表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/161

防衛拠点

御旗に集いしつわもの

戦え!州権を守らん

恥を受くるよりは死ぬるべし

讃えよ麗しの青き旗

フラー!フラー!いざ掲げよ

フラー!一つ星の青き旗


ボニーブルーフラッグ・七番歌詞(日本語訳)

大陸歴438年・観月の月二十一日・ダンジョン・マスタールーム


クリストローゼ侯国侵攻作戦バグラチオンが動き始めた頃、ダンジョンでは敵性反応の低調化により平穏な日々を過ごしていたが、アイリスは来るべき再戦に備える為の三国同盟戦略会議の招集を決意してマリーカとアイリーンに参加を要請し、マリーカとアイリーンは異論無く参加を快諾してマスタールームに参集した。

マスタールームにはヴァイスブルク伯国亡命政権より参加したマリーカ、アナスタシア、カッツバッハ、ミランダに、リステバルス皇国亡命政権から参加のアイリーン、クラリス、サララ、エメラーダ、そして三国同盟の盟主であるアイリスがミリアニア、リリアーナと共に参加してテーブルを囲み、一同が揃ったのを確認したアイリスは穏やかな表情で皆を見渡しながら口を開いた。

「……皆、揃ってくれたみたいね、それでは三国同盟の戦略会議を行うわ、今回の議題はヴァイスブルクに対する偵察活動及び外部防衛拠点の確立とするわ」

アイリスの口から出たのは、敵の本拠地のヴァイスブルクに対する偵察活動とダンジョンの外に防衛拠点を設置すると言うこれまでの活動範囲と行動を超える活動に関する議題であり、出席者、特にヴァイスブルク伯国亡命政権の関係者達が表情を引き締める中、アイリスは穏やかな表情のまま言葉を続ける。

「この前の攻撃から約一月が経過したけど、今の所敵に目立った動きは見られないわ、でも、リステバルス王国に送り込んでやった氷漬けの親友を目にした王家の連中は怒り狂って新手の部隊を派遣した筈でそろそろ到着している頃よ、だから、敵の攻勢に向けた外郭拠点を確保しつつ使い魔達でヴァイスブルクの周辺を偵察して敵の規模を探り、その規模によっては軽い威力偵察を兼ねた襲撃を行う事も考慮しているわ」

アイリスがそう言うと2度に渡り壊滅させられたロジナ侯国軍の陣営の跡地周辺の地図の魔画像が具現化され、出席者達がの視線がそれに向かう中アイリスが説明を続ける。

「まずこの陣営跡地に第一死霊連隊と第二死霊連隊及び第二親衛死霊連隊ダス・ライヒを第一火力支援連隊の第一、第二大隊、第一駆逐大隊に支援させて進出させるわ、それと並行させる形で使い魔達と分裂した吸血球獣の吸血球を利用してヴァイスブルク周辺の隠密偵察を実施するわ、偵察の目的は到着しているであろうリステバルス王国軍の増援部隊の規模確認と最も警戒すべき敵のロジナのお姫様の近衛騎士団と魔曲騎士団の所在地確認並びに駐留している敵部隊戦力の概略把握よ、偵察活動によってヴァイスブルク周辺に展開している部隊が強力ならばこの陣営の跡地を防衛拠点化し、戦力的にそこまでで無いと判断した場合は防衛拠点化に平行する形で円盤化したブラッディスケアクロウのミステル攻撃と第一火力支援連隊のワイト部隊による魔法弾射撃を郊外に駐留している部隊に実施して防衛拠点が概成するまで敵の動きを牽制する事になるわ、いずれにせよこの活動により、あたし達の本拠地であるダンジョンを防衛する為の強固な防衛拠点を確保し、将来的なヴァイスブルク攻略に向けた布石としていく予定よ」

「……ヴァイスブルク奪還」

アイリスの説明を聞いていたマリーカは喪われた故国奪還への兆しを伝えられ思わず、呟きをもらし、それを聞いたアイリスは穏やかな表情をマリーカへと向けながら口を開く。

「……残念だけど、ヴァイスブルク奪還を目指すにはまだ戦力が不足しているから期限は未定とせざるを得ないわ、でも、あたし達の戦力が増加していけばその選択肢も取れる様になってくる筈よ、この活動の目的はあくまで防御拠点の確保になるからヴァイスブルク攻略に関しては確約は出来ないけれど……」

「……ありがとうございますアイリス様、我等ヴァイスブルク伯国亡命政権はアイリス様の御温情によって存在が許されています、我等三国同盟の目的はあくまでダンジョンの防御強化が第一であり、その点に関して不満等抱く事さえ罪と言えます、そんな状況にも関わらず故国奪還の希望までもお示し頂いた事、深く感謝します、我等ヴァイスブルク伯国亡命政権はアイリス様の活動方針に全面的に賛成し、全力を持って御協力させて頂きます」

「……私達リステバルス皇国亡命政権もヴァイスブルク伯国亡命政権に同意致しますわ、仇敵リステバルス王家の者達なら間違い無く新手の部隊を投入してくる頃合ですし、このダンジョンを踏破されるか否かは別問題としてアイリス様の本拠地たるこのダンジョンに何度も土足で足を踏み入れるられるのも少々不愉快でございます、ダンジョン防衛の外郭拠点を構築しダンジョン防衛とヴァイスブルク奪還を両睨みする拠点とする、私達もアイリス様の御意思に賛同し全力で御協力させて頂きますわ」

アイリスの言葉を受けたマリーカに続いてやり取りを聞いていたアイリーンもアイリスの方針への賛意と協力の声をあげ、それを聞いたアイリスは小さく頷いた後に皆を見渡しながら言葉を続けた。

「……両国の意思は確かに確認させて貰ったわ、両国は10名前後の人員を派遣して頂戴、リリアーナは防御拠点の構築作業を監督し、あたしとミリアも現地へ移動してヴァイスブルクに対する偵察活動を指揮する事になるわ、明日の朝に部隊を進発させる事にするから両国はその予定で作戦参加者の選抜と報告を行って貰うわね」

アイリスの言葉を受けたマリーカとアイリーンは深く頭を垂れる事で同意の意を示し、アイリスは両国の賛同を確認した後に三国同盟戦略会議の終了を宣言した。


同日夕刻・ダンジョン・多目的ルーム


三国同盟戦略会議が終了したその日の夕刻、アイリスは翌日から行われる防御拠点構築とヴァイスブルクに対する偵察活動実施に向けた戦闘序列の発表の為、多目的ルームにヴァイスブルク伯国亡命政権とリステバルス皇国亡命政権の関係者達を招集し、招集を受けた両国は全員が多目的ルームに参集してアイリスの到着を待ち受けていた。

全員が到着して暫くすると、アイリスがミリアリアとリリアーナ、クーリアを伴って入室してそれを確認した一同は一斉に立ち上がり敬礼と一礼をアイリスに送り、アイリスは小さく頷く事では応じた後に一同を着席させて一同を見渡しながら口を開いた。

「……既に連絡は済ませていると思うけど、明日から行う防御拠点構築とヴァイスブルクに対する偵察活動作戦城塞(ツィタデレ)作戦の戦闘序列の発表を実施させて貰うわね、先ずヴァイスブルク伯国亡命政権軍とリステバルス皇国亡命政権軍の作戦参加者を通達して貰うわね」

「……承知致しました、ヴァイスブルク伯国亡命政権軍はカッツバッハを指揮官とし、ミランダ、エウレーネ、ユーティリア、ラリッサ、サーシャ、エルザ、カリン、イリナ、リリナ、オクタヴィア、ジュリアンナが参加致します」

「……続きましてリステバルス皇国亡命政権軍の参加者を発表させて頂きますわ、指揮官をサララ様とし、イストリア、メルクリアス、ローザンナ、リーアン、アークティア、マーメリア、アドリアーナ、セレスティア、アリステラ、ライザリアが作戦に参加致します」

アイリスに声をかけられたマリーカとアイリーンは厳かな表情で作戦参加者の名を告げ、アイリスは小さく頷いた後に言葉を続ける。

「両国の作戦参加者は確認させて貰ったわ、この作戦にはあたしの他にリリアーナとミリアリアにも参加して貰い、クーリア率いる女戦士(アマゾネス)隊からも人員を派遣して貰う事になるわ」

「我が女戦士(アマゾネス)隊からは私が直卒し、ダイナ、バブズ、スージー、ジーン、ルース、サリー、ヘレン、ペギー、ネル、リズ、マート、グレース、アルフ、ジェークが参加させて頂く」

アイリスが説明するとクーリアが静かな口調で作戦参加者の名を告げ、一同が頷いていると死霊伯爵のクノーベルスドルフとケンプがマントイフェルの後任として第一死霊連隊長となった死霊伯爵マイヤーが第一火力支援連隊長となったワイト、プリマーと共に姿を現し、それを確認したアイリスは小さく指を鳴らして陣営跡地周辺の地図の魔画像を具現化させた後に口を開いた。

「……城塞(ツィタデレ)作戦の最大の目標はあたし達の戦勝の象徴とも言える陣営跡地に強固な防衛拠点を築きダンジョン防衛の為の外郭拠点を構築する事よ、同地には第一、第二死霊連隊及び第二親衛死霊連隊ダス・ライヒを主力とした部隊を展開させて支援部隊として第一火力支援大隊の第一、第二大隊と第一戦闘偵察大隊、第一駆逐大隊を派遣する事になるわ指揮官はクノーベルスドルフに任じるわ」

……指揮官ノ拝命光栄ト至福ノ極ミニゴザイマス、我等ガ2度ニ渡リ大勝シタ栄誉ノ地ニ強固ナ防塞ヲ築キ、アイリス様ト三国同盟ノ栄誉ノ礎トシテミセマショウ……

アイリスから指揮官に任じられたクノーベルスドルフは恭しく一礼しながら感謝の言葉を発し、アイリスは鷹揚に頷いた後にもう一度小さく指を鳴らしてヴァイスブルク周辺の地図の魔画像を具現化させ、ヴァイスブルク伯国亡命政権の者達が小さくざわめくのを片手を掲げて制した後に言葉を続ける。

「……城塞(ツィタデレ)作戦のもう一つの目標、それはヴァイスブルク周辺に対する偵察活動の実施よ、先月の戦闘の結果、氷漬けにした敵の司令官をリステバルス王国の首都に送りつけてやったからリステバルス王国の連中は激怒して新たな部隊を派遣してきた筈よ、その部隊規模と現時点での敵の戦力と配備状況の概略を把握する為、使い魔達と分裂した吸血球獣の吸血球、そして新たに作成した使役獣、葛龍による偵察活動を実施するわ」

「「……うわぁっ」」

アイリスがそう言うと全身が所々に真紅の花を咲かせた蔦で全身が覆われた二足歩行型の異形の龍、葛龍の画像が具現化され、その姿を目にした一同が何とも言えない表情になってドン引きしながら言葉を声をもらす中、アイリスが新たな使役獣の特性の説明を始めた。

「この子の全身を覆う蔦は吸血植物の蔦でかなりの広範囲まで伸ばして獲物を襲う事が可能なの、だから陣営跡地近くの地中に隠れた状態で複数の蔦を伸ばしてヴァイスブルク周辺の敵部隊の様子を探らせつつ、陣営周辺の防衛と警戒にも当たって貰う事にする予定よ、この他に珊瑚龍、双鞭龍、光壁龍、地炎龍、硫黄龍、双角龍、ラビットドラゴンのカプセルも両国の指揮官に携行して貰う事にするわ」

「……私達、こんなバケモノのいるダンジョンに攻撃しかけてたのね、良くもまあ生きてた物よね」

「……余りに規格外過ぎて清々しい位ですね」

アイリスが葛龍の説明とヴァイスブルク伯国亡命政権軍とリステバルス皇国亡命政権軍に配属する使役獣の発表を行うのを聞いたアリステラとライザリアは、どこか遠い目をしながらアイリスの規格外の能力に関する感想を呟き合いそれを聞いた周囲の者達も大きく頷いてその意見に賛同していた。

その後、アイリスは部隊の出発時刻を伝えた後に解散を命じ、一同は一同解散した後に食堂にて出撃前の激励会を兼ねたささやかな宴席を楽しんだ後に出撃に備えて各々の居室に移動し、アイリスとミリアリアもマスタールームへ移動して同じベッドに入り互いの存在を確かめ合いながら眠りに就いた。



ロジナ侯国がクリストローゼ侯国侵攻作戦バグラチオンを発動し新たな大乱の歯車が動き始めていた頃、平穏な時を過ごしていたダンジョンでもアイリスが新たな活動の開始を決意して三国同盟の戦略会議を招集した。

アイリスからヴァイスブルク伯国亡命政権とリステバルス皇国亡命政権に伝えられた新たな活動の内容は戦勝の地である陣営跡地に強固な防衛拠点を構築しダンジョン防衛の外郭拠点を確保し、それに並行してヴァイスブルク周辺に対する偵察活動を実施して展開する敵部隊の規模の概略を把握すると言う物であり、両国は一歩踏み出した形のアイリスの活動方針に即座に賛同し、アイリスは防衛拠点確保とヴァイスブルク周辺への偵察活動を目的とした城塞(ツィタデレ)作戦の発動を通達した……

ミリアリア「……なあ、この葛龍なんだが」

アイリス「勿論違うわよ、だってこの子は墓場を根城に警官を襲ったりサイコパスな女の子の殆どテロみたいな行為の駒として使われたり、倒される寸前にお寺を道連れに破壊したりしてないもの」

ミリアリア「……うん、まあ、あれは、確かに殆どテロ行為だし、中々に後味の悪いトラウマ回だったな」

マリーカ「……ねえ、この話、百合小説なのよね?」

アナスタシア「……恐らく、その筈です、少なくとも百合要素は入れている筈です…………多分」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ