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対策協議

フィンランドに、フィンランドに

またもやイワンが攻めて来た

モロトフはずばり言い切った

「明日よりかの地はロシアだと」

ニェット・モロトフ!

ニェット・モロトフ!

総督以下の大ホラ吹き!


モロトフは駄目だ、一番歌詞(日本語訳)

大陸歴438年・実りの月三日・ヴァイスブルク城・ヴァイスブルク派遣軍司令部


異形の軍勢の襲撃を掻い潜り、命からがらヴァイスブルク近郊のリステバルス第一魔導士団の宿営地に飛び込んで来たマリーナとモーラの報告を受けたミスティリアは即座に急報をバジリスコスとヴァイスブルク派遣軍司令部へ送り、それを受けたナルサスは翌朝緊急の作戦会議を招集した。

急な招集命令を受けた参加者達が慌ただしく支度を整えた後に会議室へと参集すると、ナルサスは渋い表情を浮かべて陣営跡地に敵の砦が建築されている事と偵察隊がほぼ全滅した事を伝え、ミスティリアは出席者達のざわめきが静まるのを待って改めてマリーナとモーラの報告を皆に伝えた。

「……以上が生存者の報告になります、土塁と水濠でガッチガチに固めた砦言うより要塞とでも言うべき施設やそうです、おまけに周りにはブラッディマンティスやらジンベルヴォルフやらが潜んでる言うてはります、まあ、そんな物騒なモンがある以上、陣営の再建は不可能でそれよりもコイツへの対応をどうするんかを決めた方がええ思いますよ」

ミスティリアは報告を終えると淡々とした表情で出席者達に告げ、それに対してリステバルス王国軍第十一騎士団長のレオス・ドールマンが不満気な面持ちをミスティリアに向けながら口を開いた。

「……ミスティリア殿はそう言われるが、その要塞とやらを見たと言うのは見習い騎士他1名に過ぎません、その証言のみを鵜呑みにするのは乱暴ではありませんか?」

「ドールマン殿の言う通りです、敵の拠点があるのは確かなようですが、報告した者の内訳を見るならばその内容の正確性には難があると思わざるを得ません、ならば恐れる事無く早々に敵の拠点を叩き潰して敵の意図を粉砕すべきです」

レオスの発言に続いて第七騎士団長のジェイク・フレッチャーが発言するとバジリスコスが我が意を得たりとばかりに大きく頷き、その様子を目にしたミスティリアは内心で顔をしかめてしまう。

(……またこの2人やなあ、アホ司令官の腰巾着で事ある毎にあのアホに賛同するやからホンマに困るんよねえ)

ミスティリアはこれまでのレオスとジェイクの付和雷同気味を思い出して内心でぼやき、それでも気を取り直して返答しようとしたがその前に参加していたアロイスが立ち上がりながら発言を求め、ナルサスの許可を得た後に決意の表情で口を開いた。

「……ドールマン様とフレッチャー様の仰る通りです、今までダンジョンに籠り続けていた残党どもが出て来たのならばこれは好機です、敵の拠点を覆滅し残党どもに痛撃を与えるべきです、あの場所は未発掘の琥珀の鉱脈も近い上にラステンブルクとの連絡経路にも近くその様な所に残党どもの拠点があるのは目障り極まりありません、ならば早々にその拠点を叩き潰し禍根を早期に断つべきと愚考致します」

(……うん、敵の拠点の規模も何も分からんのに強襲するなんてマジで愚考やで、せやからいっぺん黙っとって貰えんかなぁ、って言うても本来はあちらさんが主役でウチ等はあくまで援軍やもんなぁっ)

アロイスが軽い自己陶酔の気配すら漂わせながら宣った宣言を聞いたミスティリアは、内心で盛大にぼやきつつ会議に出席しているエルヴィーナとカーラに視線を向けると、それに気付いた2人は小さく肩を竦めながら微かに頭を振り、それを目にしたミスティリアが諦念の表情を浮かべているナルサスが大きく頷きながら口を開く。

「……うむ、アロイス殿、よくぞ申して下された、確かにあの位置に敵の拠点があるのは目障りな事極まりない、我等への増援も全て到着し本国からも積極的な活動の容認が出ている状況であるので我等の華々しい門出の一戦として敵の拠点を叩き潰してやるとしようでは無いか」

「……ありがとうございます、ナルサス様、あの地はれっきとした我が領土であります、それ故我がヴァイスブルク男爵領国軍は3個騎士団を出陣させて敵の拠点を覆滅して御覧に入れます」

ナルサスの攻撃許容発言を受けたアロイスは喜色を浮かべて戦力化なったヴァイスブルク男爵領国軍の6割にあたる戦力の投入を宣言し、そのやり取りを聞いていたバジリスコスは発言を求めナルサスの許可を得た後に興奮した面持ちで口を開いた。

「敵の拠点があると言う事はそこに籠るのは我が友リキメロスの仇どもと言う事だ、ならば我等リステバルス王国軍もヴァイスブルク男爵領国軍に助太刀するのが筋と言う物、我がヴァイスブルク派遣軍より第七、第十一騎士団に軽装歩兵、弩砲兵大隊を加えた約5000を派遣させて貰うぜ」

「……おおっ、なんと頼もしき御言葉、感謝致しますぞバジリスコス様」

バジリスコスの部隊派遣の言葉を受けたアロイスは喜色を更に深めながら感謝の言葉を発し、そのやり取りを見ていたナルサスは大きく頷いた後に出席者達を見渡しながら口を開く。

「……話は決まった、我等はこれより敵の築いた拠点を鎧袖一触に叩き潰し再編なったヴァイスブルク派遣軍の栄光の第一歩とする、作戦に参加するのはヴァイスブルク男爵領国軍3個騎士団とリステバルス王国軍の混成部隊とし、ツェントラル同盟の部隊で後詰を行って貰う事になる、皆、宜しく頼むぞ」

ナルサスはそう宣言すると攻城計画の細部に関する協議の開始を告げ、ミスティリアは内心で盛大な溜息を吐き出した後に胸中で偽らざる心境を吐露した。

(……まあ、一遍痛い目みた方がええかもしれへんわな、幸いウチの部隊は巻き込まれんですみそうやし、エルヴィーナはんやカーラはんは災難やけどあの2人やったらまあ、何とか出来るやろうし)

ミスティリアはそう結論づけると何食わぬ顔で協議を続け、エルヴィーナとカーラもミスティリアと同じ様な結論に達して諦念を抱きながら協議に臨んだ。

その後の協議の結果、攻略部隊は2日後にヴァイスブルクを出撃する事となりツェントラル同盟の3個騎士団は以前第九騎士団が展開していた辺りに駐留して攻略部隊への後詰と後方連絡線の維持にあたる事が決定された。



偵察隊が殲滅される中、何とか虎口を脱して帰還したマリーナとモーラの報告を受けヴァイスブルク派遣軍司令部にて開始された緊急の軍議、ミスティリアはその席上にて生還した2人の報告を伝達して慎重な対応を提案したがバジリスコスの腰巾着として活動しミスティリアに含む所のあるリステバルス王国軍第七騎士団長と第十一騎士団長は短兵急とも言える攻略作戦を提案し、戦役の当事者たるアロイスがそれに賛同し攻略作戦の実施を強く進言してしまう。

アロイスの発言を受けたナルサスは増援が完了し強化されたヴァイスブルク派遣軍の門出の一戦としてその発言を採択し、バジリスコスも復仇の念に駆られて約5000の兵力参加を発表してしまう。

ミスティリアやエルヴィーナ、カーラは余りに安易な攻略作戦可決に内心で懸念を抱くが、異を唱えても聞き入れられる状況では無いと判断し、それならば正体不明の敵の能力を瀬踏みする為の必要な犠牲と割り切った判断を下して攻略作戦に関する協議に参加し続けた。

魔王の星型要塞、フェルト・ヘルン・ハレ、その地を巡り幾度も行われる事となると攻防戦の第一幕、第一次フェルト・ヘルン・ハレ攻防戦が勃発する事が確定した瞬間であった……


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