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惨劇・第一次フェルト・ヘルン・ハレ攻防戦編・強襲

ウラルこそ、ウラルこそ

お前の居場所だモロトフよ!

スターリンとその仲間達も

もれなくシベリア御招待!

ニェット・モロトフ!ニェット・モロトフ!

総督以下の大ホラ吹き!


モロトフは駄目だ四番歌詞(日本語訳)

大陸歴438年実りの月三日・フェルト・ヘルン・ハレ司令部


フェルト・ヘルン・ハレに到着した敵部隊はヴァイスブルク男爵領国軍がリステバルス王国軍の支援部隊と共にフェルト・ヘルン・ハレの北、東、西に、残る南にリステバルス王国軍主力部隊がそれぞれ展開すると陣営を築く事無く戦闘態勢への移行を開始し、フェルト・ヘルン・ハレの司令部ではリリアーナとマイヤー、クノーベルスドルフが使い魔達から送られてくる魔画像によってその様子を確認していた。

「……到着したばかりにも関わらず、取り囲むや否や陣営も築かず即座に攻撃開始、ですか、随分となめられた物ですね」

性急とも言える攻撃部隊の行動を目にしたリリアーナは微かに顔をしかめながら呟き、クノーベルスドルフは小さく頷いた後に展開する攻撃部隊を見ながら口を開く。

……恐ラク、既ニ勝ッタツモリデスライルノデショウ、愚カナ連中デス、教育シテヤル必要ガアリソウデスナ……

……教育代トシテ死体ヲ利用サセテ貰ウガナ……

クノーベルスドルフがそう告げるとマイヤーが淡々とした口調で続き、それを聞いたリリアーナはゆっくりと頷いた後に冷たい表情で行動する攻撃部隊を見詰めながら言葉を続けた。

「……それでは招かれざる客人の方々に戦争を教育して差し上げましょう、宜しくお願い致します」

……御意……

リリアーナの言葉を受けたマイヤーとクノーベルスドルフは恭しく一礼しながら返答した後に部隊指揮の為退出し、リリアーナはその背中に深く一礼した後に再び攻撃部隊の様子が映し出さた魔画像へと視線を向けた。


フェルト・ヘルン・ハレ北方・ヴァイスブルク男爵領国軍第三騎士団攻撃部隊


フェルト・ヘルン・ハレ北方に展開したヴァイスブルク男爵領国軍第三騎士団は小高い丘であるリシャンカの丘に団本部を設置し、南方に展開中のリステバルス王国軍主力に向けて伝令を出しつつ攻撃準備を始め、攻撃部隊の第二、第四中隊は指揮官達に急かされもたつきを見せながらも攻撃開始線に向けて展開を開始した。

急速錬成され基本教練すら覚束無い急造エルフ騎士達は目の前に鎮座するフェルト・ヘルン・ハレの得意な外見と、不気味なまでの沈黙に内心で慄きながらも指揮官達の号令に駆り立てられて移動し、傭兵隊から第三騎士団の小隊長になった数少ない熟練指揮官のハルスはその動きに内心で舌打ちしながら共にヴァイスブルク男爵領国軍に所属する事になった長い付き合いの下士官バープリーに声をかける。

「……どう思う?」

「……明らかにマズイですな、コイツはどう見ても要塞です、見る限りどの方向から攻めても複数の方向から滅多撃ちを喰らいますよ」

バープリーは難しい顔つきで鎮座するフェルト・ヘルン・ハレを見詰めながら冷静にその強固な防御力に関する意見を述べ、ハルスは渋い表情で頷きながら部下の急造エルフ騎士達の覚束無い動きを一瞥し、その後に眉間の皺を更に深めながら呪詛の呟きをもらす。

「……畜生、あんな物騒な代物に偵察も無しでいきなり強襲を仕掛けるなんて狂気の沙汰だぞ、そろそろ傭兵稼業からオサラバする為に仕官した途端にこんな目に合うとはな、バープリー、我々の小隊はなるべく他の小隊に後続する形で前進させろ、コイツ等の練度では強襲は単なる自殺行為だ」

「……承知、幸いやる気だけは十分な小隊がありますのでその小隊に先陣を譲りつつ前進させます」

ハルスが呪詛の呟きに続いて部隊の保全策をバープリーに伝えるとバープリーは小さく頷きながら返答した後に指示を出す為に部下達の所へ向い、ハルスはその背中を一瞥した後に鎮座するフェルト・ヘルン・ハレに視線を戻した。

鎮座するフェルト・ヘルン・ハレは攻撃部隊が接近しているにも関わらず不気味な沈黙を続けており、ハルスは顔をしかめながら呪詛の呟きをもらす。

「……くそったれ、引き付けるだけ引き付けた上で魔法射撃と弩砲の釣瓶撃ちか、我々は凄まじい貧乏籤を引かされたと言う訳だな」

ハルスがそう呟く間にも攻撃部隊は尖兵隊を先頭に攻撃開始線に向けて前進を続け、ハルスは渋面のまま戻ってきたバープリーと共に覚束無い動きのエルフ騎士達を指揮して前進を続けた。


フェルト・ヘルン・ハレ北方・リステバルス皇国亡命政権軍


覚束無ささえ感じさせながらも接近するヴァイスブルク男爵領国第三騎士団攻撃部隊を迎え撃つフェルト・ヘルン・ハレ北方守備隊は第二死霊連隊第三大隊のボーンウォーリア隊を主力に第二火力支援大隊第二中隊のワイト隊とポーンマジシャン2個小隊が展開しており、更にサララ率いるリステバルス皇国亡命政権軍もその軍列に加わって迎撃態勢を整えていた。

「……驚いたな、このフェルト・ヘルン・ハレの堅固な外見を目にしたにも関わらず陣営すら造らず即時強襲をかけて来るとはな」

……アイリス様ガ御自ラ造リ上ゲシコノフェルト・ヘルン・ハレヲ見クビルトハ愚カナ連中ダ、ソノ代償ハ連中ノ命デシッカリト購ッテ貰ウトシヨウ……

サララが冷たい眼差しで接近するヴァイスブルク男爵領国軍の動きを見ながら呟きをもらすと傍らでそれを聞いていた第二火力支援大隊第二中隊長を務める白いローブを纏ったワイト、ヘイヘが静かな口調で口を開き、サララは小さく頷く事でその言葉に同意していると、フェルト・ヘルン・ハレ南方から激しい魔法射撃の音が響き始め、それを合図にした様にフェルト・ヘルン・ハレ北方のヴァイスブルク男爵領国軍にも新たな動きが生じる。

ヴァイスブルク男爵領国軍はポーンマジシャン隊とワイト隊の支援部隊によって増強されたボーンウォーリア中隊が守る北方半月堡に二方向から迫り水濠前の盛土の斜面を駆け登り始め、サララは攻撃部隊が斜面の中程に差し掛かった辺りで頭上に手を翳して炎弾を発射した。

放たれた炎弾はサララ達の頭上高くに上昇して爆ぜ、それを合図として北方守備隊所属のポーンマジシャン隊とワイト隊が炎弾、氷弾、雷弾、風弾等の猛烈な魔法弾を開始し、これまでの戦闘で鹵獲された中弩砲や軽弩砲、弓や弩等も猛烈な弾雨となって斜面を登るヴァイスブルク男爵領国軍の急造エルフ騎士達に叩きつけられた。

北方半月堡を左右から挟撃する形で前進していた筈の急造エルフ騎士達は半月堡と本塁突角堡の二方向からの猛烈な射撃に逆に挟撃される形となってしまい射竦められる形となってしまい、炸裂する魔法弾の弾雨によって大損害を被ってしまう。

フェルト・ヘルン・ハレの猛烈な防御射撃と味方部隊の窮状を目の当たりにした支援部隊のリステバルス王国軍弩砲兵隊は慌てて中弩砲による援護射撃を開始したがその規模はフェルト・ヘルン・ハレ側の弾雨と比較すると明らかに小規模だった上に頭上で悠然と舞う使い魔達によってその位置が特定済であった為、ヘイヘと一部のワイトが使い魔の弾着観測支援を受けながら開始した対弩砲射撃によってリ護衛のステバルス王国軍軽装歩兵部隊と共に損害が続出してしまう。

猛烈な弾雨に晒され射竦められ立往生状態で損害を受けるヴァイスブルク男爵領国軍攻撃部隊だったが、この光景はフェルト・ヘルン・ハレ北方のみに起こった現象では無く、残る三方から攻撃を仕掛けたヴァイスブルク男爵領国軍攻撃部隊とリステバルス王国軍攻撃部隊は程度の差こそあったもののほぼ似たような展開に直面し猛烈な魔法弾射撃の弾雨を浴び甚大な損害を被っていた。


ヴァイスブルク男爵領国軍第三騎士団攻撃部隊


「……くそったれ、やはり我々は特大の貧乏籤を引かされた様だな、バープリー部隊を後退させろっ!」

「了解!!」

猛烈な弾雨に晒され攻撃部隊に損害が続出する中、その渦中に巻き込まれたハルスはバープリーに命じて速やかに後退を命じ、それを受けたバープリーは混乱する急造エルフ騎士達に喝を入れながら後退させ始める。

ハルスの小隊は降り注ぐ弾雨に損害を被りながらも部隊規律を維持しつつ後退を開始したが、他の部隊の多くは降り注ぐ弾雨に晒され混乱状態に陥り降り注ぐ弾雨に薙ぎ倒されてしまい、ハルスが自軍の窮状に顔をしかめているとその頭上を風切り音を響かせながら複数の魔法弾が通過して行き、その意図を察したハルスは小さく舌打ちした後に戻ってきたバープリーに声をかける。

「……後方のリステバルスの弩砲兵の連中も攻撃を受けている様だな」

「……急造の我々には明らかに荷が重い相手ですな」

ハルスに声をかけられたバープリーはハルスと同じ様に顔をしかめながら返答し、ハルスは小さく頷きながら浮足立ちかける急造エルフ騎士達を叱咤しつつ小隊を後退させて行った。

ハルスの小隊は間断無く降り注ぐ弾雨により2割程の損害を被りながらも部隊として後退する事に成功したものの、残る部隊は猛烈な射撃による混乱から中々脱する事が出来ず潰走状態で退散し、水濠にすら到達出来なかった第三騎士団攻撃部隊は斜面に多数の遺体を残して這々の体で本隊へと逃げ帰り、その上射撃支援を行っていたリステバルス王国軍弩砲兵部隊も対弩砲兵射撃によるかなりの損害を被ってしまった。

第三騎士団攻撃部隊が潰走したのとほぼ同時にフェルト・ヘルン・ハレ東方と西方に強襲を仕掛けたヴァイスブルク男爵領国軍第四、第五騎士団攻撃部隊も猛烈な防御火力によって水濠にすら到着出来ず支援部隊共々大損害を受けて退散し、2個大隊でフェルト・ヘルン・ハレ南方にて突撃を敢行したリステバルス王国軍攻撃部隊は猛烈な射撃に損害を被りながらも水濠に到着し、強行渡渉を実施したものの猛烈な弾幕射撃と水濠内にて散開していた第一戦闘偵察大隊のグロスポイズンサーペントの襲撃により甚大な損害を被り撃退され、ヴァイスブルク男爵領国軍とリステバルス王国軍により実施された第一次総攻撃は完全に粉砕されてしまう。

総攻撃に参加したヴァイスブルク男爵領国軍6個中隊とリステバルス王国軍2個大隊約3000名と支援部隊の弩砲兵大隊は猛烈な防御射撃により約2000名を喪失し、生き残った者の中にもかなりの負傷者が存在しており、対するフェルト・ヘルン・ハレ側はリステバルス弩砲兵部隊の支援射撃による損害が生じてはいたもののボーンウォーリア隊を中心にした約200の損害にとどまり、第一次総攻撃の結果はヴァイスブルク男爵領国、リステバルス王国連合軍の大敗と言う結果で幕を閉じる事となった。


フェルト・ヘルン・ハレに到着したヴァイスブルク男爵領国とリステバルス王国の連合軍はフェルト・ヘルン・ハレの四方に展開すると事前偵察すらろくに実施しないまま強襲を開始し、フェルト・ヘルン・ハレ側はは安易な総攻撃に侮蔑の念すら抱きながら安易で無用心な総攻撃を開始した攻撃部隊に対する迎撃を開始した。

フェルト・ヘルン・ハレ守備隊はポーンマジシャン隊とワイト隊及びこれまでの戦闘により鹵獲した中、軽弩砲による猛烈な突撃破砕射撃を攻撃部隊に対して行い、攻撃部隊はフェルト・ヘルン・ハレの構造による複数方向からの猛烈な防御射撃により大損害を被ってしまう。

攻撃部隊は一部が水濠前まで進出したもののそれ以上の前進は実施出来ず甚大な損害を被り撃退され、第一次総攻撃はフェルト・ヘルン・ハレ側の完勝と言う結果となりヴァイスブルク男爵領国軍、リステバルス王国軍の攻撃部隊は大きな損害を受けながら後退して行った……

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