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涙の口づけ・スティリア&クーデリア

節目の40000を超え41000PVアクセスを突破し、更に8000ユニークアクセスも突破出来ました、これからも本作を宜しくお願い致します。

女性同士のキスシーンがありますので閲覧については自己責任でお願い致します。


ヴァイスブルク・闘技場コロシウム


軍議を終えたスティリアが席を立つとリーリャから警備態勢に関する相談をしたとの申し出(もちろん名目)があり、スティリアはそれを快諾するとリーリャと共にヴァイスブルクの城の脇に存在する闘技場コロシウムへと向かった。

闘技場に到着したスティリアがリーリャに案内されて内部を進んでいると医務室の前に数人の女性が佇んでおり、その中に第九騎士団副団長のミサ・シューベルトの姿を確認したスティリアは駆け出したくなる脚を意識的に歩ませながら近付き、ミサに声をかけた。

「……ミサおね……いえ、ミサ殿、彼女の様子は?」

「……取りあえず処置は終わりました、今は休んでおります」

もどかしげに問いかけたスティリアに対してミサは穏やかな口調で応じ、スティリアは安堵の吐息をもらした後にミサの背後にいる2人の女性に視線を向けながらミサに問いかけた。

「……彼女達は?」

「第九騎士団の騎士見習いのリーザ・フォン・モルトケとイリーナ・フォン・ファルケンファインよ、この闘技場で訓練をしていたの、そして、見ていたのよ、何が起こったのかをね」

ミサがそう言うとリーザとイリーナは緊張で青ざめた表情でコクコクと何度も頷き、その様子を目にしたスティリアは2人を安心させる為に穏やかに微笑みながら口を開いた。

「……緊張しなくても良いわ、と言っても無理かも知れないけど、とにかく、貴女達を責めるつもりは一切無いから安心して話して頂戴」

「「……は、はい」」

スティリアの穏やかな笑顔と言葉を受けたリーザとイリーナは安堵の表情を浮かべながら頷き、その後にリーザが意を決した様に話し始めた。

「あたしとイリーナがここを使って訓練していると、か、カスター様がやってきたんです、く、鎖で繋がれたとっても綺麗なエルフの女の人を引きずる様にして連れて来てました、い、イリーナはスティリア様の一騎打ちを目撃してて、だから、直ぐにその女の人がスティリア様と戦ってた人だって気付いたんで……ひっ」

説明していたリーザは聞いているスティリアのエメラルドグリーンの瞳に剣呑な光が宿るのに気付いて思わず言葉に詰まり、リーリャはあやす様にリーザの頭を撫でながら口を開いた。

「大丈夫よ〜、スティリア様は今、ここにはいない塵に殺意抱いてるだけなのよ〜、スティリア様、そんな小動物楽に殺せそうな気配宿してたら〜、話進みませんよ〜」

「っす、すまない、私もまだまだ甘いな、話を続けてくれ」

リーリャに声をかけられたスティリアは慌てて纏いかけた殺気を消しながらリーザとイリーナに声をかけ、それを受けたイリーナが小さく頷いた後に口を開いた。

「……カスター様はその人の鎖を取ると木剣を渡しながらこう言ってました、お前は滅龍騎士と戦えるらしいな、だったら俺様がその実力を試してやるからかかってこい、って、そう言いながらメイスを構えました」

「……メイス、だと?木剣に対してメイスで勝負をしたと言うのか?」

イリーナの説明を聞いたスティリアは溢れそうになる怒気を多大な努力で抑え込みながら質問し、抑えきれなかった怒気を感じたイリーナが若干涙目になりながら頷いているとリーザが恐る恐る説明を始めた。

「……そ、それでカスター様があたしとイリーナに審判をしろって言って来て、それであたしとイリーナの審判の下、カスター様とエルフの女の人との勝負が始まったんです」

「カスター様は両手に持ってたメイスを凄い勢いで振り回してたんですけどエルフの女の人はすっごく軽やかな身のこなしでそれを避けながら木剣でカスター様の右手からメイスを叩き落とし、それから木剣の切尖をカスター様の喉元に突き付けたんです」

「……待ちなさい、カスターは自分が勝ったと言ったのよ、その話なら勝ったのは彼女の筈」

リーザに続いてイリーナが行った説明を聞いていたスティリアは訝しげな表情で声をあげ、それを聞いたイリーナは暫し言い淀んだ後に言葉を続けた。

「わ、私達が判定をしようとした瞬間、カスター様が左手に持ってたメイスでエルフの女の人の木剣を持ってる右手を殴りつけたんです……す、凄く嫌な音が、しました、あ、あの音、まだ耳にこびりついています」

イリーナが小さく震えながら告げた説明を受けたスティリアの脳裏にその情景がまざまざと浮かび、スティリアが込み上げてくる激情を堪える為に砕けてしまいそうな程強く奥歯を噛み締めているとイリーナが泣きそうな顔になって言葉を続けた。

「……わ、私やリーザも驚ろきました、だ、だってどう考えてもあの人の勝ちでしたから、で、でもカスター様はこう言ってました、こ、これは御遊戯じゃ無くて実戦なんだぞ、そんな事も分からない甘ちゃんには俺様が負ける訳無いって言いながらう、腕を押さえているその人のお、折れた腕をま、またメイスで殴って、た、倒れてしまったその人のり、両足にまでめ、メイスを……っぐ……止めなきゃ……ひっぐ……止めなきゃって……ふぐっ……で、でも……ひぐっ……」

イリーナは説明の途中で言葉に詰まると遂にり泣き出してしまい、その姿を目にしたスティリアは優しくその頭を撫でながら口を開いた。

「……あの塵に貴女達の声など届きはしないわ、変な事を言えば貴女達だってただではすまなかった筈よ、だから、自分を責める必要等ないわ」

「……ふぐっ……ひっぐ……ひっ……ふっふえぇぇっ!!」

スティリアの慰めの言葉を聞いたイリーナはスティリアにしがみついて慟哭し、スティリアがあやす様にイリーナの肩を優しく叩いているとリーザが震える声で説明を続けた。

「……そ、それだけじゃ無いんです、か、カスター様はり、右腕と両足を砕かれたその人の10メートルくらい前に木剣を置いて、これは実戦なんだ、だから這いずり回ってでも取って来いって言ったんです、そ、その人は、ひ、左手だけでも、木剣の所までは、這って行ったんです、だ、だけどカスター様は伸ばしたその人の手を踏みにじって、そして、め、メイスでその人の、ひ、左手を……あ、あたしとイリーナはもう見てられなくてか、カスター様の勝ちだって……だ、だけどカスター様は全然聞いてくれなくて、実戦なんだから勝ち負けなんてねえんだよって、ま、またその人の前に木剣を……そ、その人は手も足も砕かれてるのにそれでも這って木剣の所に行こうとして、でもカスター様その人の顔を踏みつけて、い、茨の鞭を持ち出してその人のか、身体を……も、もう見てられなくて、あたしもイリーナも必死になって止めて下さいって……でも……でも……」

「……分かった、もう良い、もう十分よ、辛い話をさせてしまったわね」

涙をボロボロと溢しながら説明するリーザに対してスティリアが優しく声をかけているとリーリャがふんわりとした優しい笑みを浮かべて近付くとリーザの頭を優しく撫で、リーザはリーリャにすがりつくと堰が切れたように泣きじゃくり始めた。

スティリアは慟哭するイリーナもリーリャに預け、リーリャが優しく微笑みながら泣きじゃくりるリーザとイリーナを抱き締める中、少し離れた所に立っているミサの所に歩み寄って囁きかけた。

「……ミサお姉様」

「……酷い物だったわ、両手と両足は折られたと言うよりは砕かれたに近く身体は茨の鞭で滅茶苦茶に叩かれ血塗れ、軍議に召集されたあの塵は彼女達にこう言ったそうよ、ゴミを片付けておけってね、笑っちゃうわよね、自分の方がゴミクズの癖に」

スティリアに呼びかけられたミサはサラッと毒を吐きつつ答え、その後に表情を曇らせながら言葉を続けた。

「……処置はしたけど今の容態では強力な回復魔法はかえって逆効果になるわ、今は軽度の回復魔法をかけてあるから暫く静養して体力を回復させた後により強力な回復魔法をかけるしか無いわ、出来れば、の話ですけどね」

ミサの言葉を受けたスティリアは厳しい表情で唇を噛み、暫し無言で思案した後に決意の表情で口を開いた。

「……彼女を私のテントに運びます、あそこならば彼女もゆっくりと休められる筈です、少なくとも牢獄にいるよりは数倍マシな筈です」

「……本気なの?確かにそれが出来れば最善だけど、ロジナの娘でありながらロジナの国是を是としていなかった貴女が捕虜を、しかもエルフの捕虜を私するなんて」

「……構いません、彼女を助ける為なら道化にでも何にでもなってやります、それくらいで彼女を助けられるなら、安い物です」

「……分かったわ」

ミサの言葉を受けたスティリアは翳りのある笑みを浮かべながら応じ、それを目にしたミサは暫し沈黙した後にそう言うと小声で囁きかけた。

「……今、部屋には防音魔法をかけてあるわ、しっかりと彼女と話し合いなさい、ただし、彼女は消耗してるからあんまり変な事はしないでよ」

「しし、しません、わ、私を何だと思ってるんですか」

ミサのからかい混じりの言葉を受けたスティリアは頬を赤らめながら応じ、その反応を目にしたミサは悪戯っぽくウィンクした後に医務室のドアを示した。

(……全く、リーリャお姉様といい、ミサお姉様といい)

スティリアは内心の動揺を抑えながらミサに頷きかけた後に医務室へ入り、入室したスティリアがもどかしげに複数並んでいるベッドに視線を向けるとその内の1つにクーデリアが横たわっているのを確認すると足音をたてないように注意しながらその傍らに駆け寄った。

ベッドに横たわるクーデリアの両手は副木に固定された上に包帯が巻かれており、その姿を目にしたスティリアの胸中に自責の念が溢れた。

(……私は最低の女だ、自覚しているつもりだったが、私の認識はまだ甘かった様だな、私の為に彼女は汚され、憎むべき敵と売国奴への奉仕を強いられ、そして今またその美しい身体を深く傷つけられてしまった)

「……許して欲しい……そんな戯言……私に言う資格等欠片も存在していない」

スティリアが絞り出すような口調でそう呟いていると閉ざされていたクーデリアの瞼が微かに身動ぎし始め、それに気付いたスティリアが弾かれた様にその顔を覗き込むとゆっくりとクーデリアの瞼が開かれてアメジストの瞳が姿を現した。

「……す……スティ……リア様?」

「……ああ、そうだ、貴女の事を報されて来たんだ」

クーデリアは虚ろな瞳でスティリアを見ながら掠れた声をあげ、スティリアがその声に胸を痛めながらも安堵して応じているとクーデリアのアメジストの瞳に涙の滴が溢れ始めた。

「……ど、どうした、き、傷が傷むのか?」

「……申し訳……ありません」

スティリアが突然の事態に慌てて声をかけるとクーデリアは絞り出すような口調で謝罪し、突然の謝罪にスティリアが硬直してしまっているとクーデリアは涙が溜まった瞳でスティリアを見ながら言葉を続けた。

「……全身全霊をかけて貴女と刃を交えた事は私の誇りでした、ですが、私は敗けました、スティリア様に遥かに劣る、あの男に……私だけで無く、スティリア様の誇りまでも傷付けて……しまいました……申し訳……ありません……こんな……こんな……不様なすが」

「それ以上自分を傷つけるなっクーデリア・フォン・タンネンベルク!!!」

涙を噛み締めながら続けられていたクーデリアの謝罪をスティリアの怒声が遮り、クーデリアが思わず言葉に詰まる中スティリアはエメラルド・グリーンの瞳に大粒の涙を溜めて横たわるクーデリアを見ながら言葉を続ける。

「……頼む……これ以上自分で自分を傷つけ無いでくれ……貴女の戦いの顛末も全て聞いている……辛かった……その話を聞いただけで……今まで貴女が受けてきた屈辱……このふざけた戦いで貴女が受けた痛み……それを考えただけで……私は一生自分を許せない自信がある……だから……頼む……もうこれ以上……自分で自分を傷つけないでくれ……クーデリア・フォン・タンネンベルク……貴女の強さ、凛々しさ、気高さ、美しさ……それは戦った私が一番良く知っている……卑劣な塵に強いられた卑劣な戦いの顛末……それがどうした……そんな物で私と貴女のあの戦いが汚される筈が無い……汚させ等しない……だから……頼む……もうこれ以上自分で自分を……傷つけないでくれ……これ以上貴女のそんな姿を目にしたら……私は……生まれ変わってすら自分を……許せなくなってしまう」

「……貴女は狡いひとですね」

スティリアが溢れかける涙を懸命に押し留めながら告げた言葉を受けたクーデリアはアメジストの瞳からな涙を一筋溢しながら呟き、スティリアは涙を押し留めながらその顔を見詰めているとクーデリアはアメジストの瞳からポロポロと涙を溢しながら言葉を続けた。

「……貴女の国に私の国は滅ぼされました、貴女の国に私の戦友や部下達の多くが倒され、汚されました、貴女の国に私は捕らえられ汚し尽くされました……それでも……私は……貴女だけは憎めません、私の全身全霊をかけた貴女との戦い、あの戦いは私の誇りになってしまいました、強く、凛々しく、気高く、そして美しい、そんな貴女だけはどうしても憎めません、貴女が優し過ぎるから……貴女の優しさが心地好過ぎるから……」

クーデリアが涙を溢しながら告げる言葉を受けたスティリアのエメラルドグリーンの瞳から遂に涙の滴が溢れ、クーデリアは哀しく微笑みながら言葉を告げた。

「……スティリア・フォン・ロジナ……貴女はどうしてスティリア・フォン・ロジナ……なんですか?」

クーデリアの哀しい微笑みと想いの言葉にスティリアの堰は崩壊し、スティリアはエメラルドグリーンの瞳から大粒の涙を溢しながら想いを返した。

「……クーデリア・フォン・タンネンベルク……貴女は何故……クーデリア・フォン・タンネンベルク……なんだ?」

大粒の涙を溢しながら想いを返すスティリアをクーデリアが涙を溢しながら見詰め、2人は涙を溢しながら許されざる想いびとを見詰め合った。

一拍、二拍、三拍、永遠とも言える程長くもあり、刹那と呼べる程短くもある時が経過した後にスティリアは涙を溢しながら己の顔を近付け、クーデリアは涙を溢しながら弱々しく声をあげた。

「……スティリア様、私は汚し尽くされています」

「……貴女の美しさを汚さし尽くす事等誰にも出来はしない」

スティリアはクーデリアの弱々しい拒絶の声を一太刀で斬り捨てながら更に顔を近付け、クーデリアは嬉しそうにはにかんだ後に瞳を閉ざしてスティリアを迎え入れた。

スティリアは互いの唇が重なり合う寸前にエメラルドグリーンの瞳を閉ざし、刹那の間を置いた後に2人は涙に頬を濡らしながら唇を重ね合った。



軍議を終え傷ついたクーデリアの元へと駆けつけたスティリア、彼女はそこでクーデリアを見舞った事態の顛末を報される。

スティリアとクーデリア、惹かれ合う2人の前に横たわるのは冷酷な現実であり、2人は許されざる互いへの想いに涙しながらそれでもその想いを添い遂げるべく涙に濡れた口づけを交わした……


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