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蹂躙・魔龍討伐隊編・接触

更新が遅れ申し訳ありません、65000PVアクセス及び13000ユニークアクセス突破出来ました、今後も宜しくお願いします。


大陸歴438年霧の月十五日早朝・ダンジョン周辺


魔龍討伐隊迎撃部隊の編成が完結した翌早朝、一同は起床して食事を摂った後にアイリスの転位魔法によってダンジョン周辺地域に展開し、やや緊張した面持ちの一同は編成された部隊毎にアイリス達救出隊に見送られて森の奥へと消えて行った。

各隊が進発したのに続いて同盟者フェデラートゥスの魔龍がゆったりと羽ばたきながら魔龍討伐隊を誘出する為に出発し、アイリスはそれを見送った後に救出隊の一同を見渡しながら口を開いた。

「あたし達は各隊が展開を完了して同盟者の魔龍が屑どもの主力の誘導を始めた後に出撃する事になるわ、だから、それまではこの地にて待機して頂戴」

アイリスの言葉を受けた救出隊の面々は頷く事で応じ、それを確認したアイリスは自身も頷いた後に手近な所にあった大木の根本に腰かけて彼我の状況が表示された地図の画像を具現化させて真剣な眼差しで進捗状況の確認に入った。

(……何時もは飄々としてるのに、こう言う場面でのアイリスは本当に真剣だな、何時も飄々としたり、わ、私に甘え様としてくれたりするのも良いが、こ、こう言う真剣なアイリスもい、良いな……って戦いの前に私は何て不謹慎な事を、落ち着け、落ち着くんだ、ミリアリア・フォン・ブラウワルト)

真剣な眼差しで画像を確認するアイリスの姿に見惚れていたミリアリアは我に返ると真っ赤な顔で大きく頭を振って煩悩を追い出し、端からみたらかなり挙動不振なミリアリアの様子を目にしたテオドーラは仄かに頬を赤らめながら傍らのマリーナに囁きかけた。

「……ミリアリア様、アイリス様の事、お考えになっている様ですわね」

「……ええ、最近増えてますよねミリアリア様のああ言う行動」

テオドーラに囁きかけられたマリーナは同じ様に仄かに頬を赤らめさせながら囁き返し、テオドーラは頷いた後に更に囁きを続けた。

「……ミリアリア様はアイリス様の事をどう思ってらっしゃるのかしら?」

「……あの反応を見る限り満更でも無さそうですよね、セレーナさんとティアナ様の話だと昨日から遂に名前で呼び合い始めたみたいですし」

テオドーラの囁きを受けたマリーナは真っ赤な顔でアイリスを見詰めるミリアリアを見ながら昨夜セレーナとティアナから聞いた話をテオドーラに伝え、テオドーラは更に頬を赤らめながら言葉を続けた。

「……で、でしたら何れミリアリア様とアイリス様は、その、その様な事を?」

「……た、多分そうなんじゃ無いでしょうか、ですがセレーナさんやティアナ様の言葉だとミリアリア様はかなりヘタレなので時間がかかるんじゃ無いかと言ってましたが」

「……そこはせめて奥手とか奥ゆかしいとか言って差しあげれば宜しいのに……まあ、事実は事実ですけど」

テオドーラの言葉を聞いたマリーナはミリアリアの部下だったセレーナとティアナの身も蓋も無い評価と見通しを伝え、テオドーラが眉を潜めながら呟いて(ただしテオドーラも結構酷い事を言いつつ)いるとアイリーンまでもがその会話に割り込んで来た。

「……わたくしもセレーナさんやティアナさんの意見に賛同致しますわ、アイリス様はかなりミリアリア様にアプローチをおかけになっていてミリアリア様も満更ではございませんのに中々後一歩踏み出せていませんわ、アイリス様はアプローチはかけておりますがやはり最終的にはミリアリア様の方から踏み出して欲しいので待っていらっしゃいますけど、正直生殺し状態に近い面もございますわ」

「……おお、流石ですアイリーン様、アイリス様とよくお話になっている賜物ですね」

アイリーンの評価を聞いたマリーナは感嘆の面持ちで呟きアイリーンは頷いた後に傍らのクラリスを見ながら言葉を続けた。

「……優しいけど中々踏ん切りのつかない方との関係は心地好いけど少し切なくなる物ですわよね、クラリス?」

「……そ、それは、その、なんといいますか」

アイリーンに話を振られたクラリスは頬を赤らめながら話に詰まり、アイリーンがその姿に頬を緩めていると、ミリアリアが少し躊躇いがちな足取りで画像を見詰めているアイリスの所へ近付き始めた。

ミリアリアが近付いて来る事に気付いたアイリスは嬉しそうに頬を綻ばせながら自分の傍らの根元をポンポンと軽く叩き、それを目にしたミリアリアは頬を赤らめさせながら頷いた後にアイリスの傍らに腰を降ろし、彼我の状況が表示された地図の画像を見ながら口を開いた。

「……いよいよだな」

「……ええ、今の所ロジナの連中に目立った動きは無しよ、これから何が起きるのかも知らずに呑気に時をすごしているわ」

ミリアリアの言葉を受けたアイリスはそう言った後に微かに表情を曇らせながら言い澱み、それに気付いたミリアリアは柔らかく微笑んだ後に頬を赤らめさせながらアイリスの腕に自分の手を重ねて口を開いた。

「……アイリス、大丈夫だ、今までの貴女の尽力や配慮には本当に感謝している、確かに戦友達やリステバルスの娼奴隷達の事を思うと暗然としてしまう、だが、その原因はロジナの屑どもに起因している、だから貴女に責任は無い、気に病む必要は無い」

「……うん、ありがとう、ミリア」

ミリアリアの言葉を受けたアイリスは頬を緩めながら応じ、その様子を目にしたミリアリアが微笑むのを確認するとゆっくりとミリアリアの身体に上体をもたれかからりつつ口を開いた。

「……暫く、こうしてて構わない?」

「……あ、ああ、え、遠慮するなアイリス」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは笹穂耳まで赤くなりながらもその言葉を受け入れ、アイリスは嬉しそうに微笑みつつ甘える様にミリアリアにもたれかかった。

ミリアリアはもたれかかってくるアイリスの身体の柔らかな感触と温もりや仄かな甘い香りに心臓を喧しく鳴らしながらアイリスの肩を優しく抱き寄せ、アイリスは自分を抱き寄せてくれるミリアリアの腕の温もりに仄かに頬を赤らめさせながらミリアリアの身体に身を預けた。

「……こ、これでお付き合いなされていないなんてある意味奇跡ですわね」

「……そ、そうですよね」

「……本当に昔の誰かさんを見ている様ですわね、クラリス」

「……それは、その、も、申し訳ありませんでした、アイリーン様」

ミリアリアとアイリスの様子を見ていたテオドーラとマリーナが真っ赤な顔で言葉を交わしている傍らではアイリーンに話しかけられたクラリスが頬を朱に染めながらアイリーンに謝罪しており、一方のミリアリアはもたれかかってくるアイリスの温もりや感触にドキマギしながら具現化された地図の映像に表示された彼我の状況を見詰めていた。


数時間後・魔龍討伐隊第七捜索班


魔王の軍勢の進発から数時間が経過し曙光が森を照らし出された頃、魔龍討伐隊が進発させた7個班からなる捜索隊、その内の1つで尤もダンジョンとの距離が近い第七捜索班は捜索曙光に照らされ始めた森の中で本日の捜索活動に備えて携行食による朝食を摂っていた。

「……はあ、ツイてねえなあ、こんな広い森の中をたかだか蜥蜴1匹の為に駆けずり廻るなんてよ、宿営地の連中はエルフや狐女どもとお楽しみだって言うのによ」

捜索班に所属する騎士の1人はそうぼやきながらスープに浸した軍用ビスケットを頬張り、スープを啜っていた同僚の騎士はそれを聞くと笑いながら口を開いた。

「ぼやくな、ぼやくな、出発前に楽しんだだろうが、戻ったらまたたっぷりと楽しませて貰えるさ」

「……それもそうだな」

同僚の騎士の言葉を受けた騎士はそう言うと自分もスープを啜り始め、案内役として彼等に同行していたヴァイスブルク男爵領国第一騎士団(旧ヴァイスブルク伯国第六騎士団)のダークエルフ騎士エウレーネ・フォン・ブランデンブルクはその様子に内心で顔をしかめていた。

魔龍討伐隊は滅龍騎士ドラゴンナイトカスターを指揮官とし、彼が指揮するロジナ候国軍第七騎士団の指揮官、ベテラン騎士を中核に編成されている為戦闘能力に関しては高いものの指揮官のカスター当人は出撃した当初から魔龍を蜥蜴と公言して憚らず、指揮官の途方もない楽観論は討伐隊の隅々まで危険な程行き渡ってしまっている。

(……こんな、こんな奴等に媚び諂わなければならないとは、そして戦友達が辱しめられる姿を拱手して見るしかないとは……いや、彼女達はもう私を戦友とは見てくれまい、今の私は紛れも無い裏切者の売国奴なのだからな)

内心で嘆くエウレーネの言葉は直ぐに自嘲の言葉へと変化してしまう。

第六騎士団にて中隊長を勤めていたエウレーネはかなり動きの鈍い自隊に戸惑いを覚えつつ奮戦していたが戦役終盤にて第六騎士団は第七騎士団と共にロジナ候国側に寝返り、愕然としたエウレーネを尻目に第六騎士団はヴァイスブルク伯国滅亡後に臆面も無く新生されたヴァイスブルク男爵領国軍の第一騎士団を名乗り行動し始め、エウレーネもその一員として活動する事を余儀無くされ、魔龍討伐隊への支援要員として派遣されて部下のエルフ兵と共に捜索班の道案内役を行っていた。

宿営地にて凄惨な憂き目を味合わされていた旧ヴァイスブルク伯国の捕虜達の娼奴隷に堕ちた旧リステバルスの狐人族の捕虜達は容赦無く同性のエウレーネに対して冷やかな憎悪の視線を浴びせかけ、エウレーネはその視線を甘んじて受けながら半ば惰性で淡々と支援要員としての務めを果たしていた。

(……どれほど平身低頭して詫びた所で彼女達に許して貰える筈が無い、いや、万一許されたとしても私自身が私を許せない、魔龍討伐だと言うのにここまでお気楽な連中なら間違いなく魔龍に叩き潰される筈、その時が私の最期の時だな)

エウレーネがそんな事を考えている間に捜索班の朝食が終わりを告げ、捜索班長の出立の命令を受けたエウレーネは暗然とした気持ちのまま静かに立ち上がった。

捜索班の騎士達と部下の筈のエルフ兵は立ち上がったエウレーネの引き締まった褐色の肢体に不躾な視線を這わせ、エウレーネは内心の不快感を押し殺して絡み付く視線を甘受しながら捜索班が態勢を整えるのを待った。

態勢を整えた捜索班の一行は班長の命令の下前進を開始し、エウレーネは部下のエルフ兵と共にその先頭に立って歩き始めた。

捜索班が進んで暫くすると木々の切れ間に広がる小さな広場に到達し、それを確認したエウレーネは脚を止めて後方の捜索班長に声をかけた。

「このまま進むと魔龍が上空にいた場合狙い撃ちされてしまう可能性がありますが?」

「構わん、進め蜥蜴にそれ程の知能があるとも思えん」

エウレーネの問いかけを受けた班長は気安い口調で前進を命じ、それを聞いたエウレーネは淡々と頷いた後に広場に脚を踏み入れた。

エウレーネが広場に進入して暫くした後に安全を確認した部下のエルフ兵と捜索班の10名の騎士が後続し、それを察したエウレーネが顔をしかめた瞬間突如として周囲が暗くなった。

突然の事態にエウレーネが思わず身構えた刹那、眩い閃光と共に後方から凄まじい爆風が襲いかかってその身体が吹き飛ばされ、吹き飛ばされたエウレーネは空中で一回転して背中から強かに地面に叩きつけられてしまった。

「……ッガハッ!!……い、一体何が」

背中から地面に叩きつけられたエウレーネが苦しげに呼吸しながら捜索班のいた所に視線を向けると彼等のいた辺りに巨大なクレーターが穿たれて周囲にかつて騎士だった者達の一部が散乱しており、その光景を呆然と見詰めるエウレーネの脳裏に声が投げかけられてきた。

……生き残りはお前だけだぞ、黒き森の民よ……

エウレーネがその声に誘われる様に視線を上に向けると上空では魔龍が悠然と翼を羽ばたかせており、それを目にしたエウレーネは安堵の笑みを浮かべながら魔龍に向けて語りかけた。

「……やっと終われる、屑どもに媚び諂い、かっての戦友達から裏切者と蔑まれる日々が、早く、殺してくれ、私に生きる価値等無いのだから」

……暫し待て、今確認を取る……

エウレーネの懇願を受けた魔龍は奇妙な答えと共に暫く沈黙し、エウレーネが訪れた奇妙な間に戸惑いの表情を浮かべていると魔龍が念話で語りかけてきた。

……黒き森の民よ、我が同盟者フェデラートゥスは御主を捕虜にするとの事だ、死ぬのはまだ暫く後の話になるな、それと、質問がある、虜囚となっている同胞達を救出するのに力を貸す気は無いか?……

「……救出?宿営地の戦友達の事か!?」

魔龍の言葉に戸惑いの表情を浮かべていたエウレーネは最後の言葉に思わず上擦った声をあげ、それを聞いた魔龍は満足げに羽ばたきながら言葉を続けた。

……そうだ、彼女達を救出する為に宿営地から屑どもの主力を引き摺り出す必要がある、宿営地に我と遭遇した事を報告して欲しいのだ、信じる信じないは御主の勝手だ、御主が信じなければこの場にて拘束し、他の捜索隊を手当たり次第に襲い報告させるまでだからな、どうする黒き森の民よ?……

「……本当に彼女達を救出してくれるのか?」

……然り……

魔龍の言葉を受けたエウレーネは痛みに顔をしかめて立ち上がった後に改めて魔龍に問いかけ、魔龍の返した短い答えを受けると躊躇う事無く言葉を返した。

「いやも応も無い、彼女達が助かるなら私は何だってしてやる、頼む、彼女達を救い出してくれ、その為ならどんな事でもする」

……決まりだな、我と遭遇した事を屑どもの主力に報告しろ、なるべく苦し気な風を装うが良い……

エウレーネの答えを聞いた魔龍は満足げな口調でエウレーネに命じ、エウレーネは頷いた後に魔法通信を利用して魔龍討伐隊の宿営地に対して魔龍との遭遇を報告し始めた。



大陸歴438年霧の月十五日、前進を続けるロジナ候国軍魔龍討伐隊に対して魔王アイリス率いる異形の軍勢が攻撃を開始した。陽動攻撃を行う同盟者フェデラートゥスの魔龍は接触した討伐隊の捜索班を一蹴、唯一生き残ったダークエルフの捕虜の協力を得て討伐隊主力の誘出を開始した……


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