惨劇・残党狩部隊編・侵入
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ダンジョン入口・ロジナ候国軍残党狩部隊
逃走中の高位のエルフ(ミリアリア)の痕跡を追跡中にエルフが逃げ込んだと思われる新規発生したとおぼしきダンジョンへの入口を発見したロジナ候国軍残党狩部隊、彼等は入口付近にテントを張るとエルフ追跡の為にダンジョンへ侵入する準備を整えていた。
鎧を装着し各々が持つ武器の手入れを整える将兵達だったがその規律は緩みがちであり、彼等の何人かに至っては時折手を止めてテントの近くの木に魔力封じの鎖によって縛りつけられている3人の女エルフ達に野卑た視線を向けてさえいた。
再起を期した逃走の最中に捕らえられ虜囚となった彼女達は魔力封じの首輪と逃走防止の為の鉄球付きの足枷を両足首に装着されており、幾度となく激しい凌辱に晒されたその身体はボロ雑巾の様な布切れ端によって僅かな部分が隠されているに過ぎなかった。
汚し尽くされた3人の女エルフ、その内の1人の外見は他の2人と大きく異なっていた。
滑らかな白磁の肌をした他の2人に対して彼女の肌は褐色に染まっており、褐色の肌の女エルフ、ダークエルフのライナ・バンファールは将兵の野卑た視線に気付くと彼等を睨み返した。
魔力を封じられなすすべも無く嬲られるしかない彼女が行ったせめてもの抵抗に対して彼等は嘲りの笑みで応じた後に漸く手を動かし始め、ライナは唇を噛み締めた後に傍らに縛りつけられている2人のエルフ、リーナ・ヘッケンとアリーシャ・フォン・リヒテインを痛ましげに見詰めた。
ライナはリーナ、アリーシャと共にヴァイスブルク伯国第四騎士団に所属してヴァイスブルク陥落の時まで戦い抜き、ヴァイスブルクが陥落した後は森を越えた先に存在しヴァイスブルク伯国とは交友の深いラステンブルク伯国を目指して逃走を開始したのだが、残党狩部隊によって捕らられ、3人ともども凄惨な凌辱によって汚し尽くされたのだ。
快活なリーナと穏和で物静かなアリーシャ、2人は激しい凌辱に汚し尽くされ目から光を喪ってしまい、ライナも激しい凌辱に何度も心がへし折られそうになった。
ライナが辛うじて踏み止まれている理由、それは第四騎士団に同期で入団しダークエルフとして孤立しがちだった自分と分け隔てる事無く接し親友となってくれたリーナとアリーシャの存在があったからである。
そうして懸命に抗っていたライナだったがその精神は度重なる凌辱によってズタボロにされており、嫌でもその事を自覚せざるを得ないライナは何とか脱出の機会を探っていたが、魔力封じの首輪と鉄球付きの足枷は無情にライナ達を縛り付け、ライナが歯噛みしている中、残党狩部隊の将兵達は箍の緩んだ規律のまま準備を終え、それを確認した指揮官は隣に立つローブを被った魔導士に声をかけた。
「準備が終わった様だ、ダンジョンの捜索を頼んだぞ」
「お任せ下さい、見た所発生したばかりのダンジョン、それほど時間をかけずとも概要を把握出来るでしょう」
魔導士はそう返事をするとダンジョンの入口に移動すると杖をかかげ、指揮官はそれを確認した後に準備を終えた部下達に向けて口を開いた。
「魔力捜索を開始する、それが終わりダンジョンの概要が確認でき次第、第三、第五分隊がダンジョンに侵入する、残りの分隊は待機しておけ、標的を発見し抵抗が激しい場合に備えて捕虜のエルフを2人連れていけ、残る反抗的なダークエルフには教育をしてやっても構わんぞ、誰が主なのかをたっぷりとな」
指揮官の声を受けた部下達は雄叫びをあげてそれに応じるとダンジョン侵入を命じられた部下がリーナとアリーシャをダンジョンに連れ込む為に引っ立て、残されたライナは残された部下達の情欲と劣情の視線に晒された」
(……すまない、リーナ、アリーシャ、無力な私を赦して欲しい)
引っ立てられるリーナとアリーシャの姿を目にしたライナは無力感に唇を噛み締めながらその背中を見送り、押し留められなかった悔し涙が一粒滴となってその頬を揺らした。
マスタールーム
「……あの魔導士っぽい男何してるの?」
マスタールーム魔水晶に映し出されているダンジョン入口に展開する残党狩部隊の様子を確認していたアイリスは、入口前に立った魔導士を指差しながら隣に座るミリアリアに問いかけ、ミリアリアは難しい顔付きになりながら口を開いた。
「……恐らくスキャニングの魔法をかける気だろう、スキャニングは半世紀程前に産み出されたダンジョン捜索に使われる魔法だ、習得するのが難しいがダンジョン内に魔力波を放ちダンジョンの規模を確認すると言うダンジョン捜索には欠かせない魔法だ」
「ふーん、便利な魔法ねえ」
ミリアリアの答えを聞いたアイリスがそう呟きながら魔水晶を見ていると魔導士の掲げた杖が眩い光を放ち、それを目にしたミリアリアは渋面を作りながら呟いた。
「これで連中はこのダンジョンの規模を把握した事になる、発生間もないにも関わらず5階層を有する異形のダンジョンの実態を、そんな状況を把握したんだ恐らく慎重に行動するだろうな」
「……さあ、それはどうかしら」
ミリアリアの呟きを耳にしたアイリスは冷たい笑みで残党狩部隊を見ながら口を開き、ミリアリアが怪訝そうな表情を浮かべていると残党狩部隊が予想外の行動を始めた。
魔法をかけ終えた魔導士が結果を指揮官に報告し、指揮官はそれに対して頷いた後にダンジョンに向けて部下達を前進させ始め、そのあまりにあっさりとした反応を目にしたミリアリアは驚きの表情を浮かべながら口を開いた。
「……っど、どう言う事だスキャニングの結果、このダンジョンが異様な事は明白な筈、なのになぜこうも容易く侵入を命じられるんだ?」
「答えは簡単よ、彼等はスキャニングの結果に従っているの」
ミリアリアの驚きの声を聞いたアイリスは楽しげな口調で告げ、それを聞いたミリアリアが怪訝そうな表情で視線を向けるとアイリスは冷たい笑みで魔導士を見ながら言葉を続けた。
「あいつがスキャニングの魔法をかけた瞬間放たれた魔力波を吸収したの、そしてその魔力波と同じ波長の魔力波を返してあげたの、一本道で罠も何も無い出来たばかりのダンジョンの情報と一緒にね」
「魔力波を吸収して同じ波長の魔力波を返す、そんな事が……」
アイリスの言葉を聞いたミリアリアは半信半疑と言った口調で呟いていたが何かに思い至ったらしくその言葉が途中で途切れ、アイリスはミリアリアに視線を向けると頷きながら口を開いた。
「そう、あたしは魔王なのよ、それくらいの芸当何でも無いわ」
アイリスはそう言うと視線を魔水晶に戻し、指揮官の隣に立つ魔導士を蔑んだ視線で見据えながら言葉を続けた。
「……このダンジョンの正体の一端を知った時、どれだけ狼狽えるか見物ね」
ミリアリアがアイリスの呟きを聞きながら魔水晶を見ていると2人のエルフ(リーナとアリーシャ)がダンジョンに引き摺られて行くと同時に残るダークエルフの所に残留する残党狩部隊の将兵達が群がり始め、それを目にしたミリアリアが思わず立ち上がりかけると画像がダンジョン内部の画像に切り替わった。
「……今は、侵入した連中に集中した方が良いわ」
画像が切り替わると同時にアイリスから声がかけられ、それを聞いたミリアリアは囮として先頭を歩かされている2人のエルフを見ながら躊躇いがちに声をかけた。
「……このダンジョンに侵入した者は皆殺しにする気、なのか」
「……当然でしょ、あたしは貴女を追手から護る為にこのダンジョンを造ったのよ」
ミリアリアの問いかけを受けたアイリスは一拍の間を置いた後に答え、その明確な答えを受けたミリアリアが身体を強張らせていると、アイリスは更に言葉を続けた。
「……安心して頂戴、虜囚となってるエルフ達まで巻き込むつもりは無いわ」
その言葉を受けたミリアリアが思わずアイリスの方に視線を向けるとアイリスは少しぎこちなく微笑みながら言葉を続けた。
「あたしが興味があるのは貴女だけ、でも、だからこそ、貴女の嫌がる事をするつもりは無いわ、だから安心して頂戴」
アイリスの少しぎこちない笑みと言葉、それを受けたミリアリアは暫し沈黙した後に躊躇いがちに隣に座るアイリスの手に自分の手を重ねながら口を開いた。
「……すまない、貴女を巻き込みたく無い等と言っていた癖に、今の私は貴女に頼りっぱなしだ」
「……気にしないで良いわよ、あたしは魔王、あたしの行動は魔王であるあたしが好き勝手にやった結果なの、だから貴女が気に病んだり引け目を感じる必要は無いわ」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスはそう言いながら重ねられてきたミリアリアの手を握りながら視線を魔水晶へと戻し、ミリアリアは頬が熱を帯びるのを感じながら同じ様に視線を魔水晶に向けつつアイリスの手を握り返した。
手を握りあったまま魔水晶に映し出された前進する残党狩部隊を見詰めるミリアリアとアイリス、ミリアリアの笹穂耳とアイリスの耳は握り合った手から感じる互いの存在にほんのりと赤く染まっていた。
アイリスがミリアリアを護る為に築いた地下要塞そこにミリアリアを追うロジナ候国軍残党狩部隊が侵入した、勝利に傲り、虜囚を嬲る享楽に現を抜かし、箍が緩んだ彼等はまだ知らない、自分達が自らの手で惨劇の幕を開いた事を……