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戦力拡充

7000PVアクセス及び1800ユニークアクセス、そしてブックマーク50を突破致しました。これからも宜しくお願い致します。

マスタールーム


捕らえた2人の捕虜の訊問を終えたアイリスは後の処理を魔狼達に任せるとミリアリアと一連の状況にドン引き気味のライナ達と共に訊問部屋を出てマスタールームに移動し、ソファーに腰を降ろして皆の前に使い魔達が偵察した残党狩部隊本隊の陣営の映像と俯瞰図の図面に陣営周辺の地図を表示させた。

「あの屑隊長はほぼ何も知らなかったけど、屑下っ端参謀は意外に色々知ってたわね、大して期待してなかったけど腐ってても屑でも参謀は参謀って所だったわね」

アイリスはそう呟きながら映し出される陣営の図面や周辺の地図の各所に下級幕僚の白状により判明した各施設の名称や哨兵の展開状況を記していき、それが終了した後に改めてそれらと映像を見詰めながら口を開いた。

「陣営に駐留しているのは軽装歩兵1個大隊に軽騎兵、魔導兵、弩砲兵、工兵が各1個中隊ずつ、陣営の外周警戒は周辺に散開した魔狼と4ヶ所に設けられた外哨拠点が行い、展開する魔狼の統制所を兼ねた各拠点には1個分隊の軽装歩兵と魔導兵2名が詰めて警戒を行っている。そして数日以内に工兵大隊が到着して陣営を簡易的な砦に改築する作業を始め、それに併せて一部の捕虜がヴァイスブルクに後送される、か」

アイリスは映像を確認しながら図面と地図に記した陣営の概要を呟き、それを聞いていたミリアリアはゆっくりと頷いた後に厳しい目付きで捕虜となったエルフ達が収監されている牢小屋を見ながら口を開いた。

「捕虜となっているのは第八騎士団長ミランダ・フリートラントを始めとした8名、その現状については……考えたくも無い」

「……その8名に加えて昨年ロジナ候国軍を中核戦力としたラインラント連邦軍が内戦に介入した結果滅亡した狐人こじん族の国リステバルス皇国の元第五皇女、アイリーン・ド・リステバルス皇女と彼女の護衛騎士をしていたクラリス・ド・サジタリオ、アイリーン皇女に仕えていた侍女3人も娼奴隷として収監されているとの事でしたね」

ミリアリアの言葉に続いてライナが苦い顔付きで下級幕僚が白状した新たな虜囚の存在を確認し、それを聞いたアイリスは小さく肩を竦めさせながらミリアリアに問いかけた。

「ロジナ候国って随分色々やらかしてるのね、何かこの事に関して知ってる事ある?」

「ああ、リステバルス皇国と言うのはヴァイスブルク伯国も所属していた神聖ラインラント君主連邦帝国の隣国にある狐人族の国だ、昨年、皇位継承を巡る内戦が勃発してロジナ候国を主体とした連邦軍が事態収集を名目にしてそれに介入し、反乱を起こしてラインラント連邦軍の介入を求めた第一皇子リチャード・ド・リステバルスを勝利させた」

「……第一皇子って普通、皇位継承権1位なんじゃないの?」

「……ああ、通常はそうだ、実際リチャード皇子も皇位継承権は1位で生まれたのが遅い為年齢的には妹のアイリーン皇女とは2つしか違わないが、他に皇子がいないので地位自体は盤石だったんだがそれにも関わらず反乱を起こしたんだ」

ミリアリアの説明を聞いたアイリスは首を傾げながら疑問を呈し、ミリアリアは眉根を押し揉みつつ答えた後にげんなりと表情で説明を続けた。

「……これはあくまで噂程度の話なのだかリチャード皇子は魔導院の同期生である人間の女性と恋に落ち既に決まっていた許嫁との婚約を破談とする事を望んだそうだ、当然揉めに揉めた挙げ句その破談自体は何とか成立したが人間の女性との婚約は許され無かった、そして皇宮の一部からは唯一の未婚の皇女であるアイリーン様に婿を迎え入り婿に皇位を継承させてはと言う話が出たらしい、あくまで一部の少数意見だったがリチャード皇子がそれに過剰反応して反乱を起こしたと言う話だ……余りに短絡的な話で俄に信じがたい話だが、この内戦に関する関係者の公式見解は皇位継承争いによって生じた内戦と言う一点のみで、この噂自体に一応の筋が通っているからこの噂がまことしやかに巷に流布しているのが現状だ」

「……ヴァイスブルク伯爵の甥と言い、そんな噂が出ている皇子と言い、ホント碌なのがいないわね、所でリステバルス皇国は滅亡したって言ってたけどその皇子はどうなったの?」

ミリアリアの説明を聞いたアイリスはミリアリアと同じ様にげんなりとした表情になりながらといかけ、ミリアリアは小さく溜め息をついた後にそれに答えた。

「内戦に勝利したリチャード皇子はリステバルス皇国の国名をリステバルス王国へ改めて同国の初代国王リチャード1世として即位した、そしてリチャードと共に苦しい戦いの間苦楽を共にした学友のエリナ・リステリスが聖女として王に従った友人達と共に王を補佐しているそうだ、彼女の寛容を求める言葉によってリチャード新王は抵抗した者達を許す一方、援軍を派遣してくれたロジナ候国とラインラント連邦には皇室直轄領の一部を割譲する事で報い、新王に最後まで激しく抵抗し続けた国賊アイリーン皇女は、最後は全ての部下から見捨てられ業火の中でその所業に相応しい末路を迎えたと言われていた、そして現在新王は聖女や友人達と共に寛容を是とした理想の国家の成立を目指していると言う、いっそ感心するくらい嘘くさい話だがこれが公式見解だ……現在のアイリーン皇女の痛ましい御姿を見たリステバルス王国の連中は、どんな言い訳をしてくれるんだろうな」

説明を終えたミリアリアは苦い顔付きで大きく溜め息を吐き、無言でその説明を聞いていたアイリスは気を取り直す様にゆっくりとかぶりを振った後に口を開いた。

「大体の事情は把握出来たわ、つまり、貴女達のお仲間と一緒に掴まっている狐人族の元お姫様達も貴女達と同じ様にロジナの連中と敵対していたって言う事よね、今このダンジョンにいるのは目覚めたばかりの魔王あたしと貴女達の5人だけ、救出予定の人数が4、5人増えた所で問題無いわね」

「……それじゃあっ!?」

「……アイリス様!?」

アイリスの呟きを聞いたリーナとアリーシャが表情を輝かせながら弾んだ声をあげたのに続いてミリアリアとライナも明るい表情になり、それを目にしたアイリスは頷きながら言葉を続けた。

「魔王のあたしに好き好んでついて来てくれるかは分からないけど、敵の敵は味方って言う言葉もある事だし取りあえず救出して今後どうするかはそれから決めて貰いましょう、さて、となると増援が来る数日以内が勝負ね」

「確か、現在ダンジョンの外を襲撃可能な戦力はスケルトンが70体に魔狼が15匹だったな」

「陣営を築いている屑どもの兵力は優に1000を超えています、無論私達も全力を尽くしますがこの戦力差は流石に」

アイリスの呟きを聞いていたミリアリアとライナは表情を曇らせながら自陣の乏しい戦力について言及し、それを聞いたアイリスは悪戯っぽく微笑みながら口を開いた。

「あらあら、心配性なのね、安心して、しっかり戦力拡充の手は打ってあるわ」

アイリスはそう言いながら視線を陣営周辺の地図へと向け、しなやかな指先で陣営の回りをなぞりながら言葉を続けた。

「先ず陣営外周に散開した魔狼達をあたしの魔力で操って元々いる15匹の魔狼達と一緒に4つの外哨拠点の内3つを襲撃させるわ、それと同時に外哨拠点をスケルトン部隊で襲撃、70体いるスケルトンの中に魔導士の骨を媒体にしたのが2体いるからその2体をマジックスケルトンにクラスチェンジさせてそいつらに陽動を兼ねた魔法射撃で支援させるわ、残党狩部隊本隊が増援を送って来るだろうから別動隊が増援を叩き、それと同時に本隊で陣営を直接叩き捕虜を救出した後に連中を叩き潰す、それが基本計画よ、増援が送られかった場合は本隊が最初に司令部を強襲し、ついで別動隊に外哨拠点を潰した魔狼達とスケルトン部隊も加えて攻撃させるわ」

「べ、別動隊に本隊?そ、そんな戦力一体何処に?」

「そ、それに本隊に直接陣営を叩かせるってどうやって」

アイリスの告げた方針を聞いたリーナとアリーシャは驚きと戸惑いがない交ぜになった表情で疑問の声をあげ、それを聞いたアイリスは悪戯っぽく微笑わらいながら言葉を続けた。

「別動隊の戦力はポイズンサーペントが4匹に火蜥蜴サラマンダーとジャイアントマンティスが5匹ずつよ、使い魔が見付けてあるからそいつ等をテイムして別動隊を編成するわ、そして本隊だけどあたし達5人と、コイツで編成される事になるわ」

「「……っな!?」」

アイリスがそう言いながら小さく指を鳴らすとミリアリア達の前に新たな映像が表示され、その映像を目にしたミリアリア達は驚愕の表情を浮かべながら絶句してしまった。

新たに表示された映像には巨大な洞窟の奥で惰眠を貪る鮮やかなエメラルドグリーンの鱗に覆われた体躯が印象的な巨大なドラゴンが惰眠を貪っており、その姿を目にしたライナが掠れた声をあげた。

「こ、これは、フォレストドラゴン……し、しかも、かなりの古成体」

「……昨日の夜簡単な魔力捜索をかけたらかなり強力な反応を捉えたから直ぐに使い魔を急行させて探させてて、ついさっき見つけたの、コイツをテイムしてあたし達はコイツと一緒に空から混乱している陣営を強襲するのよ」

ライナの呟きを聞いたアイリスは悪戯っぽく微笑わらい続けながら方針を説明し、唖然としていた一同の中で一番早く現実に復帰したミリアリアは苦笑しながらアイリスに話しかけた。

「……そうか、そう、だったな、貴女は」

「……そっあたしは魔王、魔王アイリスよ」

ミリアリアに声をかけられたアイリスはそう言いながら微笑み、ミリアリアはその微笑みに頬と笹穂耳を仄かに赤めさせながら近寄り、躊躇いがちにアイリスの手を握りながら言葉を続けた。

「……ありがとう、何時も何時も、貴女には貰ってばかりだな」

ミリアリアの言葉を受けくすぐったそうに微笑わらいながらその手を握り返すアイリス、その耳は仄かな朱を帯びていた。



使い魔達の偵察と捕虜の訊問の結果、残党狩部隊本隊とそこに捕らえられている捕虜達の情報を得たアイリス達は捕虜奪還の為、本隊の襲撃を決意し、森の奥に住まうモンスター達による戦力拡充を企図する事となった……

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