ダンジョン作成
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国を喪い逃走を続けていたエルフの兵士ミリアリアと目覚めた魔王アイリス、異色の組み合わせとも言うべき2人は互いの名を名乗り合った後も言葉を交わし続けていた。
「……国の滅亡ねえ、立ち入った事を聞いてしまうけど、何があったの?魔物にでも襲撃されたの?」
石棺から起き出したアイリスは大きく身体を伸ばしながらミリアリアに問いかけ、ミリアリアは顔をしかめつつ口を開いた。
「我がヴァイスブルク伯国を滅ぼしたのはロジナ候国だ、我が国が所属している神聖ラインラント君主連邦帝国の有力国七選帝候国の一つだ」
「あらあら、同胞に襲いかかるなんて、魔物より質の悪い連中ね」
ミリアリアの答えを聞いたアイリスは呆れた様な笑みと共に呟き、ミリアリアは小さく肩を竦めながら言葉を続けた。
「もともとロジナ候国は極端なまでの人間至上主義国で獣人の国で同じ七選帝候国の一員でもあるレーヴェ候国やエルフの国である我が国等の亜人の国の存在を煙たがっていたからな、我々としても決して無警戒だった訳では無かったのだがまさか問答無用で攻撃してくるとは思わなかった……と言うのは敗者の詭弁だな」
ミリアリアはそう言うと石棺の置かれている台の端に腰を降ろし、アイリスはその傍らに歩を進めながら口を開いた。
「そして、貴女の国は滅ぼされ、貴女は逃走の最中にあたしの眠る洞窟に迷い込み、そしてあたしを眠りから解き放った」
「……寝所を荒らし、貴女の眠りを妨げてしまった事については、侘びのしようも無い」
アイリスの言葉を受けたミリアリアは表情を曇らせながら返答し、アイリスはミリアリアの隣に腰を降ろすと愉快そうに笑いつつ言葉を続けた。
「本当に貴女は面白いわね、意図せず魔王を目覚めさせてしまったのなら、普通は目覚めたあたしを問答無用で攻撃してくる筈なのに、そんな事をせず逆に謝ってくるなんて、魔王に謝ったりしたら危険じゃないの?」
「確かに危険かも知れないな、魔王にそんな事をすればそのままつけこまれ取り込まれるかも知れない、だが、今の私は国を喪いさ迷う敗残兵に過ぎない、今何らかの僥倖で貴女から逃れ得たとしても敵が貴女からロジナ候国軍の残党狩に代わるだけの話だ、ならば貴女に方が遥かにマシだ、愚かな墓荒らしに鉄槌を下す代わりに、愚かな墓荒らしの言い分に耳を傾けてくれている貴女の方が」
アイリスの言葉を受けたミリアリアは諦念と達観が混ざり合った笑みを浮かべながら答え、アイリスは笑みを更に深めつつ言葉を重ねた。
「……フフフ、本当に面白いわ貴女って、やっぱり最初に貴女を見た時に感じた事は間違いじゃ無かった様ね」
「感じた事?」
アイリスの重ねた言葉を聞いたミリアリアは訝しげな表情を浮かべつつその中の一句を反芻し、アイリスは妖艶な笑みを浮かべて頷きながら言葉を続けた。
「……貴女は一つ思い違いをしているわ、普通のあたしだったら眠りを妨げた愚かな墓荒らしに遠慮等しない、話等聞かず報いを受けて貰うわ、そうしなかった理由はたった一つ」
そう言うとアイリスは額が触れ合いそうな程自分の顔をミリアリアの顔に近付け、突然の行動に身体を強張らせたミリアリアの顔を至近距離から見詰めつつ言葉を続けた。
「……まるで絵画から出てきた様に綺麗で凛々しいエルフの女兵士、そんな貴女と話がしてみたかった、それが理由よ」
「……っな!?」
アイリスの口から唐突に溢れた容姿の賞賛を受けたミリアリアは真っ赤になりながら驚きの声をあげ、その反応を目にしたアイリスは蠱惑の笑みを浮かべて真っ赤になったミリアリアの顔を至近距離から見詰めつていると、ミリアリアは恥ずかしげに顔を俯かせながら口を開いた。
「……か、からかわないでくれ、わ、私は武骨な女なんだぞ」
「……あらあら、勿体ない、貴女の美貌だったら山ほど言い寄ってくる輩がいるでしょうに」
俯いたミリアリアが消え入りそうな口調で告げた言葉を受けたアイリスは呆れ気味に呟きながら手を伸ばすと、俯いてしまったミリアリアの顎にしなやかな指先を添えると軽く力を込めて顎をあげさせ、真っ赤になったミリアリアの顔を見詰めながら言葉を続けた。
「……澄んだ凛々しい瞳に絹糸みたいな美しい髪、少なくともあたしは貴女をほって置かないわ、だって初めて貴女を見た時あたしは一瞬女神かと思ったもの」
「……っな、め、め、めがっみっ!?」
アイリスの告げた言葉に狼狽するミリアリアは顔どころか笹穂耳まで鮮やかな朱に染まり、その様子を目にしたアイリスは瑠璃色の瞳に細めながら言葉を続けた。
「フフフ、何時もの凛々しい顔も素敵だけど、照れて真っ赤になった顔もとても可愛い、魔王のあたしをここまで惑わせ惹き付けるなんて、やっぱり貴女は女神なのね」
「か、からかうな……さ、さっきも言っただろう、私は不調法な武骨者だ、生来のお転婆で男勝りな気質が騎士団長になるまでに行き着いてしまったんだ、だ、だから綺麗だとか、可愛い、だとか、そんな事……」
アイリスの言葉を受けたミリアリアは真っ赤な顔でもごもごと呟き、アイリスはそんなミリアリアの反応を楽しげに見詰めていたが、次の瞬間には緩んでいた表情が引き締まり、空気が変わった事を察したミリアリアは戸惑いの表情を浮かべながらアイリスに問いかけた。
「……どうした?」
「……誰かがここに近付いているわね、人数はおおよそ50名前後ってとこかしら、殆どは人間だけど何人かエルフもいるわね、ひどく消耗してるけど」
「……ロジナ候国の残党狩だ、かなり引き離したつもりでいたが、見込みが甘過ぎた様だな、消耗したエルフは虜囚とされたのだろう、どんな目にあったかは、聞かずとも分かるだろう」
アイリスからこちらに接近している集団のミリアリアはそう言うと唇を噛み締め、アイリスは小さく頷いた後に更に言葉を続けた。
「魔狼の反応も幾らかあるわ、多分、それで逃走するエルフを追跡しているのね、人間至上主義を掲げてる癖にこう言う時は魔物の力に頼るのね、それにエルフの魔力反応も妙な反応してるわ、多分魔力制限や魔力封じを施し抵抗出来なくさせてるんでしょうね、感心するわ、感心し過ぎて反吐が出そう」
アイリスは嘲りの笑みを浮かべながら呟き、ミリアリアはそれを聞き終えるとゆっくりと立ち上がりながら口を開いた。
「……連中はここを見つけられると思うか?」
「……どうかしら隠匿の魔法はかかっているけどそこまで強くは無いから魔狼が貴女の痕跡が消えた辺りまでは誘導して、そこから魔力捜索されたら見つかる可能性が高いわね」
ミリアリアの問いかけを受けたアイリスはそう答えながら立ち上がり、その答えを聞いたミリアリアは静かな口調で言葉を続けた。
「……そうか、なら、私はここから出て行く、すまないが洞窟の入口を開いて貰えるか?」
「あたしの話、聞かなかったのかしら?あたしは追手が集団で近付いているって言ったつもりなんだけど」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは眉を潜めながら言葉を返し、ミリアリアはゆっくりと頭を振った後に言葉を続けた。
「勿論聞いていた、追手の精細まで教えて貰い感謝している、やり過ごせるなら申し訳無いが甘えさせて貰うつもりだったが見つかる可能性が高いなら甘える訳にはいかない、これは私の戦いになる、だからこれ以上貴女に甘え、貴女を巻き込む訳にはいかない」
ミリアリアはそこで一度言葉を区切った後にアイリスを見詰め、アイリスはその視線を受け止めながら口を開いた。
「……逃げ切れると、思ってるのかしら?」
「無理だろう、何人から道連れに出来るだろうが所詮はそこまでだろう」
「どんな目に遭うか分かっているわよね」
ミリアリアに問いかけたアイリスは推し測る様な視線でミリアリアを見詰めながら更に問いかけ、ミリアリアはゆっくりと頷きながら言葉を続けた。
「……確かに私は不調法な武骨者だ、だが、何も知らぬ程初心なつもりも無い、恐らく騎士団長として培ってきた矜持も私の心も汚し尽くされ、破壊し尽くされてしまうだろう」
「……それでも行く気なの?」
ミリアリアが淡々と告げた返答を聞いたアイリスは静かな口調でミリアリアの意思を問いかけ、ミリアリアは頷いた後に言葉を続けた。「私は勝手にここに上がり込んだ上に貴女の眠りを妨げた、しかも厚かましい事にこの窮状を逃れられるならば更に甘え様とまでしていた、これ以上貴女と共にいれば貴女もこの戦いに巻き込んでしまう事になる、だから、私はここを出るつもりだ」
アイリスは淡々と告げられる決意を無言で聞きながらミリアリアを見詰め、ミリアリアは一度言葉を区切った後に恥ずかしそうにはにかみながら言葉を続けた。
「それと、綺麗とか、可愛いとか行って貰えて、嬉しかった、私だって一応女だ、自分の容姿を賞賛されるのは、嬉しい、ありがとう、目覚めさせた挙げ句に出ていく等勝手極まりないが、許して欲しい」
「……気にしなくていいわ、折角目覚めたのだもの、魔王らしく好き勝手にやらせて貰うわ」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは静かな口調で告げながら右手をミリアリアに差し出し、ミリアリアは左手を掲げてる差し出されたアイリスの右手を握った。
「最後に話せたのが貴女でよかった、あり」
「言わせないわ、勝手にサヨナラもありがとうもね」
アイリスは冷気が籠った声でミリアリアの言葉を遮ると握った手に力を込めてミリアリアの身体を自分に引き寄せよると左手を使ってミリアリアの身体を抱き止め、唐突にに抱き寄せられてしまったミリアリアは慌てて口を開いた。
「……っな、何を!?」
「言った筈よ、あたしは魔王だと、そして、目覚めたのだから私の好き勝手に生きると」
アイリスはミリアリアがあげた戸惑いの声にそう応じ、その後に間近に迫ったミリアリアの顔を見詰めながら言葉を続けた。
「綺麗で、凛々しくて、そして可愛らしいエルフの女兵士さん、貴女は魔王のあたしを惑わせ惹き付けた、一目見たその瞬間から、貴女と言う存在に魔王の筈のあたしは惑わされ、惹き付けられ、埋め尽くされた」
「……っ!!」
アイリスの口から溢れた想いの言霊を受けたミリアリアは笹穂耳まで鮮やかな朱に染まり、アイリスは真っ赤になったミリアリアの顔を楽しげに、そして愛しげに見詰めながら言葉を続けた。
「だから、あたしは貴女を離さない、一目見た瞬間にあたしの中を埋め尽くしてしまった貴女を決して離しはしない」
アイリスは真っ赤になったミリアリアを抱き締めながらその耳元に囁きかけ、真っ赤になったミリアリアが状況の変化についていけず硬直する中、ゆっくりと右手を掲げた。
「……ダンジョン・クリエイティブ」
アイリスが言霊を解き放ちながら掲げた右手の指をパチンッと鳴らすと洞窟の全体がが一瞬にして滑らかな光沢を放つ石板によって覆われてしまい、その様子を目の当たりにしたミリアリアは我に帰ると周囲を見ながら驚きの声をあげた。
「……こ、これは、一体!?」
「……造り換えたのよ、洞窟を、ダンジョンにね」
「だ、ダンジョンに!?」
アイリスが事も無げな口調で返した答えを受けたミリアリアは驚愕の声をあげ、アイリスは悪戯っぽく微笑みながら言霊を重ねた。
「あたしは今、目覚めたばかりで本調子とは言えない、それでもあの程度の数ならどうとでもあしらえるけどあまり気乗りしない、かと言ってあの程度の連中から逃げるって言うのも癪にさわるし貴女は戦いと逃走で消耗しているから無理はさせたくない、だからこの洞窟をダンジョンに造り換えて連中を迎撃するのよ」
悪戯っぽく微笑んだアイリスは事も無げな口調で今後の方針を伝え、それを聞いたミリアリアはアイリスの腕に包まれながら唖然とした表情でダンジョンへと造り換えられてしまった周囲を見渡した。
目覚めた魔王アイリスと言葉を交わしていたミリアリアに告げられた接近する追手の存在、その存在を知ったミリアリアは己の運命を察した上でアイリスの前から去ろうとしたが、アイリスはそんな彼女を引き止め、彼女を護る為に洞窟をダンジョンへと造り換えて迫り来る追手に備えた……