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閲兵式

父祖の手より継がれし剣を、忘るなマルスにても

奴婢と王家の血潮に祝がれし、聖なる御剣をば

汚れし王家の血が滴るを止まば

戦傷いさきずと手柄負いて、父祖の元へ行け

祖国が呼ぶ呼ぶぞ、勝利かはた死か

我等国が為生き、国が為死せる

我等国が為生き、国が為死せる


門出の歌・三番歌詞(日本語訳)

大陸歴438年深緑の月二十四日・ダンジョン・同盟者階層


ヴァイスブルク派遣軍に選帝侯国クリストローゼ侯国進攻とそれに伴う第九騎士団及び第三近衛騎士団の本国帰還が命じられた頃、同盟者(フェデラートゥス)の魔龍が統括する同盟者階層にて三国同盟の会談が行われており、アイリスや三国同盟の関係者達様に設けられた城館の会議室にてアイリスはミリアリアやリリアーナと共にマリーカ、アナスタシア、カッツバッハのヴァイスブルク伯国亡命政権とアイリーン、クラリス、エメラーダのリステバルス皇国亡命政権との会談に臨み、先ずはリリアーナが台風(タイフーン)作戦後の現状に関する報告を開始していた。

「……三国連合軍の残存部隊は退却し、それ以外の残敵掃討戦はほぼ完了したと思われますが今後も念の為、今後暫く採集や狩猟はアイリス様の使い魔による監視の下で実施し、同時にジンベルヴォルフやブラッディマンティス、吸血球による定期パトロールも継続して行く予定です」

リリアーナの現状報告を受けたマリーカとアイリーンは小さく頷き、アイリスはそれを確認した後に戦果とそれに伴う魔王軍の強化に対する説明を始めた。

「……台風(タイフーン)作戦による戦果は約9000及び集積されていた食糧や武具、弩砲及び砲弾多数の鹵獲になるわ、そして集積した将兵や軍馬の遺体を利用して2個死霊連隊及び3個火力支援大隊を編成し、既存の部隊と合流させ4個死霊連隊と4個火力支援大隊で編成した第一火力支援連隊に、新編の骸骨槍騎兵(スケルトンランサー)大隊、ジンベルヴォルフ、ブラッディマンティス、グロスポイズンサーペント、各1個中隊の偵察1個中隊、駆逐2個中隊で編成した戦闘偵察大隊で編成した第一死霊師団、グロス・シュワルツ・アインを編成し、本日編成を完結したわ、そして残る遺体を利用してボーンナイト、ボーンウォリアー各1個大隊とボーンビショップ1個中隊からなる第二親衛死霊連隊ダス・ライヒを編成し、親衛隊を2個親衛死霊連隊態勢に強化、ブランデンブルク中隊を強化して3個中隊編成のブランデンブルク大隊に改編したのが主な強化内容になるわ」

「「……うわぁっ」」

(……なんだろう、アイリスが何かする度に私も十把一絡げにされて見られつつあるのだが、私だって、結構ドン引きしてるんだぞ、解せぬ)

アイリスから戦果とそれを利用した魔王軍の強化状況を聞かされた一同は何とも言えない表情になりながらにアイリスとミリアリアを見詰めミリアリアが内心で抗議の声をあげていると、アイリスがゆっくりと立ち上がりながら口を開いた。

「……それで、本日は編成を完結した第一死霊師団を含めた全軍の閲兵式を行う為にこの階層を使用させて貰っているのだけど、ヴァイスブルク伯国亡命政権とリステバルス皇国亡命政権にも参加を快諾して貰えて嬉しいわ、感謝するわね」

アイリスは笑顔でそう言いながらマリーカとアイリーンに視線を向け、マリーカとアイリーンは即座に席を立つと深々と頭を垂れながら口を開く。

「……先の戦勝とその結果によるアイリス様の軍勢の強化改編成功、誠におめでとうございます、我等ヴァイスブルク伯国亡命政権は今後もアイリス様の御温情に全力で報いる所存でございます、栄えある閲兵式への参加要請、この上無き名誉であり断る余地など微塵もございません、改めまして此度の御戦勝、おめでとうございます、アイリス様」

「……我々リステバルス皇国亡命政権も理由は同じでございますアイリス様、生き地獄よりお救い頂いたのみならず一亡命政権に過ぎぬ私達への御配慮の数々、感謝してもしきれません、アイリス様の催される閲兵式への参加要請、この上無き誉にございますれば、断る理由等存在致しません、改めまして、御戦勝、おめでとうございます、アイリス様」

マリーカとアイリーンは頭を深く垂れたままアイリスへの感謝と戦勝への祝賀の言葉を捧げると他の出席者達も同じ様に深々と頭を垂れ、アイリスは面映そうに微笑みながら頷いた後に一同に頭をあげさせた後にミリアリアに視線を向け、柔らかく微笑みながら口を開いた。

「……それじゃあ、行きましょうか、ミリア」

「……あ、ああ、そうだな……アイリス」

アイリスに声をかけられたミリアリアは頬を赤らめながら応じた後にアイリスの魅惑的な肢体を抱え上げ、甘える様にミリアリアにもたれかかりアイリスの柔らかな感触に笹穂耳まで赤らめさせながら歩き始め、他の出席者達はその様子に小さく肩を竦めて微笑みながら後に続いた。

会議室を出たミリアリアとアイリスが城館のバルコニーに出ると、そこには漆黒の鎧を来たボーンウォリアーと黒のローブを纏ったボーンビショップ、骸骨槍騎兵によって編成された4個死霊連隊と第一火力支援大隊に新編されたボーンビショップからなる第二〜第四火力支援大隊を加えて編成された第一火力支援大隊に加えて第一骸骨槍騎兵大隊の骸骨槍騎兵、第一特務大隊のジンベルヴォルフ、ブラッディマンティス、グロスポイズンサーペントによって編成された頭号死霊師団、第一死霊師団グロス・シュワルツ・アインが整然と整列し、その傍らでは第一親衛死霊連隊LSSAと新編された第二親衛死霊連隊ダス・ライヒ、強化再編成されたブランデンブルク大隊に、突撃、駆逐、偵察の各大隊の装甲火蜥蜴(アーマーサラマンダー)、ブラッディマンティス、グロスポイズンサーペント、ジンベルヴォルフが整然と整列し、その傍らでは閲兵式に参加したヴァイスブルク伯国亡命政権軍のエルフ騎士達とリステバルス皇国亡命政権軍の狐人族の女騎士達、そしてアイリスを信奉し仕えし女戦士(アマゾネス)隊も整列して軍容に華を添えており、アイリスがミリアリアに抱き抱えられながら整列した軍勢を見詰めていると、見物に訪れていた階層の主である魔龍が念話で話しかけて来た。

……なかなか壮観だな、魔王の軍勢としてもなかなか形になって来たな……

「……そうね、なかなかの規模になって来たわね、でも戦力はあればある程ありがたい物だから今後も増強を続けて行きたいわね、まあ、流石にロジナの連中も少しは大人しくなるかしら?」

……どうだろうな、まだ敵には魔曲騎士団やロジナの戦姫等がいるが、更に貴重な戦力を注ぎ込んで来るかは微妙だな、実際、今回の攻勢では同盟国軍のみでの攻撃してきて、おまけにこの大敗だ、流石に暫くは大人しくすると思うぞ……

アイリスと魔王は今後のロジナ候国の出方に着いて念話を交わし、それが終了した後にアイリスが整列した異形の軍勢をミリアリアの腕の中から見据えながら口を開いた。

「……本日をもって第一死霊師団グロス・シュワルツ・アイン及び第二親衛死霊連隊ダス・ライヒの編成を完結し我が軍に加える物とする、只今より、我が軍と同盟国たるヴァイスブルク伯国亡命政権軍、並びにリステバルス皇国亡命政権軍による閲兵式を行う、皆の勇姿を楽しみにしているわ」

……総員、アイリス様ニ対シ敬礼……

アイリスの短い言葉を受け、第一死霊連隊長から第一死霊師団長に昇進した死霊伯爵マントイフェルが号令を発し、それを受けた異形の軍勢とヴァイスブルク伯国亡命政権軍及びリステバルス皇国亡命政権軍は一斉にアイリスに向けて敬礼し、大型モンスター達は高らかに咆哮を轟かせ、マントイフェルは部隊を直らせた後に静かに観閲行進の開始を命じた。

マントイフェルの命を受け、整列した軍勢の一角で端然と出している楽器を構えたボーンウォリアーの一群、骸骨軍楽隊メフテルハーネが勇壮な行進曲を奏で始め、異形の軍勢はその音色に合わせる様に観閲行進を開始した。

行進を開始した異形の軍勢はバルコニーの前を通る度に各部隊毎に敬礼や咆哮をミリアリアの腕の中のアイリスに送り、アイリスは小さく片手を掲げてそれに応じながらミリアリアに声をかける。

「……ねえ、ミリア、後悔しない?」

「……愚問だ、私達は既に一度世界から見捨てられ、生き地獄に叩き込まれた者すらいる、アイリスはそんな私達の最後の希望なんだ、世界が魔王であるアイリスを拒絶するなら、私も、他の皆も世界を拒絶し、アイリスと共に行く、後悔等する筈が無い」

アイリスの問い掛けを受けたミリアリアは頬を赤らめながらもしっかりとアイリスを見詰めながら返答し、それを受けたアイリスは頬を淡い桜色に染めながら嬉しそうに頷いた後に眼下を行進する異形の軍勢の敬礼と咆哮に応じ、その傍らではマリーカ達とアイリーン達が厳粛な面持ちで行進する部隊に向けての深々と頭を垂れていた。

粛々と進む異形の軍勢と共に参加していたヴァイスブルク伯国亡命政権軍のエルフの女騎士達とリステバルス皇国亡命政権軍の狐人族の女騎士も万感の思いと不退転の決意を胸に主君達とミリアリアの腕の中のアイリスに敬礼を送り、三国同盟軍による始めての閲兵式は厳粛に進んでいった。



ヴァイスブルク城でスティリア達が事態の急変を迎えていた頃、ダンジョンの同盟者階層に三国同盟の会談が行われ台風(タイフーン)作戦の結果とそれに伴い行われた魔王軍の強化に関する報告が行われていた。

作戦の成功と大勝により魔王の軍勢は大きく強化され、新編の死霊師団、第一死霊師団グロス・シュワルツ・アインと第二親衛死霊連隊ダス・ライヒの編成等の大幅な強化が達成され、アイリスはミリアリアに抱き抱られながら強化された魔王軍に加えてヴァイスブルク伯国亡命政権軍とリステバルス皇国亡命政権軍も参加した閲兵式を実施した。

異形の軍勢はミリアリアの腕の中のアイリスが見守る中、粛々と観閲行進を行い、ミリアリアはアイリスをその(かいな)で抱きながら魔王であるアイリスと共に歩み続ける事を改めて決意し、ヴァイスブルク伯国亡命政権とリステバルス皇国亡命政権の者達も同様の決意を胸に異形の軍勢と共に粛々と歩を進めた……

魔王軍編成・大陸歴438年深緑の月二十四日


アンデッド部隊


第一死霊師団グロス・シュワルツ・アイン


第一死霊連隊・ボーンウォリアー3個大隊、骸骨槍騎兵、ボーンビショップ各1個中隊


第二死霊連隊・同上


第三死霊連隊・同上


第四死霊連隊・同上


第一火力支援連隊・ワイト1個大隊、ボーンビショップ3個大隊


第一骸骨槍騎兵大隊・骸骨槍騎兵4個中隊


第一戦闘偵察大隊・ジンベルヴォルフ、ブラッディマンティス、グロスポイズンサーペント各1個中隊



親衛隊


第一親衛死霊連隊LSSA・ボーンナイト3個大隊・ボーンビショップ1個中隊、ダークマンティス、レッサーヒュドラ各1個中隊


第二親衛死霊連隊ダス・ライヒ・ボーンナイト、ボーンウォリアー各1個大隊、ボーンビショップ1個中隊


特務部隊


ブランデンブルク大隊・ボーンナイト1個中隊、ボーンウォリアー2個中隊



大型モンスター部隊


第一突撃大隊・装甲火蜥蜴


第一駆逐大隊・ブラッディマンティス


第二駆逐大隊・グロスポイズンサーペント


第一偵察大隊・ジンベルヴォルフ


第二偵察大隊・同上


使役獣に関しては増強が無いため割愛



ミリアリア「……なあ、アイリス、確かアメリカ合衆国陸軍第一歩兵師団の部隊名って」

アイリス「……ビッグ・レッド1ね」

ミリアリア「……百合小説、なんだよな、この作品?」

アイリス「…………多分」

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