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蹂躙・ヴァイスブルクの悪夢編・強襲降下

PVアクセス130000を突破しました、今後も本作を宜しくお願いします。

陣営周辺空域・作戦機動群


第三機動打撃群の猛攻を受け崩壊していく西外哨陣地付近をフライパスした作戦機動群は最大の目標である陣営に向けて驀進し、先頭を突き進むアイリスは魔画像で攻勢の進捗状況の概略を確認すると不敵な笑みを浮かべながら腕の中のミリアリアに声をかけた。

「……今の所順調よ、後はあたし達作戦機動群が目的を果たすだけよ」

「……そうか」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは万感の呟きで応じた後に鞘に収められたフレイヤに手を添え、アイリスはその姿を愛しげに一瞥した後に使い魔達が撮影した陣営の様子が映し出された魔画像を具現化させた。

具現化された魔画像には慌ただしさを増す陣営の様子が映し出されており、それを確認しているアイリスの目が上空に対する攻撃態勢を整えた魔導士達の姿を捉えた。

「……あれだけ仰々しく魔力を放出してあげたのだから気付いて貰わなきゃ困るわよね」

その様子を確認したアイリスは不敵な笑みと共に呟き、動揺しながらも迎撃態勢を整えている陣営に向けて後方の双角龍と共に進み続けた。


陣営・陣営再建部隊司令部


第九騎士団と西外哨陣地に対してほぼ同時に行われた襲撃とラステンブルクの猟兵部隊との通信途絶、陣営再建部隊司令部が異様な事態の連続に戸惑いながらも軽騎兵小隊と魔導兵小隊を配属した軽装歩兵中隊を2個中隊増援として西外哨陣地に向けて進発させていると、魔導士達が上空に巨大な魔力反応を察知して魔力捜索を行った結果上空から接近してくる反応を確認し、その報告を受けた陣営司令部の命を受けた部隊は厳重な対空迎撃態勢を整えてその接近を待ち構えていた。

魔導士達と弩砲兵は緊張した面持ちでマジシャンズロッドの先端と中弩砲の砲先を夜空そらへと向け、アハトエーベネは司令部から少し離れた場所で小隊規模の魔導猟兵達と共に敵の襲来に備えていたが胸中に疑念を生じさせていた。

(……ここまで完璧に統制された襲撃をしておいてあの様な見え見えの魔力放出で攻撃企図が発覚する、おかしい、明らかにおかし過ぎる、先程の魔力放出は囮若しくは陽動では無いのか?)

「……各外哨陣地の様子はどうなっている?」

「……依然襲撃は確認されておりません、それと、先程西外哨陣地から陣地を放棄し撤退すると連絡があったそうです」

アハトエーベネが胸中に疑念を燻らせながら司令部と魔力通信を行っていた魔導猟兵に問いかけると魔導猟兵は西外哨陣地の失陥とその他の外哨陣地に異常が見られない事を告げ、アハトエーベネが顔をしかめながら頷いていると、魔導猟兵は突然顔色を変えて司令部と通信を交わした後に青ざめた顔で急報を告げた。

「西外哨陣地より撤退した部隊がジンベルヴォルフや魔狼、ブラッディマンティスの大群に襲撃を受けたとの報を最後に通信途絶状態に陥ったそうです、現在増援部隊が救援の為急行中だそうです」

(……嫌になる程に周到だな、恐らく増援部隊も殺られるな、これ程周到であるが故に先程の魔力放出がより一層不気味に感じる、そもそも魔龍が第九騎士団を襲撃している現状で一体何がこの地を空から襲うと言うのだ?)

「……アハトエーベネ様!!司令部より敵が間も無く襲来するとの事ですっ!!」

「……総員対空迎撃用意!!」

アハトエーベネが魔導猟兵の報告する周到な襲撃の内容に苦悩していると魔導猟兵が更なる報告を行い、それを受けたアハトエーベネは苦悩を飲み下して魔導猟兵達に対空迎撃に備えるよう命じた。

アハトエーベネの命を受けた魔導猟兵達は緊張した面持ちで夜空そらを見上げ、アハトエーベネも同じ様に上空へと視線を転じていると大地が微かに揺れ始めた。

(……何だ、この揺れは?)

アハトエーベネが唐突な揺れに戸惑いを感じていると揺れは加速度的にその大きさを増して行き、魔導猟兵達が激しさを増した揺れによろめき始めるのを目にしたアハトエーベネの顔面から血の気が引いた。

「……まさか、地下から?だとしたら先程の魔力放出はやはり囮」

アハトエーベネが手近な所にあった柵に掴まりながら呟いていると、それに応える様に司令部の辺りから異形の大型モンスター、硫黄龍が姿を現し、硫黄龍は突然の事態に虚を衝かれた状態の司令部目掛けて口から高熱の黄色いガスを噴射させた。

噴射された黄色いガスは司令部周辺に到達すると爆発を引き起こし、硫黄龍は慌てふためく陣営再建部隊に向けて手当たり次第にガスを噴射し続けた。

硫黄龍が放ったガスは司令部とその周囲の其処彼処で爆発を引き起こし、アハトエーベネは盛大に舌打ちした後に予想外の事態に唖然としている魔導猟兵達と護衛の猟兵達に号令を発した。

「……魔導猟兵隊モンスターを迎撃せよっ!!、猟兵隊は私に続けっ周辺部隊の混乱を収拾し反撃に転ずるぞっ!!」

アハトエーベネの号令を受けた魔導猟兵達は弾かれた様に硫黄龍を攻撃する為の呪文詠唱を始め、アハトエーベネはそれを一瞥した後に猟兵隊を指揮して混乱する友軍の収拾を開始した。

アハトエーベネが周辺にいた2個小隊程の軽装歩兵と小隊規模の軽騎兵隊を取り纏めていると第八猟兵団選抜部隊の主力を率いたチーグタムが合流し、それと相前後して司令部周辺の被害状況が断片的に判明してきた。

襲撃により司令部にいた総指揮官の第十六騎士団長ザイドリッツが重傷を負った上に司令部周辺に展開していた魔導兵中隊と弩砲兵中隊が潰滅的打撃を受けて指揮していた魔導兵大隊長と弩砲兵大隊長は戦死、司令部周辺は指揮官の相次いぐ戦死傷により混乱状態に陥っておりその状況は暴れ狂う硫黄龍によって更に悪化の一途を辿っていた。

「……おのれ、蜥蜴風情が好き放題しおって、叩きのめせっ!!」

部隊の窮状を把握したチーグタムが蛮声を張り上げていると迎撃を開始していた魔導猟兵達が硫黄龍に向けて火球を発射し、それとほぼ同時に態勢を立て直した魔導士達と弩砲兵達も火球と石弾を放った。

放たれた火球と石弾は硫黄龍に降り注がれたが硫黄龍は降り注ぐ火球と石弾を物ともせずに暴れ狂い、アハトエーベネはその猛威に思わず顔をしかめたがその瞬間に頭上で膨大な魔力が渦巻くのを察知して弾かれた様に警報を告げた。

「……総員直上警戒!!魔導結界展開、聖なる光よっ我等を護りたまえっ!!ライトニングシールドッ!!!」

アハトエーベネが警報に続いて紡いだ言霊によって上空に輝く六芒星の魔法陣が現出すると同時に上空から降り注いだ黒い稲妻と黒い氷柱が魔法陣を直撃し、両者が相殺される事によって虚空に巨大な爆発が生じた。

「……な、何事だっ!?」

「……次が来るぞっ!!魔導猟兵隊、結界展開急げっ!!」

突然の事態に狼狽え怒声を張り上げるチーグタムを無視してアハトエーベネが指示を送っていると、その言葉に誘われる様に黒い稲妻と黒い氷柱が周囲に降り注ぎ、それによって陣営の混乱状況は更に悪化させられてしまった。


陣営上空


「……何ヵ所かは防がれたみたいだけど全体的に見ればはまあまあかしら?」

「……そ、そうだな」

硫黄龍の攻撃によって生じた混乱に乗じて双角龍に先行して陣営上空に到達したアイリスはダーク・アイスランスと闇の稲妻ダーク・サンダーによる地上攻撃の成果に満足気な呟きをもらし、それを聞いたアイリスの腕の中のミリアリアは相変わらずのアイリスの規格外の力に若干引き気味になりながら相槌を打ちつつ眼下の状況を確認した。

上空から見る陣営の様子は控え目に見ても混乱の只中にあり、ミリアリアがそれを確認しているとアイリスが声をかけてきた。

「もう一撃仕掛けた後に双角龍が降下を始めるからあたし達もそれに加わるわよ」

「……ああ、分かった」

アイリスに声をかけられたミリアリアは表情を引き締めながら応じ、アイリスはその表情を愛しげに一瞥した後に言霊を放った。

「……吹き荒れよ、闇の風雪、ヴィンテル・ゲヴィッター」

アイリスが言霊を放つと同時に虚空に無数の黒い氷弾が発生して雨霰となって混乱する陣営に降り注ぎ始め、それとほぼ同時に陣営上空に到達した双角龍が牢屋の周辺目指して降下を開始した。

アイリスは双角龍の降下を確認した後にミリアリアに視線を向け、ミリアリアが小さく頷く事で応じたのを確認した後に背中の蝙蝠の羽根を羽ばたかせて降下を開始した。

牢屋に向けて降下を開始した双角龍とアイリス、それに対する陣営からの迎撃は皆無であった。


牢屋


襲撃によって混乱の極みにある陣営の中にあって唯一災厄を免れている場所である牢屋、その中では収監されている女エルフ達と狐人族の女達が呆気に取られた表情で混乱する陣営の様子を見詰めていた。

「……一体、何が起こっていますの?」

「……分かりません」

エメラーダが混乱の極みにある陣営を戸惑いの表情で見つめながら呟くと傍らのイレーナは同じ様な表情で呟いた後に厳しい表情になりながら言葉を続けた。

「……ただ、推測になりますが、アイリーン様が御落命された状況もこの様な状況なのでは無いでしょうか?」

「……そうですわね、ですがアイリーン様やわたくし達が遇わされた生地獄から思えば、ある種の救いにすら感じられますわね」

イレーナの呟きを聞いたエメラーダは強張った表情と共に相槌を打っていたがその途中から吹っ切れた様な表情になりながら呟き、それを聞いたイレーナは頷いた後にエメラーダの傍らに寄り添いつつ口を開く。

「……そうかもしれませんね、その際は御一緒させて頂く事を御許し下さい、エメラーダ様」

「……愚問よ、イレーナ、貴女は私の護衛騎士ですわ、例え貴女が拒んだとしても私は貴女を離しませんわ」

イレーナの想いの言葉を受けたエメラーダは瞳に涙の雫を溜めながらも気丈な笑みを浮かべて応じ、その会話を目にした女エルフ達と狐人族の女達もある者は涙を流し、ある者は瞳に涙を溜めながら気丈な笑みを浮かべて抱き合い今生の別れを惜しんだ。

エメラーダ達が覚悟を決めて今生の別れを惜しんでいると牢屋の近くに双角龍が着地し、エメラーダ達がその振動に揺られながら双角龍に目を向けると予想外の光景が繰り広げられていた。

「総員、出撃、周囲の屑どもを一掃しろっ!!」

軽やかな身のこなしで双角龍の背中から地面に降り立ったカッツバッハの号令を受けたライナ達は地面に降り立つと混乱する陣営に対して攻撃魔法を放ち、エメラーダ達が予想外の事態に目を白黒させているとアナスタシアに護衛されたマリーカとアイリーンが地面に降り立った。

「……あ、あれは、あ、アイリーン様!?」

「「……ま、マリーカ様!?」」

アイリーンとマリーカの姿を目にしたエメラーダと女エルフ達が驚愕の声をあげているとアナスタシアに先導されたマリーカとアイリーンが牢屋の傍らに駆け寄り、唖然としていたエメラーダは我にかえると慌てて片膝を地面に着いたものの戸惑いの声をあげてしまう。

「こ、これは一体」

「驚かせてしまいましたわね、エメラーダ様、他の皆も、ですが、わたくしは幽霊でも何でもありませんわ、正真正銘のアイリーン・ド・リステバルスですわ」

「……戦友達よ突然の事態に驚いたと思う、だが、こちらにおわすのは間違いなくマリーカ・フォン・ヴァイスブルク様だ」

アイリーンが穏やかな口調でエメラーダ達に告げたのに続いてアナスタシアが女エルフ達を慈しむ様に見詰めながらマリーカの存在を告げ、唖然とした表情を浮かべていた女エルフ達と狐人族の女達が戸惑いながらも片膝を着き頭を垂れているとカッツバッハが咆哮を轟かせた双角龍と共に前進を始め、それに代わる様に眩い閃光と共に光壁龍が姿を現して咆哮を轟かせながら牢屋を含めた己の周囲に強固な光壁を展開させた。

「……こ、これはっ!?」

「……御安心下さいエメラーダ様、先程のモンスターも今出現したモンスターも我々に味方して下さっているさる御方が生み出した使役獣ですわ、そしてこれはあのモンスターが我々を守る為に展開した障壁ですわ」

アイリーンがそう説明していると陣営再建部隊が混乱しながらも発射したとおばしき火球と石弾が幾つか飛来したものの、光壁龍が展開した光壁はそれらの直撃を受けても小揺るぎすら見せず、その様子を目にしたエメラーダは驚愕の表情のまま呟きをもらした。

「……す、凄まじく強固な障壁ですわね」

「……このモンスターに、先程のモンスター、何れも尋常で無い能力ですね、これ程のモンスターを使役獣として扱えるとは、アイリーン様、さる御方とは一体どの様な御方なのですか?」

エメラーダが驚愕の呟きをもらしたのに続いてイレーナが光壁龍と双角龍を交互に見ながらアイリーンに問いかけ、アイリーンがそれに答え様とした瞬間新たな大型モンスター、珊瑚龍が出現した。

「……あ、あのモンスターも」

「……さる御方の使役獣、なのですか?」

エメラーダとイレーナは予想を上回る事態の連続に唖然としながら呟き、アイリーンが苦笑と共に頷いているとマリーカが珊瑚龍の付近を示しながら口を開いた。

「……エメラーダ様、彼方を御覧下さい、あたし達を庇護して下さっているさる御方がいらっしゃいます」

マリーカの言葉を受けたエメラーダ達がマリーカの示す方向に視線を向けると、ミリアリアとカッツバッハと共に立つ大鎌を手にしたアイリスの姿があり、その姿を目にしたエメラーダは戸惑いの表情と共に呟いた。

「……あの鎌を手にした方がアイリーン様や皆様を庇護して下さったさる御方ですか?」

一見すると薄い混血の獣人に見えるアイリスの姿を目にしたエメラーダは戸惑いの声をあげ、一方その傍らでアイリスの姿を凝視していたイレーナは半信半疑の表情で呟いた。

「黒髪に白い肌、そして背中に生える蝙蝠の羽根」

「……っ!?ま、まさか、その様な事が」

イレーナの呟きを聞いたエメラーダはある考えに思い至り驚愕の声をあげ、アイリーンはゆっくりと頷いた後に厳かな口調で口を開いた。

「エメラーダ様、俄には信じ難い話ではありますがエメラーダ様が思い至りました通りですわ、あの御方は魔王、魔王アイリス様、私達を庇護して下さっている御方ですわ」

「……魔王、アイリス、魔王がアイリーン様や皆様を庇護して下さったと言うのですか?」

アイリーンの言葉を聞き戸惑いながら呟くエメラーダ、その視線の先では大鎌を手にしたアイリスが使役獣の猛攻を受けて混乱の極みにある陣営を不敵な笑みと共に見据えていた。

「……フフフ、今の所攻撃は順調みたいね」

アイリスが満足気に呟いていると珊瑚龍が咆哮と共に無数の火弾を周囲に撒き散らし、アイリスは爆煙に覆われた陣営を凄惨さいじょうの笑みで見渡しながら言葉を続けた。

「……ますます上出来ね、でも、まだまだ夜はこれからよ、お楽しみもこれからよ、もっともっと凄惨すてき惨劇パーティー続けましょう」

アイリスは魔王に相応しい凄惨ごくじょうの笑みと共に宣い、その言葉に呼応する様に使役獣達は高らかな咆哮を轟かせながら混乱の極みにある陣営を更に蹂躙し始めた。



第一から第三までの各機動打撃群によって行われた襲撃、一連の襲撃によって陣営再建部隊は大きく動揺し、その動揺を衝いて遂に魔王アイリス率いる機動打撃群が攻撃を開始した。

アイリスと双角龍は地下より出現した硫黄龍の一撃により生じた混乱に乗じて易々と陣営上空に侵入を果たすと虜囚となった女エルフ達と狐人族の女達が収監された牢屋付近に強襲降下を敢行し、虜囚となっていた彼女達と合流する事に成功した……


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