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状況掌握

43000PVアクセス及び8500ユニークアクセス突破出来ました、今後も宜しくお願い致します。

ダンジョン説明会になります。


大陸歴438年霧の月十三日・マスタールーム


残党狩部隊の中隊が異形のダンジョンに食い尽くされてから3日の日々が経過し、情勢は少しづつ動き始めていた。

ヴァイスブルクに展開するロジナ候国ヴァイスブルク派遣軍司令部は壊滅した陣営を再建する為に十一日に工兵大隊を第十六騎士団と軽装歩兵2個大隊を基幹とした兵力に護衛させて進発させ、翌十二日には陣営を襲撃したとみられる魔龍を討伐する為に滅龍騎士ドラゴンナイトカスター率いる第七騎士団がヴァイスブルク男爵領国騎士団から派遣された支援部隊を伴い進発した。

また魔龍討伐部隊が進発した後に命令を受け帰還して来る予定の残党狩部隊の一部が未帰還である事が判明した為十三日に第九騎士団がその部隊を捜索する為にヴァイスブルクの森へと出立した。

慌ただしさを増して行くヴァイスブルク周辺の情勢は使い魔達によって刻々とダンジョンにも報せられていたが、アイリスは現状では情報収集に努める事が重要であると判断して監視を続け、ミリアリア達はロジナ候国軍との接触を警戒しつつ食糧を備蓄する為にダンジョン周辺での狩猟と採取に勤しんでいた。

アイリスがマスタールームにてアイリーンから世界情勢を教わりつつロジナ候国軍の様子を監視していると狩猟と採取を終えたミリアリアが同行していたクラリスと共に訪問し、アイリスは入室して来たミリアリアを穏やか笑みで迎えた後に口を開いた。

「おかえりなさい、悪いわね食糧集めとかを任せっきりにしちゃって」

「……ここまで貴女の世話になりっ放しだからな、これくらい何で無いさ、それに、私は貴女に出逢えたおかげで無事だったが筆舌に尽くし難い目に遇った者も多い、こう言う事は気晴らしにもなる」

アイリスの労いの言葉を受けたミリアリアは面映ゆそうに笑いながら返答し、アイリスが頷く事で応じると表情を引き締めながら口を開いた。

「……それで、ロジナの動きはどうなっている?」

「……そうねえ、現在確認されたロジナの部隊は3つよ、1つは叩き潰した陣営の周辺で陣営の再建をしてて、もう1つの部隊はその周辺を捜索してるみたいだから襲撃に協力してくれた同盟者フェデラートゥスの魔龍を捜索してるんじゃ無いかしら、それと今日発見した部隊についてだけど、周囲を捜索しながら前進しているからダンジョンに侵入してきた部隊の捜索が目的だと思うわ、まだどの部隊もこのダンジョンからは距離があるから今の所は監視しつつ長丁場に備えて狩猟や採取をして食糧を備蓄しておけば問題無いと思うわ」

「……そうだな、今は軽軽に動くべきでは無いな」

「……ところでアイリス様、ダンジョンが10階層になったとの事ですが、どの様な状況なんでしょうか?」

アイリスの説明を受けたミリアリアが得心の表情で頷いているとクラリスが恐る恐ると言った様子で問いかけ、アイリスは誇らしげな笑みを浮かべながら口を開いた。

「よく聞いてくれたわね、色々調整してたんだけど漸く態勢が整ったから今日にでも皆に発表する予定だったのだけど、貴女達には前以て教えてあげるわね、まだまだあらごなしだけど以前よりは格段に態勢は整っている筈よ」

(……誰も聞かなかったから聞いてみたんですが、一体どんだけエグいダンジョンにしてしまったんでしょうか、と言うより私も出来れば聞きたく無かったんですけど)

(……よく聞いてくれたなクラリス殿、私は恐ろしくて聞けなかったぞ)

(……助かりましたわクラリス、わたくしも聞こうかと思っていたのですが恐ろしくて聞けませんでしたの)

アイリスの言葉を聞いたクラリス、ミリアリア、アイリーンは聞かされるであろうダンジョンのエグさに既に引きかけながら頷き、アイリスは誇らしげに微笑みながらダンジョンの解説を始めた。

「第5階層までは基本的に同じ構造よ、変更点は第1階層と第3階層に出てくるミミックを6体づつ増やした事くらいかしら」

「……そ、そうか」

「……第1階層でミミックが10体も出てくるんですわね」

「……気にしては敗けですアイリーン様、何しろアイリス様のダンジョンなのですから」

アイリスからサラッと既成の階層の強化を告げられたミリアリアが顔を引きつらせながら応じる傍らではアイリーンとクラリスが小声で語り合い、アイリスはその様子に満足気な表情を浮かべながら説明を続けた。

「第6階層は第3階層と同じタイプの階層になるけどこの階層は一面が氷で覆われた階層よ、出てくるんモンスターはアイスゴーレムや氷蜥蜴アイスリザードに氷蜥蜴の上位種の氷嵐蜥蜴ブリザードリザードそれに氷飛龍アイスワイバーン氷嵐飛龍ブリザードワイバーンよ宝箱は24個で全てミミック、氷魔法や凍結効果を宿した牙や爪を持っているのも第3階層と一緒ね、守護者は一角氷龍ヴァルゴーンで第3階層と同じ様に他のモンスター達も戦闘に参加出来る様になってるわ」

「……取りあえず言える事は私は絶対このダンジョンに潜りたく無い、と言う事だな」

「……わたくしも同意ですわ、と言うよりヴァルゴーンって最低でも20階層くらいからしか出現しない筈ですわ」

「……そう言えば、このダンジョンで倒したモンスターの素材ってどうなるんですか?これだけ上位モンスターが低階層に出てくるとトラウマ級のダンジョンですが素材目当てに高位の冒険者が来る可能性がありますよ」

ミリアリアとアイリーンがドン引きしながらダンジョンへの感想を述べているとクラリスが懸念を告げ、それを受けたアイリスは平然とした口調でその疑問に答えた。

「……素材?そんな物ある訳無いでしょ、ここで倒されたモンスターは倒された瞬間に塵になって消え去る様になっているわ、第1階層で槍をあげるけどそれだけでもあげ過ぎなくらいよ、だから侵入者にはそれ以上何もあげるつもりは無いわ」

「……あげ過ぎって、その槍は確か麻痺とモンスター集めの呪いが付与された普通の槍だろう」

アイリスの答えを聞いたミリアリアはドン引きしつつ声をかけ、それを受けたアイリスは大きく頷いた後に言葉を続けた。

「このダンジョンの目的は貴女を追手から護る為よ、だから魅力的なダンジョンなんかにしちゃってわんさか人が押し寄せて来たら意味が無いでしょ、入る気無くす位に難しいダンジョンじゃなきゃ貴女を護れないもの、それでもまあダンジョンだから最大限譲歩してあの槍をあげる様にしたのよ」

「……そ、そうか……そ、その、ありがとう」

「……フフフ、御礼はしっかり請求するわね」

「……っぐ、ぜ、善処する」

アイリスの説明を聞いたミリアリアが面映ゆげに頬を赤らめながらアイリスに謝意を示すと、アイリスは嬉しそうに微笑みながら謝礼をねだり、ミリアリアが頬を更に赤らめながら応じているとアイリーンが仄かに頬を赤らめながら空咳をした。

「……こ、コホン、と、所でアイリス様、他の階層に関する説明をして頂いて宜しいでしょうか?」

「……フフフ、そうだったわね、魔王のあたしを惑わしちゃうなんて凄いわね」

「……いや惑わせられるのってミリアリア殿だけだと思いますよ、ですからミリアリア殿とは後程ゆっくりとお話頂くとしてダンジョンの説明をお願いします」

「……そうですわね、ミリアリア様には後刻ゆっくりとアイリス様と語らい合って頂くとして説明をお願い致しますわ」

(……理不尽だ、何故私が悪いみたいな話の流れになっているんだ、まったくもって解せぬ)

アイリスとクラリスそしてアイリーンによっていつの間にか蚊帳の外に置かれてしまったミリアリアは内心で皆にツッコミながらも無言でアイリスに話を促し、アイリスは頷きながらダンジョンの説明を続けた。

凍てついた氷原からなる第6階層の下に拡がる第7階層は満々と水を湛えた地底湖と湖面の其処彼処に浮かぶ14の小さな島とそれを結ぶ吊り橋によって構成されており、それを移動してダンジョンの奥を目指す事になる。

湖にはクラーケンやグロスサーペントが気儘に遊弋しており、侵入者達は怪異の遊弋する湖面の上を通る不安定な吊り橋を伝って島から島へと移動して行かなければならない、クラーケンやグロスサーペントは橋に対して攻撃してはこない物の不安定な吊り橋を渡る侵入者達に対しては複数の大砲亀トータスキャノンが石弾を発射し続け、石弾を受けて湖面に落ちた侵入者にはクラーケンやグロスサーペントの餌となる運命が待ち受けている。

石弾を掻い潜りながら島へと到達した侵入者に対して強固な鱗に覆われた装甲蜥蜴アーマーリザードとロックゴーレムの集団が襲いかかり、侵入者は消耗しながらの前進を強いられる事になる。

最後の島には守護獣のアクアドラゴンが待ち受けおり、戦いの最中は大砲亀が援護射撃として大量の炸裂弾を発射してくると言う嬉しくないおまけまで付いている。

第8階層は迷宮ラビリンス階層となっており、モンスターこそ出ないものの複数の分岐と夥しい量の罠、そして28個の宝箱(つまりミミック28体)が侵入者を消耗させていく事になる、消耗を強いられながら進む侵入者達にとってももっとも過酷な障害、それは際奥にある守護獣が待ち受ける部屋に進む扉の解錠である。

扉のよこにある魔力画像には○、◎、△、□、×の5つの印が完全ランダムで表示され、侵入者は次に出てくる印を予想してそれを当てると言う行為を15回連続して成功しなければならないのだ。

当然一度間違えれば最初からやり直しであり、しかも4回間違えた場合はスタート地点に道順をリセットされた状態で戻されると言う悪辣さを誇っている。

そうして漸く到達した守護獣の間には12体のリビングメイルが待ち構えており、10のリビングメイルは何度倒されても蘇って襲いかかり、侵入者は当たりの1体のリビングメイルを倒す事で次の階層へと向かう事が出来るのだ。

因みに12体いるリビングメイルの内1体は動かないがその1体は外れであり、それを攻撃した場合は道順をリセットされた上にスタート地点に戻される(当然扉の解錠もやらねばならない)と言う凶悪さである。

そうして進んだ第9階層、この階層は同盟者フェデラートゥスたる魔龍が統制する階層である。

この階層はヴァイスブルクの森を彷彿とさせる森林地帯であり、この階層ではダンジョン外でテイムされた装甲火蜥蜴、ブラッディマンティス、グロスポイズンサーペントが配置され敵の侵入に備えると同時に繁殖によってダンジョン外に出撃可能な戦力の増強を目指している。

この階層に侵入者があった場合は戦力的に余裕があるアンデッド(倒したロジナ候国軍の兵士達が母体)部隊と随所に配備した32個の宝箱(つまりミミック32体)で迎撃し、その後にテイムした大型モンスター群による迎撃、そして最終的には魔龍が迎撃する事になるが危険と判断した場合は直ぐに退却して侵入者を第10階層に移動させる事になっている。

第10階層、現在の最終階層であるそこは罠が多数設置された一本道となっており、5つの部屋を通過した後にアイリスの待つ部屋へと到達出来る様になっている。

最初の部屋は第8階層で侵入者を苦しめた扉の解錠及びリビングメイルの集団の部屋となっており、解錠条件が第8階層では15回連続だったのが20回連続(そして間違い可能回数は3回に減少)となり、部屋に待ち受けているリビングメイルの数は3倍増である36体に増加している。

第2の部屋は霧に包まれた部屋となっており、魔力の風ですら飛散出来ない濃密な魔力の霧の中に潜んで襲いかかってくるミストドラゴンを倒す事がこの部屋を突破する条件となっている。

第3の部屋では光弾や光線を放つアイアンゴーレムと岩弾を放つ20体のロックゴーレムが待ち受けており、侵入者達は降り注ぐ光線、光弾、岩弾を掻い潜りアイアンゴーレムやロックゴーレムを倒さなければならないのだ、第4、第5階層でのデュラハンとリビングメイルの場合と異なりアイアンゴーレムは何度倒されても再生し、侵入者は20体のロックゴーレムの中にある1体を倒す事で破壊できる、因みに残る18体は倒しても再生し、1体だけいる明白に派手な塗装が施されたゴーレムは倒してしまうと第10階層のスタート地点に戻されてしまうと言うたちの悪さを誇っている。

第4の部屋に待ち受けているのは夥しい数のボーンウォーリアーの集団とそれを操るリッチであり、リッチは毒、麻痺、眠りの何れかの効果を持つ魔力の霧を展開させた後に配下のボーンウォーリアーや魔法で侵入者を攻撃をし、侵入者は倒しても倒しても復活するボーンウォーリアーを突破して絶大な魔力を誇るリッチを倒さねばならない。

それらの部屋を突破した後に漸く到着する第5の部屋、そこは魔水晶の結晶に覆われた幻想的な空間となっており、そこで侵入者を待ち受けているのは意思を持った巨大な魔水晶デモンクリスタルであり、放たれた魔法を反射し高い物理耐性を持つデモンクリスタルは周囲の魔水晶からの魔力でダメージを回復し、侵入者達は魔水晶を破壊してダメージ回復の道を断った上で戦わなければならないが魔法反射と高い物理耐性は消えない為、好むと好まざるに関わらず長期戦を強いられる事となり、それらの障害を排除した後に漸く最大の障害であるアイリスが待つ部屋に到着する事が出来るのだ。

「「…………うわぁ」」

ダンジョンの説明を受けたミリアリア、アイリーン、クラリスはその内容にドン引きし、その反応を目にしたアイリスは満足気に頷きながら口を開いた。

「……フフフ、その反応を見る限り当面はこのダンジョン構成で何とかなりそうね」

「……何とかなりそうも何もまだ第1階層すら突破されていませんわよね」

「……アイリーン様、深い事を気にしてはいけません、何しろアイリス様とミリアリア様なのですから」

「……ちょっと待ってくれクラリス殿、何故私の名前までくっついてるんだ」

アイリスの言葉にドン引きしながら囁き合うアイリーンとクラリスに耳にしたミリアリアは何故か自分まで元凶とされている事に対して小声で抗議し、アイリーンとクラリスはそれに対して不思議そうなに小首を傾げながら言葉を返した。

「……えっ?このダンジョンはアイリス様がミリアリア様の為に作ったダンジョンですわよね?」

「……でしたらミリアリア殿も原因の一端ですし、それにミリアリア殿もアイリス様の事、満更でも無いんでしょう?」

「……っぐ、そ、それは、その、何と言うかだな」

アイリーンとクラリスの言葉を受けたミリアリアは頬を赤らめながら口ごもってしまい、その様子を目にしたアイリーンとクラリスは微苦笑を浮かべた後にあたふたするミリアリアを微笑みながら愛しげに見詰めているアイリスの姿にやれやれと言う様な笑みを浮かべた。



魔王アイリスの目覚めとダンジョンの制作、そしてロジナ候国軍残党狩部隊の相次ぐ壊滅とそれに呼応したロジナ候国軍騎士団の出撃、状勢はゆっくりと、しかし、確実に動き始め、その要因たるアイリスとミリアリアは異形のダンジョンにて流れ行く状勢に目を光らせていた……


ミリアリア「なあ、第6階層のボスについてなんだが……

アイリス「違うわよ、だって背中から虹色の破壊光線出さないもの」

ミリアリア「いや、どう考えても元ネタそれだろう、それと第10階層に出てくるデモンクリスタルなんだが」

アイリス「違うわよ、だって獲物は苦しみながら光になったりしないもの」

ミリアリア「……いや、その答え、もう肯定だぞ」

クラリス「……第7階層の吊り橋って「ジブラルタ○を越えて」ですよね」

アイリーン「第8階層の解錠方法って自称エスパーの方が監修したあんまり評価の高くないゲームが元ネタですわよね」


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