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勝者の驕慢

節目の20000PVアクセスを突破し4500ユニークアクセスも突破出来ました、今後も宜しくお願いします、なお本作は百合作品でありますので百合ップルが沢山出てきます。閲覧につきましては自己責任でお願い致します。


大陸歴438年霧の月九日夕刻・ヴァイスブルク


激しい攻防戦の末に陥落し滅び去ったヴァイスブルク伯国の本拠ヴァイスブルク、激しい戦いの傷痕が其処彼処に残る街並みは勝利を祝うロジナ候国軍の将兵で溢れ、住人は閉じ籠った家から勝ち誇る彼等を暗い面持ちで見詰めていた。

勝利に酔しれる将兵の一部は虜囚となった女エルフの兵士や民家から引きずり出した女エルフを弄び、彼女達の悲痛な叫びは将兵の揚げる歓呼の声に呑み込まれていた。

ヴァイスブルクの城でも歓呼の声と虜囚となった女エルフ達の悲鳴が重なり合っており、大広間では戦後処理の為の条約妥結式が執り行われていた。

ロジナ候国軍ヴァイスブルク派遣軍司令官ナルサス・フォン・ノルティックとヴァイスブルク伯爵の甥でヴァイスブルク伯国臨時代表アロイス・フォン・ヴァイスブルクは条約書にサインをした後ににこやかな表情で握手を交わしその姿を目にした出席者達の間から歓声と拍手が上がった。

侵略者と売国奴が締結した条約、ヴァイスブルク条約は要約すると以下の内容となる。


第1条・ヴァイスブルク伯爵家は連邦瓦解を謀った罪により断絶としヴァイスブルク伯国は廃国とする。


第2条・身の危険を顧みずこの陰謀を報せた功労者アロイス・フォン・ヴァイスブルクを新たに男爵に任命し、旧ヴァイスブルク伯国領をヴァイスブルク男爵領国として統治する事を許す。ただし保有可能軍備限度は伯国時代の10個騎士団では無く男爵領国保有限度の5個騎士団までとする。


第3条・旧ヴァイスブルク伯国の残党の活動が活発であるので当面ロジナ候国軍が駐留しヴァイスブルク男爵領国軍と協力して残党の掃討と周辺の情勢沈静化に努める、なお、駐留するロジナ候国軍への後方支援は可能な限りヴァイスブルク男爵領国側が行う物とする。


第4条・諸悪の根源であるヴァイスブルク伯国が滅亡している為、ヴァイスブルク男爵領国に対する賠償請求は無しとする。


第5条・戦禍修復及び周辺地域の開発についてはヴァイスブルク男爵領国、ロジナ候国、ツェントラル同盟が協同で行う物とし必要に応じて個別に協議して協定を締結する物とする。


第6条・ヴァイスブルク男爵領国軍の態勢が整うまでの間旧ヴァイスブルク伯国軍の残党掃討及ぶ周辺の情勢沈静化はロジナ候国軍が行い、ヴァイスブルク男爵領国軍は態勢が整った後は協同してこれに当たる物とする。


第7条・駐留するロジナ候国軍に対する監督命令権はロジナ候国が保有しており、駐留するロジナ候国軍の将兵、軍属、傭兵が何らかの犯罪行為を行った場合はロジナ候国国法に基づき厳正な罰則をくわえる物とする。


第8条・旧ヴァイスブルク伯国の進めていた陰謀の全容を把握する必要がある為、陰謀の被疑者に関する審査権はロジナ候国が持ち、ヴァイスブルク男爵領国はこれに協力する物とする。


ナルサスとアロイスがサインした条約書は仲介役である十字教の司教に手渡され、受け取った司教は厳かに頷いた後に随員の持つ保管用の箱に条約書を入れて蓋を閉じた。

司教が蓋を閉じた事によって式典は滞り無く終了し、それを確認した出席者達は笑顔(ロジナ候国側は満面の笑みを、ヴァイスブルク男爵領国側は愛想笑いを)を浮かべながら妥結式の成功を祝した。

妥結式が終了し仲介役の司教と随員が別室に通されると入れ替わりに賑やかな楽士の一団が入場して演奏の準備を始め、それと同時にメイドとなる事を強いられた虜囚となったエルフの女士官と女兵士達が入室させられた。

魔力封じの首輪と腕輪を嵌められた彼女達は胸の谷間を露にさせた上着と太股が剥き出しで少し屈めば臀部まで丸見えになる程丈の短いスカートと言う装いであり、ロジナ候国側(更に少なくない数のヴァイスブルク男爵領国側も)の出席者達の野卑た視線に晒された彼女達は血が滲む程唇を噛み締めて恥辱と屈辱に耐えながら宴の準備を始めた。

必死に戦い続けた彼女達のあられもない姿に野卑た視線を向けるロジナ候国側の出席者達、その中にあってたった1人だけそれを見るのを拒む様に目を瞑り唇を噛み締めている人物がいた。

白銀に輝くドレスアーマーに包まれたしなやかな肢体と滑らかなストレートロングの金髪に閉ざされている瞼の下の凛とした輝きを放つエメラルドグリーンの凛々しき美貌が印象的な美女、ロジナ候国軍第三近衛騎士団長にしてロジナ侯爵家三女のスティリア・フォン・ロジナは虜囚となった彼女達の恥辱と屈辱を慮り瞳と唇を固く閉ざし、準備が整い宴の開始が告げられた所で漸く瞼を開くと歩み寄ってきたナルサスがにこやかな表情で声をかけた。

「スティリア様、準備が整いました、こちらへどうぞ」

「……分かりました」

ナルサスの言葉を受けたスティリアは努めて平坦な声で応じた後にナルサスに案内されて中央のテーブルへと移動した。

中央のテーブルにはヴァイスブルク男爵領国の主となったアロイスとアロイスと共にロジナ候国側に寝返った旧ヴァイスブルク伯国第六騎士団長ゲオルグ・フォン・ポポフと同第七騎士団長ゼークト・フォン・キャラガンがにこやかな表情を浮かべて立っており、ナルサスとスティリアがテーブルに到着するとアロイスがにこやかな表情で声をかけてきた。

「……ナルサス様、スティリア様、条約締結にご尽力頂きありがとうございます、そのご尽力にこの晴れがましい日を迎える事が出来ました」

アロイスは笑顔で歯の浮くような台詞を滔滔と述べ、スティリアが嫌悪感に引きつりそうになる表情筋を多大な努力で捩じ伏せながら笑顔を浮かべて頷いているとナルサスはにこやかな表情で口を開いた。

「……我等はアロイス殿やポポフ殿やキャラガン殿の様な真に国を憂いし方々の勇気に答えたのですよ、今後もよき関係を続けて行きたい物ですな」

「おお、それは勿論、我等はヴァイスブルク男爵領国一同誓ってロジナ候国に忠節を尽くしますとも」

ナルサスの言葉を受けたアロイスが大仰な言葉で応じると同時にポポフとキャラガンも如才無い笑顔で応じ、その様を目にしたスティリアが嫌悪感を押し殺しながら笑顔を浮かべていると唇を噛み締めたメイドの女エルフが飲物が載ったトレイを手にやってきた。

ポニーテールに纏められた艶やかな銀糸の髪と透き通ったアメジストの瞳の美女は恥辱と屈辱を耐え忍ぶ様に唇を真一文字に結んでおり、その姿を目にしたスティリアは思わず愕然とした表情を浮かべてしまった。

(そんな……彼女は)

「……飲物を、お持ち致しました」

愕然とした表情のスティリアが見詰めるなか美女は絞り出す様な声でアロイス達に声をかけ、それを受けたアロイスは蔑みの笑みを浮かべながら口を開いた。

「おや、誰かと思えば元第四騎士団長のクーデリア・フォン・タンネンベルク殿では無いか、姿が見えないと思っていたがここで皆様方に奉仕をしていたとはな……」

(そうだ、彼女は旧ヴァイスブルク第四騎士団長クーデリア・フォン・タンネンベルク、ヴァイスブルク陥落時に一騎討ちの末に私が捕らえた凛々しく、そして気高き騎士団長)

スティリアはアロイスの蔑みの言葉を半ば上の空で聞き流しながらトレイを手にした美女、旧ヴァイスブルク第四騎士団長クーデリア・フォン・タンネンベルクを見詰めた。

霧の月七日に陥落し滅亡したヴァイスブルク伯国、その日スティリアはヴァイスブルクを脱出して再起を図る残党の追撃を行い、その前に立ちはだかったのがクーデリアであった。

クーデリアの戦いは鬼気迫る程凄まじい勢いで追撃しようとするロジナ候国軍の将兵を叩き斬り、その姿を目にしたスティリアは部下の制止を振り切りクーデリアとの一騎討ちを行った。

ロジナ候国でも一二を争う剣技の持ち主であり、単独でドラゴン(古成体)を倒し滅龍騎士ドラゴンナイトの称号を持つスティリアだったがクーデリアは凄まじいばかりの気迫でスティリアを迎え撃ち、スティリアとクーデリアはヴァイスブルクの城門付近で壮絶な一騎討ちを繰り広げる事となった。

当初は押され気味になる事さえあったスティリアだったが激しい戦いを続ける内に次第にクーデリアの方が防戦一方に追い込まれ、最終的にはクーデリアが敗れ虜囚の辱しめを受ける事になった。

スティリアはクーデリアに限らず捕虜を丁重に扱う様に部下達に厳命を下した後に残党の逆襲に備えた部隊の再編成と再配置に向かったが、部下達は虜囚となったクーデリアに魔力封じの首輪をつけた後にその身柄をアロイス達に引渡し、クーデリアは訊問と称してアロイス達だけでなくロジナ候国軍の将官達からも凄惨な凌辱を受ける羽目に陥り、後にその事を知ったスティリアは激怒したが後の祭りであった。

凛々しく気高き騎士団長であった筈のクーデリアは今やその引き締まった肢体を野卑な視線に晒しながら侵略者や売国奴に奉仕を強いられる身に堕ち、スティリアがその姿を愕然として見詰めているとポポフとキャラガンがクーデリアに近付きトレイから飲物を取った後に野卑な視線で露になった谷間や太股をなめ回しながら口を開いた。

「騎士団長たる身で奉仕に精を出すとは関心だなあクーデリア、だがその格好ではお前の部下達と同じだぞ」

「ああ、騎士団長たる物部下を率先せねばならん筈だ、そんな衣装では率先しているとは言い難いなあ」

(……こいつら、恥ずかしくないのかっ!?)

ポポフとキャラガンの余りの言い様が逆鱗に触れたスティリアはポポフとキャラガンに声をかけようとしたが、それに気付いたらしいクーデリアはスティリアに視線を向けるとほんの少しだけ微笑みながら小さくかぶりを振り、その儚い微笑みを目にしたスティリアが思わず言葉を飲み込んでいるとクーデリアはトレイをポポフに差し出しながら口を開いた。

「……仰有る通りです……騎士団長たる者覚悟を示さねばなりません、お持ち頂けますか?」

クーデリアの言葉を受けたポポフは野卑た笑みを浮かべながらトレイを受け取り、クーデリアはゆっくりとメイド服のボタンを外し始めた。

スティリアが呆然と見詰める中、クーデリアは静かにメイド服を脱いで行き、やがて微かな衣擦れの音と共にクーデリアの足下に脱がれたメイド服が墜ちた。

騎士団長らしく引き締まった肢体に柔らかに隆起した双丘と滑らかな弧を描く臀部にその肢体を隠微に飾る扇情的なデザインの下着、佇むクーデリアの姿は美しさと官能がない交ぜとなった妖しい色香を漂わせており、同性であるスティリアでさえ思わずその姿に見とれてしまっていた。

「……ありがとうございます、来賓の皆様にお飲物を渡して参ります」

「……しっかりと奉仕してくるが良い、そのふしだらな身体でな」

クーデリアがポポフに声をかけるとポポフは野卑た笑みと共に応じながらトレイを渡し、クーデリアはそれを受け取るとナルサスの所に歩み寄り飲物を奨めた。

ナルサスは相好を崩しながら飲物を受け取るとクーデリアの扇情的な姿をなめ回す様に見詰め、スティリアが崩れそうになる表情を無理矢理固めながらその様子を見詰めているとトレイを手にしたクーデリアが近付き声をかけてきた。

「……お飲物は如何です」

「……ええ、頂くわ」

クーデリアの声を受けたスティリアは強張りかけた口調で応じながらトレイに載せられたゼクト(スパークリングワイン)が満たされたフルート型のグラスに手に伸ばし、その際に不自然にならない様な動きで顔をクーデリアの顔に近付けて笹穂耳に小声で囁きかけた。

「……なぜ、自ら辱しめを」

「……見て頂きたかったのです、貴女に私の身体を」

スティリアの言葉を受けたクーデリアは小声で囁き返し、その言葉を受けたスティリアが戸惑いながらグラスを手に取っていると静かに言葉を続けた。

「……この身体は既に汚し尽くされています、ですがそれでも懸命に身を清めました、私が全身全霊をかけて挑んだ貴女にこの身体は見て頂きたかったんです、スティリア・フォン・ロジナ、貴女と戦えた事はわたしの誇りです」

クーデリアの言葉を受けたスティリアはグラスを手に取りながらクーデリアから離れ、クーデリアは微笑みながら一礼した。

クーデリアの微笑みはこのまま彼女が消え去ってしまうのでは無いかと思う程儚く、その笑顔を目にしたスティリアは一礼して離れ様とするクーデリアに声をかけた。

「待ちなさい」

スティリアに声をかけられたクーデリアは怪訝そうな面持ちで立ち止まり、スティリアはクーデリア扇情的な下着姿に身体の奥が疼くのを感じながら言葉を続けた。

「一口毒味をして貰うわ口を開けなさい」

「……畏まりました、スティリア様」

スティリアの言葉を受けたクーデリアはそう言うと微かに口を開き、スティリアは開かれたクーデリアの口にグラスを当てると慎重にそれを傾けてクーデリアの喉にゼクトを流し込んだ。

「……ッンク……い、如何でしょうかスティリア様」

クーデリアは仄かに頬を赤らめながら問いかけ、スティリアはその反応に身体の奥を更に疼かせながらグラスを手渡して言葉を重ねた。

「……大丈夫の様ね、一口飲ませて頂戴」

「……畏まりました、スティリア様」

スティリアの重ねた言葉を受けたクーデリアはそう答えながらぎこちない手つきで手にしたグラスをスティリアの口元へと運び、スティリアがそれにあわせて微かに口を開いてグラスを受け止めると躊躇いがちにグラスを傾けてスティリアの口内にゼクトを流し込んだ。

「……ッンックッ……ありがとう、もう行っていいわ」

「失礼致します、スティリア様」

クーデリアからゼクトを一口飲ませて貰ったスティリアはクーデリアの手からグラスを取りながら静かな口調で告げ、クーデリアは静かに一礼した後にトレイを手に他のテーブルへと向かった。

「……ありがとうございますスティリア様、本当はあの時貴女に斬られて死にたかった、ですが、この様な餞別を頂き、感謝致します、たとえ騎士団長としての矜持を砕かれ心をへし折られたとしても本望です」

「……許しは請わない、私にはその資格すら無いのだから、もう駄目だと思ったら脱走して私の所に来なさい、その時は私が貴女を斬る、ヴァイスブルク伯国第四騎士団長クーデリア・フォン・タンネンベルクとして」

クーデリアはスティリアと想いを籠めた言葉を小さく囁き合った後にしっかりとした足取りで他のテーブルへと向かい、スティリアが甘い疼きと胸の奥に広がる苦味を一緒くたに飲み干す様にグラスのゼクトを喉に流し込んでいるとナルサスが声をかけてきた。

「……お気に召しましたかな?」

「……戯れよ、少し場の空気に酔ってしまったみたい、宴を楽しみましょう」

ナルサスの言葉を受けたスティリアはストライキを起こしそうな表情筋を無理矢理動かして笑顔を作りながら応じ、その言葉を聞いたナルサスは頷きながらアロイス達と談笑を始めた。

その様子を目にしたスティリアは内心で盛大な溜め息をつきながらグラスのゼクトを煽ったが爽やかな甘味を持つ筈のゼクトの味はとても苦く感じられ、スティリアは顔をしかめながらグラスのゼクトを飲み干した。

スティリアを除いた参加者達は宴を楽しみながら奉仕を強いられるエルフの女士官や女兵士達のあられもない姿を楽しみ、一部の者達は気に入った彼女達を無理矢理に連れ出して行き始めていた。

扇情的な下着姿の騎士団長クーデリアは真っ先に野卑た笑みを浮かべた将官数人によって連れ出されて行き、偶然その光景を目にしたスティリアはやるせなさから逃れる様に新たに手にしたグラスに満たされていた苦いゼクトを喉に注ぎ込んだ。

悪趣味な宴はその後夜半に達するまで延々と続き、メインの来賓である為中座が不可能なスティリアは何度も杯を傾けて苦い酒を喉に流し込んだ。


条約妥結式と宴が終わった翌朝、僅か1個中隊程度にまで戦力を激減させた残党狩部隊本隊の将兵が敗残兵の様な形でヴァイスブルクに到着した。



アイリス達が今後の方針を決めていた頃、ミリアリア達の故国ヴァイスブルクでは侵略者と売国奴が条約を妥結していた。侵略者と売国奴は妥結後の宴を楽しみ、その中でロジナの戦姫は1人苦い酒杯を重ねた。

侵略者と売国奴が繰り広げた悪趣味な宴の翌朝、アイリス達の襲撃を生き延びた敗残兵達が漸くヴァイスブルクに到着した……

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