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城塞(ツィタデレ)作戦・星型要塞と偵察計画

黒人達が喜び叫び

七面鳥達も鳴き騒ぐ

辺りは陽気に包まれて

我等が征くはジョージア

フラー!フラー!喜び歌え

フラー!フラー!自由の歌を

歌声は響くアトランタの地から

我等が征くはジョージア


ジョージア行進曲・二番歌詞(日本語訳)

大陸歴438年・観月の月二十三日・陣営跡地


アイリス率いる異形の軍勢が陣営跡地に到着してから一夜が明けた観月の月二十三日は秋晴れの朝を迎え、第一、第二死霊連隊のボーンウォーリア隊とダス・ライヒのボーンナイト隊が防御拠点構築の為の地均し作業を開始しており、その作業音が響く中アイリスの寝泊まりする大型天幕にてアイリス、ミリアリア、リリアーナ、カッツバッハ、サララ、クーリアにダンジョンで作られた温食を運んで来たマリーカとアナスタシアも参加して朝食を兼ねた作戦会議が行われていた。

「……現在、アンデッド部隊が地均し作業を開始しているからその作業が終了次第、新編された第二、第三金堀衆に今から製作するウッドゴーレム隊にも協力させて防御拠点の構築作業をしていく事になるわ」

「……アイリス様、建築予定の防御拠点の概要が分かるのであれば御提示頂きたいのですが、アイリス様の造られる防御拠点、女戦士(アマゾネス)として非常に興味があります」

アイリスが温かな木の実と虹鱒のシチューを口へと運びながら今後の作業方針を説明していると、クーリアが軍用ビスケットをスープに入れて溶かしながら問いかけ、アイリスは小さく頷いた後に指を鳴らして皆の目の前に防御拠点の完成予定図の魔画像を具現化させた。

アイリスの具現化させた魔画像に映し出された防御拠点は五角形の本塁の各頂点に小振りな五角形の堡塁が築かれた星型の拠点本体と五角形の各面の正面に橋で繋がった半月堡が形成され半月堡と拠点本体が水濠で囲まれ、その周囲が盛土と斜堤によって囲まれると言う特異な外見をしており、その異様な姿を目にしたマリーカは食事の手を止めて魔画像を凝視しながら口を開いた。

「……変わった形の拠点ですね、星型、と言えば良いのでしょうか?」

「……魔法弾射撃の効率的な運用を目指して研究してた陣地形態で特に名前を決めてる訳では無かったのだけど、良いわねその言葉、その言葉を使わせて貰って星型要塞とでも呼ばせて貰うわね」

マリーカの呟きを聞いたアイリスはそう言いながら軍用堅焼パンをシチューに浸しながら返答し、カッツバッハは軍用ビスケットを溶かしたスープを啜りながら暫く星型要塞の魔画像を仰視した後に同じ様に魔画像を仰視していたサララとクーリアに声をかける。

「……2人はどう思う?」

「……カッツバッハ殿、私達も恐らく同じ意見だ、この星型要塞、恐ろしく攻め難いぞ」

カッツバッハの問いかけを受けたサララは果実水で喉を湿した後に真剣な表情で魔画像を見ながら星型要塞に関する感想を述べ、カッツバッハが得心の表情で頷いているとクーリアも頷いてスープにスプーンを運びながら口を開く。

「……どの方向から攻撃しても必ず2方向以上から魔法弾と弩砲の射撃を浴びる、しかも接近するに従って後方や側面に猛烈な射撃を間断無く浴びせられる、そんな猛烈な射撃に晒されながら盛土の斜面を駆け上がりその上水濠まで突破しなければならない、平面前の拠点を攻略しても防御側からすれば丸裸状態で集中射撃を浴びせられてしまう、力攻めをすれば相当な損害を覚悟する必要があるな」

「……歴戦の女戦士(アマゾネス)にそう言って貰えるなら設計した甲斐があるわね、この拠点が完成したらフェルト・ヘルン・ハレと呼称する事になる予定よ、常時2個死霊連隊と2個火力支援大隊を詰めさせて琥珀の鉱脈を確保しつつヴァイスブルクとラステンブルクの連絡線を監視し、ヴァイスブルク男爵領国にも圧力をかけていく拠点とする予定よ、ヴァイスブルク伯国亡命政権とリステバルス皇国亡命政権にも人員を駐留させて貰う事になると思うけど頼むわね」

クーリアの感想を聞いたアイリスは満足気に頷いた後に星型要塞、フェルト・ヘルン・ハレ完成後の構想をとそれに対する協力の依頼をカッツバッハとサララに伝え、カッツバッハとサララが力強く頷く事で同意と賛意を示したのを確認した後に小さく指を鳴らして星型要塞の魔画像からヴァイスブルク周辺の白地図の魔画像へと切り替えた後に言葉を続けた。

「……フェルト・ヘルン・ハレの建築作業と並行して行うヴァイスブルクに対する偵察活動の目的は同地に駐留するロジナ侯国とそれに協力するリステバルス王国やその他の同盟国軍の大まかな規模と配置状況の概略を把握しておく事となるわ、投降して協力してくれた人達の情報とミリア達の情報の擦り合わせから最も警戒すべきロジナのお姫様の近衛騎士団と魔曲騎士団の駐留地の概略が把握されているから先ずはその確認が第一になるわね」

アイリスがそう言うとアリステラ達の情報と土地勘のあるミリアリア達の情報の擦り合わせの結果判明したヴァイスブルク近郊の第三近衛騎士団と第九騎士団の宿営地の概略位置が白地図に記され、一同の視線が白地図の魔画像に集中する中アイリスは更に説明を続ける。

「……第二の偵察目標はリステバルス王国軍の派遣規模の確認になるわ、第一次派遣軍でさえ9000なんてかなりの規模の部隊を派遣して来てたし、リステバルス皇国亡命政権から伝えられ、実際に確認もしたリステバルス王国首脳陣の性質からすれば最低でも第一次と同規模、連中の資質では更に大規模な援軍の派遣が考えられるから概略で構わないからその規模を確認するのが目的よ、恐らく第一次派遣軍が使用予定だった宿営地を使用する筈だからそこを中心に偵察活動を実施していく事になるわ」

アイリスの説明に合わせてアリステラの情報から判明したリステバルス王国軍の宿営地の概略位置も白地図に記され、アイリスは皆がそれを見ながら頷いたのを確認すると果実水で喉を湿した後に言葉を続ける。

「……そして第三の目的はヴァイスブルク周辺を出来るだけ詳しく偵察してこの白地図に判明した敵の配備状況や規模、地形状況等を記してヴァイスブルク周辺の概略を掴む事が目的よ、敵の規模や配備状況、ヴァイスブルクの様子等も確認して今後の方針判断への一助になる様にする事が目的になるわ、日中は小動物に擬態した使い魔達で実施し夜間には吸血球や吸血蔦も参加し、隙があれば何人か襲ってみる事も考慮してるけど、あくまで敵の規模次第になるわね、皆は巡回パトロールや狩猟と採取、作業の監督と補備修整等に従事して貰うからそのつもりでいて頂戴」

アイリスの説明と今後の指示を聞いた一同は表情を引き締めながら頷き、アイリスはそれを確認しながらスライスされた山林檎を摘んで口へと運んだ。


数時間後


朝食を兼ねた作戦会議終了から数時間後、地均し作業は完了し第二、第三金堀衆のスパイラルシェルや地炎龍、硫黄龍も加わった水濠の掘削作業と本塁や半月堡の基礎構築作業が開始されており、アイリスはミリアリアと共に作業の進捗状況を確認していた。

「……本塁の水濠は最大幅約40メルスで水深は6から8メルス、半月堡前の水濠は幅5メルスになるわ、早期完成を目指して本塁と半月堡の斜堤は土塁にしておくけど追加工事を行って本塁と半月堡の斜堤は全て魔力硬化処置を施した石垣にしていく予定よ」

「……そ、そうか、す、凄まじいな、色々と」

アイリスからフェルト・ヘルン・ハレの概略を聞かされたミリアリアはその強固さに若干ヒキ気味になりながら相槌を打ち、アイリスが誇らし気な表情で頷いていると雀や雲雀、ナイチンゲールや山鳩等に擬態した使い魔の群が集結し、アイリスはその姿を一瞥した後にミリアリアに視線を向けた。

アイリスの視線を受けたミリアリアは表情を引き締めながら小さく頷き、アイリスはそれを確認した後に小さく指を鳴らした。

アイリスが指を鳴らすと、使い魔の群は一斉に飛び立つと三々五々に散らばりながらヴァイスブルク方面に向けて飛び去って行き、アイリスはミリアリアと共に飛び去る使い魔達を見送った後にフェルト・ヘルン・ハレの構築作業へと視線を戻した。

完成したフェルト・ヘルン・ハレはその特異な外見と高い防御機能からそれまでの築城術を一変させてしまう程の衝撃を各所に与え、後世の歴史家達からアイリス式築城要塞群、若しくは魔王の星型要塞群と呼ばれる事になるフェルト・ヘルン・ハレを始祖とするこれらの要塞群は十字教関係者から悪魔の堕落要塞と呼び忌み嫌われる事になりながらも各地に伝播して行く事になるのだった。


アイリス率いる城塞(ツィタデレ)作戦参加部隊が陣営跡地に到着した翌日、アイリスは朝食を兼ねた作戦会議を招集し、参加した者達に対して建築予定の防御拠点の概要を披露した。

披露された防御拠点の外見は異様な外見を持っており、会議に参加しているマリーカの感想を受けたアイリスはこの拠点に星型要塞と名付けた後に防御拠点フェルト・ヘルン・ハレの構築開始とヴァイスブルク男爵領国への偵察活動の開始を告げた。

こうして構築が開始されたフェルト・ヘルン・ハレは完成後、その特異な外見と高い防御機能から多くの者に衝撃を与え、魔王の星型要塞と呼ばれ、一部の者からは悪魔の堕落要塞と忌み嫌わながらも各地へ伝播して行く事となった……

ミリアリア「……このフェルト・ヘルン・ハレの外見なんだが、水濠との組み合わせだから五稜郭タイプで良いのか?」

アイリス「……そうなるわね、半月堡等の設備を当初の計画通り設置して西洋法石垣御全備が施された物が近い会見になるわね」

ミリアリア「……作者は本気で応援して下さる読者の皆様に感謝した方が良いと思うぞ」

アイリス「……心底同意するわ」

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