魔王の要求
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マスタールーム
アイリスから急報を受けたミリアリアはミランダと共に急いでダンジョンへと戻り、アイリスの待つマスタールームに駆け込んだミリアリアは緊迫した面持ちでアイリスに声をかけた。
「生き残りを発見したそうだな」
「……ええ、彼女達よ、心当たりはあるかしら?」
ミリアリアに声をかけられたアイリスはそう言いながらダンジョンに向けて進むマリーカ達が映し出された画像をミリアリアとミランダに示し、それを目にしたミリアリアは思わず身を乗り出してその映像を見詰めながら口を開いた。
「……これはっ!?間違いないマリーカ様だっ!!後ろを進んでいるのはアナスタシア殿で前を進んでいるのは第五騎士団長のエリーゼ・カッツバッハ殿だっ!マリーカ様……よくぞ御無事で」
万感を込めて呟くミリアリアの傍らで画像を見詰めるミランダも同意する様に大きく頷き、その後に先頭を進むカッツバッハを愛しげに見詰めながら小さく呟いた。
「……カッツバッハ、無事で良かった」
耳聡くミランダの呟きを拾ったアイリスが頬を緩めていると、ミリアリアが厳しい表情で口を開いた。
「……マリーカ様達は何かから逃れる様に進んでいる様だが……まさか」
「……ええ、コイツ等が追手よ」
ミリアリアに問いかけられたアイリスはそう言いながらマリーカ達を追撃するラステンブルク猟兵団の猟兵達の姿が映し出された画像を表示させ、それを目にしたミリアリアとミランダは唇を噛み締めながらそれを見詰めた。
「……そうか、ラステンブルクの連中が遂に本性を現したか」
「……予め分かっていた事ではありますが、実際に目の当たりにすると、厳しい物がありますね」
唇を噛み締めながら言葉を絞り出すミリアリアとミランダ、アイリスはそんな2人を穏やかな眼差しで見詰めつつ言葉を続けた。
「彼女達は既に使い魔に誘導させてこのダンジョンに向かって貰っているわ、追撃してるラステンブルクの連中には警告を兼ねたちょっかいをかけてるんだけど指揮官がとんでもない猪で追撃し続けてるの、折角強くて優秀でおまけに美人っていう優良物件な部下がいるって言うのにこれじゃあ宝の持ち腐れよ」
アイリスはそう言いながら渋面で猟兵団の尖兵隊を指揮するリリアンを気の毒そうに見詰め、ミリアリアは指揮するリリアンを見詰めながら口を開いた。
「彼女はラステンブルクとの合同演習の際に面識がある、確か名前はリリアン・アハトエーベネ、単独でドラゴンを倒した者にのみ許される称号、滅龍騎士が冠された猛者だ、だがその腕前だけで無く頭も切れる、知勇兼備の典型とも言うべき人物だ」
「へえ、結構優秀なのねえ、それに滅龍騎士って言う称号にも興味があるわね」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは興味深げな面持ちで呟き、それを耳にしたミランダが滅龍騎士に関する説明を始めた。
「滅龍騎士とは成体以上のドラゴンを単独で倒した事のある者に与えられる称号です、公式にはその階級に格差は無いとされていますが成体のドラゴンを倒した者はブロンズナイト、古成体を倒した者がシルバーナイト、そして最も困難な相手である魔龍を倒せた者がゴールドナイトと非公式に呼ばれる事もあります、それに従えば古成体を倒したアナスタシア殿はシルバーナイトにあたり、リリアン・アハトエーベネはたしか成体を倒した筈ですのでブロンズナイトに当たります、ブロンズナイトでも大変に名誉ある称号で最高位のゴールドナイトに至っては大陸全体を見渡しても十指に満たない程になります」
「……ふうん、それは楽しみね、我がダンジョンに相応しい実力者が初めて訪問してくれそうだわ」
ミランダの説明を聞いたアイリスは満足気に頷いた後にそう呟き、それを聞いたミリアリアは申し訳無さそうな表情になりながら口を開いた。
「その、マリーカ様に関してなんだが」
「……心配しないでも大丈夫よ、エルフの御嬢様達が来てくれたらこのダンジョンも華やかになるし、貴女も喜んでくれる、あたしに取っては一石二鳥の話よ」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは軽くウィンクしながら応じ、それを受けたミリアリアは申し訳無さそうな表情を浮かべつつ口を開いた。
「……すまない、本当に私は貴女に貰ってばかりだ」
「もう、そんな表情しないで、あたしは魔王として好き勝手に行動してるだけなのよ、だから貴女はあたしを徹底的に利用してやればいいの」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは苦笑しながら応じ、その後に何時もとは古となる翳りのある笑みを浮かべつつ言葉を続けた。
「……何度も言うけどあたしは魔王なのよ、そしてあたしは魔王として好き勝手やってるの、だから貴女は気兼ねせず魔王のあたしを良いように利用すればいいのよ、それに御礼は結構貰ってるわよ」
「……っぐ」
アイリスの返答を受けたミリアリアは頬を赤らめながら言葉に詰まり、アイリスがそんなミリアリアの反応を嬉しそうに微笑みながら見詰めていると、ミリアリアは笹穂耳までも赤らめながら言葉を続けた。
「……ほ、本当に欲の無い魔王だな、あ、あれくらいで御礼になるなら、い、よ、要求して貰えれば、い、何時でもや、やってやる」
「……本当?」
ミリアリアの半ば勢い半ば本心の言葉を受けたアイリスは少し躊躇いがちに確認し、何時もの飄々とした様子とは異なる姿を目にしたミリアリアは更に真っ赤になりながら上擦りかけた言葉で応じた。
「……え、遠慮するな、ま、魔王が遠慮するなんて、き、聞いた事が無いから、な、だ、だからえ、遠慮無くよ、要求して、くれ」
(……ああ、私は何故こうも自分で掘った墓穴を深くしてしまうのだろう、い、いや、決して嫌だとか、不本意だとか言う訳では無くてだな、い、勢いに任せてと言うのでは無く、こう、もっとしっかりと自分からだなって何を言ってるんだ私、落ち着け私、狼狽えるな私)
退っ引きならない言葉でアイリスの問いかけに応じてしまったミリアリアは内心で盛大に狼狽えまくり、アイリスはそんなミリアリアの姿を愛しげに見詰めながら口を開いた。
「……じゃあ、ギュッてしてくれる」
「……へ?……そ、そんな事で、良いのか?」
アイリスの要求を聞いたミリアリアがその軽度な要求の内容に戸惑いがちに確認すると、アイリスは仄かに頬を赤らめながら頷き、それを目にしたミリアリアは真っ赤な顔で両手を広げながら言葉を続けた。
「……そ、それくらいならお、御安い御用だ、さ、さあ、来てくれ、そ、それともわ、私が行った方が良いか?」
「……フフ、ありがとう、今回はあたしの方から行かさせて貰うわね」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは嬉しそうに微笑いながら応じた後にミリアリアが広げた手の中に進み、ミリアリアは間近に迫ったアイリスの美貌と魅惑的な肢体に心臓を喧しくならせながらぎこちない手付きで、しかし、しっかりとその身体を抱き締めた。
「……ほ、本当にこんな御礼だけで良いのか?も、もっと要求してくれてもい、良いんだぞ?」
アイリスを抱き締めたミリアリアはその柔らかな感触と仄かに鼻腔を擽るアイリスの甘い薫りに身体を火照らせながら囁きかけ、アイリスは自分を包み込むミリアリアの手の感触とその囁きに淡い瑠璃色の瞳を潤ませながら少し離れた所に立つミランダに視線を向けた。
アイリスとミリアリアのやり取りを見詰めていたミランダはアイリスの視線に気付くと悪戯っぽく微笑んで人差し指を唇に当てつつ退室して行き、アイリスはそれを確認した後に真っ赤になって自分を抱き締めてくれているミリアリアに新たな要求を行った。
「それじゃあ、今から一緒にお風呂に行きましょ……お姫様抱っこで連れてってくれる?」
「……い、今から……そ、それに、お、お姫様抱っこって……あっ」
アイリスの要求を受けたミリアリアは真っ赤になりながらあたふたしていたがこの時になって漸くミランダと一緒だった事を思い出してこれ以上無い程真っ赤になってしまい、アイリスはそんなミリアリアの様子にクスリッと笑いながら真っ赤に染まった笹穂耳に囁きかけた。
「……大丈夫よ、貴女があたしを抱き締めてくれたのを確認してから退室して行ったわ、だから今この部屋にいるのはあたしと貴女だけよ、だから御礼貰えるかしら?」
囁きかけてくるアイリスの言葉をしっとりとした艶を帯びており、ミリアリアはその艶やかさに思わずコクンッと小さく喉を鳴らして頷いた後に右手を離してアイリスの太股の裏に回してその身体を抱え上げた。
ミリアリアに抱え上げられたアイリスは嬉しそうに微笑みながら甘える様にミリアリアの胸元にもたれかかり、ミリアリアは茹でられた甲殻類や蛸の様に鮮やかに顔を赤くさせながらもたれかかるアイリスの耳元に囁きかけた。
「……こ、これで良い、のか?」
「……ええ、ありがとう、お風呂まで運んでくれるかしら?」
ミリアリアの囁きを受けたアイリスは頬を嬉しそうに緩めながら要求し、それを受けたミリアリアは真っ赤な顔で頷いた後に抱え上げているアイリスのしっとりと滑らかな感触に身体を火照らせながら浴室に向けて歩き始めた。
アイリスからの急報を受けて急ぎ帰還したミリアリアに対してアイリスはこれまでの経緯と自身の方針を伝え、アイリスの尽力に感謝するミリアリアに対してアイリスは謝礼を要求した……