ねえ、ミリア、ベッドまで運んでくれる?」

「……あ、ああ、そ、それくらい、御安い御用だ」

アイリスに声をかけられたミリアリアは掠れがちの声で応じた後に多少ぎこちない動きではあったが軽々とアイリスを抱え上げ、ミリアリアに抱え上げられたアイリスは甘える様にミリアリアの胸元にもたれかかりながら言葉を続けた。

「……ホントに最近のミリアは凄いわ、魔王の筈のあたしがドキドキさせられっ放しよ」

「……わ、私だってドキドキさせられ通しだ、初めて逢った時から今に至るまで」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは真っ赤な顔で応じた後にベッドに向けて歩き始め、アイリスは真っ赤な顔で更にミリアリアの胸元にもたれかかった。

アイリスを抱え上げてベッドに向かうミリアリア、2人は密着した互いの素肌に籠る互いの温もりを確め合い、その熱い位に感じられる温もりを噛み締め合いながらベッドへと向かった。


翌早朝、ミリアリアはアイリスと一緒にマスタールームを出た所を一部の者達に見付かって騒ぎになってしまい、結局一緒に寝ただけなのが判明した末にヘタレ認定されてしまううのだが、それはまた別のお話……



ダンジョンに突入して来た陣営再建部隊残党が鎧袖一触に蹴散らされたその日の夜、寝付かれずにいたミリアリアは燻るアイリスへの想いに誘われる様にマスタールームを訪問し、魔王と騎士団長は初めて閨を共にし語らいを交わした……


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