惨劇・残党狩部隊中隊編・奪還
31500PVアクセス及び6300ユニークアクセス突破出来ました、今後も宜しくお願いします。
残酷な描写がありますので閲覧は自己責任でお願い致します。
今回登場した新たな使役獣の元ネタですがアンド○ザウルスになります。
ダンジョン前・残党狩部隊中隊本部
死霊騎士率いるアンデッド、ブラッディマンティス、魔狼の混成部隊による統制された襲撃に蹂躙される第2捜索隊、彼等の惨状はアイリスの拡声魔法によってダンジョン前に待機している部隊に大音量で示されていた。
「おいっ軍曹はっ!?軍曹は何処行ったんだっ!?」
「軍曹は死んじまった早いとずらか……ぎゃあぁぁぁっ!!!」
「くそっ、隊列をっ!!隊列を崩すなっ貴様等死にたっ……ぐげえっっっ!!」
「く、来るなっ!!来るなっ!!っぎひゃぁぁぁっ!!」
「くそっ、何なんだっ!!一体何なんだこのダンジョンはっ!?」
蹂躙される第2捜索隊の断末魔の叫びは周囲を幾重にも包みこみ、将兵は青ざめた顔をしながらその声を聞いていた。
おぞましい輪唱は中隊本部をも容赦無く包み込み、中隊長やエルフ兵、魔導士達が立ち尽くし青ざめた表情でそれを聞く中、彼等に嬲り尽くされていたイライザは大木に縛り付けられた状態のまま冷めた表情でその様子を見詰めていた。
(……無様だな、部下の惨状になす術を知らぬとは、もっとも、このダンジョンの異常さを慮れば無理も無い事かも知れないが)
自分を嬲り尽くしていた彼等の急変ぶりに溜飲を下げていたイライザだったが聞こえてくる第2捜索隊の断末魔の叫びからこのダンジョンの異常さも察しており、先発した捜索隊に連れられて行ったエリーゼの運命についても暗い見通しを立てていた。
(この様子ではエリーゼはやはり……このままコイツ等が手を拱いていれば何れコイツ等と私も喰らい尽くされてしまうだろうな……願わくばその時はエリーゼを喰らい尽くしたモンスターに喰らい尽くされたい、そうすればエリーゼと1つになれるからな)
イライザが暗い表情で覚悟を決めた刹那、その覚悟を試すかの様に凄まじい爆発音が連続し、立ち尽くしていた中隊長は狼狽えた表情で周囲を見回しながら口を開いた。
「……い、一体何事だっ!?」
「……も、モンスターですっ、あ、装甲火蜥蜴にグロスポイズンサーペント、そ、それに見た事も無いモンスターもいますっみ、南と西より接近中ですっ!!」
「な、何だとおぉっ!?」
中隊長が喚いていると血相を変えた伝令が飛び込んで来て凶報を告げ、それを聞いた中隊長が目を見開いて驚愕の叫びをあげる中更なる爆発音が連続して響き渡った。
機動集団
第2捜索隊の断末魔を聞かされて呆然としている所を第1及び第2打撃集団に襲撃された中隊本部は見ている此方が憐れみを感じる程に狼狽え、潜伏した木立の合間からその様子を見ていたアイリスは冷酷な笑みを浮かべながら口を開いた。
「随分しっかりと狼狽えてくれてるわね、無様過ぎて滑稽なくらいよ」
「……なら、そろそろ頃合いだな」
アイリスの呟きを聞いたミリアリアは剣の柄に手をかけながら声をかけ、アイリスは頷く事で応じた後に緊張した面持ちのエリーゼに向けて穏やかな口調で声をかけた。
「そろそろ突っ込むわよ、周囲の雑魚はあたし達が片付けるわ、貴女は周囲を気にせず、大切な女を救助する事だけに集中しなさい」
「……はい、分かりました」
アイリスの言葉を受けたエリーゼは自分を落ち着かせる為にゆっくりと深呼吸しながら返答した後に腰にさしたレザイエームの柄を握り、アイリスは頷いた後に後方に控える支援集団に視線を向けながら口を開いた。
「それじゃあ行ってくるわね、双角龍が出現して攻撃を始めたらそれに呼応して使役獣に攻撃を命じて頂戴、潜伏してる装甲火蜥蜴隊がそれに呼応してくれるわ」
「分かりました、御武運を」
アイリスの言葉を受けたラリッサは一礼しながら激励の言葉を送り、アイリスは頷いた後に視線を混乱する中隊本部に移した。
混乱する中隊本部では中隊長が何事かを喚きたて、それに呼応する様に中隊本部を守備していた軽騎兵が慌てた様子で攻撃を受けている部隊への援軍として動き始めた。
「今よ、行くわっ」
中隊本部の意識が激しい攻撃と進発した援軍に集中したのを見てとったアイリスは短くミリアリアとエリーゼに告げた後に大鎌を手に駆け出し、ミリアリアとエリーゼも各々の得物を手に駆け出してその背中を追った。
アイリスとミリアリアとエリーゼは立ち並ぶ木々の合間を軽やかな足取りで駆け抜けて瞬く間に中隊本部との距離を詰めて行き、激しい戦闘に気を取られていた哨兵は近付く気配に気付いてその方向に視線を向けようとしたがそれよりも前にアイリスが大鎌を軽やかに振るってその首を刎ねた。
アイリス達は驚愕の面持ちを浮かべたまま切断され首が転がる中、風の様にその脇を駆け抜け、彼女達が駆け抜けた後に首を喪った胴体が音も無くその場に崩れ落ちた。
「フラムランスッ!!」
中隊本部に進入したミリアリアは鋭く言霊を放ち、放たれた言霊は炎の槍となって魔導兵小隊長の付近に着弾して彼を吹き飛ばす中アイリスも言霊を解き放った。
「ダーク・インフェルノ」
アイリスの言霊に従い複数の黒い焔の火球が周囲に放たれ、火球の直撃を受けた数人が黒い焔に包まれる中、イライザを嬲り続けていた童顔の魔導士にも火球が直撃した。
「ぎぃやぁぁぁっ!!!あづいっ!!あづいっ!!あづいっ!!あづいっ!!ぎえろっ!!ぎえろっ!!ぎえろっ!!な、なんでっ!!なんでっ!!なんでぎえないっっっ!!」
「その程度の魔力で消える訳無いでしょっ死ぬまで悶え苦しみなさい」
アイリスが黒い焔に全身を焼かれ悶え苦しむ童顔の魔導士に冷たく告げているとその傍らをレザイエームを手にしたエリーゼが駆け抜けて行き、アイリスがその姿と彼女が向かう先の大木に縛り付けられているイライザの姿に目を細めているとその隙をついてエルフ兵の1人が魔力の炎を宿した長剣で斬りかかってきた。
炎を宿した長剣の刃は無防備なアイリスの魅惑的肢体に向けて降り降ろされたがアイリスはエルフ兵の方に視線を向ける事無く降り降ろされた炎を纏う刃を大鎌の刃で受け止め、完全に不意を衝いた筈の一撃を容易く受け止められたエルフ兵が驚愕の表情を浮かべているとアイリスは冷たい口調で告げた。
「……邪魔しないでくれるかしら」
「……ッゲハッ!!」
アイリスはそう言いながら受け止めた刃を跳ね上げさせるとその勢いを利用して大鎌の石突きでがら空きになったエルフ兵の顎を強かに打ち、顎を砕かれたエルフ兵は血反吐と砕けた歯を吐き出しながら仰向けに転がり白目を剥いて気絶してしまった。
アイリスは気絶したエルフ兵の身体に黒い光の枷を巻き付けて捕縛し、その後に駆け出そうとしたが残る2人のエルフ兵と優男風の魔導士がアイリスに対して魔法を発射した。
「ストームランスッ!!」
「サンダーアロー」
「アイスブリッド」
エルフ兵の放った魔力を宿した暴風と雷に優男風の魔導士の放った氷弾はアイリスの身体を直撃する前に掻き消されてしまい、アイリスはその光景に息を呑んだエルフ兵達と優男風の魔導士に向けて凄惨に微笑いかけた。
アイリスの凄惨な微笑いを目にしたエルフ兵達と優男風の魔導士達は背筋を凍らせながら再び魔法を放とうとしたが、その機先を制する様にミリアリアが3人に向けて襲いかかった。
ミリアリアは魔力の風を宿した剣の刃を優男風の魔導士に突き刺した後に刃に宿した魔風を爆ぜさせ、体内をズタズタに切り裂かれた優男風の魔導士は絶叫を迸らせながら骸と化した。
2人のエルフ兵は慌てて長剣の切尖をミリアリアへと向け繰り出したがミリアリアは僅な動作で繰り出された繰り出された2本の切尖を跳ね上げ、バランスを崩してよろめいたエルフ兵の所に駆け寄ると長剣を手にした手を一太刀で切断してしまった。
肘の近くから腕を切断されたエルフ兵は傷口を押さえて絶叫してのたうちまわり、ミリアリアはのたうち回るエルフ兵を無視して残るエルフ兵の所に向かおうとしたが、そのエルフ兵は既にアイリスによって長剣を持っていた手を肩口から切断されて苦痛にのたうち回っており、アイリスはのたうち回る2人のエルフ兵を黒い光の枷で捕縛した後にウィンクしながら口を開いた。
「助かったわ、ありがとう、彼女は上手くやってるかしら?」
「……貴女の事だから大丈夫だろうとは思ったんだが彼等の所業に対して多分に含む所があったのでな、それと、エリーゼの事なら心配無い」
アイリスの言葉を受けたミリアリアは面映ゆそうな表情で応じながらイライザの元へと駆け寄るエリーゼの姿を示し、アイリスは頬を緩めながらその光景を見詰めた。
「イライザ様!」
「……エリーゼ?」
イライザの所に駆け寄ったエリーゼは瞳に涙をためながら万感の想いを籠めて呼びかけ、2度と逢える事が無いと考えていた最愛の女の姿と声を見聞きしたイライザが掠れ気味に声をあげると、エリーゼが瞳に涙をためたまま頷きながらレザイエームの刃を鎖に当てると白銀の刃は魔力で強化された鎖を紙の様に容易く切り裂いてイライザの戒めを解き放った。
戒めから解き放たれたイライザは大木に背中を預ける事で消耗しきった身体が崩れ落ちるのを防ぎ、エリーゼはイライザの傍らに近寄ると涙をためた瞳で疲労困憊した姿を見詰めながら口を開いた。
「……イライザ様、大丈夫、ですか?」
「……んっ……くっ……だ、大丈夫……だ……んっ……心配……するな……エリー……ゼ」
イライザの問いかけに気丈に答えるイライザだったが激しい責め苦に陥落寸前に追い込まれていた名残からその声は蕩けかけており、エリーゼがその蕩けかけの声と引き締まり成熟した肢体をがんじがらめに縛る催淫魔法と感覚増幅魔法の術式に零れそうになる涙を懸命に押し止めているとイライザは愛しげにエリーゼを見ながら掠れた声を続けた。
「……御前を……護っていた……つもりだった……だが……違ってた……御前が居てくれたから……私は耐えられた……そして今……こうして、御前に助けられた……私は……御前に……護って貰っていたんだな……ありがとう……エリーゼ」
「……い、イライザ様」
イライザの言葉を聞いたエリーゼは必死に声を絞り出した後に瞳から大粒の涙をボロボロと溢しながらイライザを抱き締め、イライザは昂り鋭敏な身体を包み込む愛しい女の感覚に蕩け堕ちそうになりながらもエリーゼの頭を優しく撫でた。
「……うん、大丈夫みたいね」
その光景を目にしたアイリスが満足げに呟いていると急を知り慌てて反転した軽騎兵小隊が駆け付け、それに気付いたアイリスは凄惨な笑みを浮かべながらミリアリアに声をかけた。
「それじゃあ仕上げと行きましょ」
「ああ、そうだな」
アイリスの言葉を受けたミリアリアはそう言いながらカプセルを取り出し、駒音高く駆け寄ってくる軽騎兵隊目掛けてそれを投げながら口を開いた。
「頼むっ力を貸してくれ」
ミリアリアがそう言うとカプセルはそれに呼応する様に眩い光を放ち、それが治まると同時に巨大なモンスターが姿を現した。
背中が鋭い棘に覆われた重心の低い四足歩行の体躯に長くしなやかな尾、そして前方に突き出された緩やかな湾曲を描く巨大な2本の角が精悍な印象を与えるモンスター、双角龍は突然の出現に混乱する軽騎兵小隊に向けて巨大な咆哮を轟かせ、狂乱状態に陥った馬が軽騎兵達を降り落とし始めるなか瞳から光線を発射した。
双角龍の両眼から発射された光線は途中で交わると1条のより太い光線となって混乱する軽騎兵小隊を直撃して炸裂し、その一撃で軽騎兵の大半が一緒くたに吹き飛ばされてしまった。
「……あ、相変わらず、凄いな、貴女の力は」
「この子は大人しいけど戦闘力はずば抜けてるのよ、あたしの自信作よ」
双角龍の凄まじい戦闘力を目の当たりにしたミリアリアは呆れと感嘆を相半ばさせながらアイリスに語りかけ、アイリスが誇らしげにそれに応じていると支援集団のメタルゴーレムと装甲火蜥蜴隊も攻撃を加わり、アイリスはその光景に満足げに頷きながらミリアリアに話しかけた。
「後は残敵掃討ね、取りあえずあそこで腰抜かしてる中隊長を捕虜にしましょ」
「ああ、そうだな」
ミリアリアはそう応じた後に呆然とした表情でへたり込む中隊長の所へ油断無い足取りで近付き、アイリスはその背中を愛しげに一瞥した後にエリーゼに支えられながら此方へと歩み寄ってくるイライザの方に向けて歩き始めた。
踏み込んだ新手の捜索隊が惨劇に見舞われたのに続き、ダンジョン前に設置された中隊本部にアイリス率いる異形の軍勢が押し寄せた、押し寄せた異形の軍勢は残る残党狩部隊を瞬く間に蹴散らし、彼等に捕らえられ汚し尽くされていた捕虜は想い女の手によって奪還された……
アイリス「この使役獣は大人しいけど目が怪しく緑に光ってたり、半透明の円盤の光線で怪獣になったりする人を見かけると激怒して襲いかかっちゃうから注意してね」
ミリアリア「そんな人間いてたまるか、と言うかそれイン○ーダーだろうが」