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惨劇・リステバルス王国軍残存部隊編・勧告

この地に生まれ育った者よ

自由に血と汗を捧げたれ!

聞け、四方に木霊すこの声を

フラー!一つ星の青き旗

フラー!フラー!いざ掲げよ

フラー!一つ星の青き旗


ボニーブルーフラッグ一番歌詞(日本語訳)

野営地付近・リリアーナ作戦集団


アイリスの転移魔法により出撃したリリアーナ指揮するリリアーナ作戦集団は降伏勧告役のエメラーダにリステバルス皇国亡命政権から派遣されたサララ、イレーナ、イストリア、メルクリアス、カリアーナ、ローザンナと共に粛々と前進を続け、野営地が間近に迫った所で一度停止して作戦の最終確認を実施した。

「……現在地、残存部隊の留守部隊は野営地にて思い思いの時を過ごしています、アイリス様の使い魔の存在にはある程度気付いていると推察されますが、既に覚悟を決めていると思われ悠然と時を過ごしています、当所の計画通りダス・ライヒにより包囲を実施しつつLSSAから派遣されたダークマンティスとレッサーヒュドラによる威嚇を行った後にエメラーダ様による降伏勧告を実行致します、部隊の展開に関してはケンプ様にお願い致します」

……承知致シマシタ、我等ガ威武ヲ存分ニ披露シテ御覧ニイレマス……

リリアーナが同行していたケンプに声をかけるとケンプは叩頭と共に返答し、リリアーナがそれを聞いた後に視線をエメラーダに向けるとエメラーダは泰然とした表情でゆっくりと頷き、全てのやり取りを終えたリリアーナは一同を見渡しながら行動開始を告げた。


残存部隊野営地


残存部隊本隊の出発を見送った数時間後、アリステラ達が採取した木の実や果実に罠で捕獲した鶫を焼いて昼食を用意していると、本隊が進んで行ったと思われる方向から遠雷の様な音が聞こえ、それを聞いたアリステラは上空に視線を向けて秋晴れの空が広がるのを確認した後に小さく肩を竦めながら一同に告げた。

「……どうやら敵は私達を見逃してくれないみたいね、最期の食事になるかも知れないからゆっくりと味合いましょう」

アリステラの言葉を受けた一同が小さく頷いていると周囲の木々の合間から複数の物音が聞こえ始め、それを聞いたアリステラは達観の表情を浮かべながらライザリア達に号令を発した。

「……本当に仕事の早い敵さんね、ライザリアは北、ラウナディアは東、ジュリアンナは西を警戒、私は南を警戒するわ、フロレシアさん、ミーティアさんの側に着いていてあげて、最期のお別れの間くらいはなんとか時間を稼ぐわ」

「「了解!!」」

アリステラが号令を発するとライザリア達は即座に返答するとミーティアとフロレシアに向けて微笑みかけた後に素早く展開してアリステラと共にミーティアとフロレシアを護る様に取り囲んで背を向けて四周を警戒し始め、フロレシアは深々と頭を垂れた後に横たわるミーティアに視線を向け、既に覚悟を決めている表情のミーティアを愛し気に見詰めながら口を開いた。

「……ミーティア様、貴女様にお逢い出来て本当に良かった、貴女様のお付きのメイドとなれました事、深く感謝致します、願わくば現世を離れた後もお仕えさせて頂く事をお許し下さいませ」

「……愚問ですよ、フロレシアさん、貴女が私の専属メイドになって下さって本当に良かった、貴女と出逢えた事は私にとってかげかえの無い幸福でした、現世を離れたとしても貴女と共に進んで行く、それが私の願いですよ」

フロレシアの想いの言葉を受けたミーティアは頬を仄かな桜色に染めながらフロレシアに想いの言葉を返し、フロレシアが込み上げる想いを噛み締めながら頷いていると下生えを踏み折り、木々を切り開い薙ぎ倒しながら複数のダークマンティスとレッサーヒュドラが姿を現し、その後方からボーンビショップに支援された漆黒の鎧姿のボーンナイトの集団が姿を現してアリステラ達を包囲してしまい、アリステラはその洗練された行動に苦笑を浮かべながら口を開く。

「……参ったわね、たった6人の魔導士にここまでの戦力投入してくるの?獅子は兎をかるにも全力を尽くすと言うけど、こっちは兎どころか子猫くらいなんだけど?」

「……鶏を裂くに牛刀どころか戦斧持ち出して来てますね、これ、想像してた以上に終わってますね」

アリステラの呆れと感嘆が入り混じった声を耳にしたライザリアは苦笑を浮かべながら相槌を打ち、他の者達もいっそ清々しい程に隔絶した余りの戦力差に苦笑を浮かべながら包囲する異形の軍勢と対峙した。

アリステラ達を包囲した異形の軍勢はその状況で沈黙し戦力的に圧倒的に不利なアリステラ達の側からも迂闊に手出しは出来ず、対峙した両者の間に沈黙が訪れたが暫くするとアリステラを包囲するボーンナイトの集団から1体の死霊伯爵が姿を現し、更なる脅威の出現にアリステラが身構えていると、死霊伯爵がアリステラ達に向けて呼びかけてきた。

……リステバルス王国軍ノ将兵達ニ告ゲル、私ハ第二親衛死霊連隊ダス・ライヒヲ指揮スルケンプデアル、我々トソチラノ戦力差ハ既ニ明ラカデアル、コノママソチラヲ殲滅スル事ハ容易イガ、ソノ前ニ使者ヲ派遣サセテ頂ク、ソチラニモ縁ノアル人物デアルノデ身ノ安全ヲ保障シテ貰イタイ、尚使者ノ派遣ヲ拒否シタ場合ハソノ時点ヲモッテ総攻撃ヲ実施サセテ貰ウ……

「……縁のある人物?もしかして」

死霊伯爵、ケンプの呼びかけを受けたアリステラは後方のミーティアとフロレシアを一瞥した後に暫し思案し、敵との圧倒的戦力差を鑑みれば受諾するしか無いと言う結論に達してケンプを見据えながら口を開く。

「……指揮官のアリステラよ、使者の安全は保障するわ、既に私達の生殺与奪の権はそちらに掌握されている、その点は十分把握しているつもりよ」

……賢明ナ判断ダ、ソレデハ使者ヲ派遣サセテ頂ク、ソチラニトッテ悪イ話デハ無イ事ハ伝エテオコウ……

アリステラの返答を受けたケンプが小さく頷きながらそう告げているとアリステラ達を取り囲むボーンナイトの集団からサララとイレーナを従えたエメラーダが姿を現し、アリステラはサララの姿を目にして驚きの表情を浮かべながら口を開く。

「……元第五騎士団長サララ・ド・ジョッフル、リステバルス戦役で戦死された筈……成程アイリーン様だけでなくサララ団長までロジナの奴等の慰み者にされてた訳と言う訳ね、そして使者と思われるあの(ひと)は恐らく、フロレシアさん、こっちに来てくれる、確認して欲しい人物がいるの」

アリステラは戦死したとされていた筈のサララの健在な姿にサララの経験したであろう艱難辛苦を察して苦い表情で呟いた後に、エメラーダの面通しを行う為に面識があるであろうフロレシアを呼び寄せ、フロレシアは怪訝そうな面持ちでアリステラの傍らへと移動したがエメラーダの姿を目にして驚愕の表情を浮かべて口を開く。

「……エ、エメラーダ様!?」

「……やっぱりね、元トラジメーノ侯爵家令嬢エメラーダ・ド・トラジメーノ、本当に生存していたのね……ホントロクデナシ揃いじゃない、素晴らしき我がリステバルス王国の首脳陣の皆々様は」

フロレシアの驚愕の声を聞いたアリステラは、元から大して高くもないリステバルス王国首脳陣に対する評価を底抜けに低下させながら呟くと、フロレシアをミーティアの所へ戻らせてライザリア達を歩み寄るエメラーダ達に正対する形で整列させ、エメラーダは整列したアリステラ達に向けて典雅な所作で深く一礼した後に穏やかな表情で口を開いた。

「……リステバルス王国軍残存部隊の皆様に勧告致しますわ、既に両者の戦力差は歴然であり、皆様は責務を十分に果たしたと私達は考えております、よって、皆様に対する投降勧告を行うため私が使者として派遣されました、投降された場合の皆様の身の安全は保障致しますわ、回答期限は1時間とし、拒絶若しくは無回答のまま1時間が経過した場合も残念ですが拒絶と判断し、総攻撃を実施致します、皆様の賢明な御判断を期待しておりますわ」

「……寛大な御言葉と勧告感謝致します、部下達と協議致しますので、少しだけ猶予を頂きたいと思います」

エメラーダは穏やかな口調でアリステラ達に対する投降勧告を行い、アリステラは勧告への謝意とライザリア達との協議の実施をエメラーダに伝え、エメラーダが頷いたのを確認した後にライザリア達と共にミーティアとフロレシアの所へ移動して協議を開始した。

「フロレシアさん、ミーティアさん、使者の方はエメラーダ様で間違い無い」

「間違いありません、あの気品ある所作や佇まい、学園等で御一緒させて頂いていたエメラーダ様その物です」

「ミーティア様の仰る通りです、伯爵家も何度か訪問して頂きその折に拝見させて頂きましたので間違いありません、エメラーダ・ド・トラジメーノ様です」

アリステラからエメラーダに関する問いを受けたミーティアとフロレシアはダス・ライヒのボーンナイト隊が用意した席でサララやイレーナと共に待機するエメラーダを一瞥した後に本人であると断言し、アリステラは小さく頷いた後に一同を見渡しながら言葉を続ける。

「……それで投降勧告に対する返答は?」

「……素晴らしい王国首脳陣の御命令に従って縁もゆかりも無いこの国まで遥々来て、素晴らしい司令官様の御命令に従って馬鹿みたいな強行軍で移動させられた挙句に、あの地獄の撤退戦で命からがら逃げ、その上での現状ですよ、エメラーダ様の言う通り責務は完遂したと判断します」

アリステラの言葉に対してライザリアが肩を竦めながら発言し、他の者達も大きく頷く事でその言葉に同意し、それを確認したアリステラはふらつきながら立ち上がったミーティアと傍らで支えるフロレシアを含めて全員を整列させた後に整列した皆の前に立ち、その様子を目にしてサララとイレーナを従えて正対したエメラーダに対して敬礼した後に口を開いた。

「……リステバルス王国軍第二魔導士団第三中隊長、アリステラ・ガリソニエール以下6名は勧告に従い投降致します、部下を含めた全員の身の安全の保障をお願い致します」

「……御英断深く感謝致しますわ、身の安全に関しては御約束させて頂きます、寧ろ、皆様さえ宜しければアイリーン様率いる我がリステバルス皇国亡命政権へ御協力頂きたい程で御座いますわ」

アリステラの投降受諾の言葉を受けたエメラーダは穏やかな笑みを浮かべながらアリステラ達の身の安全を保障し、アリステラは穏やか表情で頷いた後に先程戦闘とおぼしき音が聞こえてきた方向に目をやり、それに気付き視線を向けて来たエメラーダに問いかけた。

「……本隊にも、投降勧告を行うのですか?」

「……私達、人を見る目はあるつもりで御座いますの、命をかけて任務を果たした大切な友人を置き去りにする様な輩と貴女達を同等に扱うという酔狂な事をするつもりは御座いませんわ」

アリステラの問いかけを受けたエメラーダは冷たい笑みと共に返答した後にフロレシアに支えられているミーティアの所へ移動して回復魔法をかけ始め、ある程度予期していた答えを聞いたアリステラは小さく頷き、本隊が進んで行った方向を冷たい眼差しで一瞥した後に穏やか表情で会話を交わすエメラーダとミーティアの所へと歩み寄って行った。

やがてエメラーダの回復魔法によってミーティアがある程度回復し、それを確認したリリアーナはミリアリア作戦集団と共に行動中のアイリスに成果を報告した後に部隊にダンジョンへの帰還を命じた。



捨石の様な形で野営地に残されたアリステラ達が泰然と時を過ごしていると、リリアーナ率いるリリアーナ作戦集団が出現してアリステラ達を完全に包囲してしまい、彼我の圧倒的なまでの戦力差を確認したアリステラ達が覚悟を決めていると、エメラーダがサララとイレーナを従えて姿を現し、エメラーダの登場に驚くアリステラ達に向けて投降を勧告した。

アリステラ達は協議の結果勧告を受け入れてリリアーナ作戦集団に投降し、目的を完遂したリリアーナはアイリスにその事を報告した後に部隊をダンジョンへ帰還させた……

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