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情報収集

今後も本作を宜しくお願い致します。


大陸歴438年霧の月二十二日・ダンジョン・マスタールーム階層・拷問室


破壊と殺戮に満ちた夜が白々と明けた頃、ダンジョンのマスタールーム階層の一角に設けられている拷問室では捕虜となった軽騎兵中隊長と弩砲兵中隊長が後ろ手に縛られた状態で椅子に座らされていた。

2人の目の前では監視役のテオドーラとマリーナが刺す様な視線を向けていたが、2人はふてぶてしい表情で平然と2人の視線を受け止め、それどころか逆に嘗める様な視線で2人を見回している始末であった。

「捕虜に対してこの様な扱いを平然と行うとはな……所詮はエルフ族と言った所だな」

「……知性と魔力に秀でた種族だと言われているがその実態は大陸協定を理解出来ぬ野蛮な種族で女エルフに至っては誰にでも股を開く色情狂の尻軽な雌エルフ、今は澄ました顔をしているが本当は股を開き浅ましく腰を振りたくてウズウズしているんだろうよ」

舐め回す様な視線でテオドーラとマリーナを眺めながらのうのうと宣う2人の中隊長に対してテオドーラとマリーナが眉間に皺を寄せているとドアが開かれてアイリスとミリアリアが入室し、それを確認したテオドーラとマリーナが敬礼するとアイリスは鷹揚な笑みと共に頷く事で応じた後に口を開いた。

「……お疲れ様、捕虜の様子はどうかしら?」

「お疲れ様ですアイリス様、ここに来た時から変わっておりませんわ」

アイリスの問いを受けたテオドーラは眉を潜めて2人の中隊長を一瞥した後に返答し、アイリスは頷いた後にテオドーラとマリーナの前に進み出て2人の中隊長に向けて口を開いた。

「ようこそ、あたしのダンジョンへ、あたしはアイリス、このダンジョンの主よ、それじゃあ早速だけど貴方達が知ってる情報を話して貰えるかしら?」

アイリスは2人の中隊長を交互に見ながら気軽な世間話でもするかの様にのんびりとした口調で情報の提供を求め、アイリスの蠱惑的な美貌と装束を野卑た視線で見詰めていた中隊長達は暫しの間を置いた後に蔑みの笑みを浮かべながら口を開いた。

「……クククッ中々頭が緩そうな獣女だと思っていたが、やはり相当に頭が緩い様だな、まあ、そんな女だけに身体は悪くないがな」

「……恐らく後ろの女エルフども以上に股を開いたり腰を振ったりしたくてしょうがない尻軽女なのだろうよ、確かに身体は悪くない、遊び相手には最高だな」

野卑た呟きと共に蔑む様にアイリスの蠱惑的な身体を見詰める2人の中隊長、その光景を見ていたテオドーラとマリーナは激昂する代わりに傍らに立つミリアリアを一瞥した。

ミリアリアは腕組みをして無言のままアイリスに野卑な笑みを向ける中隊長達を見詰めていたが、その瞳はさながら汚物を見るかの様に冷たく、それを目にしたテオドーラとマリーナはその冷たい雰囲気に思わず数歩後退りしてしまった。

(……ああ、なんで私はこんな時に限って当たりくじと言う名の外れくじを引いてしまうんだろう、アイリス様の拷問って言うだけでも恐ろしいのにミリアリア様までこんなになるなんて、私の不運どうにかして欲しい、そしてごめんなさいテオドーラ様)

(……ま、マリーナさんが結構不運なのは知っていますが、こ、これは中々ですわね、ライナさん達から聞いてはいましたがこれはかなり精神衛生上宜しくありませんわね、で、ですがマリーナさんだけをこの様な場に居させる訳には参りませんわ)

マリーナとテオドーラは遠い目をして自分達が監視役を行う事になった経緯に嘆息し、そうしていると2人の中隊長達が野卑た視線でアイリスを見詰めながら口を開いた。

「……情報が知りたいんだろう?だったら先ずはそちらの誠意を見せて貰う必要があるな」

「ああ、そうだな、自称ダンジョンの主様、先ずは此方に近付いてその好き者な身体をよく見せて貰おうか」

「……良いわよ、そうしたら情報を教えてくれるのね」

中隊長達の言葉を受けたアイリスは気楽な口調で返答した後に疑う素振りすら見せずに中隊長達の所へ歩み寄り、野卑た笑みを浮かべた中隊長達はアイリスが近付いた所で戒めを軽々と振り解きながら立ち上がるとアイリスを羽交い締めにして懐から取り出したナイフの切尖を喉元へと突き付け、勝ち誇った笑みと共に言葉を続けた。

「チェックメイト、と言った所だな、しかし拘束、武器の確認共に甘い、それらしい体を装ったとしても所詮はこの程度と言った所か」

「見た所かなり薄い混血の獣人にしか見えませんがこれまでのやり取りを見た所ヒエラルキーは彼女の方が上の様ですね、つまりは強力な後ろ楯があると言う事、気になりますねえ」

アイリスを人質にした中隊長達は勝ち誇った笑みを浮かべてミリアリア達を見ながら宣い、それに対して人質にされた当の本人は緊迫感の全く感じられない様子で口を開いた。

「……あらあら、困ったわねえ、この様子じゃあ素直に情報を提供してくれ無さそうねえ」

「……呆れますねえ、自分の今の状況が理解出来ていないとは、見た目通りの尻軽獣女ですね」

「……全くだ、まあ遊びの相手と割り切れば最高の女だな、ここの場を脱出したならばたっぷり楽しませて貰うとしよう」

アイリスののんびりとした口調の言葉を聞いて野卑た笑みと共に蔑みの言葉にもらす中隊長達、その鼓膜を新たな言葉が揺さぶった。

「あらあら、随分楽しそうねえ、自分達がどんな状況にあるか理解してるのかしら?」

「……それは此方の台詞ですよ全くこれだからあじ」

「……おい、どうした?いきなりだま」

軽騎兵中隊長は蔑みの言葉と共に新たな声のした方に視線を向けたがその言葉が途中で止まり、それに気付いた弩砲兵中隊長は怪訝な面持ちで軽騎兵中隊長の視線の先に目をやり絶句してしまった。

「……あらあら、どうしたのかしら?間の抜けた顔しちゃって」

絶句した中隊長達の視線の先ではアイリスが楽し気な表情で宣い、中隊長達が唖然とした表情を浮かべていると冷たい笑みと共に言葉を続けた。

「……本当に愚かな連中ばかりよねえ、自分達に都合が良過ぎるのを不審にすら思わないなんて」

アイリスの冷たい笑みと言葉を受けた中隊長達が背筋に悪寒が走るのを感じながら人質とした筈のアイリスに視線を向けるとアイリスは瞳を閉ざしたまま依然としてその場に佇んでおり、その姿に安堵の表情を浮かべかけた中隊長だったがアイリスの瞳が開かれると同時にその表情が凍り付いてしまう。

アイリスの開かれた目蓋の下には瞳の代わりにポッカリと開いた眼窩が存在しており、凍り付いた表情を浮かべてそれを見詰めていた中隊長達だったが眼窩から百足や蚯蚓などのたくりながら這い出て来た瞬間、声にならない悲鳴をあげながら腰を抜かし、その様子を目にしたアイリスは楽し気に嘲笑わらいながら言葉を続けた。

「あらあら、どうしちゃったのかしら?そんな有り様じゃあ、尻餅獣女と色んな事を楽しめないわよ」

「「そうよお、楽しませてくれるんでしょう?」」

アイリスの言葉に続いて中隊長達の背後から複数のアイリスの声があがり、それを聞いた中隊長達がガタガタ震えながら背後に視線を向けるとそこには瞳の代わりにポッカリと開いた眼窩が存在しているアイリスが7人並んでおり、7対の眼窩に見据えられた中隊長達がこれ以上無い程目を見開きながら腰が抜けてしまった状態でじたばたともがく中、本物のアイリスが楽し気な口調で告げた。

「それじゃあ、お楽しみの前に楽しい楽しいお喋りタイムよ、ああ、心配しないで、魔法で知ってる事を洗いざらい話して貰うから例え黙りを決めこもうとしようが狂気に苛まれてしまおうが関係無いわ、だから安心してね」

アイリスが凄惨すてきな笑みと共に告げると8人のアイリス(ボーンウォーリアーが擬態)がポッカリと開いた眼窩で見下ろしながら頷き、その光景を目にした中隊長達は声にならない悲鳴をあげた後に泣き喚きながら命乞いを始めたがアイリスは平然とした面持ちでそれを無視して中隊長達への尋問を開始した。

「「…………うわあぁ」」

目の前で繰り広げられた光景を目の当たりにしたテオドーラとマリーナはドン引きしながら乾いた声をあげ、その後にテオドーラがひきつった表情で呟きをもらした。

「……す、凄まじいですわね、あ、アイリス様の御力は」

「……そ、そうですね、幻影魔法で姿を隠していると聞いてた私達ですらどこにいるか気付けませんでしたね」

テオドーラの感想を聞いたマリーナは同じ様にひきつった表情で相槌を打ち、その後に尋問するアイリスの傍らに移動したミリアリアに視線を向けた。

ミリアリアはアイリスの傍らに寄り添い中隊長達が垂れ流す情報に耳を傾けていたが、その瞳は冷たい怒りを湛えながら油断無く中隊長達を見据えており、マリーナはそんなミリアリアの様子に若干気圧されつつ小声で続けた。

「……み、ミリアリア様はアイリス様が偽者なのを知ってた筈なのに、あいつ等がアイリス様の偽者を馬鹿にし始めた瞬間からあんな雰囲気になったんですよね」

「……え、ええ、に、偽者だと解っていてもアイリス様が貶されるのが許せなかったのでしょう……それについては、そこまで想って頂けているアイリス様を少し羨ましく思いますわ」

マリーナの言葉を受けたテオドーラは相槌を打ちながら応じた後に穏やかな眼差しでアイリスとミリアリアを見ながら続け、それを聞いたマリーナは暫し逡巡した後に頬を赤らめさせつつ口を開いた。

「……て、テオドーラ様、わ、私も同じだと思い……ます」

「え?」

マリーナの唐突な呟きを聞いたテオドーラは戸惑いの表情を浮かべながらマリーナに視線を向け、マリーナは真っ赤な顔でその視線を受け止めながら言葉を続けた。

「もし、私がミリアリア様の立場でテオドーラ様がアイリス様の立場だったとしたら私もミリアリア様がした様になると思います、偽者だと解っていてもテオドーラ様があんな風に蔑まれるのは嫌です……から」

「……ま、マリーナ……さん」

マリーナが真っ赤な顔で告げた言葉、その中に籠められた想いを感じ取ったテオドーラはマリーナと同じ様に頬を赤らめさせてマリーナの名を告げ、その後に恥ずかしげに俯きながらマリーナの左手に自分の右手を重ねた。

「……て、テオドーラ様」

マリーナが突然のテオドーラの行動に笹穂耳まで真っ赤になりながら掠れ気味の声をあげると、テオドーラは俯いたままマリーナの手を握る手に力を込め、俯いたテオドーラの笹穂耳が朱に染まっている事に気付いたマリーナは更に顔を赤くさせながらテオドーラの手を握り返した。

重なり合った手から互いの存在と想いを確かめ合うテオドーラとマリーナ、一方アイリスはミリアリアに見守られながら中隊長達から情報を引き出し続けていた。



殺戮と破壊に満ち満ちた夜が明け異形の軍勢が凱旋を果たしたダンジョン、アイリスはダンジョンの拷問室へと直行し襲撃の最中に捕縛した中隊長達は自ら尋問して情報の収集に努めた……


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