会談
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大陸歴438年霧の月九日・ダンジョン・多目的ルーム
残党狩部隊本隊を陣営ごと叩き潰したアイリスは陣営が業火に包まれた所で攻撃を中止して部隊の帰還を命じ、その後に自身はフォレストドラゴンと共に一足先にダンジョンへと帰還した。
ダンジョン周辺に帰還したアイリスとフォレストドラゴンはキャンプ跡に着陸してミリアリアやライナ達に救出した女エルフや狐人族の女達を降ろし、全員が降りたのを確認したアイリスはフォレストドラゴンに近日中のダンジョン改築を約し、それを確認したフォレストドラゴンは再会を望む旨を伝えた後に住処である洞窟へと帰って行った。
アイリスはフォレストドラゴンの見送りを終えると直ちにダンジョンクリエイティブの能力を使ってマスタールーム階層に女エルフ用の居室4部屋(個室×1、2人部屋×2、3人部屋×1)と狐人族用の部屋3部屋(貴賓室×1、個室×1、3人部屋×1)と多目的ルームを増築し、その後に全員を多目的ルームへと転位させて会談を開始した。
「それじゃあ始めましょう、疲れてる上に着替えもまだで申し訳無いけど、こう言う事は早目にしといた方が良いでしょう?」
全員が着席した事を確認したアイリスはゆったりとした造りの椅子に背を預けながら皆に声をかけ、全員が頷くのを確認すると穏やかな表情で言葉を続けた。
「先ずは自己紹介ね、あたしは魔王アイリス、このダンジョンの主よ」
「私はミリアリア・フォン・ブラウワルト、旧ヴァイスブルク第三騎士団長だ、現在は、その、故あって彼女のダンジョンで世話になっている」
アイリスに続いてミリアリアが少し言い難そうに続き、その言葉に陣営を脱出する際の2人の様子を思い起こした女エルフと狐人族の女達の多くが頬を赤らめさせているとライナ達が自己紹介を始めた。
「私はライナ・バンファール、第四騎士団に所属していました、他の2人と共にロジナの残党狩部隊の虜囚となっていた所を救助されました」
「リーナ・ヘッケンです、ライナや隣のアリーシャと一緒に第四騎士団に所属していました」
「私はアリーシャ・フォン・リヒテイン、同じく第四騎士団に所属していました」
ライナ達が自己紹介を終えるとアイリスは促す様な視線でミランダを見詰め、それに気付いたミランダは一礼した後に口を開いた。
「私はミランダ・フリートラントです、第八騎士団長をしていました、他の捕虜と共に命を救って頂き、感謝しています」
ミランダはそう言うとアイリスに向けて深々と一礼し、アイリスが擽ったそうな表情で頷いていると他の女エルフ達も次々に自己紹介を始めた。
「ハンナ・ヴァイセンベルガーです、ライナさん達と同じ第四騎士団に所属していました」
「テオドーラ・フォン・シュセリンブルクです、第五騎士団に所属していました」
「マリーナ・ヴィテプスクです、テオドーラ様と共に第五騎士団に所属していました」
「イリナ・クネルスドルフです、所属は第八騎士団でした」
「リリナ・フォン・ツォルンドルフ、ミランダ様やイリナと同じく第八騎士団に所属していました」
「え、エルザ・ホルニッセです、だ、第九騎士団に所属していました」
「カリン・フンメルです、エルザと同じ第九騎士団に所属していました」
7人の女エルフ達は次々に自身の名前とかつての所属部隊を告げ、それらが終了した後にアイリーンが静かに一礼しながら口を開いた。
「私はアイリーン・ド・リステバルス旧リステバルス皇国第五皇女ですわ、あの生地獄から私達をお救い下さり、感謝の念に絶えません」
アイリーンはそう告げると深々と一礼し、その後にクラリス達が自己紹介を始めた。
「私はクラリス・ド・サジタリオです、アイリーン様の護衛騎士をしておりました」
「フランシスカ・ド・チェンタウロと申します、アイリーン様に侍女としてお仕えしておりました」
「ミナ・ド・フォルゴーレです、フランシスカ様やライザ様と共にアイリーン様付の侍女をしておりました」
「ライザ・ド・オリオーネです、フランシスカ様やミナ様と共にアイリーン様の侍女をさせて頂いておりました」
狐人族の元皇女とその主従は自己紹介を終えた後にアイリスに向けて深々と一礼し、それに続く形でミランダ達も同じ様にアイリスに対して深々と頭を垂れた。
「……全く、貴女達も随分義理堅いのね、取りあえず頭を上げて頂戴、話を続けるわ」
アイリーン達とミランダ達の様子を目にしたアイリスは擽ったそうな表情で口を開き、ミリアリアはそんなアイリスの反応を穏やかな眼差しで一瞥した後に表情を引き締めながら頭を上げた一同に向けて口を開いた。
「現状については私が説明させて貰おう、何しろこの事態の発端は私だからな」
ミリアリアはそう前置いた後にアイリスとの出逢いから現在に至るまでの経緯を説明し、救出された一同は予想の斜め上を行く話の展開に驚きの表情を浮かべた。
「……で、ではこのダンジョンはミリアリア殿を追手から護る為に、造られたと言う事なのですか?」
「……その、まあ、そう言う事になるな」
ミリアリアの話を聞いたミランダが驚きの表情と共に確認の問いかけを行うと、ミリアリアは頬に仄かな朱を灯しながら肯定し、一方のアイリーンは聞かされたダンジョンの構造や陣営襲撃作戦のエグさに半ばドン引きしながら口を開いた。
「そ、それにしても凄まじいダンジョンですわね、それに魔龍を同盟者とすると言うのも凄まじい話ですわね」
「……道理であの時ロジナの屑どもがあれだけ右往左往していた筈です、そこまでエグい襲撃を仕掛けていたんですね」
アイリーンに続いてクラリスが引きつりかけた表情で感想を述べ、それを聞いていたアイリスはミランダ達とアイリーン達を見ながら口を開いた。
「あたし達の側から説明出来る事は以上よ、貴女達は魔王のあたしに助けられた訳だけどその事を恩に着せるつもりは毛頭無いわ、このダンジョンは基本的に来る者拒まず去る者追わずよ、暫くはここでゆっくりと身体と心を休め、それから自分達の身の振り方を決めて、このダンジョンに滞在するも良しだし、友好国のラステンブルク伯国を頼るも良し、どんな選択を選んでもあたしはそれを尊重するわ」
「……ほ、本当に宜しいのですか?」
アイリスの告げた魔王の物としては余りに鷹揚で寛大な話の内容にアイリーンは戸惑いの表情を浮かべながら確認の問いかけを発し、アイリスはゆったりと頷いた後に傍らのミリアリアを見ながら言葉を続けた。
「……あたしは基本的に彼女を護れればそれで構わないのよ、だから彼女の安全に関わらない事ならどうなろうと構わないわ、ただし、もしも彼女を傷つけ様としたりする選択を選んだなら」
穏やかな口調で続けていたアイリスはそこで一度言葉を区切り、その後に魔王に相応しい凄絶な笑みを浮かべながら口を開いた。
「……生き永らえた事を後悔させてあげるからそのつもりでいてね」
「……こ、心に刻んでおきますわ」
「……あ、安心して欲しい、ミリアリア殿は戦友だ、そ、そんな選択をするつもりは毛頭無い」
アイリスの凄絶な笑みと冷たい言葉を受けたアイリーンとミランダは背筋を凍らせかけながら答え、それを聞いたアイリスは穏やかな表情になりながら言葉を続けた。
「懸命な判断をしてくれたみたいで助かるわ、出来たばかりのダンジョンでまだ食料も分捕った携行食しか無いけど取りあえず方針が決まるまでゆっくりして頂戴」
アイリスは穏やかな口調で告げ、その言葉を受けたミランダ達とアイリーン達は先程の凄絶な笑みと冷たい言葉に顔を引きつらせかけながらも深々と頭を垂れてアイリスの好意に対する謝意を示した。
絶望の監獄と化していた残党狩部隊本隊の陣営からの脱出に成功した虜囚の女エルフ達と娼奴隷に堕ちた狐人族の皇女と主従、魔王アイリスは救出した彼女達と会談し、彼女達に暫しの安寧を約した……