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森の魔龍(おうじゃ)

8000PVアクセス突破しました。これからも本作を宜しくお願いします。

マスタールーム


捕らえられている旧ヴァイスブルク伯国第八騎士団長ミランダ・フリートラント以下8名のエルフ兵と娼奴隷とされた亡国の皇女アイリーン・ド・リステバルス以下5名の狐人族、その所在を把握したアイリス達にその奪還とロジナ候国の占領地政策に痛撃を与える事を目的とした残党狩部隊本隊への強襲作戦を企図し、ミリアリア達はマスタールームにてその準備に向けて邁進していた。

アイリスはダンジョン侵入者から分捕った軍装を鋳潰して製作した黒いライトアーマー1組とライトグリーンのライトアーマー2組をライナ達に渡し、真新しいライトアーマーに身を包んだライナ達は迫る戦いの空気に表情を引き締めさせながらアイリスに感謝の言葉を告げた。

「「ありがとうございます、アイリス様」」

「そこまで畏まらなくて良いわよ、うん、似合ってるわね」

ライナ達の感謝の言葉を受けたアイリスは鷹揚に応じながら黒いライトアーマー姿のライナとライトグリーンのライトアーマー姿のリーナとアリーシャを満足げに眺め、その後にエメラルドグリーンのライトアーマー姿になったミリアリアに視線を向けて口を開いた。

「それじゃあ、行きましょうか?」

「……ああ、そうだな」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは表情を引き締めながら頷き、アイリスはそれを確認した後に視線をライナ達に向けて言葉を続けた。

「それじゃあさっき説明した通りあたしは彼女と一緒にフォレストドラゴンの所に行ってくるわ、時間もかかるだろうし襲撃は夜半だからそれまではゆっくり休んでいて」

「「行ってらっしゃいませ、アイリス様、ミリアリア様」」

アイリスの言葉を受けたライナ達は深々と一礼しながら送別の言葉を告げ、アイリスは頷いた後にミリアリアの手を掴んでその身体を自分の引寄せた。

「……それじゃあ、行くわよ」

「……あ、ああ」

アイリスに声をかけられたミリアリアは間近に迫った美貌と魅惑的な肢体に頬と笹穂耳を赤らめさせながら応じ、アイリスが愛しげに赤らんだミリアリアの顔を見ながら小さく指を鳴らすとライナ達の前から2人の姿が掻き消えた。


ダンジョン入口付近・キャンプ跡


アイリスとミリアリアはアイリスが発動させた転位魔法によってマスタールームからダンジョン入口前のロジナ候国軍のキャンプ跡へと転位し、転位が終了したのを確認したアイリスは上空に視線を向けて中天から西へと傾きつつある太陽の位置を確認した後にミリアリアに声をかけた。

「それじゃあ、フォレストドラゴンの所まで移動するわね」

「……あ、ああ……そ、その事についてなんだが……そ、その、だ……な、なんと言うか」

アイリスに声をかけられたミリアリアは赤らんだ顔を恥ずかしげに俯かせながらごにょごにょと口ごもり、その姿を目にしたアイリスは蠱惑的な笑みを浮かべながらミリアリアの朱に染まった笹穂耳に囁きかけた。

「観念しなさい、この方法が一番早いのよ」

「……っ!?わ、分かっ……た、や、やむを得まい」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは更に頬と笹穂耳を更に真っ赤にさせながら応じ、アイリスは蠱惑の笑みと共に頷いた後にミリアリアの身体を両手で抱き抱えた。

「……だ、大丈夫、か?……そ、その、お、重くない、か?」

アイリスに抱き抱えられたミリアリアは真っ赤な顔で俯きながら恥ずかしそうに問いかけ、その問いかけを受けたアイリスは仄かに赤らめさた頬を緩めながら言葉を返した。

「……フフフ、大丈夫よ、とっても軽くて羽根みたいよ」

そう答えるアイリスの背中に生える蝙蝠の羽根が大きく左右に開き、それを確認したミリアリアが思わず身体を硬直させていると、アイリスは聞き取れない言葉を一節紡いだ後に穏やかに微笑みながら言葉を続けた。

「……今、軽い魔法障壁を展開させたわ、だから心配しないで、力を抜いて」

アイリスのあやす様に穏やかな声を受けたミリアリアは強張っていた身体から少し力を抜き、その様子を目にしたアイリスは穏やかな笑顔で頷きかけた後に左右に大きく開いた蝙蝠の羽根を大きく1度羽ばたかせた。

1度の羽ばたき、ただそれだけでミリアリアを抱き抱えるアイリスの姿は森の木立の上空にあり、ミリアリアが驚きの表情で眼下に拡がる森を見ているとアイリスの穏やかな囁きが鼓膜を揺さぶった。

「それじゃあ行くわよ」

「……ああ、分かった、宜しく頼む」

ミリアリアはそう応じながら躊躇いがちに手を伸ばしてアイリスにしがみつき、アイリスは頬や耳を仄かな朱に染めながら蝙蝠の羽根を羽ばたかせてフォレストドラゴンが惰眠を貪っている洞窟へと向かった。


洞窟


ミリアリアを抱えたまま飛行を続けるアイリス、蝙蝠の羽根を羽ばたきはゆっくりとしていたが飛行速度は凄まじいものであり、2人は陽がそれほど傾かない内に目的地の洞窟近くに到着した。

到着したアイリスは蝙蝠の羽根を巧みに操りゆっくりと洞窟の近くの地面に降りると、少し名残惜しそうな様子で抱き抱えていたミリアリアを降ろし、ミリアリアもアイリスの手が自分から離れた事に幾許かの寂寥を感じながら礼を告げた。

「……ありがとう、何時も何時も本当に助かっている」

「……フフフ、じゃあ御褒美にあたしの身体をしっかり洗って頂戴」

「……っぐっ……ぜ、善処する」

アイリスから言葉を返されたミリアリアは真っ赤になりながら応じ、アイリスはその反応を愛しげに一瞥した後にミリアリアを促して洞窟の中へと入った。

ミリアリアはアイリスと共に洞窟に入ると魔力の明かりを灯して洞窟の内部を照らし、アイリスとミリアリアはその明かりを頼りに洞窟の奥へと歩を進めた。

アイリスとミリアリアが暫く歩いていると広々とした空間に到達し、その空間の奥にマスタールームで表示された映像に映し出されていたフォレストドラゴンが巨体を横たえて惰眠を貪っていた。

「……この巨大さ、やはり古成体だ、もしかしたら魔龍にまでなっているかもしれない」


……その通りだ、森の民よ……


横たわるフォレストドラゴンの巨体を目にしたミリアリアが呟きをもらしていると、その憶測を肯定する答えが返されると同時に惰眠を貪っていた筈のフォレストドラゴンの瞼が開かれて永き年を生きた証である黄金色に輝く蛇眼が姿を現し、フォレストドラゴンはゆっくりと顔を上げてミリアリアを見据えながら念話で語りかけてきた。

……森の民よ、御主達の窮状に関しては慰めの言葉も無い、森の民に黒き森の民、どちらも森と共に生きる民、森を住処とする我にとっても好感の持てる種族であるからな……

「……ありがとうございます、国を喪った敗残兵となった現状で聴くその御言葉身に沁みます」

「あらあら、フォレストドラゴンとエルフやダークエルフってそんなに良好な関係だったの」

ミリアリアとフォレストドラゴンの会話に耳を傾けていたアイリスは興味深げな面持ちで会話を終えたミリアリアに話しかけ、ミリアリアは頷いた後に説明を始めた。

「実り多き森を好むフォレストドラゴンは森の奥を住処として、基本的には穏和な性質だからこちらから妙な手出しさえしなければ基本的には無害だし、危険な大型モンスターを餌として捕食してくれたりもする、だから森を好む私達エルフやダークエルフにとっても共生し易い種族なんだ、それにしても、まさか魔龍にまで成長した個体が我が国の近くにいるとは思わなかった」

説明を終えたミリアリアは感慨深げな表情になってフォレストドラゴンを見詰めた。

ミリアリアの言葉の中にあった魔龍と言うのは極幼体ごくようたい・幼体・若成体じゃくせいたい・成体・古成体・魔龍と言う六段階に別れドラゴンの成育形態の最終形態の事で、強大な能力と高い知能を持ち念話によって他種族との会話も可能と言う規格外の能力を持つ個体だが個体数自体が相当少い上にその能力を恐れられるが故に討伐対照として討伐される事も少なくないので極めて珍しい存在と言える。

……確かに我の存在は珍しいと言えるな森の民よ、しかし、そんな我にとってもそなたの隣におる者の存在は珍しくあるぞ……

ミリアリアが説明を終えるとフォレストドラゴンは黄金色の蛇眼をアイリスに向けながらミリアリアとアイリスに語りかけ、アイリスは悪戯っぽい笑みを浮かべながら口を開いた。

「……あらあら、そんな話をするって事は、あたしが何だか分かってるみたいね」

……白雪がごとき肌に艶やかな黒髪に瑠璃色の瞳と蝙蝠の羽根、そしてその身が纏う我ですら恐怖を覚える程の膨大な量の魔力、それらを見てなお御主の正体が分からぬ輩は愚か者と言えるぞ、魔王よ……

フォレストドラゴンの言葉を聞いたミリアリアは表情を強張らせながらアイリスとフォレストドラゴンの両者を見詰め、それに気付いたフォレストドラゴンは視線をミリアリアの方に向けながら声をかけてきた。

……案ずるな森の民よ、今の御主の反応で御主がこの魔王に心を許しておるのは察せられた、故に非常に興味があるのだ森の民と共に訪れた魔王の目的にな……

「だったらその点に関してゆっくりと話し合うとしましょう、魔龍さん」

……そうだな、永らく生きていたが、まさか魔王と語らう時が来るとは思わなかった、故にゆっくりと話し合おうでは無いか、異質の魔王よ……

静かに言葉と視線を交えて行くアイリスとフォレストドラゴン、ミリアリアは身体が強張るのを感じながら両者の会談を見守っていた。



戦力拡充の為にフォレストドラゴンが眠る洞窟を訪れたアイリスとミリアリア、永き齢を重ねた結果魔龍となっていたフォレストドラゴンは彼女達の訪問を受け入れ、魔王と魔龍の会談が開始された。

アイリスとミリアリアを待ち受けていた存在、それは永き齢を重ねてこの森に君臨し続けてきた森の魔龍おうじゃ……

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