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蹂躙・残党狩部隊本隊編・鉄槌

14000PVアクセス及び3200ユニークアクセス突破出来ました、今後も宜しくお願いします。

残酷な描写がありますので閲覧は自己責任でお願いします。


残党狩部隊本隊・陣営・牢屋


襲撃を受け窮地に陥った南及び西外哨拠点を救援する為に派遣された増援部隊はモンスターの集団による待ち伏せと包囲攻撃を受け多大な損害を被り、戦勝と虜囚に対する尋問と言う名目の元に行っていた享楽に弛緩しきっていた残党狩部隊本隊は見ている者が憐れみを感じる程の混乱状態に陥っていた。

砦に駐留している兵力の約半数を出撃させた挙げ句にその多くを喪った司令部は壊乱状態で逃げ帰ってくる増援部隊を収容する為、残る2個軽装歩兵中隊の内の1つに最後の軽騎兵小隊を加えた約250名からなる部隊を陣営の外へと出撃させる一方、残る1個軽装歩兵中隊と工兵中隊に弩砲兵2個小隊、魔導兵1個小隊、そして小隊若しくは分隊規模で参加していた幾つかの傭兵隊からなる約600名の主力部隊に厳重な警戒態勢を敷く事を命じた。

厳重な警戒態勢を敷いている残党狩部隊の将兵達の表情には困惑と不安の色がが色濃く浮かんでおり、今まで彼等に嘲笑されながら汚され辱しめられていた虜囚の女エルフ達と娼奴隷の狐人族の元皇女達は滑稽にすら感じられる彼等の様子を蔑みの目で望遠しながら大いに溜飲を下げていた。

「……随分余裕が無くなっているな」

「……ええ、清清しますよ、こいつ等が右往左往する姿を見てるとね」

ミランダとクラリスは余裕を喪い同様の色を隠せない残党狩部隊本隊の様子を蔑みの視線で眺めながら言葉を交わし、それを聞いていたアイリーンはゆっくりと頷いた後に遠雷の様に轟き続ける戦闘の音に耳を傾けながら口を開いた。

「……先程から聞こえている戦闘の音は収まるどこれか激しさを増していますわね、どうやらこの襲撃、この部隊の手に余る様ですわね、無論最後まで希望を捨てるつもりはありませんが、覚悟も決めておく必要がありますわね」

アイリーンの言葉を聞いたミランダは小さく頷いた後に虜囚となった女エルフ達の所へと向かい、アイリーンとクラリスはその背中を一瞥した後に視線を3人の侍女達へと向けた。

「……アイリーン様、皆まで仰有る必要はございません、私達はどの様な事が起ころうとも、アイリーン様に最後までお仕えすると決めております、願わくば冥界でもお側でお仕えしとうございます」

アイリーンが口を開こうとすると侍女達のリーダー格のフランシスカが穏やかな口調で先んじて言葉を告げ、残る2人も穏やかな表情で頷くのを目にしたアイリーンは目尻に浮かびかけた雫を指先で拭った後に頷きながら言葉を続けた。

「……分かりました、それでは心静かにその時を待ちましょう、わたくしは幸福者です、クラリスや貴女達と言う配下を持つ事が出来たのですから」

アイリーンの言葉を受けたクラリスとフランシスカ達は深々と一礼する事でその言葉に応じ、一方ミランダは自分の周りに集まって来た虜囚となった7人のエルフの女兵士達を痛ましげに見詰めながら口を開いた。

「現在ロジナの獣どもは因果応報な目に陥っている、状況は不明だが、場合によってはこの陣営にまで類が及ぶ可能性がある、無論その状況は千載一遇の機会になる可能性があるが今の状態ではなす術無く骸を晒す可能性の方が高い、これまでよく戦い、そして筆舌に尽くし難い憂き目によく耐えてくれた、所属部隊はバラバラだが最期を貴女達と迎えられて幸福だった、ありがとう」

ミランダは汚され尽くしたエルフの女兵士達を一人一人静かに見ながら言葉を告げ、エルフの女兵士達は気丈な笑顔と共に頷き、その内の1人が少し緊張した表情で口を開いた。

「第四騎士団に所属していたハンナ・ヴァイセンベルガーです、わたし達もミランダ様と共に最期を迎えられる事を誇りに思います」

エルフの女兵士、ハンナが皆を代表してそう告げると残りのエルフの女兵士達も気丈な笑みと共に頷き、その姿を目にしたミランダは込み上げてくる物を堪える為に大きく深呼吸した後にハンナ達の前を辞した。

ミランダがアイリーンとクラリスの所に移動すると2人は穏やかな笑顔でミランダを迎え、ミランダはゆっくりと一礼したが頭をあげた時に2人の脇に小さな栗鼠がいるのに気付いて口を開いた。

「……その栗鼠はどうなさったのです?」

「……先程からアイリーン様の傍らにいるのです、どうやら迷い込んだ様ですね」

クラリスはミランダの疑問の声にそう返答しながら苦笑を浮かべ、アイリーンは慈しむ様な微笑みを浮かべながら口を開いた。

「迷い込んでしまったのですか?可愛らしい迷子さんですが直ぐにここは騒がしくなりますよ、急いで森にお帰りなさいな」

アイリーンがそう言いながら横に佇む栗鼠の頭を人指し指で撫でた刹那、栗鼠の全身が眩く光り、クラリスは弾かれた様に思わず栗鼠から指を離したアイリーンに飛び付いてその身体を抱え倒した後に口を開いた。

「アイリーン様、お怪我はっ!?」

「だ、大丈夫ですわ、で、ですが今のは?」

クラリスの問いかけにアイリーンが戸惑いの表情で応じる中、先程まで栗鼠がいた辺りの地面に光を帯びた五芒星の魔方陣が発生し、それに気付いたミランダは驚愕の表情と共にアイリーンとクラリスに声をかけた。

「アイリーン様、クラリス殿、見てくれ、地面に魔方陣がっ!?」

ミランダの言葉を受けたアイリーンとクラリスは慌てて地面へと視線を向け、そこに出現した魔方陣とそこに記されている見馴れぬ形状の魔導文字に驚愕の表情を浮かべた。

「この術式の文字、まさか古代魔導文字!?ですが、この様な文字は見た事がありませんっ!!」

アイリーンが驚愕の声をあげるとそれに呼応したかの様に魔方陣が淡い輝きを放ち、次の瞬間には牢屋全体が半透明のドーム型の光の壁によって覆われた。

「……これは、魔導結界!?」

「しかも尋常じゃ無い硬度です、恐らく魔法どころか物理攻撃にも耐性を持っていると思われます」

牢屋を覆う光の壁を目にしたミランダとクラリスは驚愕の面持ちで声をあげ、女エルフや狐人族の女達は呆気に取られた表情で牢屋を覆う光の壁を見詰めていた。


陣営周辺上空・本隊


「……使い魔が牢屋に魔導結界を展開したわっ!!これで誤射の可能性は無いわっ!!」

……ありがたい、これで心置き無く屑どもを焼き尽くしてやれるな……

栗鼠に化けていた使い魔が牢屋に魔導結界を展開したのを確認したアイリスをミリアリアを抱えて羽ばたきながら傍らを飛ぶフォレンストドラゴンにその事を伝え、それを受けたフォレンストドラゴンが楽しげに応じると魔王に相応しい笑みを浮かべながら陣営の上空に到達した。


残党狩部隊本隊・陣営・司令部


「一体あれは何だっ!?」

栗鼠に化けていたアイリスの使い魔が牢屋周辺に展開させた魔導結界、それを混乱する司令部から目にした陣営の指揮官である軽装歩兵大隊長が戸惑いの声を上げながら周囲を見渡していると、上空から冷たい声が響いた。

「こんばんは、親愛なる屑ども」

静かなその声は周囲の喧騒に消える事無く大隊長達の鼓膜を抉り、大隊長達はその冷たく静かな響きの声に背筋を凍らせながら上空に視線を向けた。

陣営の上空で淡い輝きを放つ血に塗れた様に赤く染まった月、血塗れの月を背に巨大なドラゴンと蝙蝠の羽を大きく広げた妖艶な美女、魔王アイリスが空中に浮遊しており大隊長達がその光景に絶句しているとアイリスは凄絶な笑みと共に歌う様に告げた。

「……そして、サヨウナラ」

歌う様に告げられたその宣言は絶対零度の冷気が宿っているかの様に冷たく、その冷たさに背筋を凍らせた大隊長は戦慄きながら迎撃を命令しようとしたがアイリスはそんな様子を無視してポツリと呟いた。

「ダーク・インフェルノ」

アイリスが呟くと同時にアイリスの前の虚空に4つの黒い焔の火球が発生し、発生した火球は一気に加速しながら眼下の司令部周辺に落下して大隊長とその周辺にいた魔導兵、弩砲兵、工兵の各中隊長を直撃してその身体を黒い焔で包み込んだ。

「……っぎあぁぁぁぁっ!!!」

「……っがあぁぁぁっ!!!」

「……っひっ……火が……火があぁぁぁぁっ!!!」

「……っひっがあぁぁっ……な、なんだこの焔は……け、消せんっ!?何故だ、何故消せっ……ぐぎあぁぁぁっ!!」

火球の標的となった大隊長と3人の中隊長は焔に包まれてのたうち回りながら身の毛も弥立つ様な絶叫を迸らせ、その光景を目の当たりにした周囲の者が凍りついた様に硬直する中、ドラゴン、フォレンストドラゴンがブレスを放った。

フォレンストドラゴンの放ったブレスは司令部前の広場に炸裂して焔にのたうち回る大隊長達を周囲の将兵共々に吹き飛ばし、アイリスはその様を見下ろしながら新たな言霊を紡いだ。

「ダーク・アイスランス」

アイリスの紡いだ言霊に誘われる様に虚空から黒い氷柱が次々と生じて眼下に広がる陣営に向けて次々に落下して行き、氷柱に直撃を受けた将兵はその時の姿勢のまま氷に包まれて生きた氷像となった後に砕け散り、無数のダイヤモンドダストとなって周囲に飛散して行った。

その間にフォレンストドラゴンは周辺に次々にブレスを放ち、陣営はアイリスが無数に撃ち込む闇の氷柱とフォレンストドラゴンが放つ炎の濁流によって包み込まれていた。

「挨拶としてはこれくらいでいいわね、降下して捕虜を救出するわ」

アイリスは一頻り陣営を叩いた後にミリアリアに向けて囁き、ミリアリアが引き締まった顔で頷くとアイリスは穏やかな表情で頷きながら司令部前の広場に向けて降下を始めた。

アイリスの降下を確認したフォレンストドラゴンはブレスを放ちながら降下を始め、アイリス達が地面に降り立つ寸前に背中のライナ達に向けて念話で語りかけた。

……行くがよい、黒き森の民と森の民よ、そして必ず還ってこい……

「必ずや、よしっ行くぞっ、リーナ、アリーシャ」

「OK、行きましょ」

「皆を助けましょう」

ライナはフォレンストドラゴンの激励に応じた後にリーナとアリーシャに声をかけ、2人の力強い答えに頷いた後に魔力の風を身に纏いながらフォレンストドラゴンの背中を蹴って虚空に身を踊らせた。

ライナに続いてリーナとアリーシャも魔力の風を纏いながらフォレンストドラゴンの背中を蹴り、虚空に身を踊らせたライナ達は身に纏った魔力の風で落下速度を緩めながら地面に降り立ち抱え上げていたミリアリアを地面に降ろしているアイリスの傍らへと柔らかに着地した。

「それじゃあ、行ってくるわね」

「頼んだぞ」

アイリスとミリアリアは着地したライナ達に声をかけ、ライナ達が力強く頷いたのを確認すると小さく頷き合った後に魔導結界に覆われた牢屋に向かって駆け出した。

虜囚となった女エルフ達を救出に向かったアイリスとミリアリアにその背後を死守するライナ達、その上空ではゆったりと羽ばたきながら浮遊するフォレンストドラゴンが支援の為に陣営にブレスを叩き込んでいた。



虜囚となった女エルフ達を救出する為にアイリスが計画した残党狩部隊本隊への襲撃計画、周到に組み上げられた襲撃はアイリス率いる本隊の到着によって最高潮を迎えた。

陣営上空に到達したアイリスが魔龍と共に放った一撃、その一撃は魔王の襲撃に翻弄される残党狩部隊を麻痺させる鉄槌となり、鉄槌を下した魔王は大切なひとと共に悠々と地面に降り立った……


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