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惨劇・ワンウッド傭兵隊編・捕縛

6000PVアクセス及び1600ユニークアクセス突破しました、これからも宜しくお願いします。残酷な描写がありますので閲覧は自己責任でお願いします。


マスタールーム


宝箱に入れられていた呪い付きの槍により損害を受けながらもそれを無視して進撃する事を選択した下級幕僚とワンウッド傭兵隊、その様子はマスタールームでも確認されており、それを見ていたアイリスは蔑みの視線で進撃する彼等を見ながら口を開いた。

「ふーん、このまま進撃ねえ、結構な損害出したと思うんだけど……ダンジョン攻略経験があるみたいだけど大した事は無さそうね、こいつ等の能力だと死霊騎士の所まで行けるかも怪しいわね」

アイリスはそこで一度言葉を区切ると暫く進撃するワンウッド傭兵隊を見据え、その後に興味を喪った様にゆっくりとかぶりを振りながらミリアリア達に向けて口を開いた。

「こいつ等の事はもう良いわね、話を残党狩部隊本隊に移しましょう」

「見つけたのか!?」

アイリスの言葉を受けたミリアリアが思わず身を乗り出しながら声をあげるとライナ達も同じ様に身を乗り出し、それを目にしたアイリスは頷きながらダンジョンを中心とした周辺の地図を表示させ、その一点を示しながら口を開いた。

「連中はここに陣営を築いて駐留してるわ、単なる陣営にしては造りがしっかりしてるから後々には砦にして開拓拠点にするつもりかも知れないわね」

「この辺って、確か良質の琥珀が産出してる筈です、最近発見された鉱脈で開発計画が出た際は私達第四騎士団が開発隊を護衛する事になっていました」

アイリスが説明しているとアイリスの示す先を見詰めていたアリーシャが声をあげ、それを聞いたライナとリーナが頷いているのを見たアイリスは冷たい笑みを浮かべながら口を開いた。

「ふうん、良質の琥珀がとれる鉱脈ねえ、そこを開発する為に造った陣営が一夜で壊滅しちゃったら連中の計画ってかなり滅茶苦茶になっちゃうわねえ」

「一夜で壊滅って、そんな事が可能なのか?このダンジョンにいる戦力を使えば可能だろうが、確かダンジョンにいるモンスターはダンジョンの外に出られない筈だ」

アイリスの呟きを聞いたミリアリアは怪訝そうな面持ちで問いかけをアイリスは頷いた後に言葉を続けた。

「確かにこのダンジョンに元からいるモンスターはダンジョンの外には出られないわ、ただし、このダンジョンに入り込んで犠牲になった連中を媒体にしたモンスターならダンジョンの外に出る事が可能よ、今の状況だとここに来て殺された連中の骨を媒体に作製したスケルトン60体と連中がダンジョンに放った魔狼15匹がダンジョンの外に出られるわ、それに、今ダンジョンを進撃中の連中を媒体にしたスケルトンもね」

「約70体のスケルトンに魔狼15匹、ですか、それなりの戦力とは思いますが陣営を襲うには圧倒的に数が足りないのではないでしょうか?」

アイリスの説明を聞いていたライナは微かに眉を潜めさせながら問いかけ、アイリスは頷く事で応じた後に更に言葉を続けた。

「連中の陣営はおよそ1個大隊、7〜800人位はいるわね、だから今の戦力じゃ焼け石に水って所ね、だから今の所は使い魔達に陣営の構造や捕まってる捕虜の居場所を調べて貰い、それに平行して森の中にいる戦力になりそうなモンスターを探してるわ、この森は餌も豊富で森の奥には結構戦力になりそうなモンスターが居そうだから良さげなモンスターがいたらテイムして襲撃に参加させるつもりよ」

「確かにこの森の奥って双頭の毒大蛇ポイズンサーペントとか火蜥蜴サラマンダーみたいな大型モンスターが出てくる事があるから森の奥に行くのは騎士団や冒険者若しくはそれに準ずる者に限られてました」

アイリスの告げた方針を聞いていたリーナは納得した様に頷きながら呟き、アイリスはそれを聞き終えた後に視線を進撃するワンウッド傭兵隊へと戻した。

「そうと決まれば、使い魔達に調べさせた陣営の概略を実際の情報と擦り合わせる必要があるわ、下っ端参謀と小さな傭兵隊の隊長がどれだけ知っているか心許ないけど本隊から派遣されたんだから幾らかは知ってるでしょう、媒体にする前に知ってる情報を洗いざらい話して貰う必要があるわね」

アイリスは冷たい瞳で進撃するワンウッド傭兵隊を見ながら呟き、その後に彼等を迎撃する為の手筈を整え始めた。


第1階層


ダンジョンの奥へと進む下級幕僚とワンウッド傭兵隊、通常の新規発生ダンジョンでは有り得ない呪い付きの武器が納められた宝箱とそれによって生じた損害、それらの事態は何食わぬ様子で進んでいる彼等の奥底で微かな疑念や警鐘として燻り続け、その燻りは有り得る筈の無い光景、スキャニングの結果によれば存在する筈の無い三叉路の出現によって大きな物へと変化した。

「三叉路、だと?どう言う事だっ!?スキャニングの結果だとこのダンジョンは一本道だろうがっ!?」

「そ、そんな馬鹿な確かにスキャニングの結果は一本道だった筈だっ!?」

三叉路を目にした隊長が張り上げた怒声がダンジョンに木霊する中、泡を食った魔導士が再びスキャニングを行ったがその結果はダンジョンに入る前に行ったスキャニングの結果と同じ単純な一本道のダンジョンと言う結果であり、狼狽える魔導士からその結果を知らされた隊長は熱り立って怒声を張り上げた。

「スキャニングの結果は一本道のダンジョンだとっ!?ふざけるなっ!!お前は目の前にある三叉路が見えんのかっ?ああっ!!」

「……ま、待てっ、ま、前から何か来るぞっ!?」

隊長が怒声を張り上げていると下級幕僚が三叉路の方から一団の影が近付いてくるのに気付いて微かに戦きながら声をあげ、それを受けた隊長や傭兵達が前方に視線を向けると一団の影は病的な程青白い顔色をしたロジナ候国軍の軍装を纏う兵士達の姿となった。

青白い顔色をした兵士達は無表情のままワンウッド傭兵隊に向けて行進し、その異様な光景を目にした隊長は思わず数歩後退りながら掠れた声をあげた。

「……そ、捜索隊の連中だな」

「……あ、ああ、コイツ等は全滅させられたんだ、こ、このダンジョンに」

隊長の呟きを聞いた下級幕僚は顔を青ざめさせながら言葉を絞り出し、2人の様子を目にした傭兵達の間に動揺が走っているのに気付いた隊長は狼狽えた自身にも渇を入れる為に怒号を張り上げた。

「貴様等ビビッてんじゃねえっ!!無気味な成りしてても所詮アイツ等はゾンビやなんやかやの下級アンデッドでしかねえっ!!俺等にとっちゃっ単なる雑魚だっ隊列整えてさっさと蹴散らしちまえっ!!」

怒号を張り上げる隊長だったが傭兵達は表情を凍り付かせたまま動こうとせず、その無様な様子を目にした隊長は熱り立って駆け寄ろうとしたが脚はその意思に反して全く動こうとせず、隊長は戸惑いの表情を浮かべながら床に視線を落とした。

隊長が落とした視線の先には自分の両足をガッシリと掴む数体のスケルトンの腕と見上げる頭骨が床板から浮かび上がり、落ち窪んだ眼窩で隊長を捉えたスケルトンは嘲笑う様にカタカタと骨を鳴らしながら隊長を見詰めた。

「……っく、こ、コイツ等いつの間にっ!?」

隊長は異様な光景に目を剥きながら周囲を見渡すと下級幕僚や傭兵達は全て床板から浮かび上がったスケルトンの手によって両足をがっしりと掴まれており、その光景を目にした隊長は背筋に悪寒が走るのを感じながら慌てて命令を下した。

「……くっお前らっ何してるっ!!急いでコイツ等を倒せ、さもないととんでもな」

隊長が慌てて張り上げた命令を遮る様に両脇の壁の岩板が突然崩れ落ち、舞う砂塵を突き抜けて姿を現したボーンウォーリアーの集団が身動きの取れないワンウッド傭兵隊に左右から襲いかかった。

ボーンウォーリアーは足を掴むスケルトンから逃れようともがく傭兵達に全滅した捜索隊が使用していたとおぼしき剣や槍を突き刺し、傭兵達に血飛沫と断末魔の絶叫を迸らせながら無残な最期を遂げて行った。

何人かの傭兵は剣を振るって足を掴むスケルトンを粉砕した後に襲いかかるボーンウォーリアーを迎撃し様としたが逆にボーンウォーリアー達に取り囲まれると膾に切り刻まれて断末魔の絶叫を迸らせ、傭兵達は阿鼻叫喚の渦の中で次々に骸を晒して行った。

隊長と下級幕僚は地獄絵図の光景の中、どうにか両足を掴むスケルトンを粉砕すると部下達を見捨ててダンジョンの出口へと逃げようとしたがその動きを制する様にボーンウルフと魔狼の混成集団が姿を現して退路を遮断し、恐怖の顔色を浮かべて足を止めた2人目掛けて飛び掛かるとその身体を強引にダンジョンの床に押し倒した。

押し倒された下級幕僚と隊長は暫く戒めから逃れ様としてもがいていたが傭兵達を全滅させたボーンウォーリアーとスケルトンはその周囲を十重二十重に取り囲んで剣や槍を突き付け、突き付けられた無数の剣先と槍の穂先を目にした2人の恐怖に顔を凍り付かせながらその動きを止めた。

マスタールームで一連の光景を見ていたアイリスはダンジョンクリエイティブの能力を使用して訊問用の拷問部屋を製作した後に捕縛した2人をそちらに転移させ、先程まで鳴り響いていた阿鼻叫喚の喧騒が消え去ったダンジョン内は無気味な程の静寂に包まれていた。



ダンジョンに侵入したワンウッド傭兵隊の迎撃態勢を整えつつ使い魔達に周囲を偵察させていたアイリスは残党狩部隊の本隊を発見した。

本隊が陣営を築いた場所の情報をしらされたアイリスはロジナ候国の思惑を破砕し虜囚となっているダークエルフの騎士団長を救出する為に陣営の襲撃を決意、情報を収集する為下級幕僚とワンウッド傭兵隊長を捕縛し、残る傭兵達は異形のダンジョンによって全滅させられた……

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