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異形の軍勢

1万PVカウント突破できました、作者の予想を遥かに上回るペースであります、ありがとうございますm(__)m

マスタールーム


フォレストドラゴンとの盟約を締結したアイリスとミリアリアは洞窟を出た後にダンジョンへと戻り、待っているライナ達に経緯を説明する為にマスタールームの前に転位した。

「……そ、その、さ、さっきはすまなかった、だ、大丈夫、か?」

洞窟を出るまでの過激なやり取りと道程を思い起こしたミリアリアは、真っ赤になりながら傍らのアイリスに声をかけ、アイリスは頬を仄かな桃色に染めながら言葉を返した。

「……フフフ、魔王なのにもう少しで陥落させられちゃう所だったわ、悪戯されたのが背中や御腹、腰だけじゃ無かったら貴女に夜這いされちゃう前に陥落させられちゃったかもね」

「……っぐっ」

アイリスはそう言いながら豊かに隆起する双丘と臀部に手を添え、言葉に詰まったミリアリアが真っ赤な顔になるのを愛しげに見詰めた後に言葉を続けた。

「……それじゃあ行きましょう、皆に説明しなきゃいけないわ」

「……っあ、ああ、そうだな」

アイリスの言葉を受けたミリアリアはそう答えると火照る喧しく鳴り続ける心臓を落ち着かせる為にゆっくりと深呼吸を行い、アイリスはそれが終了するのを待った後にミリアリアと共にマスタールームに入室して留守を守っていたライナ達の出迎えを受けた。

ライナ達の出迎えを受けたアイリスとミリアリアは魔龍となっていたフォレストドラゴンとの盟約を締結した事を伝え、予想の斜め上を行く事態の展開にリーナとアリーシャは苦笑を浮かべながら口を開いた。

「……フォレストドラゴンが魔龍になってて、魔龍を同盟者フェデラートゥスにしちゃう、ある意味アイリス様らしい展開よね」

「そうだよね、アイリス様らしい予想外の事態が続き過ぎて、少し感覚が麻痺しちゃいます」

「……あら、その話を聞いているとあたしがまるで珍獣みたいに聞こえちゃうわね?」

「……いや、実際問題魔王と言うだけでも特異な存在なのに女性の魔王でしかもこれだけ予想外や規格外な行動連発されるとそう思うのも仕方無いと思うんだが」

リーナとアリーシャの驚きと呆れが相半ばした感想を聞いたアイリスが楽しげな表情で傍らのミリアリアに問いかけるとミリアリアは苦笑と共にそれに応じ、アイリスは楽しげな表情で小首を傾げた後に表情を鋭い物へと改めながら口を開いた。

「まあ、そう言う訳で作戦の下準備は整ったわ、現在、残党狩部隊本隊の陣営は使い魔達の監視下にあるわ、状況に特段の変化が無い限り作戦結構は今夜深更、夜半に外哨拠点襲撃部隊と別動隊を進発させ、あたし達は盟友のフォレストドラゴンが到着し次第これに後続して出撃するわ基本方針はこれだけど状況によって方針が流動的に変化するからそのつもりで準備を整えなさい、何れにしても動きがあるのは夜に入ってからよ、それまで各自休養して鋭気を養いなさい」

「「はい」」

アイリスの指示を受けたライナ達は小気味良くそれに応じ、その姿を目にしたミリアリアが決意を籠めて頷いているとアイリスは蠱惑の笑みを浮かべて囁きかけてきた。

「……時間があるから一緒に入浴したいけど、あんなに悪戯されちゃった後だし、今後に支障が出ちゃうといけないから残念だけど諦めるわ、この襲撃が終わったら一緒に入浴しましょう」

「……っ……わ、分かった」

アイリスの囁きを受けたミリアリアは顔を真っ赤にさせて言葉に詰まった後に恥ずかしそうに俯きながら答え、アイリスがその答えに嬉しそうに微笑んでいるのを目にしたライナは頬を赤らめながらリーナとアリーシャに囁きかけた。

「……わ、私達は今の内に入浴しておいたほうが良さそうだな」

「……そ、そうね、み、ミリアリア様とアイリス様の憩いの時を邪魔しちゃマズイもんね」

「……う、うん、そんな恐ろしい事したら命が幾つあっても足りないよね」

ライナの言葉を受けたリーナとアリーシャは頬を赤らめながらその提案に同意し、それから3人はアイリスに一声かけた後にマスタールームを後にした。


大陸歴438年霧の月九日深更・ダンジョン周辺


日付が跨いだ霧の月九日深更、眠りに就いた様に静まりかえっていたダンジョン周辺に動きが生じた。

血に塗れた様な紅に染まる月が見下ろす中、無人のキャンプ跡にロジナ候国軍の軍装を纏ったスケルトンの集団が出現すると骨を軋ませながら前進を始め、それに続く形で姿を現した魔狼の一団が軽快な足取りで木々の合間へと消えて行った。

「スケルトン部隊及び魔狼部隊進発しました」

少し離れた木立の傍らで進撃を始めた異形の集団を見送ったライナは静かな声で後方に佇むアイリス達に報告を行い、アイリスは頷くとライナを手招きして呼び戻した後に皆を見渡しながら口を開いた。

「いよいよね、改めて状況を確認するわ、進発したスケルトン部隊と魔狼部隊は現在外哨拠点の襲撃に向けて移動中よ」

アイリスが状況を説明すると同時にアイリスを囲むミリアリア達の前に地図が表示されて残党狩部隊本隊の陣営に向けて伸びる青い2本の矢印が表示され、アイリスは更に森の奥から陣営の方に向けて伸びる青と緑の2本の矢印を出現させて言葉を続けた。

「別動隊も現在陣営に向けて移動中よ、外周に散開して警戒をしている魔狼達は既に使い魔を介してテイムを終えているから別動隊はがら空きの警戒線を浸透して伏撃態勢を取って貰うわ」

「この緑の矢印は何なんですか?」

アイリスの説明を聞いていたリーナは訝しげな表情を浮かべながら青い矢印の広報を進む緑の矢印について質問し、それを受けたアイリスは不敵な笑みを浮かべながら言葉を返した。

「それについては当事者から説明して貰いましょう」

アイリスがそう言うと同時に朧気な月光によってぼんやりと照らされていた周囲がいきなり暗くなり、ミリアリア達がそれに誘われるように上空に視線を向けると同盟者フェデラートゥスのフォレストドラゴンが血塗れの月を背にゆったりと羽ばたきながら浮遊しており、フォレストドラゴンは眼下のアイリス達に向けて一礼する様に頭を下げてから念話で語りかけてきた。

……待たせたな、魔王アイリス、そして森の民達よ、道中御主らが使役しておる大型モンスターの一団が動き始めておるのを目にしたので戯れに我がテイムしておいた装甲火蜥蜴アーマーサラマンダー5体を後続させておいた、使ってくれ……

「戦力は幾らでも欲しい所だったからありがたく使わせて貰うわ」

フォレストドラゴンから援軍の存在を知らされたアイリスは不敵に微笑わらいながら謝意を告げ、フォレストドラゴンがそれに応じる様に頷いた後に無人のテント等を吹き飛ばしながらキャンプ跡に着陸するのを確認した後にミリアリア達に向けて口を開いた。

「聞いた通り緑の矢印は援軍だそうだから少し作戦を変更するわね、現在伏撃場所に移動中の別動隊を別動隊甲、後続中の装甲火蜥蜴部隊を別動隊乙とするわ、別動隊甲については当初の方針どおり敵増援部隊の伏撃を任務とし、別動隊乙については外哨拠点の1つを襲撃して貰うわ、スケルトン部隊と別動隊乙は陽動を兼ねて外哨拠点を大々的に強襲し、魔狼部隊には二手に別れて残る2つの外哨拠に対して無咆哮隠密襲撃を実施、外哨拠点襲撃部隊は目標拠点を覆滅した後は陣営周辺に展開、一部を持って別動隊甲を支援しつつ主力は別動隊乙と共に本隊の攻撃による混乱に乗じて陣営を強襲させるわ」

アイリスはそこで一度言葉を区切ってミリアリア達を見渡し、ミリアリア達が鋭い眼差しと共に頷くと陣営の俯瞰図の図面を表示させながら言葉を重ねた。

「本隊はあたし達5人とフォレストドラゴンによって編成されるわ、本隊は部隊のこれより出発してダンジョン周辺空域にて待機、外哨拠点襲撃と同時に前進を開始して可及的速やかに陣営上空に侵入して陣営を強襲するわ、第一目標は司令部周辺、ここにあたしの攻撃魔法とフォレストドラゴンのブレスをぶちこむわ」

アイリスはそう言いいながら陣営の図面の一点を指先で叩いた後にその指先を司令部から程近い所に移動させてミリアリアを見詰めながら言葉を続けた。

「司令部を破壊した後にあたしは彼女と一緒にこの牢屋に向かい、捕らわれている貴女達のお仲間さんや狐人族の元お姫様達を救出するわ」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは表情を引き締めながら頷き、アイリスはそれを確認した後にライナ達に視線を向けながら言葉を続けた。

「貴女達はあたしと彼女が救出作業をしている間、司令部前の着陸地点を確保しつつ魔法で右往左往してる連中を手当たり次第攻撃して連中を混乱させて、フォレストドラゴンが陣営上に浮遊してブレスで支援してくれるわ、あたし達が捕虜を救出したら司令部前に誘導するからフォレストドラゴンに回収して貰い上空に脱出するわ、重要な役目になるけど頼むわね」

アイリスの言葉を受けたライナ達は決意を籠めた視線でアイリスを見詰めながら頷き、アイリスは穏やかな表情で頷いた後に凄味のある笑みと共に宣言した。

「捕虜を救出出来たら屑どもにもこんなチャチな陣営に用は無いわフォレストドラゴンのブレスとあたしの魔法攻撃とモンスター達の包囲攻撃で右往左往してる連中を思う様に蹂躙するの、叩いて、叩いて、叩き尽くしてやるわ、全てが灰になるまでね……」

そう宣言するアイリスの表情に浮かぶ笑みは魔王の笑みに相応しい凄絶な物であったが、ミリアリア達はその笑みに気圧される事無く(内心は若干ドン引き気味だったが)魔王の笑みを受け止めた。

作戦の概要を説明し終えたアイリスは本隊の出撃を命じ、それを受けたライナ達は敬礼した後にフォレストドラゴンの所へと駆け寄りその背中に跨がった。

……では行くとするか、上空うえで待っているぞ魔王アイリスよ……

ライナ達を乗せたフォレストドラゴンはアイリスに視線を向けながら語りかけ、アイリスが頷く事で応じているとライナ達が敬礼を送ってきた。

ライナ達の敬礼を目にしたミリアリアは即座に答礼を返し、それを目にしたアイリスも見よう見まねで答礼を返しているとフォレストドラゴンが巨大な翼をゆっくりと羽ばたかせて上空へと浮かび上がった。

フォレストドラゴンはゆったりと羽ばたきながら上昇し、ミリアリアがそれを見上げているとその鼓膜をアイリスの声が揺さぶった。

「……後悔、しない?」

その声を受けたミリアリアはアイリスに戸惑いの視線を向け、アイリスは上昇するフォレストドラゴンを見上げながら言葉を続けた。

「……貴女を護りたいと言う言葉は嘘じゃない、でも、あたしは魔王なの、貴女を護る為なら、あたしは決して容赦しない、敵は容赦無く踏み潰し、叩き潰し、蹂躙し尽くし、焼き尽くす、貴女を護る為なら屍山血河を築く事すら厭わない、貴女が嫌だと言っても止まらない、貴女に鬼畜と罵られても止まらない、貴女がもう止めてくれと懇願しても止まらない、だってあたしは魔王だもの、あたしは魔王としてあたしがやりたいように貴女を護るの……ッキャッ!?」

上空を見上げながら告げるアイリスの身体は微かにだが震えていて、それを目にしたミリアリアは無言でアイリスの傍らに近寄ると笹穂耳まで真っ赤になりながらアイリスの肩をつかんで魅惑的な身体を抱き寄せ、突然の行動にアイリスが思わず可愛らしい悲鳴をあげながらしがみつくとミリアリアは真っ赤な顔でアイリスを見詰めながら口を開いた。

「……後悔なんてする訳無い、貴女の眠りを妨げた時私は覚悟していた、目覚めたばかりの魔王の貴女に糧とされる事を、だが、貴女は私を糧とする事無く墓荒らしの敗残兵に過ぎない私と話までしてくれた、だから私は一層貴女の糧になる覚悟が出来たんだ、ロジナの屑どもに矜持を砕かれ、心をへし折られ、汚し尽くされる位なら貴女の糧になろうと、だが、貴女は私を護る為にダンジョンを造り、戦友の窮状を救い、そして今宵も虜囚となった戦友達を救い出そうとしてくれている、確かに、貴女は魔王だ、だが、私は聖女でも偽善者でも無い、私を護る為に力を尽くしてくれた貴女を拒むつもりも非難するつもりも更更無い、もしも貴女を拒み、貴女を非難し、貴女を排除しようとする者が現れたなら、私は喜んで貴女と一緒にその矢面に立つつもりだ、だから、貴女は魔王として貴女の思う通りに行動して欲しい」

ミリアリアは真っ赤な顔でしがみつくアイリスを見詰めたが、アイリスが頬と耳を鮮やかな朱に染めながら自分を見上げているのに気付くと今の状況を理解して慌てて離れながら言葉を続けた。

「……っい、いきなりすまない、そ、その、わ、私は気にしてないから、あ、貴女は貴女の思うように行動すれば良いと言いたくて、そ、それでいきなり、あんな」

ミリアリアは真っ赤な顔でしどもどろに告げ、それを見ていたアイリスはクスリッと頬を綻ばせながらミリアリアに声をかけた。

「……フフフ、ありがとう、それじゃあ行きましょ、上空うえで皆待ってるわ」

「……へ、あ、ああ、そうだな」

アイリスに声をかけられたミリアリアは我に帰ると真っ赤な顔でアイリスに歩み寄り、頬を赤らめさせたアイリスは少しぎこちない手付きでミリアリアの身体を抱え上げた。

「……そ、それじゃあ行くわよ」

「……あ、ああ宜しく、頼む」

アイリスとミリアリアは頬を赤らめさせながらぎこちなく言葉を交わした後に恥ずかしそうに微笑わらい合い、その後にアイリスはゆっくりと蝙蝠の羽根を羽ばたかせてライナ達を乗せたフォレストドラゴンが待つ上空へと上昇して行った。



捕虜救出の為に残党狩部隊本隊を決意したアイリス達は日付を跨いだ霧の月九日深更遂に行動を開始し、同盟者となったフォレストドラゴンと共に出撃した。

勝利に傲り享楽にうつつを抜かす残党狩部隊、彼等を地獄に叩き込むべく出撃したのは魔王が率いる異形の軍勢……

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