即応待機・作戦機動群
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ダンジョン周辺・作戦機動群
進発する第三機動打撃群と出撃した硫黄龍を見送ったアイリスとミリアリアとカッツバッハが作戦機動群の待機場所に到着するとそこには作戦機動群所属の面々が同盟者の魔龍と共に待機しており、アイリスは敬礼しようとする面々を制した後にミリアリアに魔龍の傍らにいたマリーカとアナスタシアとアイリーンの所へと運んで貰った。
「「お疲れ様ですアイリス様」」
アイリスが到着するとマリーカとアイリーンは頬を仄かに赤らめさせながらアイリスに労いの言葉をかけ、アイリスはニコニコしながら頷いた後にミリアリアに地面に降ろして貰った。
「各機動打撃群は無事に進発したわ、現在所定の部署に向けて前進中よ」
地面に降りたアイリスはそう言いながら彼我の状況が記された地図の魔画像を具現化させ、真剣な眼差しでそれを見詰めるマリーカ達に向けて言葉を続けた。
「今の所ロジナや同盟国の連中は此方の行動に気付いた様子は無いわ、あたし達の出撃は各機動打撃群が所定の部署に展開した後だからまだ少し時間があるけど今の内に作戦の最終確認をしておきましょう、皆を集合させて頂戴」
「承知しました、アナ皆を呼んで頂戴」
「承知しました」
アイリスの言葉を受けたマリーカは頷いた後にアナスタシアに声をかけ、アナスタシアは即答した後に少し離れた所で待機していたライナ達を呼び寄せた。
集合した作戦機動群の面々は具現化された地図の魔画像を真剣な表情で見詰め、それを確認したアイリスは不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。
「現在の所作戦は順調に進んでいるわ、あたし達が出撃するまで時間があるから作戦機動群の行動について再確認しておきましょう」
アイリスがそう言うと再建中の陣営の様子が描かれた図形の魔画像が具現化され、皆の視線がそれに集中する中アイリスは言葉を続けた。
「あたし達作戦機動群は第三機動打撃群が陣営の西外哨拠点を襲撃した後、敵が増援部隊を出撃させた後に襲撃するわ、先ず既に出撃して地下を進撃中の硫黄龍が地下から敵司令部を強襲、それによって生じた混乱に乗じてあたしとミリアに他の皆を乗せた双角龍が牢屋を襲撃してそこに収監されている貴女達のお仲間さん達を救出するわ、救出に成功したらこの子、光壁龍の出番になるわ」
アイリスはそう言いながら光壁龍のカプセルを皆に示し、その後に傍らの空地に向けてそれを投じつつ口を開いた。
「さあ、出てきなさい、御披露目の時間よ」
アイリスがそう言いながらカプセルを投じると投じられたカプセルは眩い光と共に爆ぜ、その光が治まると空地に1体の大型モンスターが存在していた。
どっしりとした四肢によって支えられる巨体とそこから伸びる長大な尾と首、そしてその首の先に存在する頭頂部から伸びる長く鋭い2本の角と鼻先に存在する2本の短い角が印象的な猛々しい形相の頭部が印象的な巨大モンスター、光壁龍は夜空に咆哮を迸らせミリアリアはこれまで見てきた使役獣の中では比較的オーソドックスなその外見を見ながらアイリスに話しかけた。
「この使役獣が大きな役割を持っているのか?確かに頼もしそうな風貌だが、その、なんと言うか今まで見てきた使役獣の中では割と大人しめの外見の様に感じるのだが?」
「フフフ、安心してミリア、確かにこの子の外見は結構正統的だけど能力は十分強力よ、見て頂戴」
「……っな、これはっ!?」
アイリスがそう言いながら光壁龍に視線を向けると光壁龍の周囲が眩く輝く半透明の光の壁によって覆われ、それを目にしたミリアリアがあげた驚愕の声に対してアイリスが満足げに笑いながら言葉を続けた。
「この子の能力は光壁龍の名前が示す通りで自分の周囲に強固な光の壁を展開させる事が出来るのよ、この壁は魔法攻撃だけじゃ無く物理攻撃に関しても有効でその強度は生半可な物じゃ無いわ、今回の襲撃では敵の規模が多いから牢屋の周辺にこの子が光の壁を展開させて救出した貴女達のお仲間さん達を保護し、双角龍が護衛をしつつ周囲の敵を攻撃、あたしは珊瑚龍や硫黄龍と一緒に混乱している敵を手当たり次第に攻撃し、粗方叩いた後に双角龍でお仲間さん達と一緒に脱出すると言うのが基本的な流れになるわ、この子のおかげで同士討ちの心配をせず心置き無く攻撃出来るわ」
「……そ、そうか……あ、相変わらず抜け目が無いな」
アイリスから光壁龍の能力とそれを活かした襲撃計画を告げられたミリアリアはその周到さに若干引きかけながら応じ、アイリスは頷いた後に苦笑と共に言葉を続けた。
「……あたしとしてはミリアにも光壁龍の所にいて貰いたいんだけど」
「……すまないなアイリス、私を案じてくれる貴女の気持ちは嬉しい、だが、私とて騎士団長にまでなった身だ、私の助力が必要無いのは百も承知だが、それでもアイリスだけに戦わせる訳にはいかない」
苦笑まじりのアイリスの言葉を受けたミリアリアは自分を案じるアイリスの想いを噛み締めながらもそれに反する形となる返答を告げ、それを受けたアイリスは穏やかに微笑みながら口を開いた。
「……良いわよ、だってそれがミリアだもの、戦っている凛々しいミリアも大好きだから気兼ね無く一緒に戦いましょ、ミリア」
「……ああ、一緒に戦おう、アイリス」
アイリスの言葉を受けたミリアリアは穏やかに微笑みながら返答し、それを受けたアイリスは両手を大きく広げるとニコニコしながら言葉を続けた。
「……じゃあ、一緒に戦う条件でギュッてしてくれるでしょう?」
「……ぐっ!?……わ、分かったそれ位なら容易い事だしな」
アイリスの要望を受けたミリアリアは笹穂耳まで真っ赤になって半ば自棄気味に答えた後にアイリスに近付いて広げられた両手の中に入ってアイリスの身体を抱き締め、アイリスは嬉しそうにニコニコしながら両手をミリアリアの背中に廻して抱き締め返した。
「……フフフ、ミリアがどんどん大胆になってくれて嬉しいわ、初めて逢った時はこんな風に皆の前でギュッとしてくれそうに無かったもの」
「……お、男勝りが高じて騎士団長にまで行き着いてしまった私だが、ぼ、木石では無いぞ、だ、だから皆の前だと……し……て……も?」
アイリスの言葉を受けたミリアリアは真っ赤な顔で返答していたがその最中に現状を思い返して更に顔を真っ赤にしながら周囲を見渡すと真っ赤な顔で明後日の方向を向くライナ達と、頬を赤らめながらもニマニマしながら様子を窺うマリーカとアナスタシアとカッツバッハとアイリーンの姿が目に入り、その光景を目にしたミリアリアがこれ以上無い程に真っ赤な顔で絶句していると、マリーカがニマニマしながら口を開いた。
「……ふーん、あの堅物騎士団長の貴女がこんなにも積極的になっちゃうんだー、良い物見せて貰えたわねえ」
「……まま、マリーカ様、こ、これはその、ち違うんで……い、いや違うと言うのはその違うとは違うんだぞアイリス、と、とにかく何と言いますか、その」
ニマニマしたマリーカに声をかけられたミリアリアは真っ赤な顔でしどろもどろになってしまい、アイリスはそんなミリアリアを愛しげに見詰めながら口を開いた。
「……フフフ、あたふたしてるミリアも可愛いわね、作戦機動群の行動については以上よ、後は各機動打撃群が所定の部署に展開し終えるまで待機よ」
アイリスの言葉を聞いた一同は表情を引き締めながら頷き、それを確認したアイリスは視線をカッツバッハに向けながら言葉を続けた。
「……貴女はどうしたいの?」
「私、ですか?」
アイリスの言葉を受けたカッツバッハは戸惑いの表情を浮かべながら応じ、その様子を見ていたマリーカが微笑と共に口を開いた。
「アイリーン様とあたしの護衛についてはアナとライナ達に実施して貰う予定よ、貴女の行動に関しては貴女自身の判断に任せるわ」
マリーカがそう言うとアイリーン達も大きく頷き、それの様子を目にしたカッツバッハはマリーカ達に向けて深く一礼した後にアイリスに向けて口を開いた。
「アイリス様、私もアイリス様とミリアリア殿と共に戦わせて下さい」
「……分かったわ、あたしとミリアリアで出来る限りサポートしてあげるから思いっきり暴れなさい、ただし、あまり無理しちゃ駄目よ」
カッツバッハの要望を聞いたアイリスは茶目っ気のある笑みと共に快諾した後に皆に解散する様告げ、その後に名残惜しげにミリアリアから離れながらミリアリアに語りかけた。
「……各機動打撃群が展開を完了するまで2、3時間と言った所かしら、それまでちょっとノンビリしましょう?」
「……ああ、そうだな」
アイリスの提案を受けたミリアリアが腕に残るアイリスの柔らかな身体の感触にどきまぎしながら返答すると、アイリスは近くの大木の根元に腰かけた後に嬉しそうにニコニコしながら自分の隣をポンポンと軽く叩き、それを目にしたミリアリアがアイリスのあどけない様子に仄かに頬を赤らめながら応じつつ腰を降ろすとアイリスは夜空を見上げながら呟いた。
「……今日でミリアと逢ってから3週間になるのね」
「……そうか、そう言えばそうだな」
アイリスの呟きを聞いたミリアリアは感慨を覚えながら呟き、アイリスと出逢ってから今に至るまでの事を思い返しながら言葉を続けた。
「……3週間か、色々な事があったな」
「……そうねえ、本当に色んな事があったわねえ、あたしとミリアしかいなかったダンジョンも随分と賑やかで華やかになったわね」
ミリアリアの感慨の言葉を聞いたアイリスは思い思いに出撃の時を待つマリーカ達を見ながら言葉を返し、ミリアリアは頷いた後に少し躊躇いがちに自分の左手をアイリスの右手に添えた。
「……み、ミリア?」
「……し、出撃するまでこうしてて構わないか?」
アイリスがミリアリアの行動に頬を赤らめさせながら戸惑う様に呼びかけるとミリアリアは真っ赤な顔でそう言いながらアイリスの指先に自分の指先を絡めさせ、アイリスはミリアリアと同じくらい真っ赤になりつつも嬉しそうに微笑みながら頷いた後に甘える様にミリアリアにもたれかかりつつ言葉を続けた。
「……じゃあ、こうしてても構わない?」
「……っあ、ああ、え、遠慮するな」
アイリスの言葉を受けたミリアリアはもたれかかってくるアイリスの身体の柔らかさと温もりに心臓が喧しく高鳴るのを感じながらその言葉を受け入れ、それから2人は握り合った手と触れ合った身体から互いの存在と温もりを噛み締め合い始めた。
「……全く、見せつけてくれるわね、大軍相手に襲撃しかようとしてるなんて思えないわね、まあ、だからこそ頼もしいと言えるんだけどね」
「ええ、そうですね」
マリーカとアナスタシアはそんなアイリスとミリアリアの様子を見ながら苦笑と共に言葉を交わし、それが聞こえたアイリーンやライナ達も苦笑と共に頷いてその意見に同意した。
一方その頃進発した各機動打撃群は順調に所定の部署に向けて前進を続けており、標的となったロジナ候国軍と同盟国軍は迫り来る破局に気付かぬまま徒に時を過ごしていた。
数時間後、所定の部署に展開を終えた魔王軍はロジナ候国軍と同盟国軍に向けて攻撃を開始した。
そして後世、この攻撃はこう呼ばれる事となる。
……ヴァイスブルクの悪夢、と……
各機動打撃群の進発を見送ったアイリスは待機している作戦機動群の所へと戻り作戦機動群の取るべき方針を通達し、その後に来るべき攻撃開始の時に備えて部隊を待機させた。
そして、その数時間後、魔王アイリス率いる異形の軍勢がロジナ候国軍と同盟国軍に向けて襲いかかる事となる……
ミリアリア「……なあ、この光壁龍なんだが」
アイリス「違うわよ、だって倒すためにMA○の隊員が○星キックの練習なんてしないもの」
ミリアリア「……いや、まあ、あれは流石にどうかと思うよな、ぶっちゃけ飛べば良かったんじゃ」
アイリス「……角をピンポイントで破壊したかったって事にしときましょ、あたし的には何で三世なのかが密かな疑問だけど」
ミリアリア「それについては私も同じだ」