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三頭会談

100000PVアクセスを突破し、ブックマーク数も200を突破出来ました、今後も本作を宜しくお願い致します。


ダンジョン・マスタールーム


ミリアリア率いる救出隊によって保護されダンジョンに到着したヴァイスブルク伯国最後の拠マリーカ・フォン・ヴァイスブルク、彼女と彼女を護衛していたアナスタシアとカッツバッハは用意されていた簡単な朝食を摂った後に状況説明を受ける為マスタールームを訪れていた。

マリーカ達がマスタールームに入室するとアイリスとミリアリアの他にアイリーン、クラリス、リリアーナのリステバルス皇国関係者(現在のリリアーナはアイリスの眷族なので厳密に言えばリリアーナは魔王側の関係者になる)もマリーカ達を待ち受けており、アイリーンは入室してきたマリーカ達に向けて典雅な動作で一礼した後に口を開いた。

「マリーカ様、御初にお目にかかります、旧リステバルス皇国皇女、アイリーン・ド・リステバルスと申します、生地獄をさ迷っておりました所をアイリス様とミリアリア様を中心としたヴァイスブルク伯国の皆様によって救って頂きました、御礼を申上げさせて頂きますわ」

「ヴァイスブルク伯爵家当主マリーカ・フォン・ヴァイスブルクです、貴女様が受けたであろう艱難辛苦の数々、想像するだけで痛ましくなります」

アイリーンの言葉を受けたマリーカはアイリーンが受けたであろう屈辱の数々に思わず顔をしかめさせながら言葉を返し、それを受けたアイリーンは静かに微笑みつつ言葉を続けた。

「……もう過ぎた事ですわ、今はこうしてアイリス様のダンジョンでわたくしに従ってくれた皆様と過ごしておりますわ」

アイリーンはそう言いながらミリアリアに目配せを送り、それを確認したミリアリアは小さく頷いた後にマリーカ達にアイリスとの出逢いから現状に至るまでの経緯とダンジョンの説明を説明した。

「……つまり、このとてつもなくエグいダンジョンは貴女を追手から護る為だけに造った物で、貴女に喜んで貰う為だけにあたし達の救出が行われたって訳なの?」

「……えー、まあ、その、し、信じ難い話なのは重々承知しておりますが……その通り、です」

話を聞かされたマリーカは予想の斜め上を行く内容とダンジョンのエグさに顔を引きつらせながらミリアリアに語りかけ、ミリアリアが頬を赤らめさせながらごにょごにょと言葉を返しているとアイリスが笑いながら口を開いた。

「まあ、そう言う訳で貴女達にもこのダンジョンに来て貰ったのよ、このダンジョンは来る者拒まず去る者追わずよ、さっきダンジョンクリエイティブの能力を使って部屋を作っておいたから気兼ね無く過ごして頂戴ね」

アイリスはそう言うと目の前に置かれていたグラスに満たされていた冷たい水で喉を潤し、一方マリーカは威儀を正した後に深々と一礼した後に言葉を続けた。

「……経緯や目的がどうであれあたしだけでなく多くの同輩達や同じ境遇に陥った者達が貴女様の御温情により窮地を脱する事が出来ました。ヴァイスブルク伯爵家当主として貴女様の御尽力と御温情に深く感謝致します」

マリーカが真摯な眼差しでアイリスを見詰めながら告げた後にもう一度アイリスに向けて深々と頭を下げるとアナスタシアとカッツバッハもそれに加わり、それを目にしたアイリスは照れた様に微笑みながらミリアリアに語りかけた。

「……っもう、ホントに狐人族もそうだけど貴女達エルフも本当に義理堅いのね」

「……これが私達の嘘偽り無い反応だ、誰も味方してくれず先が見えずさ迷うしか無かった私達を救ってくれたのはアイリスだけだ、だから皆アイリスに感謝するんだ魔王だとかどうだとかは関係無い、ただ私達を救ってくれた、ただそれだけが重要なんだ」

ミリアリアは真っ直ぐにそして愛しげにアイリスを見詰めながら告げ、その視線と言葉を受けたアイリスが頬を赤らめながら口ごもってしまっているとその手に優しく自分の手を重ねながら言葉を重ねた。

「……そして私もそれは同じだ、感謝しているアイリス、本当に、本当に、感謝している、ありがとうアイリス」

「……最近のミリアはホントに凄い、あたしは魔王の筈なのに押されっ放しでドキドキさせられっ放しよ、でもとっても嬉しい、ありがとうミリア」

アイリスは頬を赤らめさせながらも嬉しそうに言いながらミリアリアの手を握り、ミリアリアは頬を赤らめさせながらその手を握り返したがその時になって漸く今の状況を思い出すと真っ赤になりながらマリーカ達やアイリーン達に視線を向けてしどろもどろに口を開いた。

「……あっいや……こ、これは……その、な、何と言いますか」

「……ふーん、あの堅物なミリアリア第三騎士団長がねえ」

「……中々良い物を見る事が出来ましたねえ」

「……ミリアリア様、とてもお似合いだと思いますよ」

「……最近はこうしてアイリス様をドキマギさせていらっしゃるんですよ」

しどろもどろになっているミリアリアの姿を目にしたマリーカ、カッツバッハ、アナスタシア、アイリーンはニマニマしながら感想を述べ、ミリアリアが真っ赤になって絶句してしまったのを目にしたクラリスとリリアーナが微苦笑を交わし合っていると名残惜しげにミリアリアから手を離したアイリスが皆を見渡しながら口を開いた。

「……さてと、それじゃあ今後の方針を話し合うとしましょう」

「……そ、そうだな、うん、それがいい」

アイリスの言葉を聞いたミリアリアは真っ赤な顔で何度も大きく頷きながら賛意を示し、それを聞いたマリーカ達とアイリーン達が真剣な眼差しで頷くとアイリスはダンジョン周辺の彼我の状況が記された地図の魔画像を具現化させながら言葉を続けた。

「現在ロジナ候国軍は再建中の陣営に約3000から約4000名規模の部隊を展開させているわ、そして貴女達を追撃していたラステンブルク伯国軍の部隊約400名も現在そちらに向かっているわ、他にも約800名程度の部隊が周辺を捜索しながら前進していたけどその部隊についてはヴァイスブルク方面に向けて後退中よ、今のところこのダンジョンに向けて前進してくる敵性部隊の存在は確認されていないわ」

アイリスは魔画像に表示されている敵性部隊の概容を告げて当面ダンジョン周辺が平穏である事を伝え、それを聞いた一同が安堵の念を抱きながら頷いていたのを確認した後にヴァイスブルクへと移動中の部隊を示しつつヴァイスブルク伯国側の関係者に向けて口を開いた。

「ダンジョン周辺の敵性部隊の様子は今説明した通りなんだけどこの部隊の指揮官が結構面白そうなのよね」

アイリスはそう言いながらヴァイスブルクへと移動中の部隊を指揮するリーリャの姿が映し出された魔画像を具現化させ、ミリアリアは暫しその画像を凝視した後に口を開いた。

「彼女はロジナ候国軍第九騎士団団長リーリャ・フォン・ヴェートーヴェンだ、卓越した指揮能力に加えて高潔な騎士として名高く、彼女の指揮する騎士団は統制軍律共に厳正な部隊で捕らわれた戦友に対しても正当な捕虜として処遇してくれていた。敵ではあるがその姿は尊敬せざるを得ない女傑で、共に轡を並べるなら心強いが敵として相対すると厄介な相手だ」

「ふーん、そうなんだ。あの屑なんちゃって滅龍騎士に比べたらかなり強そうな雰囲気だから気になっていたけどやっぱり面倒そうな相手なのね、でも彼女はどうやって戦うの?パッと見武器は持って無さそうなんだけど?」

ミリアリアからリーリャの事を説明されたアイリスは納得した様に呟いた後に一見すると丸腰に見えるリーリャの様子を怪訝そうな面持ちで見ながら問いかけ、その疑問に対してはミリアリアの代わりにマリーカが説明を始めた。

「彼女は騎士団長ではあるけど剣や槍で戦う代わりに後方の従者が持っているハープで戦うのよ、高純度の魔鉱石で作られたハープに己の魔力を加えて奏でる魔力を宿した旋律、魔曲を操り戦う異色の騎士、それが魔曲騎士リーリャ・フォン・ヴェートーヴェンよ、そして副団長のミサ・フォン・シューベルトも魔力を宿したフルート、魔笛によって奏でた魔曲で戦う魔曲騎士、そんな2人が率いる第九騎士団は魔曲騎士団の異名を持っているわ、あたし達エルフ族は音楽を嗜む者が多くてあたしも好んでいたから彼女達の事はそれなりに知っていたわ……まさか戦う事になるとは思わなかったけどね」

マリーカは苦い顔付きリーリャと今この場にはいないミサの事を説明し、アイリスは頷いた後に顔をしかめながらミリアリアに問いかけた。

「魔曲騎士団、か、結構厄介な連中みたいね、他にも厄介な奴っているの?」

「……彼女達が率いる魔曲騎士団も手強い相手だが我々が戦ったロジナ候国軍ヴァイスブルク方面軍の中で最も恐るべき相手は第三近衛騎士団を率いるロジナの戦姫、スティリア・フォン・ロジナだな」

「ロジナの名があるって事はそのスティリアっていうのはロジナのお姫様って事なの?」

アイリスの問いを受けたミリアリアは即座にスティリアの名を告げ、その名を聞いたアイリスが更に問いかけを行うと頷いた後に説明を続ける。

「ああ、彼女はロジナ侯爵家の三女だ、だが第三近衛騎士団団長の地位を得たのは間違いなく彼女自身の実力だ、その証拠に彼女は滅龍騎士、それもアナスタシア殿と同じシルバーナイトの称号も持っている、高い戦闘能力と統率力に高潔な人柄、そしてロジナの姫でありながらロジナの国是を是としていない事から他種族の者達の中には彼女をロジナ候国最後の良心と秘かに呼んでいる者もいる、とは言え彼女は戦場では決して相手に対して手心を加えぬ武人だ、故に今後は間違いなく強敵として相対する事になるだろうな」

「……厄介ね、ホントに厄介だわ」

ミリアリアの説明を聞いたアイリスは顔をしかめさせながらぼやき、その魔王らしからぬぼやきを聞いたマリーカは小さく首を傾げながら口を開く。

「……少し意外な言葉ね、魔王なんだから手強い相手だと聞いたら実力を試してやるとか言いだすんじゃ無いかと思ってたわ」

「……フフフ、あたしは結構変わり者なのよ」

マリーカの言葉を聞いたアイリスは笑いながら応じ、その後にミリアリアを愛しげに見詰めつつ言葉を続けた。

「……あたしがこのダンジョンを造ったのはミリアを追手から護る為、ただそれだけよ、だったら敵はこのダンジョンに喰い尽くされた連中や屑なんちゃって滅龍騎士みたいに簡単に倒せる無能な連中ばかりの方が良いに決まってるわ、強敵なんて倒すのに苦労しなきゃならない上にミリアが傷付いちゃう可能性が高くなっちゃう迷惑極まりない存在よ、ホントは怪我して欲しく無いからミリアには前線に出て欲しく無い位だけど、ミリアはそれを善しとしないし凛々しい騎士のミリアも大好きだから止めていないのよ、だからミリアが傷付く可能性が高くなる強敵との戦いなんてしたくないのよ」

「……あ、アイリス」

アイリスが迷い無く告げた言葉を受けたミリアリアは笹穂耳まで仄かに赤らめさせてしまい、その様子を目にしたマリーカは頬を赤らめながら言葉を続ける。

「……き、聞いてるこっちまで照れてしまう位に真っ直ぐで清々しい感想ね、でも、だからこそ、しっかりと響いてくるわ」

マリーカはそう呟いた後に真摯な眼差しでアイリスを見詰め、アイリスが威儀を正してその視線を受け止めるとマリーカは深々と頭を垂れながら言葉を続けた。

「……魔王アイリス様、貴女様の御温情と御尽力に深く感謝致します、既に名ばかりとなった身ではありますがヴァイスブルク伯爵家当主としてアイリス様の征途みちに御助力させて頂きます」

マリーカが頭を垂れたままそう告げるとアナスタシアとカッツバッハも同じ様に深々と頭を垂れ、アイリスは少し困った様に微笑みながらマリーカ達に頭を上げる様告げた後にミリアリアに語りかけた。

「……ホントに義理堅いのね貴女達エルフも狐人族も」

「当たり前だ、アイリスのおかげでこうして平穏が手に入ったのだからな」

アイリスに声をかけられたミリアリアは即座に返答し、その後に頬を赤らめさせながら言葉を続けた。

「……本当にアイリスのおかげなんだぞ、私が今こうしているのも、多くの戦友達やマリーカ様やアイリーン様がこのダンジョンに在る事が出来ているのも、何度でも言うぞ、本当にありがとうアイリス」

「……み、ミリ……ア」

ミリアリアの真摯な眼差しと言葉を受けたアイリスは頬を赤らめさせて口ごもってしまい、その光景を目にしたマリーカは頬を赤らめさせたままアイリーンに問いかけた。

「……アイリーン様、この2人ってずっとこんな調子なんですか?」

「……ええ、最近はずっとこんな感じですわ」

マリーカの問いかけを受けたアイリーンは穏やかに微笑みながら返答し、マリーカは頷いた後に微苦笑を浮かべて見詰め合うミリアリアとアイリスを見詰めた。



救出され魔王のダンジョンへと招かれたマリーカ達、アイリスは彼女達をダンジョンルームへと招き、アイリーン達を加えた三者会談を実施して現在の状勢を掌握した……


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