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蹂躙・台風(タイフーン)作戦編・一蹴

ユニークアクセス85000を突破致しました。これからも本作を宜しくお願い致します。

カッツバッハ戦闘団


リステバルス王国、ヴァイスブルク男爵両国連合部隊、標的乙(度重なるダンジョン突入による実質的にはリステバルス王国軍)に対する攻撃を下命されたカッツバッハ戦闘団はプリマー率いるワイト部隊とボーンビショップ隊、そして第一突撃大隊の装甲火蜥蜴隊による猛烈な魔法弾と火球射撃を標的乙に対して実施しており、指揮官のカッツバッハは使い魔達から送られて来る魔画像によってその戦果と標的乙の状況を確認していた。

リステバルス王国軍の大隊規模の軽装歩兵と軽騎兵、弩砲兵に支援隊とおぼしき中隊規模の魔導兵と同じく中隊規模の近衛とおぼしき騎士達、そして2個小隊程のエルフ騎士によって構成される標的乙は降り注ぐ魔法弾の中極度の混乱状態に陥ってしまっており、その様子を目にしたカッツバッハはある種の憐憫すら覚えながら呟きをもらす。

「明らかな強行軍でここまで移動し、休む間も無くダンジョンの包囲と陣営の設営、やっと休めて偽りの勝報に安堵していた所へのこの攻撃、些かなりといえども同情を感じるがだからといって手心を加える気はさらさら無いな」

カッツバッハはそう呟いた後に展開した各攻撃集団の本部を魔通信で呼び出し、応答したミランダとヴァルに向けて命令を下す。

「……火力支援の効果は絶大と判定される、各攻撃集団は各自の計画に従い標的乙に対する攻撃を実施せよ、我々は火力支援を続行しつつ分散した吸血球獣と第二偵察大隊を森林内に分散配置して逃走した敵部隊への伏撃態勢を取る、各攻撃集団の健闘を祈る」

「第一攻撃集団、了解、直ちに攻撃を開始するわ」

「第二攻撃集団、了解した、存分に働かせて貰うとしよう」

カッツバッハの命令を受けたミランダとヴァルは即座に応答し、それを受けたカッツバッハは通信を終えた後に分裂状態になった無数の吸血球と第二偵察大隊ジンベルヴォルフ隊を暗い森林内に分散配置させながら火力支援を指揮しているプリマーに指示を送った。

「……プリマー殿、間もなく各攻撃集団が攻撃を開始する、火力支援の主標的を陣営後方に指向しつつ木柵周辺に煙幕を展開させて攻撃を支援して貰いたい」

……承知シタ、アイリス様ニ盾突ク愚カ者共ニ地獄ヲ見セテヤルトシヨウ……

カッツバッハの指示を受けたプリマーは即座に了承の言葉を展開された返した後に指揮下部隊への伝達を開始し、カッツバッハはその様子を一瞥した後に彼我の状況が表示された地図の魔画像と使い魔達の送って来た魔画像を具現化させて戦局の推移を見守り始めた。

一方、カッツバッハの命令を受けたミランダとヴァルは各攻撃集団に10台づつ配備されたゴリアテの内7台づつに発進準備を実施しながら魔法弾と火球射撃の状況を確認した。

やがて魔法弾と火球射撃の標的が陣営後方に移動すると同時に煙幕弾が発射されて分厚い煙幕が木柵周辺に展開され、それを確認したミランダとヴァルは即座にゴリアテ隊に突入を命じた。

命令を受けた簡易自走魔法を発動させたゴリアテ隊は展開された煙幕を利用して木柵に近付くと猛然と加速しながら次々に突入を開始して木柵に接触した所で爆裂術式を発動させ、分厚い煙幕を突き破る様に多数の火柱と爆煙が噴き上がり、周囲の将兵達を巻込みながら木柵の其処彼処が吹き飛ばされ突破口が形成される。

「……お願いしますっ!」

「……その御力お貸し下さいっ!」

ゴリアテ隊の戦果を確認したミランダとヴァルが懇願の言葉と共に投じたカプセルが眩い閃光と共に爆ぜて光壁龍と珊瑚龍が姿を現して咆哮を轟かせながら前進を始め、珊瑚龍が無数の突起物から大量の炎弾を、光壁龍が頭部の鋭い2本の角から光線を発射して煙幕に包まれた陣営を攻撃し始めた。

煙幕を突き抜ける様にして降り注いだ無数の炎弾と2条の攻撃は陣営の各所を吹き飛ばし、木柵を警備していた軽装歩兵中隊の本部を薙ぎ払った光線が中隊長以下を吹き飛ばしてしまい、混乱状態に陥っていたリステバルス王国軍の将兵はその混乱を更に増大させながら雨と降り注ぐ射弾の中を逃げ惑い続けていた。

ワイト隊の発射し続けるから無数の魔法弾の弾雨の直撃を受けた弩砲兵隊に炸裂弾置場が誘爆して巨大な爆炎を発生させ、それに怯えた軽騎兵隊の軍馬が暴れ逃げ惑う将兵を馬蹄で踏み潰す、標的乙の状態はどう贔屓目に見ても崩壊寸前であり、それを確認したミランダとヴァルは戦果を決定的な物とする為に部隊に突撃を命令した。

各攻撃集団は配属された第一突撃大隊の装甲火蜥蜴隊を尖兵としてその後ろにボーンウォーリアー隊が後続する形で混乱する陣営に向けて粛々と進み始め、その前進を援護する為にボーンビショップ隊と女エルフ達と魔法攻撃可能な女戦士(アマゾネス)達が攻撃魔法を放ち始めた。

混乱状態に陥っていた陣営は殆ど碌な抵抗も出来ぬまま装甲火蜥蜴を尖兵としたボーンウォーリアー隊の侵入を許してしまい、漸く薄れかけた煙幕を突き抜ける様に出現して来た多数の装甲火蜥蜴と大量のボーンウォーリアーが慌てふためくリステバルス王国軍の軽装歩兵達に襲いかかる。

装甲火蜥蜴の放った火球が炸裂して数名の軽装歩兵が吹き飛ばされ、ボーンウォーリアーの集団に呑み込まれた軽装歩兵や弩砲兵達の断末魔の絶叫をあげながら倒れ伏す、陣営内で繰り広げられた光景は戦闘と呼ぶには余りにも一方的な物となり、火力支援を指揮していたプリマーは使い魔達から送られて来た魔画像を確認してその状況を把握するとワイト隊とボーンビショップ隊に軽装歩兵と弩砲兵隊の本部と近衛騎士とおぼしき騎士達への集中攻撃を命じた。

プリマーの命を受けたワイト隊とボーンビショップ隊は魔法弾射撃の標的をそれらに変更すると猛烈な魔法弾射撃を浴びせかけ、軽装歩兵大隊と弩砲兵大隊の本部が吹き飛ばされて各大隊長を戦士させ、近衛騎士中隊にも甚大な被害を発生させてしまう。度重なるダンジョンへの突入により僅か2個小隊程度にまで減少してしまっていたヴァイスブルク男爵領国軍のエルフ騎士達も混乱し右往左往している所を珊瑚龍の発射した無数の炎弾によって吹き飛ばされてほぼ壊滅してしまい、ミランダとヴァルは崩壊寸前の標的乙に引導を渡す為残る6台のゴリアテを発進させた。

発進させたゴリアテは無事だった木柵に次々に突入して木柵を近くにいた将兵ごと吹き飛ばし、発生した爆発音と火柱によってリステバルス王国軍と一握りのヴァイスブルク男爵領国軍の士気を完全に瓦解させてしまう。

遠路はるばる縁もゆかりも無いヴァイスブルクに到着した上に強行軍でダンジョンまで移動させられ休む間もなく陣営を構築させられ、漸く齎された休息の最中に勝報を報らされ弛緩していた所に猛烈な攻撃を受けていたリステバルス王国軍の将兵は士気の瓦解によって壊乱状態に陥り、その最悪のタイミングでヴァイスブルク派遣軍司令部の発した退却命令が生き残りの魔導兵により告げられてしまう。

告げられた退却命令は瞬く間に壊乱状態の将兵に伝播してしまい、士気の瓦解した将兵はだっとの如く潰走を開始してカッツバッハ戦闘団の攻撃による損害を被りながら暗い森の中へと駆け込んでいった。


ヴァイスブルクの森・リステバルス王国軍近衛騎士中隊残存部隊


損害を被りながらヴァイスブルクの森の中に逃げ込んだ残存部隊、その内の1つである比較的統制のとれた集団は魔法弾射撃により大損害を被った近衛騎士中隊(小隊相当)と小隊規模の軽装歩兵、軍馬を喪った軽騎兵や弩砲を喪った弩砲兵、ヴァイスブルク男爵領国軍のエルフ騎士の混成集団(小隊規模)からなっていた。

残存部隊の将兵達が暗い木々の合間を暫く逃げ進み続けていると戦闘の喧騒が背後に消え去り、残存部隊を指揮していた近衛騎士中隊長は部隊を停止させて部隊に小休止を命じた。

残存部隊の将兵達は木々の根元にへたり込む様に腰を降ろして荒い呼吸を整え、中隊長は水筒で喉を湿した後に大きく息を吐きながら呟きをもらす。

「……ハアッ……ハアッ……一体何が起こったと言うんだ」

「……不明です、大隊や司令部とも連絡が取れません、少なくともヴァイスブルク派遣軍司令部より撤退命令が出たのは確かです、本隊の状況が分からぬ以上このまま撤退するしか無いでしょう」

中隊長の呟きを聞いた近衛小隊長は呼吸を整えながら告げ、中隊長が頷いた後に立ち上がり、周辺の将兵達の様子を確認し始めた。

木々の合間にへたり込んだ将兵達からは疲労の影響が色濃く感じられ、負傷者の数も少なくは無いと言う厳しい状況が見てとれ、それを確認した中隊長が渋面を作っているとダンジョン方面に当たる後方では無く、撤退路である筈の前方から木々や下生えがガサガサと激しく音を立て始め、残存部隊の将兵達が思わず凍り付いた様に固まってしまっていると、下生えを踏みしだく音まで聞こえ始めてしまう。

「……ッ!……お前達!何をしているっ!急いで隊列を組めっ!死にたいのかっ!!」

固まってしまった将兵を目にした中隊長は聞こえ始めた音に追い立てられる様に号令を発し、それを受けた将兵達は慌てて動き始めて暗い木々の根元に足を取られかけながらも必死に迎撃態勢を整え始めた。

将兵達が必死の形相で迎撃態勢を整えながら接近して来る音の方に視線を向けて襲撃に備えていると、両脇の木々の合間から複数の吸血球が姿を現して将兵達に襲いかかってしまう。

吸血球達は注視していた方向からでは無い襲撃に対応が遅れた将兵の喉元に容易く吸着するとガッシリと皮膚にへばりついてその血を啜り、将兵達は断末魔の絶叫をあげ喉元にへばりついた吸血球に掴みかかろうとした体勢のまま体内の血を吸いつくされて干乾びたミイラの様な骸と化して崩れ落ちてしまう。

吸血球の襲撃に残存部隊が混乱状態に陥っているとその状況を見計らった様に前方の木々の合間から多数のジンベルヴォルフが出現して混乱する部隊に襲かかり、残存部隊の将兵達は断末魔の絶叫を迸らせながら次々に躯となって斃れ伏していった。

「……こんな事が……い、一体何が起こっていると言うのだ」

中隊長が目の前で繰り広げられる凄惨な光景に呆然としながら呟き後退りし始めたがその動きを制する様に背後からも下生えを掻き分ける音が大量にし始め、中隊長がその音に心臓を鷲掴みにされてしまう様な感覚を覚えながら恐る恐る背後に視線を向けると、大量のボーンウォーリアーを従えて一体のワイトが姿を現し虚空に五芒星の闇色の魔法陣を形成しており、中隊長が慌てて命令を発しようとするのを遮る幼に無数の氷弾を発射した。

放たれた氷弾は中隊長の周囲にいた近衛騎士達を直撃して彼等を氷のオブジェにしてしまい、咄嗟に回避したものの避けきれなかった氷弾が中隊長の左足を地面ごと凍り付かせてしまい、慌てて解除魔法を唱え始めた中隊長の喉元に2つの吸血球がへばりついて凄まじい勢いで中隊長の血液を啜り上げ始めてしまう。

中隊長は絶叫を迸らせながら喉元にへばりついた吸血球を掴んで引き剥がそうとしたが吸血球の吸着はその程度の力でどうする事も出来ぬ程に強固であり、2つの吸血球に全身の血を啜り上げられてしまった中隊長は氷弾で地面に片足を縫い付けられたまま干乾びた無惨な姿を晒す事になってしまう。

中隊長の無惨な最期により崩壊寸前だった残存部隊の士気は完全に瓦解してしまい、壊乱状態に陥り逃げ惑う将兵は吸血球やジンベルヴォルフ、ワイトに支援されたボーンウォーリアーによって次々に斃れ伏していった。

同じ頃、潰走する他の将兵達も吸血球やジンベルヴォルフの伏撃によって甚大な被害を被っており、暗い聴き合間に犠牲者達の断末魔が響き渡っていた。

潰走したリステバルス王国軍とヴァイスブルク男爵領国軍合同部隊は夥しい犠牲を生じさせながらヴァイスブルクの森を右往左往しながら逃げ惑った末に救援部隊に終了されたがその数は重傷者を含めても600名程度でしかなく、ヴァイスブルク男爵領国軍に至っては10名程が救出されたに過ぎなかった。



リステバルス王国軍とヴァイスブルク男爵領国軍合同部隊、標的乙への攻撃任務を課せられたカッツバッハ戦闘団はワイト隊とボーンビショップ隊の猛烈な火力支援の支援の下攻撃を開始し、強行軍の疲労と突然の攻撃に極度の混乱状態に陥ってしまっていた標的乙の将兵達は散発的な抵抗を行なった末に呆気なく崩壊してしまう。

崩壊した標的乙の将兵達を算を乱してヴァイスブルクの森の暗い木々の合間を逃げ惑ったが、その行く手には無数の吸血球と多数のジンベルヴォルフが待ち構えており、標的乙の将兵達を多数骸を木々の合間に晒しながらで絶望的な逃走を続けていた。

壊乱した標的甲に続いて一蹴された標的乙、反攻作戦台風(タイフーン)作戦の経過は順著そのものであり、啄木鳥作戦を粉砕された三国連合軍の崩壊の瞬間は間近に迫っていた……

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