惨劇・残党狩部隊編・開幕
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ちなみどうでも良い話になりますがにこの作品の作者脳内BGMはいとうかなこの追想のディスペアだったりします。
マスタールーム
ダンジョンに侵入したロジナ候国軍残党狩部隊の一部は静かに奥へと進んで行き、その様子が映し出された魔水晶を見ていたアイリスは眉を潜めさせながら呟いた。
「それにしても、捕らえたエルフに先頭を進ませて囮にするなんて、随分いい性格してる連中ね」
「……これが連中の基本戦術なんだ、ヴァイスブルク防衛戦の際も連中は使役しているモンスターや亜人の部隊を次から次へと私達の防衛線に突撃させて私達を消耗させ、私達が消耗した所に主力部隊を突入させて来た、私達も予備隊を編成したりして対抗したが戦力を徐々に削ぎ落とされて後退を余儀無くされ、最終的にヴァイスブルク城も陥落させられたんだ」
アイリスの呟きを耳にしたミリアリアは顔をしかめながらロジナ候国軍の特徴を伝え、それを聞いたアイリスは暫く魔水晶に映し出される残党狩部隊を見詰めた後に口を開いた。
「そろそろ、ミミックがいる所につくけど、囮のエルフが開けさせられる可能性が高そうね、ミミックと宝箱は撤収させるわ」
「……私としてはありがたい話だが、連中はこれからも彼女達を先頭に進む筈だ、大丈夫、なのか?」
アイリスの告げた方針を聞いたミリアリアは一瞬安堵したものの直ぐに表情を曇らせながら問いかけ、アイリスは握っているミリアリアの手を軽く握って安心させながら言葉を続けた。
「……心配しないで、あたしは魔王なのよ、連中が先頭を進ませてくれているのは好都合よ、あの2人を助けた後にあいつ等を抹殺するわ」
アイリスは微笑みながら答えるとゆっくりとソファーから立ち上がり、それによって握り合っていた2人がゆっくりと離れた。
ミリアリアは先程まで自分の手を包んでくれていたアイリスの手の感触を思い出す為にアイリスと繋いでいた手を軽く握り、立ち上がったアイリスも同じ様に先程までミリアリアと繋がっていた手を軽く握り締めた後に第1階層の配置を変更する為に両目を軽く閉じて意識を集中させた。
ダンジョン・第1階層・残党狩部隊
ダンジョンに逃げ込んだ高位エルフ(ミリアリア)を捕らえる為に侵入したロジナ候国軍残党狩部隊の将兵24名は虜囚となったリーナとアリーシャを先頭にダンジョンの奥へと進んでいた。
度重なる凌辱によって心身とも消耗しきったリーナとアリーシャは縋り付く様に互いを支え合いながら進んでいたが両足に嵌められた鉄球付きの足枷によってその足取りはは緩慢とならざるを得ず、残党狩部隊の将兵はほぼ剥き出し状態のリーナとアリーシャの背中や臀部を野卑た視線で見ながら奥へと進んでいた。
「おらおら、さっさと歩けよお前ら、こんなペースで進んでたら朝になっちまうぞっ!!」
「歩きながら物欲しげにケツ振りやがって、エルフの騎士や戦士ってやつ等は好き者揃いだな、ええ、おいっ!!」
鉄球を重たげに引き摺りながら歩くリーナとアリーシャの背中に残党狩部隊の将兵から嘲笑混じりの罵声が浴びせかけられ、リーナとアリーシャはその声があがる度に互いを護り合う様に縋り付き合いながら緩慢な足取りを続けた。
「ごめんね、ライナ」
「ごめんなさい、ライナちゃん」
度重なる凌辱に心をへし折られたリーナとアリーシャは度重なる激しい凌辱に汚されながらも自分達の事を気にかけ続け、その結果として未だダンジョンの外で凄惨な凌辱で嬲られ続けている親友のライナへの謝罪を譫言の様に続けながら嘲笑と罵声の中を緩慢に進み続けた。
虜囚のリーナとアリーシャを先頭に緩慢な前進を続ける残党狩部隊だったが、ダンジョンに生息している筈のモンスターは一体もその姿を現さず、部隊を率いる2人の分隊長の内の1人が首を傾げながら口を開いた。
「どう言う事だ、いくら作られて間も無いダンジョンと言ってもここまでモンスターが出てこんとは」
「なに、理由は簡単な事だろう、俺達が追うエルフが御丁寧に倒してくれてるんだよ、消耗した体力や魔力を更に消耗させながらね」
「……なるほど、そう言う訳か、殊勝だな、追いかける我等の為の露払いをしてくれるとは」
分隊長はもう1人の分隊長の言葉に納得すると愉快そうに笑いながら緩慢な足取りで前方を進むリーナとアリーシャのほぼ剥き出しの背中と臀部を舐め廻す様に見ながら言葉を続けた。
「高位エルフと言ったがどの程度の役職だろうなあ、ほとんどの高位エルフは捕らえているのだろう?」
「ああ、大方の高位エルフは捕らえているそうだ、現在捕らえられていない高位エルフはヴァイスブルク伯爵家の三女、マリーカ・フォン・ヴァイスブルクと彼女を護衛しているヴァイスブルク第一騎士団副団長のアナスタシア・フォン・リーゼンダール、それにヴァイスブルク第三騎士団長のミリアリア・フォン・ブラウワルト、第五騎士団長のエリーゼ・カッツバッハ程度の筈だ、何れもエルフ族らしくとびきりの美貌の持ち主ばかりだそうだ」
「ほう、それは楽しみだな」
2人の分隊長が会話を交わしながら野卑た笑みを交わしていると一行は侵入前に行ったスキャングによると存在する筈が無い三叉路に到達し、それん目にした2人の分隊長は訝しい表情を浮かべかけたが、三叉路の中央付近で肩で息をしながら剣を構えているエメラルドグリーンのライトアーマーを纏った女エルフの姿を目にするとその表情が歓喜に輝いた。
剣を構える女エルフは鋭い視線で残党狩部隊を睨み付けていたが肩で息をするその様からは疲労困憊している様子がありありと見て取れ、2人の分隊長は部下達を展開させた後、リーナとアリーシャの所にまで移動すると勝ち誇った様子で剣を構える女エルフを見据え、女エルフは肩で息をしながら口を開いた。
「……くっ、ロジナの屑どもが、私はヴァイスブルク第三騎士団長、ミリアリア・フォン・ブラウワルト、易々と貴様等に屈する気は無い」
肩で息をしながら告げる女エルフ、ミリアリアだったがその身体が戦える様な状態では無いのが一目瞭然であり、その様子を目にした2人の分隊長は嘲笑しながら口を開いた。
「簡単には屈しない、だと、消耗した状態でダンジョンのモンスターと戦い続け、疲労困憊したお前に何が出来ると言うのだっ!!」
「それに、今、貴様の目の前には虜囚となったコイツ等がいるのだぞ、逃亡した貴様の代わりに虜囚となったコイツ等を見捨てるのか?」
2人の分隊長はそう言いながらリーナとアリーシャの艶やかな後ろ髪を鷲掴みにすると俯いていた顔を無理矢理引き上げさせ、ミリアリアは苦渋の表情になりながら言葉を吐き捨てた。
「……くっ、卑怯者」
「ふん、臆病者の負け犬の遠吠え等痒くも無いわ、さあ、どうするのだ、コイツ等我等を切るか」
「部下を見捨てて逃走したあげく、虜囚ごと我等に襲いかかる、浅ましい限りだな」
「……み、ミリアリア様、だ、だめ……こ、コイツ等の言葉なんか聞い…ちゃ…ッアアアっ!!」
「……誰が喋っていいと言った、このすれっからしがっ!!」
2人の分隊長が嘲りの言葉を告げていると、リーナが掠れた声でミリアリアに告げ、分隊長の1人が苛立たしげに告げながら鷲掴みにしてたリーナの髪を引き千切れてしまいそうな程強く引っ張りだまらせているとミリアリアが苦渋の面立ちで吐き捨てた。
「……下衆どもがっ!!」
「……言った筈だ易い挑発など痒くも無いと」
「……そんな事を言うくらいなら、騎士団長としてやるべき事があるのでは無いか?」
「……ど、どう言う事だ」
2人の分隊長はミリアリアの呪詛の言葉を軽く受け流しながら告げ、その言葉を受けたミリアリアが戸惑いの表情を浮かべて応じると野卑た表情でミリアリアの全身を舐め廻す様に見ながら言葉を続けた。
「……貴様に騎士団長としての矜持が僅かばかりでもあるのなら、この2人の代わりに貴様自ら我等に降り虜囚となれ」
「虜囚となった上で今この場にいる我等に全員に甲斐甲斐しく奉仕すればこの2人を解き放ってやってもよいぞ」
「……っな!?」
2人の分隊長から告げられた提案に名を借りた勧告を聞いたミリアリアは思わず絶句してしまい、その様子を目にした2人の分隊長は楽しげに嘲笑いながら言葉を続けた。
「どうした?今の貴様に他の選択肢があると思っているのか?部下を見捨て逃走したあげく我等に捕まりかけている貴様に出来る事などその程度でしか無いだろうが、うん?」
「大人しく我々に降り甲斐甲斐しく奉仕すればこの2人は何とか出来るかも知れんな、もっとも貴様が拒んだ所で捕らえられコイツ等ともども我々の慰み物になるだけだがなっ」
2人の分隊長から告げられた言葉を受けたミリアリアは唇を噛み締めながら口ごもり、
暫しの間を置いた後に手にした剣をダンジョンの床に放り投げながら口を開いた。
「……分かった、私が降り貴様等の慰み物になってやるっ!その代わりこの2人にはこれ以上手を出すなっ!」
剣を捨てながらそう告げたミリアリア、2人の分隊長の内の1人がそれに対して嘲笑を浮かべながら口を開いた。
「そんな態度で俺達の態度が変わると思っているのか?」
「……っぐ!?」
その答えを聞いたミリアリアは思わず言葉に詰まり、その様子を目にしたもう1人の分隊長が野卑た笑みと共に口を開いた。
「言った筈だぞ、貴様の運命等既に決まっているのだど先程の奉仕云々の話はあくまで我々が貴様に示してやった温情の表れに過ぎん、きちんとした態度を示さなければ我々が機嫌を損ねてしまうぞ」
野卑た笑みと共に告げられた言葉を受けたミリアリアは歯噛みする音が聞こえてしまいそうな程強く唇を噛み締め、暫くした後に言葉を絞り出した。
「……わ、私は……み、皆様に、こ、降伏……致し……ます、せ……精一杯、ご……御奉仕致しますので……ど、どうか……私以外の捕虜に……か、格別のご配慮を、お願いします……そ、その為に……み、皆様に……せ、せ、精一杯……御奉仕……致し……ます」
屈辱と羞恥に震えながら言葉を絞り出したミリアリア、2人の分隊長はその様子を満足気に見詰めながらミリアリアの足元に首輪を放り投げた。
「魔力封じの首輪だ、その首輪を自分で装着しろ」
「消耗しきった貴様にまともな魔力は残っていないだろうが、妙な事を企まれても困るからな」
「……わ、分かりました」
2人の分隊長の言葉を受けたミリアリアは絞り出す様な口調で応じると足元の首輪を手に取り、ぎこちない手付きでそれを自分の首に装着し、2人の分隊長は首輪姿のミリアリアを舐め廻す様な視線で見詰めながら後方の部下に呼び掛けて鉄球付きの足枷をミリアリアと分隊長達の間の中間程の所に置かせ、置いた部下達を下がらせた後に言葉を続けた。
「その足枷を自分の足に装着しろ、その足枷は装着すれば自動的に鍵がかかり、外せ無くなっている」
「足枷が装着し終わったなら待っている我々の所に来て奉仕を始めろ、この阿婆擦れどもは取りあえずここに置いておいてやるからせいぜい傷を舐め合うが良い、この阿婆擦れどもがどうなるかはお前の奉仕にかかっているのを忘れるなよ」
「……分かりました」
2人の分隊長の更なる命令を受けたミリアリアは屈辱に震えながらその命令を受け入れると己の両足に足枷は装着し、それを目にした2人の分隊長は野卑た笑みを浮かべながらリーナとアリーシャを残して部下達の所へと下がり、それを確認したミリアリアはリーナとアリーシャの所に鉄球を引き摺りながら緩慢な足取りで近付いた。
「……ごめんなさい、ミリアリア、様」
「……申し訳ありません、ミリアリア様、私達のせいで」
リーナとアリーシャは泣きながらミリアリアに謝罪し、ミリアリアがそれに対して小さく首を振った瞬間2人の鼓膜が揺さぶられた。
……案ズルナ、戦イヌキシ戦士タチヨ、直ニ我ガ主が御主タチヲ回収シテ下サル、ユックリト身体ト心ヲ、癒スガヨイ……
2人の鼓膜を揺さぶるその声は抑揚が無い低い声で、2人が戸惑いの表情を浮かべるとミリアリアは小さく頷いた後に緩慢な足取りで残党狩部隊の所へと移動した。
「よく来たな、それでは先ずはその鎧を自らの手で外せ」
「その様に立派な物は今の貴様には不相応な代物だからな」
「……分かり、ました」
2人の分隊長が野卑た笑みを浮かべ命じると部下達も野卑た笑みを浮かべ、ミリアリアは絞り出す様に応じた後に屈辱に震えながら自らの手でライトアーマーを外して下着だけの姿を残党狩部隊の前に晒した。
滑らかな白磁のごとき肌の肢体に下着だけを纏う、誇り高きエルフの騎士団長の余りに扇情的な姿に皆が野卑た歓声をあげた刹那ミリアリアの後方にいたリーナとアリーシャの姿が唐突に消えた。
「「……なっ!?」」
「私の御奉仕、大層好評の様だな、約束通り、あの2人を返して貰ったぞ」
2人の分隊長が突然の事態に驚愕の声をあげていると下着姿のミリアリアが微笑みながら声をあげ、残党狩部隊の将兵が思わずミリアリアに視線を向けるとミリアリアは今の状況では場違い過ぎて逆に不気味にすら感じられる微笑みと共に言葉を続けた。
「……心配するな、約束したのだからキチンと御奉仕をしてやるぞ、だから安心して御奉仕を受けるがいい、私達のな」
ミリアリアは微笑みながらそう告げながら周囲を見回し、その様子を目にした残党狩部隊の将兵達は戸惑いながら周囲に視線を向け、自分達を取り囲む様に立っている幾人ものライトアーマー姿のミリアリアの姿を目にして凍りついた様に固まってしまった。
「……ど、どう言う事だ、これ……は」
「言っただろう御奉仕だと私1人の御奉仕だと時間がかかってしまうからこうして皆で御奉仕するんだよ」
2人の分隊長の内1人が掠れ気味に声をあげると下着姿のミリアリアが微笑みながら答え、それを聞いた2人の分隊長は背筋に悪寒の様な物が走るのを感じ、それに突き動かされる様に剣を抜くと下着姿のミリアリアに剣を突き刺した。
2人の分隊長の繰り出した剣は狙い違わずミリアリアの身体を突き刺し、ミリアリアはそれに対して微笑みながら両手で2人の分隊長の剣を持つ手首をガッシリと掴んだ。
「……っな!?き、貴様」
「……は、離せっ!!離さんかっ!!」
「私の御奉仕が待ちきれないのか?嬉しい話だかせっかちはいかんな」
ミリアリアの異常な行動に背筋に走る悪寒が更に増大した2人の分隊長は狼狽えながらもがいたがミリアリアは不気味な程明るく微笑みながら告げ、その後に剣を突き刺された状態のまま2人の分隊長に向けて歩き始めた。
身体に突き刺さる剣の柄に向けて移動する、通常では有り得ないミリアリアの行動によってミリアリアの身体に突き刺さる剣は更に深くその身体を抉り、やがて2本の剣の切っ先がミリアリアの背中の皮膚を突き抜けて姿を現したがミリアリアはそんな事を気にする様子も無く歩き続け、2本の剣の鐔が引き締まった腹部に到達した所で漸くその足が止まった。
「せっかちなお前達には最初に御奉仕しなければならないな」
「……き、貴様、い、一体な……ガアァァァッ!!!」
「……く、クソッ、は、離せっ!!離せっ!!このバ……ギャアァァァァッ!!」
漸く足を止めたミリアリアはそう言うと掴んでいた2人の分隊長の手首を捩り始め、その外見からは想像もつかない凄まじい力に2人の分隊長は剣から手を離して苦痛に悶えたがミリアリアはそれに頓着せず捩りあげた2人の分隊長の手首を強引に押し下げた。
「「ッギャアァァァッ!!!」」
ミリアリアの行動によって2人の分隊長の手首が本来なら曲がってはならない方向に曲げられてしまった所でミリアリアは漸く手を離し、2人の分隊長が有り得ない角度に曲がってしまった手首を押さえて悲鳴をあげる中、凍りついた様な表情を浮かべている部下達に向けて微笑みながら口を開いた。
「待たせてしまって悪かったな、お前達へも御奉仕させて貰うぞ」
ミリアリアがそう言うと残党狩部隊を取り囲む様に立っているライトアーマー姿のミリアリア達がゆっくりとライトアーマーを脱ぎ始め、彼等は金縛りにあった様に足を竦ませたままその光景を見詰めていたがミリアリア達が脱いだライトアーマーが地面に落ちると同時にその口から声にならない悲鳴があがった。
誇らしげに隆起した双丘の膨らみに引き締まった腹部と腰に果実の様に滑らかな曲線の臀部にその身体を彩る下着、ミリアリア達のライトアーマーの下に本来存在している筈の引き締まると同時に扇情的でもある魅力的な肢体は欠片も存在せず、その変わりに存在していたくすんだ色合いの肋骨や背骨等を目撃させられてしまった残党狩部隊の将兵達が戦く中、胴体が骸骨のミリアリア達がゆっくりと残党狩部隊の方に向けて近付き始めた。
残党狩部隊の将兵達は近付いてくる胴体だけが骸骨のミリアリア達の姿に戦きながら武器を構えたが、余りに異常な情景を目にしている事による動揺と恐怖により、その切っ先はカタカタと震え続けており、その様子を目にした下着姿のミリアリアは自分の身体に突き刺さる2本の剣の柄を握りながら彼等に声をかけた。
「震える程私達の御奉仕が楽しみなのか、だったら私も張り切って御奉仕せねばいかんな」
ミリアリアはそう言いながら自分の身体に突き刺さる剣を引き抜き、2人の分隊長は激痛と恐怖に戦きながら2本の剣を手にしたミリアリアを見詰めた。
「……き、貴様は一体」
「……な、何者だ」
2人の分隊長が冷や汗と脂汗と共に発したといかけ、それを受けたミリアリアが首を傾げると同時に肌にまとわりつく様に重く生暖かい風が残党狩部隊の将兵を包んだ。
「……先程、名前を告げなかったのか、私の名はミリアリア・ヴラウワルト、ヴァイスブルク第三騎士団長だ、今の所はな……」
ミリアリアが微笑みながらそう告げると生暖かい風にほのかな腐臭が混じり始め、残党狩部隊の将兵が戦きと共に顔をしかめる中、胴体だけが骸骨のミリアリア達と2本の剣を手にしたミリアリアが更に近付いた。
「……死ぬ時は美しきこの御方の姿に殺された方が幸せだろうと思ったが、どうやらお気に召さなかった様だな、考えてみれば貴様等の様な下衆どもにこの御方の姿など高尚過ぎたな」
2本の剣を手にしたミリアリアは微笑みを治めると養豚所の豚を見るような目で残党狩部隊を見据えながら呟き、その言葉を合図にした様に下着姿のミリアリアの姿が禍々しい空気を放つ黒の鎧を纏い、腐敗した顔面の一部と片目が消失した為に頭蓋骨の一部と落ち窪んだ眼窩が露となった土気色の顔をした異形の騎士、死霊騎士へと変化した。
「……し、死霊騎士?……ば、馬鹿な死霊騎士がほ、他の種族にに化けられる等聞いた事が無い」
「そ、それにもし化けられていたとしても、ま、魔力封じの首輪です、直ぐに正体が露見する筈だ」
死霊騎士の姿を目にした2人の分隊長が戦きながら呟いている死霊騎士の首に嵌められ魔力封じの首輪が黒い焔に包まれて消え去り、その様子を目の当たりにした2人の分隊長が愕然した表情を浮かべていると死霊騎士は抑揚の乏しい低い声で2人の分隊長に告げた。
「愚カ者ドモ、コノ様ナ玩具デ、我ガ主ノ御力ヲ、止メラレル筈ガ無カロウガ……貴様ドモニハ、我ガ主ノ寵ヲ受ケシ、アノ御方ノ貴キ御姿ナドヨリモ、我々本来ノ姿ノホウガ、相応シイ様ダナ」
死霊騎士がそう言うと胴体だけが骸骨のミリアリア達が剣や盾、槍を装備したくすんだ色合いの骸骨、ボーンウォーリアーに変化し、それと同時にその後方に粗末な造りの剣や盾を装備した白い骸骨、スケルトンや骨だけの狼、ボーンウルフが現れた。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
姿を現したアンデットのモンスター達は残党狩部隊の将兵達を嘲笑う様に骨を鳴らし、骨がぶつかり合う異様な音がダンジョン内に幾重にも木霊した。
発生したばかりのダンジョンで見るには余りに異様な光景を残党狩部隊の将兵達は金縛りに合った様に呆然と見詰め、死霊騎士はそんな彼等を蔑む様に見詰めながらアンデット達に命を下した。
「行ケ、モノドモ、我等ガ主ト、我等ガ主ノ寵ヲ受ケシアノ御方ニ仇ナス愚カ者ヲ、喰ライ尽クスノダ」
死霊騎士はそう命令を下すと2本の剣を手に残党狩部隊に突入し、ボーンウォーリアー、スケルトン、ボーンウルフもけたたましく骨を鳴らせながら残党狩部隊に襲いかかった。
あまりに異様で突発的な事態に呆然としていた残党狩部隊の将兵は慌てて迎え撃とうとしたが、死霊騎士の率いるアンデット部隊は態勢が整う前にその隊列に雪崩れ込み、残党狩部隊の将兵達の断末魔の悲鳴とアンデット達がけたたましく鳴らす骨の音が身の毛もよだつ様な狂想曲となってダンジョンに木霊した。
マスタールーム
死霊騎士率いるアンデット部隊に飲み込まれ阿鼻叫喚の状態に陥っているは残党狩部隊の様子は魔水晶にはっきりと映しだされ、アイリスは冷たい眼差しでそれを見詰めていた。
「……愚かな連中ね、勝利と享楽に現を抜かし、目の前に迫った危機にすらまともに対処できない」
アイリスは冷たい口調で呟き、その後に視線を後方に向けた。
アイリスが視線を向けた先にはアイリスの転位魔法によって第1階層からマスタールームに転位させられたリーナとアリーシャがミリアリアによって介抱されており、ミリアリアの簡単な説明によって助かった事を理解した2人は安堵感から大粒の涙を溢しながら泣きじゃくっていた。
ミリアリアは泣きじゃくるリーナとアリーシャの肩を優しく抱き締めるとブルーサファイヤの瞳に涙を滲ませながら、リーナとアリーシャに労いの言葉をかけており、その姿を目にしたアイリスは頬を僅かに緩ませた後に再び表情を引き締めながら魔水晶に視線を戻した。
アイリスが魔水晶に視線を向けるとアンデット部隊が意図的に開けたスペースから残党狩部隊の兵士が一人脱出し、脱出した兵士は半狂乱になり転がる様にしてダンジョンの入口へと逃げ去って行った。
兵士が逃げ去ると同時に開かれていたスペースは閉ざされてしまい、アイリスは冷たい視線で逃げ去る兵士の背中を見ながら呟いた。
「……呼んで来なさい、仲間達を、そして来なさい残っているダークエルフと共に、ダークエルフ以外喰らい尽くしてやるわ」
アイリスは冷気の籠った声で呟き、その後にアンデット部隊に殺戮される残党狩部隊の断末魔の姿を冷たい瞳で見詰めた。
魔王アイリスが築いたダンジョンに侵入した残党狩部隊、勝利に傲り、享楽に現を抜かした驕慢なる彼等に魔王のダンジョンが牙を剥いた。断末魔と阿鼻叫喚に飲み込まれる残党狩部隊、惨劇の幕は開幕したばかり……