発動、台風(タイフーン)作戦・アイリス戦闘団編
今後更新される可能性が低いと判断されてしまっていましたが、更新させて頂きました。宜しくお願い致します。
ダンジョン周辺・アイリス戦闘団
台風作戦発動に従い前進を開始したサララ戦闘団とカッツバッハ戦闘団、アイリスはミリアリアに抱えられながら共に魔画像でその様子を確認していた。
「……動き出したわね」
「……ああ」
アイリスに声をかけられたミリアリアは頷きながら相槌を打ち、その後に周囲を見渡した。
周囲の木々の合間からは散開して警戒に当たるLSSA所属のボーンナイトやダークマンティスの姿が確認され、ミリアリアがその光景に感慨を覚えていると、アイリスが声をかけてきた。
「……そろそろあたし達も動きましょう」
「……ああ、そうだな、皆、集まってくれ」
アイリスに声をかけられたミリアリアはその言葉に応じた後に声をあげると、リステバルス皇国亡命政権より派遣されてきたリューシェンカ、カティアナ、ジェリアナとユーティリア率いるヴァイスブルク伯国亡命政権の騎士達にクーリア率いる女戦士傭兵隊、そして闇神官リリアーナと、リスティアとイリリアスがミリアリアとアイリスの前に整列し、最後にLSSA指揮官のハウサーと第一火力支援大隊長のクレッチマーが到着した。
「……それじゃあ、作戦を確認するわ、先ずは敵の概況よ」
出席者が揃った事を確認したアイリスがそう告げると、それに呼応する様にアイリス戦闘団の目標である丙集団、リステバルス王国軍主力部隊の概況が表示された地図の魔画像が表示され、一同がそこに視点を向けるとミリアリアに抱えられたアイリスが指示棒を使って説明を開始した。
「私達の標的、丙集団は敵の主力部隊でダンジョンへの入口を封鎖する形で展開していてリステバルス王国軍によって編成されているわ、騎士と魔導兵に近衛騎士も含めた約4500名で編成されていて総司令官は既にダンジョンで氷漬けになっているわ、流石にダンジョン正面の警戒はしてるけど背後への警戒態勢はそれに比べるとだいぶ緩いわね、でも、流石に何かおかしいと感じ始めてはいるようね、警戒態勢の強度も上がり始めているわ」
アイリスの説明を聞いた一同は真剣な表情で頷き、アイリスはそれを確認した後に言葉を続ける。
「次に私達の部隊編成を確認するわね、私達の部隊は第一親衛連隊LSSAに第二駆逐大隊、第一火力支援大隊第一中隊に加えて第一金堀衆が参加しているわ、使役獣は、一角龍、双角龍、ブラッディスケアクロウ、氷鳥龍となるわ」
アイリスがアイリス戦闘団の構成部隊を告げていると、丙集団に向けて伸びる2本の青い矢印が現出し、アイリスは指示棒でその内の1つを指し示して視線をユーティリアに向けながら言葉を続けた。
「私達は二手に別れて丙集団に対する攻勢を実施するわ、A作戦群はボーンナイト1個大隊にダークマンティス中隊、第二駆逐大隊のグロスポイズンサーペント1個中隊、そして双角龍からなり、指揮官はユーティリアに務めて貰うわ、リステバルス皇国亡命政権軍から派遣された人達もこれに加わり、ユーティリアの指揮下に入って貰うわね」
「……承知致しました、全力を持ってアイリス様の御下命を完遂させて頂きます」
アイリスの言葉を受けたユーティリアは決意の表情を浮かべながら返答し、アイリスは頷いた後にもう一本の青い矢印に指示棒を向け、クーリアに視線を転じながら言葉を続ける。
「B作戦群にはボーンナイト1個大隊とレッサーヒュドラ1個中隊、第二駆逐大隊のグロスポイズンサーペント1個中隊、それに氷鳥龍が配属され、クーリアが指揮官よ、女戦士隊も併せて指揮して頂戴」
「……御下命謹んで拝領致します、我等が槍働き存分に御覧下さいませ、アイリス様」
アイリスの下達を受けたクーリアは深く頭を垂れながら決意の言葉を発し、アイリスは頷いた後にリリアーナ達に視線を向けて言葉を続ける。
「……残りの物達は予備隊となるけどブラッディスケアクロウは円盤形態に変型して敵司令部にミステルで攻撃を行い、その混乱に乗じて第一金堀衆が敵前線に地下から襲撃を行うわ、火力支援大隊のワイトとボーンビショップ隊は全般火力支援を実施、クレッチマーに指揮を任せるわ」
……オマカセ下サイマセ、アイリス様、愚カ者ドモニ、我等ノ猛威、存分ニ御見舞シテ見セマショウ……
アイリスから全般火力支援の統括指揮を命じられたクレッチマーは恭しく一礼した後に返答し、アイリスが頷いていると少し離れた所に待機していた同盟者の魔龍からの念話が到達した。
……ならば我は上空で敵の動静を探るとしよう、愚か者共が短兵急な行動をしたおかけで増援が来る危険性は低いが一応監視しておくとしよう……
「……ええ、そうして貰えると此方としても助かるわ」
魔龍の念話を受けたアイリスは頷きながら礼を告げ、その後に一同を見渡しながら言葉を続ける。
「……これより私達も攻撃開始位置まで全身を会しするわ、今回の戦闘は今迄の戦いを上回る規模の戦いになるわ、各自、全力を尽くしなさい」
「「敬礼!!」」
アイリスの激励の言葉を受けたユーティリアとクーリアが発した鋭い号令に合わせて一同はアイリスに向けて敬礼を送り、アイリスは頷く事で応じた後にユーティリアとクーリアに配属使役獣が収納されたカプセルを手渡して前進開始を命じた。
出現命令を受けたユーティリアとクーリアが部下を率いて暗い木木の合間に消えて暫くするとボーンナイトの集団が粛々と前進を始め、アイリスはミリアリアに抱えられた状態で進撃する異形の軍勢を見送った。
「……いよいよ始まるわね、その名の如く、三国連合軍の奴等を吹き飛ばしてやりましょう、ミリア」
「……ああ、そうだな、アイリス」
アイリスが進撃する異形の軍勢を見ながらミリアリアに声をかけると、ミリアリアに小さく頷きながら返答し、その後に青筋の瞳をスウッと細めながら傍らに視線を転じながら言葉を続ける。
「……それで、あの連中はどうするつもりなんだ?」
問いかけるミリアリアの視線の先にはアイリスによって生きたまま氷のオブジェにされてしまったリキメロス達の姿があり、アイリスは魔王に相応しい凄惨の笑みを浮かべてながら返答した。
「……部隊が攻撃開始位置に到着したらこいつらにはメッセンジャーとして働いて貰うのよ、あたしからロジナ候国とリステバルス王国に対する宣戦布告のメッセンジャーとしてね、安心して、こいつらが助かる可能性は皆無だから」
「……そうか、なら、問題は無いな」
アイリスの凄惨な言葉を受けたミリアリアは冷ややかな視線でリキメロス達を見ながら呟き、その後に表情を柔らかく緩めな、仄かに頬を赤らめがらアイリスに声をかける。
「……私達が出撃するのは、最後になるな、す、少し休むと良い」
「……ええ、そうさせて貰うわね、ありがとう、ミリア」
ミリアリアの言葉を受けたアイリスは嬉しそうに返答した後に甘える様にミリアリアの胸元にもたれかかり、ミリアリアは更に頬を赤らめさせながら、それでも愛しげにアイリスを見詰めた。
アイリス戦闘団の行動開始により、台風作戦に参加する全ての部隊が行動を開始し、各部隊はダンジョンを包囲したまま無為に時を過す三国連合軍を攻撃すべく、暗い木々の合間を粛々と進み続けていた。
発動された反攻作戦台風作戦、魔王アイリス率いるアイリス戦闘団も敵主力部隊のリステバルス王国軍主力部隊に対する攻撃を企図し、それに従い編成されたばかりの親衛隊、LSSAを中心とした異形の軍勢は粛々と前身を開始した。
突入作戦、啄木鳥作戦を破砕された三国連合軍はそれを知らぬまま無為に時を過ごし、その背後には魔王アイリス率いる異形の軍勢が静かに近付き始めていた……