表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/161

蹂躙・ヴァイスブルクの悪夢編・粉砕

ブックマークが240を超え、ユニークアクセスも26000を突破しました。今後も本作を宜しくお願いします。

陣営再建部隊西外哨陣地周辺・第三機動打撃群


アイリスにより発せられた攻撃開始命令は陣営再建部隊を攻撃する為に西外哨陣地周辺に展開する第三機動打撃群にも届き、第三機動打撃群を指揮するミランダはそれに返信した後に木々の合間から攻撃目標である西外哨陣地を見据えた。

西外哨陣地は視界を確保する為に伐採された木々によって構築された木の柵と簡易的な作りの兵舎に中弩砲が添えつけられた簡易式の弩砲台数ヵ所によって構成されており、それを確認したミランダは懐から狂機獣とラビットドラゴンが収納されたカプセルを取り出しながら傍らに控えるハンナ達に声をかけた。

「これより攻撃を開始する。先ずアンデッド部隊が攻撃を開始し、連中がその迎撃に忙殺された頃合いを見計らってアイリス様から頂いた使役獣を投入して我々と装甲火蜥蜴隊とグロスポイズンサーペント隊が攻撃魔法と火球と毒液で支援射撃を実施する。敵の増援部隊と敗走した敵部隊には浸透展開したブラッディマンティス隊と魔狼隊が対応する」

ミランダの攻撃計画を聞いたハンナ達は緊張と高揚が入り雑じった表情で頷き、それを確認したミランダは小さく頷いた後に右手を軽く掲げ、西外哨陣地を見据えながらゆっくりと右手を降り降ろした。


西外哨陣地


再建中の陣営を護る為に設置された四ヶ所の外哨陣地の内の1つ西外哨陣地、この地にはロジナ侯国軍の軽装歩兵1個中隊に支援部隊として軽騎兵、魔導兵、弩砲兵各1個小隊が配属された約400名からなる部隊が展開しており、木柵の内側では不寝番の当番の軽装歩兵小隊の軽装歩兵達が眠気と戦いながら暗い木々の合間と向き合っていた。

「……ったく、魔龍だか何だか知らねえがとんだ貧乏クジだぜ、本隊には女エルフや狐人族の女どもが来たって噂なのによ」

「……全くだぜ、本隊の連中がいい目にあってるってえのに俺等は辛気臭い森と睨めっこ、割に合わねえよな」

暗い木々と相対しながらぼやき合う軽装歩兵達、弛緩気味の彼等の耳が微かな音を捉えた。


カランッ……コロンッ……


「……おい、聞いたよなっ」

「……あ、ああ」

何かが軋み合う物悲しい響きの音、それを聞いた軽装歩兵達が顔を強張らせながら言葉を交わす間にもその音は大きさを増して行き、軽装歩兵達が息を飲んで暗い木々の合間を見詰めているとそこからロジナ侯国軍の軍装を纏ったスケルトンが次々に姿を現した。

出現したスケルトンの集団は骨と骨が擦れ合う物悲しい音を響かせながら外哨陣地に向けて前進を開始し、それを目にした軽装歩兵は青ざめた顔で警報を発した。

「て、敵襲!敵襲!!敵襲!!!」

「敵襲!敵襲!!スケルトンの大群が来襲!!!」

軽装歩兵達は声を限りに警報を告げ、それを聞いた不寝番の魔導士が慌てて照明用の光弾を発射して前進するスケルトンの集団を浮かび上がらせていると寝惚け眼の兵士達が装具を手に兵舎の外に飛び出してきた。

飛び出して来た兵士達は血相を変えて出て来た将校達の怒声に追い立てられる様に各々の兵種に応じた配置につき、その間にも木々の合間からは吐き出される様にスケルトンが出現し続けていた。

「魔導兵並びに弩砲兵隊は準備出来次第速やかに攻撃を開始せよっ!!」

押っ取り刀で本部に駆け付けた中隊長は焦燥の眼差しを接近するスケルトンの集団に向けながら迎撃を命令し、それを受けて配置についた10名程の魔導士と陣地に配置されている4門の中弩砲の内射撃態勢が完了した2門が迎撃を開始した。

発射された火球と石弾は接近するスケルトンの集団の先頭付近に着弾した10体前後のスケルトンを吹き飛ばし、それを確認した中隊長は身を乗り出しながら更にがなりたてる。

「よしっ!その調子だ、攻撃を続けろっ!アンデッドごとき吹き飛ばしてしまえっ!!」

中隊長の命令を受けて再び火球と石弾が発射され、少し遅れて配置についた魔導兵小隊主力と射撃態勢を完了した残る2門の中弩砲も攻撃を開始した。

発射された火球と石弾は接近するスケルトンの集団に降り注いでスケルトンを吹き飛ばして行き、最右翼で配置についた軽装歩兵小隊の小隊長は焦眉を緩めながら呟きをもらした。

「どうやら何とかなりそうだな、幾ら数が多いと言っても所詮はアンデッドだな」

小隊長がそう呟いていると視界の端で強烈な閃光が瞬き、小隊長が慌ててそちらの方に視線を向けると血塗れの満月の下に2体の大型モンスターが佇んでいた。

血塗れの月光の下咆哮を轟かせる白い体毛に覆われた巨体に頭頂部の耳の様な器官が印象的な2足歩行型のドラゴンの様な大型モンスター、ラビットドラゴンと滑らかな光沢を放つ巨大な箱形の巨体とその巨体に比してアンバランスに感じる細身の一対の脚部、そして左右で大きさが大きく異なる腕部が特徴的な機械の大型モンスター、狂機獣、2体の大型モンスターは血塗れの満月の下で異彩を放ち、その姿を目にした小隊長が驚愕に目を剥いている中攻撃を開始した。

ラビットドラゴンが口から巨大な火球を放つと同時に狂機獣の頭頂部からも白い光線が発射され、放たれた火球と光線は展開している軽装歩兵小隊の只中に着弾して炸裂した。

着弾と同時に発生した爆発に巻き込まれた10名近い軽装歩兵達が吹き飛ばされたり薙ぎ倒すされたりしてしまい、その光景を目にした小隊長が絶句していると更にラビットドラゴンと狂機獣の周囲の木々の合間から多数の火球が放たれる。

放たれた多数の火球は展開する小隊の周囲で次々に炸裂し、絶句していた小隊長は漸く我に帰ると焦燥の面持ちで口を開こうとしたがその寸前にラビットドラゴンが放った火球が付近に直撃して小隊長と周囲にいた軽装歩兵達を薙ぎ倒してしまった。

生き残りの軽装歩兵達が指揮官を喪い動揺していると下生えを踏み潰しながら10体を超える装甲火蜥蜴が出現して火球を発射し、それらが炸裂する事によって軽装歩兵達の混乱が更に増大してしまう。

激しい攻撃によって右翼が崩壊しかけているのに気付いた中隊長は慌てて予備の小隊を投入して混乱の収束をはかりつつ魔導兵小隊と弩砲兵小隊に迎撃を命じ、魔導士達の半数と中弩砲2門がラビットドラゴンと狂機獣に向けて反撃を開始した。

発射された火球と石弾は先頭に立った狂機獣を捉えて炸裂したが狂機獣は全く応えた様子を見せずに光線を発射して混乱する軽装歩兵達を吹き飛ばし、ラビットドラゴンも巨体に似合わぬ俊敏な動作で跳躍しながら火球を立て続けに放って攻撃を続けた。

狂機獣とラビットドラゴンの更なる攻撃によって混乱の収拾を図る予備の軽装歩兵小隊にも被害が続出し、事態に慌てた中隊長は魔導兵小隊と弩砲兵小隊の全力を持って暴れ回る2体の大型モンスターを迎撃する様命じた。

命令を受けた魔導兵小隊と弩砲兵小隊は全力で狂機獣とラビットドラゴンの迎撃を開始し、火力支援を喪った軽装歩兵小隊は各小隊に2門づつ配備されている軽弩砲で接近するスケルトンの集団への迎撃を開始したがその威力と効果は先程まで行われていた火力支援と比較すると明らかに低下しており、スケルトンの集団は弱体化した迎撃を浴びながら漣が寄せる様に粛々と外哨陣地へ向けて前進を続けた。

「……こ、こんな事が、な、何故こんな事が起こるのだ」

混乱し崩壊しつつある自軍の状況を目の当たりにした中隊長が唖然とした表情で呟いていると損害が続出している右翼方面に多数のグロスポイズンサーペントが出現して毒液による攻撃を始め、更に明らかに高位の魔力保持者が行ったとおぼしき炎や氷の槍が降り注ぎ、外哨陣地の混乱は更に増大した。

「……攻撃は順調に進捗しているわね」

「……そうですね、それにしてもアイリス様の使役獣は凄まじいですね」

木々の合間から攻撃の進捗状況と混乱する外哨陣地を確認していたミランダは順調な進捗状況に統制された昂りを感じながら呟き、傍らのハンナが相槌を打った後に猛威を振るう狂機獣とラビットドラゴンを若干引き気味の表情で見ながら感想をもらしているとアイリスからの通信がもたらされた。

「……順調みたいね、作戦機動群も行動を開始したわ、第三機動打撃群は敵の陣地を徹底的に叩きその後に陣営に向けて前進を開始しなさい、増援が出そうだから注意しなさい」

「……了解しました。御武運を」

アイリスの通信に返信したミランダとそのやり取りを聞いたハンナが上空を見渡すと再建中の陣営へ向けて驀進する双角龍とアイリスの姿が視界に入り、ミランダとハンナは敬礼して遠ざかるアイリスと双角龍を見送った。

「……よしっ総員総攻撃開始だっ!!ロジナの屑どもを徹底的に叩きのめせっ!!」

「「ハイッ!!」」

アイリスと双角龍を見送ったミランダは猛攻を浴びる外哨陣地を見据えながら総攻撃を命じ、ハンナ達は即座に応じながら外哨陣地に向けて矢継ぎ早に攻撃魔法を放った。

放たれた攻撃魔法が陣地の其処彼処で炸裂するのとほぼ同時に狂機獣が巨大な腕を振り立てて光線を立て続けに発射しながら驀進し始め、ラビットドラゴンも弾む様に跳躍して前進しながら火球を発射した。

猛攻を浴びた外哨陣地右翼では混乱の収拾に努めていた予備の軽装歩兵小隊長までもが爆発に巻き込まれて戦死してしまい、相次ぐ指揮官の戦死によって戦意を喪失した軽装歩兵達は浮き足立って持ち場から逃走する者が続出した。

右翼が崩壊するのとほぼ同時に中央及び左翼にスケルトンの集団が到達して軽装歩兵達に襲いかかり、浮き足立った軽装歩兵達はその圧力に耐え兼ねて柵の一角が突破されて陣地内にスケルトンの侵入を許してしまう。

「……こ、こんな馬鹿な、こ、こんな事あるわけが」

「……中隊長、こ、これ以上抗しきれませんっ!!撤退をっ!!」

窮状を目の当たりにした中隊長が唖然として呟いていると最後の予備小隊長が血相を変えて進言し、それを受けた中隊長は反射的に頷くと陣営に陣地の放棄と転進を報告した後に最後の予備の軽装歩兵小隊と軽騎兵小隊に魔導兵小隊と弩砲兵小隊(共に人員は約半数で弩砲兵小隊は全ての中弩砲を喪失)を加えた約100名程度の兵力を纏めると浮き足立ち猛攻に晒される軽装歩兵達を見捨てて陣地に向けて退却を開始した。

退却を開始した中隊長の下に生き残りの魔導士の中で唯一魔力通信が可能な魔導士から陣営から放棄の許可及び救援の為進発した部隊との合流の指示が出た事が告げられ、それを受けた中隊長が安堵の溜め息をもらしていると撤退する部隊の脇の木々の合間からジンベルヴォルフと魔狼の集団が飛び出して襲いかかって来た。

後方で連続する爆発音に急き立てられる様に退却していた撤退部隊は完全に虚をつかれてしまい、多くの将兵がジンベルヴォルフや魔狼の牙や爪に切り裂かれて絶叫と血飛沫を周囲に撒き散らし、その混乱は狼狽える軽騎兵小隊に向けてジンベルヴォルフと魔狼が咆哮した事によって決定的に悪化してしまう。

突然の襲撃に脅えていた軽騎兵小隊の乗馬達はジンベルヴォルフと魔狼の咆哮によって完全に狂乱状態に陥って軽騎兵達を振り落として暴れ始め、宥め様とした軽騎兵を振り落とした一部の馬が混乱する将兵の只中に突っ込んで暴れ狂っていると木々の合間からブラッディマンティスまでもが出現して混乱する将兵を次々に切り裂き始めた。

撤退していた残存部隊はこれによって完全に統制を喪ってしまい、あまりの惨劇に呆然自失の状態に陥ってしまった中隊長は中隊本部を襲撃したブラッディマンティスによって骸へと変えられてしまった。

撤退を図った残存部隊が潰滅したのとほぼ同時に放棄された外哨陣地がスケルトンの集団に呑み込まれ、士気を喪失した軽装歩兵達は我先に逃走を図ったがその多くはジンベルヴォルフや魔狼、ブラッディマンティスの襲撃を受けて骸となって横たわる事となった。

一連の状況を確認したミランダは残敵掃討をスケルトン部隊の一部とジンベルヴォルフと魔狼に任せて残りの部隊には陣営に向けて前進を命じ、第三機動打撃群は狂機獣とラビットドラゴンを先頭に陣営に向けて前進を開始した。

ミランダ達が前進を開始して暫くすると散開しているアイリスの使い魔達が発見した増強された2個中隊相当の兵力からなる増援部隊の進路が記された地図の魔画像が表示され、それを確認したミランダは狂機獣とラビットドラゴン、スケルトン部隊、装甲火蜥蜴隊に現在地で迎撃態勢を取らせつつ、グロスポイズンサーペント隊とブラッディマンティス隊を左右の森に展開させて接近してくる増援部隊を三方から迎撃する態勢を整えた。

第三機動打撃群が展開を終了して暫くすると軽騎兵を先頭にした増援部隊が姿を現し、それに対して狂機獣とラビットドラゴンが狼狽える軽騎兵隊に対して前進しながら攻撃を開始した。

狂機獣とラビットドラゴンが浴びせた光線と火球によって軽騎兵隊は瞬く間に蹴散らされてしまい、狂機獣とラビットドラゴンは混乱した増援部隊の迎撃を歯牙にもかけずに前進と攻撃を続けた。

狂機獣とラビットドラゴンの猛攻によって増援部隊は大混乱に陥り、ミランダは冷静に状況を確認しながら第三機動打撃群に総攻撃を命じた。

ミランダの命令と共に第三機動打撃群は一斉に混乱する増援部隊に襲いかかり、増援部隊は碌な抵抗も出来ずに粉砕されて多数の骸を遺棄して陣営へと退却していった。

その戦闘の最中にアイリス率いる作戦機動群が陣営を強襲した事が報され、それを確認したミランダは敗走する増援部隊を追って第三機動打撃群を陣営に向けて前進させた。



再建中の陣営の外郭陣地の一角である西外哨陣地、ミランダ率いる第三機動打撃群はその地を攻撃した。

新たな使役獣の猛威により西外哨陣地は粉砕され、ミランダは勝勢に乗り第三機動打撃群に前進を命じた。

前進を開始した第三機動打撃群は陣営より派遣されて来た増援部隊までも粉砕し、第三機動打撃群は勝勢に乗じてアイリス率いる作戦機動群が強襲している陣営に向けて前進を再開した……


ミリアリア「なあ、このラビットドラゴンなんだが」

アイリス「違うわよ、だって月を死の星に変えて月の人々を冥王星に追いやったりしてないもの、でもこの子エピソードの割に知名度イマイチなのよね」

ミリアリア「……いや、それについては黙っといてやれよ……それと、この狂機獣なんだが」

アイリス「それも違うわよ、だって鉄資源が涸渇した星の人達の為に自動車を回収したりしてないし、単なる屑鉄回収ロボットとは思えない強さでセブ○を圧倒していないもの」

ミリアリア「……いや、まあ、確かに屑鉄回収ロボットと言えばそうなんだが、もう少しオブラートに包んでやれよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ