蹂躙・魔龍討伐隊編・伏撃
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今回は新たな使役獣が登場します。
ダンジョン周辺・救出隊
魔龍と接触し追撃を開始した魔龍討伐隊主力は急進撃によって宿営地との距離を瞬く間に大きくして行き、それを確認したアイリスは機が熟したと判断して展開を終えた各機動集団に対して通信を送った。
「各機動集団に通達、敵主力部隊は同盟者と接触して急進撃を開始したわ、各機動集団は攻撃態勢を整えて待機しなさい、攻撃は捕虜が収監されている牢に魔力障壁を展開させた後にあたしが命令するからあたしの命令が出るまでは絶対に攻撃をしないように注意しなさい」
「こちら西方機動集団、了解しました」
「北方機動集団、承知致しました」
「東方機動集団、了解です」
アイリスの確認に対してイライザ、ミランダ、ラリッサから返信がもたらされ、アイリスは満足気に頷いた後にアイリーン達に声をかけた。
「双角龍に乗りなさい」
「承知致しました、皆さん、行きましょう」
アイリスの指示を受けたアイリーンはそう答えるとクラリス達と共に双角龍の背中に跨がり、アイリスはそれを確認した後に少し頬を赤らめながらミリアリアに声をかける。
「……そ、それじゃあ行くわよ、ミリア」
「……あ、ああ宜しく頼む、あ、アイリス」
アイリスに声をかけられたミリアリアは頬を火照らせながら応じた後にアイリスの傍らに寄り添い、アイリスは頬を赤らめさせたまま寄り添って来たミリアリアの身体を抱え上げた。
(……や、柔らかい、そ、それにあ、甘い)
(……み、ミリアの身体あ、熱い)
ミリアリアは自分を抱え上げるアイリスの柔らかな肢体の感触と鼻腔を心地好く擽るアイリスの仄かな甘い薫りに頭をクラクラにさせかけ、ミリアリアを抱え上げたアイリスも火照りかけているミリアリアの温もりに胸を高鳴らせながら声をかける。
「……そ、それじゃあ行くわよ」
「……あ、ああ、宜しく頼む」
アイリスとミリアリアは頬を赤らめさせたまま短く言葉を交わし合い、アイリスがその後に視線を双角龍に向けると双角龍は小さく咆哮した後にアイリーン達を背に乗せたままゆっくりと上空へと浮かび上がった。
アイリスは双角龍が木々の上に上昇したのを確認した後に背中の翼を軽く羽ばたかせて双角龍の傍らへと上昇し、その後に彼我の状況が記された地図の画像を表示させて確認し始めたが襲撃する予定の宿営地に向けて接近している新たな赤い矢印が出現したのに気付いて顔をしかめさせながら呟いた。
「……新たな敵性部隊が登場したみたいね」
「……何っ!?増援かっ?」
アイリスの呟きを受けたミリアリアは表情を厳しくさせて口を開きながら新たに出現した赤い矢印を見詰め、アイリスは頷きながら付近の使い魔達からの映像を表示させて宿営地に接近する敵性部隊の映像を確認した。
表示させれた画像には食糧等を積んだ馬車とそれを護衛する軽騎兵と軽装歩兵の映像が映し出されており、それを確認したアイリスは焦眉を緩めながら口を開いた。
「……補給部隊みたいね、食糧や嗜好品を積んだ馬車が10台程に護衛の軽騎兵と軽装歩兵が合わせて1個中隊程度、この程度なら南方に展開しているブラッディマンティス隊とアンデッド部隊で対処可能ね」
アイリスはそう呟くと暫し沈黙し、数拍の間を置いた後にゆっくりと頷きながら口を開く。
「……一番近い部隊は西方機動集団だから戦力の一部を移動させてブラッディマンティス隊とアンデッド部隊に合流させて南方機動集団に臨時編成させ、同隊の補給部隊伏撃を第一撃とするわ、それに連動する形で救出隊の襲撃と宿営地への攻撃を行う形に計画を変更するわ」
アイリスが新たな方針を告げるとミリアリアは頷く事でそれに同意し、アイリスは彼我の状況を見据えながら直ちに指示を始めた。
「各隊に通達、只今宿営地に向かうロジナ候国軍の補給部隊を確認したわ、西方機動集団よりライナ、リーナ、アリーシャの3名を分派し南方のブラッディマンティス隊及びアンデッド部隊と合流させライナを指揮官とする南方機動集団を臨時編成させ、同隊の補給部隊伏撃を宿営地襲撃の第一撃とするわ、南方機動集団には今から珊瑚龍のカプセルを転移魔法で送るからそれを受領次第直ちに向かいなさい」
「こちらライナ、了解しましたカプセルを受領次第可及的速やかに移動しますっ!」
アイリスが新たな指示を送るとライナから素早く返信が送られ、それを聞いたアイリスは即座に転移魔法を使って珊瑚龍のカプセルをライナの元へと送った。
アイリスがカプセルを送って数拍の間を置いた後に西方機動集団のいる位置から青い矢印が宿営地南方に向けて移動を始め、アイリスとミリアリアは静かに刻々と変化する彼我の状況が記された地図の画像を見詰めた。
一時間後・宿営地南方・ロジナ候国軍補給部隊
任務が長期化した場合に備えて宿営地に食糧や嗜好品を運ぶ為に再建中の陣営から派遣された補給部隊は食糧や嗜好品が満載された馬車18輌に予備の武器や弩砲用の石弾を積んだ馬車6輌の合計24輌の馬車で車列を作って宿営地へと向かい、その周囲には2個軽騎兵小隊と2個軽装歩兵小隊から成る護衛隊が軽装歩兵中隊長指揮の下展開していた。
魔龍と思われるドラゴンとそれが引き起こしたと目される異様に統制の取れた襲撃による陣営の壊滅と残党狩り部隊の行方不明、それらの異常事態は高級幹部レベルには報されていたが動揺を危惧した派遣軍司令官ナルサスは全部隊への注意喚起を行わず(スティリアは箍が緩みがちの派遣軍への警告も兼ねて全軍への注意喚起を強く主張したが受け入れられず)一部の部隊を除いて箍が緩んだままの派遣軍の状況を反映するように護衛隊は一応周囲を警戒しつつ進んではいたがその規律は些か緩みがちであり、軽騎兵小隊長は穏やかな木洩れ日の降り注ぐ中、生欠伸を噛み殺しながら駒を進めていた。
「……後一時間程で宿営地に到着します」
指揮官の気だるげな態度を目にした先任軍曹は指揮官と同じ様に気だるげな雰囲気を漂わせながら小隊長に声をかけ、小隊長は頷いた後に周囲を見渡しながら口を開いた。
「……特に何事も無さそうだな」
「……ええ、魔龍だか何だか知りませんが迷惑な話です、おかげでこんな簡単な任務にこれだけ大がかりな護衛隊が付かねばならんのですから、まあ、討伐隊の所にいる女エルフや狐女達を見れるのは幸いかもしれませんがね」
小隊長の呟きを受けた先任軍曹は苦笑しながら応じていたが途中から言葉と表情が野卑た物へと変化し、小隊長はそれをたしなめる所か己も同じ様な表情になりながら口を開く。
「……陣営再建隊にはどちらも付いていなかったからな、全くスティリア様は知勇に優れた御方ではあるが少々お堅過ぎのが難点と言えば難点だな」
「……仕方ありますまい、あの様な御方ですから、それにこれは噂ですがあのスティリア様もついに捕虜の女エルフを私物化したとの事です、これによってもう少し柔らかくなってくだされば、高い人気が更に高まりますね」
小隊長と先任軍曹がそう言葉を交わした刹那、前方を進んでいた軽騎兵達の只中に数発の火球が叩き込まれて炸裂し、発生した爆発に巻き込まれた軽騎兵達が乗馬ごと薙ぎ倒されてしまった。
「な、何事だっ!?」
小隊長は突然の事態に暴れかける乗馬を宥めながら狼狽えた声をあげ、同じ様に乗馬を宥めながら周囲を確認し始めた先任軍曹は木々の合間から次々にスケルトンやボーンマジシャンが姿を現すのを目にして顔面を蒼白にさせながら小隊長に報告した。
「そ、側面よりスケルトンとボーンマジシャンが大量に出現、此方に接近中!!」
「な、何だとっ!?何故こんな場所にアンデッドがっ!?」
先任軍曹の言葉を受けた小隊長が驚愕の声をあげていると出現したボーンマジシャンが第二波な火球を護衛隊めがけて放ち、放たれた火球の一部が小隊長のいる周辺に着弾して小隊長と先任軍曹を乗馬ごと吹き飛ばしてしまった。
「……奇襲成功だな」
木陰から襲撃の様子を確認していた南方機動集団指揮官のライナは自軍の優勢ぶりに抑制された興奮を覚えながら呟き、傍らでそれを聞いたリーナとアリーシャが頷くのを確認した後に懐から珊瑚龍のカプセルを取り出した後に再び奇襲を受けた補給部隊の様子を窺った。
補給部隊の車列と護衛隊はボーンマジシャンが放つ火球によって大混乱に陥っていたが護衛隊の一部は接近するスケルトンを迎撃する為に態勢を整え始めており、それを確認したライナはカプセルを握る手に力を込めながらリーナとアリーシャに声をかける。
「珊瑚龍を投入するっ!!連中の混乱が更に増大した所でブラッディマンティス隊を投入し私達も魔法で連中を攻撃するぞっ!!」
「「了解」」
ライナの言葉を受けたリーナとアリーシャは小気味良くそれに応じ、それを聞いたライナはカプセルを投じながら言霊を放った。
「頼むっ!力を貸してくれっ!!」
ライナが言霊と共に投じたカプセルは虚空で強烈な光を爆ぜさせ、その光が収まると巨大な直立型の龍、珊瑚龍が咆哮を轟かせた。
黒曜石を彷彿とさせる漆黒の巨体に白目の無い鮮やかな真紅の目の精悍な面立ちに漆黒の巨体の背中に張り付く珊瑚を思わせる無数の紅の突起物が印象的な龍、珊瑚龍の突然の出現に対して苦心しながら態勢を整えていた護衛隊の一部は激しい動揺を来し、珊瑚龍は立て直しの機会を与えずに攻撃を開始した。
珊瑚龍が再び咆哮を迸らせると同時に背中を覆う無数の突起物から夥しい量の火弾が発射され、発射された火弾は噴煙を引き摺りながら前方で狼狽える護衛隊の周辺に次々と突入し将兵瞬く間に一掃してしまった。
「「……うわぁ」」
珊瑚龍の凄まじいばかりの火力を目の当たりにしたライナ達はドン引きしつつ呆れと驚きがない交ぜになった声をあげ、ライナはその後に珊瑚龍の出現と圧倒的な火力によって崩壊寸前に陥っている補給部隊と護衛隊を見ながら呟いた。
「……ブラッディマンティス隊を投入するまでも無さそうだな、ブラッディマンティス隊は予備のスケルトン隊とボーンマジシャン隊と共に敗走した連中の掃討戦に当たらせ、連中が放棄した馬車と補給品はこちらがそっくり頂くとしよう、リーナ、アリーシャ、魔法で連中を攻撃するぞっ!!」
ライナはリーナとアリーシャに指示をした後に2人と共に珊瑚龍の第2撃に呼応する形で補給部隊の隊列めがけて攻撃魔法を放ち、連続する火弾と攻撃魔法の炸裂が引き起こす爆発によって完全に士気を喪失した補給部隊と護衛隊は馬車を放棄して敗走を始めた。
補給部隊と護衛隊の潰走を確認したライナはアイリスに補給物資の分捕りを具申し、それを許可したアイリスが護衛として派遣した骸骨軽騎兵隊に放置された馬車を託した後に珊瑚龍とアンデッド部隊と共に周囲に展開して魔龍討伐隊への連絡線を遮断した。
一方補給部隊と護衛隊の敗残兵達は散り散りになって陣営へと敗走して行ったがその最中にブラッディマンティス隊とアンデッド隊の襲撃を受けてその多くが屍を晒し、命辛々に陣営にたどり着けたのは50名にも満たなかった。
魔龍討伐隊の宿営地を襲撃しようとしていたアイリスは宿営地に接近するロジナ候国軍の補給部隊の存在を察知すると同隊に対する伏撃を企図し、南方機動集団を臨時に編成した。
南方機動集団はアンデッド部隊とアイリスから渡された珊瑚龍の攻撃によって補給部隊を粉砕し、その一方的な勝利が傲りきった魔龍討伐隊に対する鉄槌の序曲となった……
ミリアリア「……なあ、この珊瑚龍なんだが」
アイリス「違うわよ、地球防衛軍の戦闘機部隊を全滅させたり、パン屋さんのトラックに突っ込まれたりしてないもの」
ミリアリア「……なるほど女ヤプー○に操られてた二代目でもスカイホエー○のレーザー攻撃でやられた再生でも無い、初代ベロクロ○だな……やっぱり超○の第一号だからか?」
アイリス「まあ、そうなるわね、攻撃も派手だし、出して欲しい怪○とか超○のリクエストがあったら作者にリクエストしてみてね、因みに範囲はQから80までの間よ」
ミリアリア「……広いなおい」