蹂躙・魔龍討伐隊編・再会
久々の更新となり申し訳ありません、この様な状況にも関わらず86000PVアクセス及び18000ユニークアクセスを突破する事が出来、ブックマークも170件を超える事が出来ました、読者の皆様に厚く御礼申し上げます、今回も新たな使役獣が登場致します。
ダンジョン周辺空域・救出隊
完勝に終わった南方機動集団による補給部隊襲撃の模様は使い魔達によってダンジョン周辺空域で待機中の救出隊にもたらされ、それを注視していたアイリスは放棄された馬車が運ばれ始めたのを確認した後に凄味のある笑みと共に口を開いた。
「……補給部隊への襲撃は大成功ね、宿営地の連中も相当慌てふためいてるわ」
アイリスはそう言うと遠雷の様に聞こえてきた戦闘の音と潰滅寸前の補給部隊から送られた悲鳴の様な援軍要請を受けて慌ただしく出撃態勢を整える留守部隊の様子が映し出されている宿営地の映像を見据え、アイリスの腕の中にいるミリアリアは頷いた後に表情を引き締めながら口を開いた。
「……ならば、次は我々の番だな」
「……ええ、行きましょう」
ミリアリアの言葉を聞いたアイリスはそう言うとアイリーン達を背中に乗せた双角龍と共に宿営地に向けて前進を開始し、風を切り裂いて飛行しながら各機動集団に向けて指示を送った。
「北方、東方、西方の各機動集団に告げる、救出隊は前進を開始した、各機動集団は攻撃態勢を整えて待機し命令に備えなさい」
「北方機動集団、了解です」
「東方機動集団、了解しました」
「西方機動集団、了解、命令を待ちます」
アイリスが指示を送ると各機動集団から了解の応答があり、それを聞いたアイリスは使い魔達から送られてくる宿営地の映像へと視線を向けた。
宿営地・牢小屋
遠雷の様に聞こえてきた戦闘の音とそれに続いて補給部隊より送られて来た悲鳴の様な救援要請、相次ぐ突発事態に対して宿営地内は慌ただしさを増していた。
留守部隊の指揮官は宿営地に残る部隊の約半数にあたる30名の騎士と数名の支援要員のエルフ騎士からなる救援隊の出撃を命じ、安穏としていた宿営地は唐突な事態の勃発に戸惑い混じりの慌ただしさに包まれていた。
戸惑いながら慌ただしさを増していく宿営地の様子は牢小屋からも確認する事ができ、女エルフ達と狐人族の女達は宿営地の様子を眺めながら戸惑いの表情を浮かべていた。
「……随分慌ただしいな」
「……ああ、補給部隊がどうとか言っていたが、先程聞こえてきた音とこの様子から察するに相当の事態が起こった様だな」
ミリーナとサララが戸惑いの表情で留守部隊の様子を見ながら言葉を交わしているとその傍らに1羽のナイチンゲールが降り立ち、それに気付いたサララは苦笑と共にナイチンゲールに向けて語りかけた。
「騒ぎに釣られて出てきたのか?今ここは殺気だっているから危ないぞ、直ぐに逃げた方が良い」
サララがそう告げた刹那、ナイチンゲールが突如として眩い閃光に包まれサララとミリーナが咄嗟に目を閉ざしてその閃光をやり過ごした後に目をあげると地面に淡い輝きを放つ五芒星の魔方陣が描かれていた。
「……何だっ、この魔法陣はっ!?」
「まさか、古代魔法文字!?しかも、かなり高度な術式だっ!?」
サララとミリーナが唐突に現れた魔法陣に戸惑いの声をあげていると魔法陣が一際強く輝き、それが治まると牢小屋が半透明のドーム状の魔力障壁で覆れており、サララとミリーナを含めた一同は予想外の事態の連続に言葉を喪ってしまった。
宿営地周辺空域・救援隊
「各隊に通達、要救護者の周辺に魔力障壁を展開させたわ、同士討ちの心配は無いから遠慮無くぶちかましてやりなさいっ!!」
使い魔が牢小屋の周囲に展開させた魔力障壁を確認したアイリスは宿営地へと突き進みながら北方、東方、西方の各機動集団に対して攻撃を開始する様告げ、その命令から数拍の間を置いた後に前方の木々の合間から爆煙が生じた。
宿営地・留守部隊本部
慌ただしく出撃態勢を整えた補給部隊への救援隊が出撃しようとした瞬間に突如として発生して牢小屋を包み込んだ魔力障壁、唐突な事態に呆気に取られた救援隊と留守部隊の面々が新たな行動を起こす前に災厄の幕が開かれた。
アイリスの攻撃命令を受けた北方、東方、西方の各機動集団の10体の装甲火蜥蜴とメタルゴーレムとトーテムミノタウルスは宿営地に対して火球と光弾と光線を放ち、放たれたそれらは宿営地の其処彼処に着弾して炸裂した。
魔力障壁の発生に気を取られていた留守部隊の騎士とエルフ騎士達はその攻撃に完全に虚をつかれてしまい、特に救援隊の混乱は一際酷く突然生じた無数の爆発に怯え暴れた馬によって地面に叩きつけらる騎士が続出する程であった。
「狼狽えるなっ!!貴様等それでもロジナの騎士かっ!!」
留守部隊の隊長が狼狽えながらも混乱状態に陥っている騎士達に喝を入れていると突然周囲が影に覆われ、隊長が咄嗟に頭上に視線を向けると上空にはこれまで目にした事が無い巨大なモンスター、双角龍と人を抱えた獣人、ミリアリアとアイリスの姿があり、その姿を目にした隊長は戸惑いの声をあげようとしたがそれに先んじて双角龍とアイリスが光線と黒い稲妻を発射し、発射された光線と稲妻は隊長の周囲に着弾して周囲の数人の騎士ごと隊長を吹き飛ばしてしまった。
宿営地上空・救出隊
「……成果は上々みたいね、総員降下するわっ!!」
双角龍と共に留守部隊の隊長を吹き飛ばしたアイリスはその成果を確認した後に救出隊への強襲降下を命じながら混乱状態の宿営地に降り立ってミリアリアに頷きかけ、ミリアリアは少々の名残惜しさを感じながらアイリスの腕から降りていると双角龍が地面に降り立った。
アイリーン達が双角龍の背中から地面に降り立つと双角龍は咆哮を轟かせていながら宿営地に向けて光線を放ち、アイリスはその光景に凄惨な笑みを浮かべながらカプセルを手にした。
「……さあ、惨劇なパーティー、始めましょうっ!!」
アイリスがそう言いながらカプセルを投じるとカプセルは眩い閃光を発し、それが収まると巨大なモンスターが姿を現した。
所々に角の様な突起物が存在する岩の様に強固な外皮の巨体に紅の眼に鋭い歯が並ぶ口と言う猛々しい面立ち、そして手の代わりに長くしなやかな鞭が存在する両前肢と言う異形のモンスター、双鞭龍は咆哮を轟かせながら突破事態の連続に狼狽える騎士達に向け鞭を振り打ち、唸りをあげてしなる鞭をまともに食らった騎士は鎧を砕かれ断末魔の絶叫と共に吹き飛ばされてしまった。
(……あ、相変わらずだな、アイリスの使役獣は)
「さあ、それじゃあ行きましょう」
双鞭龍の猛威を目の当たりにしたミリアリアが若干顔をひきつらせていると、アイリスが奇襲によって大混乱に陥っている宿営地の状況を満足げに確認しながら口を開き、それを聞いたミリアリアが表情を引き締めながら頷きを返すと、アイリスはそれを確認した後に駆け寄ってきたアイリーンに向けて楽しげな口調で声をかけた。
「……それじゃあ行きましょう、狐人族の捕虜達への呼び掛け、頼んだわよ」
「……お任せ下さい」
アイリスの言葉を受けたアイリーンは決意の光を瞳に宿しながらも気負う事無い口調で応じた後にクラリスを一瞥し、クラリスは小さく頷きつつアイリスから渡された龍軍刀ヴァルキュリアを鞘から抜き放った。
「行ってらっしゃいませアイリーン様、アイリーン様が同胞達と共にお帰り下さるまでこの地を死守致します」
「……頼みましたよ、クラリス」
クラリスの激励の言葉を受けたアイリーンは力強い言葉で応じた後にアイリスやミリアリアと共に駆け出し、クラリスはその背中を一瞥した後にテオドーラやマリーナと共に混乱する宿営地に向けて火球を放った。
クラリス達の放った火球は怯える乗馬を懸命に宥めていた騎士の傍らで炸裂して騎士を乗馬ごと吹き飛ばし、地面に叩きつけられた騎士が顔面蒼白になりながら立ち上がろうともがいている所に双角龍が放った光線が浴びせられた。
牢小屋
突然発生した無数の爆発に続いて出現した巨大な2体のモンスター(双角龍と双鞭龍)一瞬にして阿鼻叫喚の様相へと様変りした宿営地だったが魔力障壁に覆われた牢小屋の中だけはその惨状を免れており、ミリーナ達とサララ達は眼前で展開される急転した状況に驚愕と戸惑いが入り雑じった表情を浮かべていた。
「どうやらこの魔力障壁は我々を流れ弾から守る為に展開された様だな……もっとも誰がどの様な意図で行ったかは皆目見当がつかんが」
サララは牢小屋を覆う魔力障壁を見ながら戸惑いの声をあげ、ミリーナは同じ様な表情で頷いていたが血相を変えた騎士とエルフ騎士が数人此方に向けて駆け寄ってくるのに気付いて顔をしかめながら口を開いた。
「……屑どもがここの安全性に気付いた様だな」
「……その様だな、外の状況を見る限り、逃げ場は大してなさそうだからな」
ミリーナの呟きを耳にしたサララが侮蔑の表情と共に吐き捨てる様な口調で呟いている間に4人の騎士と2人のエルフ騎士は魔力障壁の近くに到着し、エルフ騎士達が魔力障壁に魔力波を注いで侵入口を抉じ開け様とし始めた。
魔力波を注がれた魔力障壁は一瞬微かに点滅したもののそれ以外の変化は見せず、その光景を目にしたミリーナは呆れと驚きがない交ぜになった表情を浮かべながら感想をもらした。
「……魔力波を弾いた様だな、出鱈目な抗魔度と防御力の魔力障壁だな、こんな規格外の魔力障壁、一体誰が造れると言うのだ」
ミリーナがそう呟いた刹那、躍起になって魔力障壁に押し入ろうとしている一団の背後に巨大な鎌を手にした扇情的な装いの美女が姿を現し、それに気付いたサララは顔に浮かぶ戸惑いを更に色濃くさせながら口を開く。
「……あれは、一体だ……ッ!!」
サララが呟いていると美女は瞬く間に騎士達との距離を詰めると騎士の1人を斬り捨ててしまい、その身のこなしと斬撃の鋭さにサララは思わず絶句してしまう。
斬り捨てられ骸となった騎士が地面に崩れ落ちた所で漸く騎士達は美女の事に気付き、狼狽えながら剣先を向けたが美女はその動きを嘲笑う様に凄絶な笑みを浮かべながら大鎌を振るい、その刃に捉えられた騎士やエルフ騎士は血飛沫を撒き散らしながら崩れ落ちていった。
「……凄まじいな、屑どもが、まるで相手になっていない」
「……ああ、しかし、彼女は一体何者だ」
サララとミリーナが呆気に取られた表情で次々に騎士とエルフ騎士を斬り捨てて行く美女の姿を見ながら呟いていると魔力障壁を通り抜けて2人の人影が牢小屋に駆け寄り、サララとミリーナは思わず身構えながら駆け寄って来た人影に目をやり、唖然とした表情で言葉を喪ってしまった。
「ミリーナ殿、よくぞ辛酸に耐え抜いてくれたな、そのおかげで再会の約束を果たす事が出来た」
「……み、ミリ、アリア殿?」
駆け寄って来た2人の内の1人、ミリアリアから万感を籠めた言葉と眼差しを受けたミリーナは微かに声を震わせながらミリアリアの名を呼び後方のエルフの女騎士達も驚愕の表情を浮かべ、その傍らではサララと狐人族の女騎士達が大きく目を見開いてミリアリアの傍らに立つもう一人、アイリーンを凝視しながら呆然とした表情で呟いた。
「……あ、アイリーン、様」
「……サララ様、そして他の皆様も、よくぞ御無事で」
サララの掠れた呟きを受けたアイリーンは万感を籠めた眼差しでサララと狐人族の女騎士達を見詰め、呆然としていたサララと狐人族の女騎士達が二度と目にする事が無いと思っていたアイリーンの姿と声に瞳に涙を溜めながら方膝をついて頭を垂れるとアイリーンは小さく頭を振りつつ言葉を続ける。
「皆様、お立ち下さい、今の私はリステバルス皇国皇女ではありません、娼奴隷に堕ちた後にある御方に救って頂いたのです」
「……お痛わしい、アイリーン様までもがその様な憂き目に遭われるとは、しかし、アイリーン様を助けて御方とは一体?」
アイリーンの言葉を受けたサララは立ち上がると怪訝そうな面持ちで問いかけ、アイリーンが答える代わりに穏やな微笑みを浮かべていると騎士とエルフ騎士を斬り捨てた美女、アイリスが魔力障壁を通り抜けて到着した。
「感動の再会は済んだかしら?積る話は山積みと思うけど続きはこの宿営地を徹底的に叩き潰してからにしましょう」
白雪のごとき肌を返り血に染めながら凄絶な笑みと共にミリアリアとアイリーンに告げるアイリス、その凄絶な姿を目にしたミリーナとサララはアイリスの淡い瑠璃色の瞳と蝙蝠の羽根に驚愕と戸惑いが混ざりあった表情を浮かべる。
「……淡い瑠璃色の瞳、白雪のごとき肌に蝙蝠の羽根」
「……まさか、魔王?しかし、魔王は全て男性の筈、女性の魔王など聞いた事も無い」
半信半疑と言った表情で呟く、ミリーナとサララ、その言葉を聞いたアイリスは楽しげに口角を上げるとミリーナ達とサララ達に向けて一礼した後に口を開いた。
「はじめまして、エルフの女兵士さん達と狐人族の女騎士さん達、あたしは魔王、魔王アイリスよ、色々あって今はミリアやアイリーンをダンジョンに匿っているわ、取りあえずこの粗末な牢屋から出ましょう、詳しい話は牢屋を出てこの忌々しい宿営地を灰塵に変えてからにしましょう」
アイリスがそう告げるとそれに呼応する様に暴れまわる双角龍と双鞭龍が咆哮を轟かせ、その様を目にしたミリーナ達とサララ達は呆気に取られた表情を浮かべながら頷きを返した。
空挺堡
ミリーナ達とサララ達を連れて牢小屋を脱出したアイリス達は脱出を報されて意図的に宿営地内への着弾が減らされた攻撃を潜り抜けてクラリス達が確保している空挺堡に到着し、ミリアリアとアイリーンに先導されたミリーナ達とサララ達が到着するのを目にしたクラリスは一瞬相好を崩したが直ぐにそれを引き締め直して殿として到着したアイリスに対して報告を行った。
「敵の混乱状況は未だに続いています、現在の所抵抗らしい抵抗は皆無です、ただ、何名かは潜伏している可能性があります」
「……問題無いわ、救出した皆と一緒に双角龍に乗りなさい、あたしとミリアに双鞭龍で周囲を固めてるわ」
クラリスの報告を受けたアイリスがそう言いながら双角龍に向けて右手を掲げて見せると暴れまわっていた双角龍は小さな咆哮をあげた後に皆の近くに移動してうずくまり、ミリーナ達とサララ達は双角龍の厳つい外見に一瞬尻込みを見せた物のアイリーンとクラリス達に促されて若干顔をひきつらせながらも双角龍の背中によじ登り始めた。
アイリスとミリアリアは周囲に視線を巡らせて全員が双角龍に乗り込みまでの安全確保に努め、双鞭龍は僅かな生き残りが散発的に放つ魔法攻撃を物ともせずに暴れまわり宿営地を粉砕して行く。
阿鼻叫喚の坩堝と化し灰塵へと帰して行く宿営地、その僅かな生き残りの一部である騎士とエルフ騎士は脱出の為に双角龍へと乗り込んで行く一同を血走った眼で睨み付けながら残骸の合間に身を潜めていた。
「……あいつは、第三騎士団長のミリアリア・フォン・ブラウワルトだ、この襲撃、ヴァイスブルクの残党どもの仕業だ」
エルフ騎士は先程一瞥したミリアリアの顔を思い出して頬を怒りに染めながら忌々しげに囁き、それを聞いた騎士は怒りによって顔を朱を通り越して黒に染めながら双角龍に乗り込むミリーナ達とサララ達を睨みつつ小声で囁きかけた。
「あいつら捕虜や娼奴隷ども連れ去るつもりだぞ、どうする?」
「……2体いた化物の内1体は他の場所であばれていてもう1体はアバズレどもを乗せてる最中だ、あの真っ只中に攻撃魔法を叩きこんでアバズレどもを吹き飛ばしてからクソ女騎士団長とあいつに協力してやがる蝙蝠女をぶっ殺してやる」
「よし、お前は魔法攻撃をぶっ放せ、俺があの2人を叩き斬ってやる」
騎士とエルフ騎士は血走った眼で言葉を交わした後に音を立てない様に注意しながら攻撃態勢を整え、騎士は剣の柄に手を添えながら後方のエルフ騎士に声をかける。
「よし、準備は出来たぜっアバズレどもに攻撃魔法をぶちこみな」
騎士はそう告げると警戒するミリアリアを見据えながらエルフ騎士の攻撃魔法を待ったが、暫しの時が過ぎたにも関わらずいっこうに攻撃魔法が発射される気配が無く、騎士は苛立ちながら後方のエルフ騎士に視線を向けながら口を開いた。
「……おいっ一体何をしてるんだっさっさと魔法をぶっぱな」
苛立ちの表情で告げながら後方に視線を向けた騎士だったが、後方のエルフ騎士はライトアーマーに包まれた体躯を血塗れの大鎌の刃で刺し貫かれた状態で苦悶の表情を浮かべており、その背後では大鎌を手にしたアイリスが凄惨な笑みを浮かべていた。
「……させる訳無いでしょ、そっちの思わく通りに」
アイリスはそう言いながらエルフ騎士から大鎌を引き抜くと骸と化したエルフ騎士が崩れ落ち、その光景を目にした騎士が腰を抜かして言葉を喪いその場にへたり込んでしまうと凄惨な笑みを浮かべたまま近付き顔面蒼白になってじたばたともがく騎士に向けて大鎌を一閃させた。
骸になった騎士が地面に横たわるのとほぼ同時にアイリーン達が乗り込んだ双角龍がゆっくりと上昇を始め、それを確認したアイリスは満足気に微笑みながら大鎌を虚空に収納すると、ミリアリアの傍らへと移動して口を開いた。
「脱出成功ね」
「……ああ、何時も尽力してくれて、本当にすまない、ありがとうアイリス」
アイリスに声をかけられたミリアリアは解放された戦友達を乗せて上昇して行く双角龍を一瞥した後にアイリスに感謝の言葉を告げ、アイリスはこそばゆそうにはにかみながら言葉を返した。
「あたしは魔王としてやりたい様にやっているだけよ、でも、嬉しいわ、ありがとう……それじゃあさっさと退散しましょうミリア」
アイリスは嬉しそうに答えた後に洗浄魔法をかけて返り血を拭い、ミリアリアは頷いた後に頬を赤らめさせながらアイリスの首に手をかけた。
「……そ、それじゃあ、頼むぞ、アイリス」
「……え、ええ、分かったわミリア」
ミリアリアが頬を赤らめながらアイリスに告げるとアイリスも同じ様に頬を赤らめさせて応じた後にミリアリアの身体を抱き上げ、その後に背中の蝙蝠の羽根を軽く羽ばたかせて双角龍の傍らへと上昇した。
「……各機動集団に通達、捕虜の救出に成功したわ、各機動集団は速やかに本格攻勢に移行して宿営地を粉砕しなさい、全てが灰になるまで、徹底的に叩き潰しなさい」
上昇したアイリスが指示を送ると攻撃魔法や光弾、光線、火球の弾雨が宿営地に降り注ぎ、無数の爆煙に包まれた宿営地では双鞭龍が咆哮を轟かせながら双鞭を振るっていた。
凄まじい猛攻を受けた宿営地は業火の中で灰塵と化し、留守部隊の騎士とエルフ騎士達の多くはなす術無く業火の中に消え、一握りの生き残りが脱出して再建中の砦を目指したが彼等も退路を遮断していた南方機動集団によって全滅させられてしまった。
補給部隊に対する伏撃に対して戸惑いながらも対応しようとして宿営地に対して開始された魔王の軍勢による強襲、アイリス率いる救出隊は不意をつかれ混乱する宿営地の只中に突入しミリアリアとアイリーンは戦友達や騎士達との再会を果たした後に宿営地を脱出し、宿営地は魔王の軍勢に蹂躙され灰塵へと帰した……
ミリアリア「……なあ、今回登場した使役獣なんだが」
アイリス「違うわよ、だって食べたら海老みたいな味のする怪獣が好物じゃないもの」
ミリアリア「……いや両手が鞭な時点でそいつしかいない様な気がするんだが、と言うか元ネタしってる読者いるんだろうか?」