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魔王への想い

54000PVアクセスを突破致しました、今後も本作を宜しくお願い致します。


ダンジョンから程近い所に存在する清らかな水を湛えた泉、長閑な雰囲気に包まれたその泉にミリアリアがアイリーンとクラリスにイライザとエリーゼにイリナとリリナと共に狩猟と採取の為に到着した。

「よし、イライザ、エリーゼやイリナ、リリナを指揮して果物や香草、薬草類の採取を行いつつ適当な獲物を見付けた場合は狩猟も行ってくれ、私はアイリーン様やクラリス殿と共に釣りをしている、何かあれば直ぐに報告してくれ」

「了解しました」

泉に到着したミリアリアの指示を受けたイライザは了承した後にエリーゼ達と共に泉に周囲の森へと入り、ミリアリアはそれを見送った後に持ってきた手製の釣竿をアイリーンとクラリスに手渡した後に自分の竿の釣り針に餌を取り付けて泉に投げ入れた。

ミリアリアが水面に釣糸を垂れるのとほぼ同時にアイリーンとクラリスも餌を付けた釣り針を水面に投げ入れ、3人は等間隔を取りながら水面に浮かぶ浮きを注視しながら魚が食い付くのを待ち始めた。

「……長閑、ですわね」

「……ええ、まさか再びこの様な時を過ごせるとは思いませんでした」

浮きを見詰めるアイリーンが穏やかな微風に気持ち良さそうに狐耳と尾を靡かせながら呟くとクラリスも噛み締める様な口調で相槌を打ち、それを聞いたミリアリアは2人が味合わされたであろう辛酸に表情を曇らせた。

(……アイリーン様やクラリス殿達だけでは無い、ミランダ殿や他の皆も辛酸を舐め、筆舌に尽くし難い憂き目に逢った、そして、皆、彼女の尽力によりこうして平穏に過ごす事が出来ている)

アイリーン達やミランダ達の舐めた辛酸に表情を曇らせていたミリアリアの脳裏にアイリスの姿が浮かび上がり、ミリアリアは頬に仄かな火照りを感じながらアイリスの事に想いを馳せた。

(……彼女は何時もこう言っている、あたしは目覚めた魔王として好き勝手やっていると、そう言いながら彼女は私達を助ける為に尽力し、助けた者達にも配慮をしてくれる、わ、私を喜ばせる為に)

「……ミリアリア様、引いてますわよ」

「……へっ?……っす、すみませんアイリーン様!?」

アイリーンやミランダ達を救出する為に尽力してくれたアイリスの姿とそれらの行動の基本理念である自分に向けられる想いにミリアリアが上の空になって頬を赤らめていると浮きが沈んだのを目にしたアイリーンから声をかけられ、我に帰ったミリアリアが慌てて竿をしゃくると中々の大きさの岩魚が釣り上げられ、ミリアリアは釣り上げた岩魚を確認すると安堵の表情を浮かべながらアイリーンに謝罪した。

「……申し訳ありません、アイリーン様」

「……ふふふ、お気になさらず」

アイリーンが穏やかな笑顔でミリアリアの謝罪に応じていると、今度はアイリーンの浮きが水中に引き込まれ、それに気付いたアイリーンが竿をしゃくるとミリアリアが釣り上げた物よりは小柄だがそれでも十分に食べ応えのある大きさの岩魚が釣り上げられ、それとほぼ同時にクラリスが大きな鱒を釣り上げる事に成功した。

その後も良型の岩魚や鱒、虹鱒が次々に釣り上げられ、3人は暫し無言で釣り竿を振るい釣り上げた魚を魚籠の中に収納する事に勤しんだ。

持って来ていた3つの魚籠の内2つは釣り上げた岩魚や鱒、虹鱒で満杯となり残る1つも半分程が埋まり、それを確認したミリアリア達は釣果に満足しつつ一時休憩を取る事にした。

採取した果物や香草薬草等を詰めた籠や狩った山鳩や雉を手に様子を見に来たイライザ達はその釣果と魚影の濃さを確認すると採取した果実類や鳥類と満杯になった魚籠をダンジョンに運んだ後に追加の魚籠や竿を持って合流する事になり、ミリアリア達はダンジョンに収穫物を運ぶイライザ達を見送った後にその帰りを待つ為にもう暫く休憩する事になった。

「釣り上げた魚の半分程は薫製にする様侍女達に伝えましたわ」

「……ありがとうございます、アイリーン様、そうしておけば保存もききますので助かります」

イライザ達を見送った後にダンジョンで待つ侍女達と魔力で連絡を取っていたアイリーンは穏やかな笑顔でその内容を告げ、ミリアリアが穏やかな笑顔で謝意を告げると笑顔で頷いた後に冷たい水が満たされた水筒で喉を湿し始めた。

それを目にしたミリアリアは同じも同じ様に水筒を口に含み冷たい水を喉に流し込み始め、一方飲み終えたアイリーンは水筒の口を閉めながら口を開いた。

「……所でミリアリア様、ミリアリア様はアイリス様の事をどう想っているのですか?」

「……ッブッ!?……ゴホッ!?……ゲホッ!?」

「……み、ミリアリア様!?」

「だ、大丈夫ですかミリアリア殿!?」

藪から棒なアイリーンの問いかけを受けたミリアリアは盛大にむせ込んでしまい、アイリーンとクラリスその様子に慌ててかけてきた声に片手をあげて応じながら息を整えた後に口を開いた。

「……あ、アイリーン様、ど、どう想うとは?」

「……意味そのままですわ、お気付きでなのしょう、アイリス様の気持ちについては?」

「……っぐ、そ、それは、その」

ミリアリアの言葉を受けたアイリーンは小首を傾げながら返答し、それを受けたミリアリアが頬を赤らめながら口ごもってしまうのを確認すると苦笑を浮かべながら言葉を続けた。

「……その反応を見る限りですと、こんな質問をしてしまったのは野暮だった様ですわね」

「……あ、アイリーン様」

アイリーンの言葉を受けたミリアリアは頬を赤らめながら戸惑いの声をあげ、それを聞いたアイリーンは苦笑を傍らのクラリスに向けつつ口を開いた。

「ミリアリア様は昔の誰かさんの様に不器用な所がおありの様にお見受けしましたので質問してみましたが、どうやら昔の誰かさんよりは幾らかマシな様ですわね、クラリス?」

「……あ、アイリーン様」

アイリーンの意味深な言葉を受けたクラリスは頬を赤らめながら困った声をあげ、アイリーンはそんなクラリスの反応を愛しげに一瞥した後に真っ赤な顔でその様子を見ていたミリアリアに話しかけた。

「……ミリアリア様、焦らず、ゆっくりで構いませんわ、待っている方はそれはそれで楽しい物ですから」

「……だ、だが」

アイリーンの言葉を受けたミリアリアは真っ赤な顔で戸惑いの声をあげかけ、アイリーンは自分の口に人指し指を当てて見せてそれを制した後に優しく微笑みながら口を開いた。

「……ゆっくりで構いませんがこれだけは約束して下さいね、必ずミリアリア様の方から御伝えすると、アイリス様はそれを楽しみに御待ちになっている筈ですから」

「……ぜ、善処します、わ、私とてぼ、木石ではありません、た、ただ、じ、時期については……その」

アイリーンの発破を受けたミリアリアは真っ赤な顔をして歯切れの悪い口調で返答し、その反応を目にしたアイリーンは苦笑を浮かべながら小さく肩を竦めた。

そうこうしている内に追加の魚籠と釣竿を手にしたイライザ達が到着し、それを確認したミリアリアは真っ赤な顔で立ち上がり釣りを再開した。


マスタールーム


イライザ達も加わり再開された釣りの釣果は十分に満足出来る物であり、ミリアリア達は岩魚や鱒、虹鱒で満杯になった魚籠を手に黄昏前にダンジョンへと帰還した。

ダンジョンに到着したミリアリアが魚籠を先に帰宅していたライナ達に手渡すとライナはアイリスがマスタールームで作業があるので食事は先に摂る様にとの伝言があり、それを聞いたミリアリアはアイリーンに後の事を託してマスタールームに向かった。

マスタールームの前に到着したミリアリアは軽く扉をノックしたがアイリスの答えは無く、ミリアリアは怪訝そうな面持ちになりながら歩を進めた。

ミリアリアが歩を進めるとマスタールームの扉はミリアリアの存在を関知して自動的に開き、室内に入ったミリアリアは目の前に広がる光景を絶句してしまった。

ゆったりとした寛ぎ空間であった筈のマスタールームの床には夥しい量のライトアーマーや鞘に収まった軍刀等の防具や武器が置かれており、ミリアリアがその光景に困惑しながら応接セットの方に視線を向けるとソファーに座ったアイリスが鞘に収められた軍刀をしっかりと抱き締めながら座っていた。

ミリアリアは座っているアイリスの所に歩み寄ると声をかけようとしたが座っているアイリスは安らかな寝息を立てており、それに気付いたミリアリアが困惑の表情で周囲を見渡しているとソファーの脇に置かれたずた袋が目に入った。

ずた袋の傍らには何枚かの魔龍の鱗が落ちており、それを目にしたミリアリアは驚愕の面持ちを浮かべながら呟いた。

「……まさか、この全てを魔龍の鱗を精錬してっ!?」

驚愕の表情で呟いたミリアリアはアイリスを起こさない様に注意しながら手近な所にあった軍刀の所に移動するとそれを鞘から抜き放ち、滑らかな光沢を放つ白銀の刃を一瞥した後に静かにそれを鞘へと戻した。

(この刀は間違いなく龍剣ドラゴンソードそして恐らくここにある全ての防具や武器も魔龍の鱗が精錬された物)

ミリアリアは胸中で呟きながら鞘に収めた軍刀を静かに元の場所に戻し、その後に静かな足取りで安らかな寝息をたてているアイリスの所へと戻った。

ミリアリアがアイリスの様子を窺うとアイリスは未だに安らかな寝息をたて続けており、それを確認したミリアリアは暫し逡巡した後に頬を赤らめながらアイリスの傍らに腰を降ろしてその姿を見詰めた。

安らかな寝息をたてるアイリスは鞘に収められた軍刀を大切に抱き締めており、それを確認したミリアリアは顔を真っ赤にさせながら呟いた。

「……私は何時も、貴女に貰ってばかりだ」

ミリアリアがそう呟いていると、安らかな寝顔をたてていたアイリスが微かな身動ぎを始め、それによってバランスが崩れたアイリスの上体が傍らに座ったミリアリアにもたれかかって来てしまった。

「……っ!!」

突然の事態に真っ赤な顔のまま身を固くさせたミリアリアだったがアイリスはミリアリアにもたれかかったまま安らかな寝息をたて続け、暫く躊躇った後に背中に手を回してその肩を優しく抱き締めた。

「……本当に、ありがとう、今はゆっくりと、休んでくれ」

ミリアリアがそう小声で囁くとそれが聞こえた様にアイリスの寝顔が柔らかく緩み、ミリアリアはもたれかかってくるアイリスの身体の柔らかな感触と温もり、安らかな寝息にあわせて悩ましく揺れる双丘の谷間に頬を赤らめながら安らかな寝息をたてる魔王を優しく抱き寄せていた。



食糧の収集を終えたミリアリアがアイリスの所に向かうとアイリスはミリアリア達に渡す為に製作した大量の装備の中で安らかな寝息をたてており、ミリアリアは安らかな寝息をたてるアイリスを優しく抱き寄せながら自分の中に確かに存在している魔王への想いを確かめていた……


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