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絶望の監獄

11000PVアクセス及び2600ユニークアクセス突破出来ました、今後も宜しくお願いします。

残党狩部隊本隊陣営


森の一角を切り開いて設営された残党狩部隊本隊の陣営、四周を斬り倒した木々を利用した柵と逆茂木によって囲まれた内部では多くの将兵がテントで寝起きをしていたが司令部や厩等の一部の施設については簡易的ながらも木造の建物が完成しており、その事や集積されている資材類の多さがこの陣営が一時的な拠点としてでは無く、恒久的な拠点として運営される予定である事を示す証左となっていた。

新たな拠点として胎動を始めた陣営の一角にはこの陣営の中で最も頑丈な造りをした牢屋が存在しており、そこでは虜囚となって旧ヴァイスブルク伯国軍のエルフの女兵士と昨年勃発したリステバルス戦役の結果、皇女から娼奴隷に身を堕とした旧リステバルス皇国第五皇女アイリーン・ド・リステバルスと彼女と命運をともする事を望みアイリーンと共に娼奴隷に堕ちたアイリーンの護衛騎士クラリス・ド・サジタリオと3人のアイリーンの元侍女、ライザ・ド・オリオーネ、ミナ・ド・フォルゴーレ、フランシスカ・ド・チェンタウロが僅かばかりの薄布を貼り付かせた身体を薄っぺらい毛布に包んで横たわっていた。

凄惨な拷問と凌辱に疲労困憊状態に陥っているエルフの女兵士達は薄っぺらい毛布に包まり泥の様に眠り、アイリーンが痛ましげな表情でその様子を見ていると傍らで毛布に包まっていたクラリスが声をかけてきた。

「……そうとう参っている様ですね」

「……わたくし達をあれだけ嬲り尽くしておきながら嬉々としてあれほどの仕打ちを行う、余りの浅ましさに吐き気さえ催しますわ」

クラリスの言葉を受けたアイリーンが怒りに顔をしかめながら応じていると牢屋に向けて近付く気配が生じ、それに気付いたクラリスは顔をしかめさせてアイリーンに声をかけた。

「アイリーン様、こちらに近付く気配が、恐らくミランダ殿への拷問と凌辱が終了したと思われます」

「……こんな刻限まで飽きもせず」

クラリスの言葉を受けたアイリーンは呆れた様に呟きながら毛布に包まり、それを確認したクラリスも同じ様に毛布に包まって迫り来る気配を待った。

アイリーンとクラリスが狸寝入りで待ち受けていると牢屋の前に野卑た笑みを浮かべた3人の士官が鎖を手に姿を現し、彼等が手にした鎖が伸びる先ではダークエルフの美女、旧ヴァイスブルク伯国第八騎士団長、ミランダ・フリートラントが四つん這いの体勢を強いられていた。

ミランダの引き締まった肢体は僅かに貼り付いた薄布によって辛うじて隆起する胸の先端等が隠されており、騎士団長にあるまじきあられもない姿と姿勢を強いられたミランダは歯を食いしばって恥辱に耐えながら士官達の後に続いていた。

「おら、着いたぜ雌犬ダークエルフ、態々連れて来てやった俺達への礼はどうした」

「……め、雌犬、ダークエルフの、わ、私を、お、お連れ頂き、あ、あ、ありがとう……ござい、ます……ま、また、明日も……ふ、ふしだらな……め、雌犬ダークエルフを……ち、調教して……下さ……い」

士官の言葉を受けたミランダは屈辱に顔を歪めながらも士官達に媚を売る事を強いられ、士官達に四つん這いにされたミランダの身体をなめ回す様に見詰めた後に扉を開けた。

ミランダは唇を噛み締めながら四つん這いのまま扉を潜り、士官達は野卑た笑みでミランダの引き締まった肢体と臀部をじっくりと見詰めつつ扉を閉め、その後に楽しげに談笑しながら歩み去って行った。

ミランダは士官達が立ち去るのとほぼ同時に力無く地面に崩れ落ち、アイリーンとクラリスは士官達が完全に立ち去ったのを確認した後に起き出してミランダの傍らに移動した。

「……あ、アイリーン様……く、クラ……リス殿、も、申し訳ありません……こ、この様な醜態を……」

激しい拷問と凌辱に消耗し尽くしたミランダは掠れた声でアイリーンに謝罪し、アイリーンはゆっくりとかぶりを振りながら口を開いた。

「ミランダ様、決して、決して屈してはなりません、誇り高き騎士団長たる貴女様が受けであろう恥辱の数々、その屈辱、心痛、わたくし達にも手に取る様に分かります、ですが屈してはなりません、他の皆様も懸命に耐えておいでです、ですから気を確かにお持ち下さい」

「……む、無論です……騎士団長としての矜持も心もへし折られ……汚し尽くされたこの身ですが……自ら屈する気は毛頭ありません……アイリーン様、感謝致します……アイリーン様を始めとした皆様の支えがあればこそ……私達は辛うじて踏み留まる事が出来ています」

アイリーンの激励の言葉を受けたミランダは気丈な笑みと共に応じ、その後にクラリスに向けて口を開いた。

「……クラリス殿……貴女がお仕えしている御方は……素晴らしい御方だな……騎士として羨ましく……思う」

「ありがとうございます、ミランダ殿、私も幸運を噛み締めております、素晴らしい御方に仕え、共に歩める事を」

ミランダの言葉を受けたクラリスは誇らしげに微笑みながら応じ、その言葉を聞いたアイリーンは恥ずかしそうにはにかんだが直ぐに表情を翳らせながら牢屋の外を見渡した。

がっしりとした造りの柵で覆われた四周からは日々形を整えていく陣営の様子を見ることができ、アイリーンは暗い表情でその光景を見ながら呟きをもらした。

「……この陣営が砦に変われば、豊富な琥珀の鉱脈がロジナの掌中に握られる、リステバルスから鋼玉と川真珠の産地をかすめ取り、それに加えてヴァイスブルクまで掌中に治める、周辺の国々はロジナの隆盛に惑わされその行動を手を拱いて傍観し、他の選帝候国でさえ迂闊に手が出せないでいる、私達はこのままロジナの隆盛をなす術も無く眺め続けるしか無いと言うのでしょうか」

暗い表情で呟くアイリーンの声を聞くクラリスとミランダの表情も暗く翳り、ミランダは暗い表情のまま掠れ気味に呟いた。

「……例えこのままなす術も無くロジナの屑どもの隆盛を見るしか無いとしても……私は精一杯抗うつもりです……アイリーン様、クラリス殿、私が完全に壊されてしまった時は……彼女達を、お願いします」

「……承知致しました、ミランダ様、どうかお心を強くお持ち下さい」

「……彼女達の事は私達にお任せ下さい、そして絶対に耐え抜いて下さいミランダ殿」

ミランダは悲痛な願いをアイリーンとクラリスに託しながら泥の様に眠るエルフの女兵士達を一瞥し、アイリーンとクラリスは瞳に涙を浮かべながら悲痛な覚悟を決めたミランダを見詰めた。


陣営外周


汚し尽くされながらも絶望的な抵抗を誓うミランダとその姿に唇を噛み締めるアイリーンとクラリス、無力感に苛まれる彼女達の預かり知らぬ所で状況が激変しつつあった。

陣営を守る為、東西南北に設置された外哨拠点を統制所として外出に散開した魔狼達、研ぎ澄まされた嗅覚と聴覚、暗視能力で陣営の外周に警戒網を形成する獣達に異変が生じていた。

木々の合間に潜み周囲の気配を探っている1匹の魔狼、その近くに1匹の栗鼠が姿を現した。

栗鼠は何かを促す様に魔狼を見詰め、魔狼はそれに応じる様に頭を下げた後に持ち場を走り去った。

栗鼠は走り去った魔狼を一瞥した後に先程まで魔狼がいた場所に立ち、数拍の間を置いた後に下生えを踏み拉きながら五メートル程の巨大な蜥蜴、火蜥蜴サラマンダーが姿を現した。

火蜥蜴は下生えを踏み拉ながら魔狼がいた辺りを通り過ぎて行き、栗鼠は静かに進む火蜥蜴を見送った。

一方持ち場を走り去った魔狼は風の様に木々の合間を駆け抜け、外周に散開していた他の魔狼、総計45匹も同じ様に木々の合間を駆けていた。

45匹の魔狼が駆けるその先ではダンジョンから出撃した15匹の魔狼が待ち受け、魔狼達が走り去りがら空きとなった外周警戒網を火蜥蜴やポイズンサーペント、ジャイアントマンティスが次々と通過して行った。

がら空きになった警戒網とそこを容易く通過して行く大型モンスターの集団、勝利と享楽に傲り惰眠を貪る残党狩部隊本隊の陣営に刻々と災厄の刻が迫り、その災厄を演出するアイリスはダンジョン上空で魔王に相応しい凄絶な笑みを浮かべていた。



捕らわれの騎士団長とエルフの女兵士達と娼奴隷に身を堕とした亡国の皇女とその従者達、彼女達が捕らわれている残党狩部隊本隊は彼女達にとっては絶望の監獄、しかし、彼女達はまだ知らない、絶望の監獄たる残党狩部隊本隊の陣営に破滅の刻が迫っている事に……


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