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惨劇・ワンウッド傭兵隊編・陥穽

5500PVアクセス及び、1400ユニークアクセス突発しました。これからも宜しくお願いします。

残酷な描写がありますので閲覧は自己責任でお願いします。


マスタールーム


ダンジョンの奥へと進撃を続けるワンウッド傭兵隊の映像はマスタールームにいるアイリス達の前に映し出されており、アイリスは進撃する彼等を冷めた目で見詰めながら呟きをもらした。

「そろそろ最初の宝箱に到着するわね」

「確か最初の宝箱はミミックが擬態していた筈だったな、まあ、このダンジョンの宝箱は粗方ミミックが擬態しているがな」

「……確か、17個ある宝箱の内16個がミミックで残る1個が麻痺の呪いとモンスター集めの呪いの効果が付与された普通の槍、でしたよね」

アイリスの呟きを耳にしたミリアリアが問いかけていると、以前聞かされたダンジョンの概要のエグさを思い起こしたリーナがそのエグさに若干顔をひきつらせながら続き、2人の問いかけを受けたアイリスは冷たい笑みで進撃を続けるワンウッド傭兵隊を見ながら口を開いた。

「何時も同じ配置や順番だと飽きるでしょ?だから1度入る度に宝箱の配置順番や選択ルートの正解が変更される機能を追加したの、今の所ダこの機能が適用されるのは第1階層だけだけど後々この機能に対応した階層を増やして行く予定よ」

「……構造変更機能って確か25階層以上ある高難度ダンジョンにしか無かった筈だよな」

アイリスの答えを聞いていたライナとアリーシャは新たに加えられた機能のエグさに顔をひきつらせかけながら小声で会話を交わし、ミリアリアとリーナも顔をひきつらせかけながら乾いた笑みを浮かべるしか無かった。


第1階層


ダンジョンを進撃する下級幕僚とワンウッド傭兵隊、進撃を続けていた彼等の前に無造作に置かれた宝箱が姿を現し、それを目にした隊長は一度全員を停止させた後に手近な所にいた2人の傭兵に声をかけた。

「おい、お前達が開けて来い、出来たばかりのダンジョンだから大した物は入ってねえだろうが中身はくれてやる」

隊長の言葉を受けた2人の傭兵は頷きながら気易い足取りで宝箱へと向かい、隊長はその背中を見ながら傍らの下級幕僚に声をかけた。

「あの宝箱を無視して前進したとなると奥に高位エルフがいるかも知れないと言う話に信憑性が出てきたな」

「ああ、もう既に逃走してしまったかも知れんが痕跡くらいなら見付けられるかもしれんな」

隊長と下級幕僚が会話をしている間に2人の傭兵達は宝箱の所に到着し、2人の傭兵は無造作に宝箱の蓋を開けて中身を見た後にあからさまに落胆した表情を浮かべて、後方の隊長に向けて報告を行った。

「中身は槍です、見た所何の変哲も無い至って普通の形状の槍です、一応鑑定して貰います」

「分かった、中身の槍を持って戻って来い」

報告を受けた隊長は後方に魔導士を示しながら命令し、宝箱の中身を見ていた傭兵はその言葉に従って槍を手に立ち上がり、槍を宝箱から出した瞬間その表情が苦悶に歪んだ。

「……ッギアァァァッ!!」

「お、おい、どうし……ッガアァァァァッ!!」

槍を持った傭兵は苦悶に歪んだ表情で絶叫しながら槍を放り投げ、もう1人の傭兵は慌てて駆け寄りながら声をかけたが、反射的に放り投げられた槍を掴んだ瞬間けたたましい絶叫を迸らせ、槍をダンジョンの床に放り投げながらもう1人の傭兵と共に倒れ込んだ。

「お、オイッどうしたんだお前ら!?」

「麻痺状態になっているぞっ!?あの槍麻痺の呪いが仕込まれているのかっ!?」

突然の事態に隊長が驚きながら地面に付して痙攣する2人に声をかけていると、魔導士が痙攣する傭兵達とその脇に転がった何の変哲も無い外見の槍を見ながら驚愕の声をあげ、それを耳にした隊長が魔導士に向けて口を開こうとした瞬間、ダンジョンの奥の暗がりから2体のボーンウルフが駆け出て来た。

駆け出て来たボーンウルフは地面に倒れ痙攣している2人の傭兵目掛けて驀地に駆け、突発事態の連続に虚を衝かれた形のワンウッド傭兵隊の弓兵と弩兵が慌てて迎撃しようとしたが2体のボーンウルフはそれの前に痙攣する2人の傭兵に飛び掛かりその喉笛に食らい付いた。

「……ッガッ……ガッ……アァッ……」

「……ッギッ………ッガッ……ガッアッ」

喉笛を髪潰された2人の傭兵は激しく身体を痙攣させながらくぐもった呻き声をあげたが、幾らも経たぬ内に激しく痙攣していた身体がグッタリと弛緩し、2体のボーンウルフは傭兵達の血糊がベッタリと付着した頭骨を掲げると落ち窪んだ眼窩をワンウッド傭兵隊に向けた。


カタカタカタカタカタ


2体のボーンウルフはまるで嘲笑するかの様に頭骨をけたたましく鳴らし、それを耳にした隊長は我に帰ると怒りに顔を赤黒くさせながら怒声を放った。

「この骨犬があぁっっ!!ぶちのめせっ!!」

「ファイヤーブリッド」

隊長の号令を受けた魔導士は直ぐ様掌大の大きさの火球を発射して1体のボーンウルフを破壊し、火球の発射と同時に駆け出した棘付メイスと盾を装備した大柄な傭兵が残るボーンウルフにメイスを叩きつけて粉砕した。

粉砕された2体のボーンウルフの骨がダンジョンの床に散らばり、ワンウッド傭兵隊と下級幕僚が安堵の表情を浮かべた瞬間その鼓膜を乾いた音が揺さぶった。


……カラン………コロン


何かがぶつかり合う物悲しさを感じさせる音を耳にした一同がダンジョンの奥に視線を向けると暗がりから10体程のスケルトンが姿を現し、姿を現したスケルトン達はカタカタと骨を鳴らしながら粗末な造りの剣を手に駆け出した。

「ふざけんなよっ骨どもがあぁぁっ!!」

「オイッ待てっ突出するなっ!!」

仲間の最期に気がささくれだっていた大柄な傭兵は隊長の静止の声に構わず怒声と共にスケルトンの集団目掛けて突入すると手近な所にいたスケルトン目掛けて手当たり次第に棘付メイスを振るった。

場数を踏んだ傭兵が怒りに任せて振るう棘付メイスは次々にスケルトンを粉砕して行くが、その時新たなスケルトンの集団が暗がりの中から姿を現して戦闘に加わった。

大柄な傭兵はその光景にますます熱り立ちながら棘付メイスを振るってスケルトンを粉砕して行くが、怒りに我を忘れ冷静さを欠いた立ち回りが長く続くはずも無く、大柄な傭兵は動きが緩慢になってしまった所で5体程にまで数を減らされたスケルトン達にまとわりつかれてしまった。

「……ちっクソどもがっ、離せ、離しやが……があああぁぁぁっ!!」

罵声を迸らせながらスケルトンを振りほどこうとしていた大柄な傭兵はスケルトンの粗末な造りの剣に刺し貫かれ絶叫をあげるが、スケルトン達はその様に頓着する事無く大柄な傭兵の身体を次々に粗末な造りの剣を突き刺し、大柄な傭兵が血塗れになりながら悲鳴をあげているとそれに誘われる様に新手のスケルトンが更に姿を現した。

姿を現したスケルトン達は大柄な傭兵の所に近付くと手にした粗末な造りの剣を次々に大柄な傭兵に突き立て、大柄な傭兵は凄まじい断末魔の悲鳴をあげながら取り囲むスケルトンの中に崩れ落ちる中、魔導士が床に転がる槍を指差しながら口を開いた。

「あの槍だ、あの槍、恐らく麻痺の呪いだけじゃなくモンスター寄せの呪いまで仕込まれてるっ!!」

「……クソがあぁっ!!お前はあの槍をさっさとぶち壊せっ、貴様等、隊列を組み直せ相手はたかだかスケルトンだ、これ以上醜態見せんじゃねえぞっ!!」

魔導士の言葉を受けた隊長は顔面を怒りで赤黒くさせながら怒号を迸らせ、その怒号を受けた魔導士が床に転がる槍に火球を放ち灰にさせると同時に、態勢を立て直してた生き残りの傭兵達は素早く隊列を調えて接近するスケルトンの迎撃を開始した。

態勢を立て直した傭兵達にとってスケルトンは然程の難敵では無く、それからいくらも経たぬ内にスケルトンの集団は蹴散らされ、戦闘を終えた一同はスケルトンの骨が床に散乱する中安堵の表情を浮かべた。

「クソっこんな出来たてのダンジョンで3人も殺られるとはなっ」

隊長は忌々しげに呟きながら近くに転がる骨を踏み潰し、その様子を目にした下級幕僚が難しい顔付きになりながら声をかけてきた。

「どうする?かなりの損害が出た様だが?」

「……心配すんな、さっきはちょいとばかし油断が過ぎた様だがエルフどもを犯すのに現を抜かし過ぎてたこいつ等には良い藥だろう、呪い付の槍には少々驚いたが所詮は出来たばかりのダンジョンだ、俺等にとっては何の問題も無く踏破出来る」

「分かった、ならば進むとしよう」

下級幕僚の問いかけを受けた隊長は胸中に生じている微かな警鐘を捩じ伏せながら答え、その答えを受けた下級幕僚が頷きながら発した言葉に頷いた後に傭兵達に号令を発した。

「よし、行くぞっお前等!!緩んだ箍をしっかりと締め直しこんなダンジョンさっさと踏破しちまうぞっ!!お澄まし顔のエルフどもをヒイヒイ言わせるのはこのダンジョンを踏破した後だっ、気合い入れ直して行けっ!!」

隊長の怒号を受けた傭兵達は胸中に生じていた漠然とした警鐘や不安を捩じ伏せると雄叫びをあげて隊長の渇に応じ、その雄叫びを耳にした隊長は満足気に頷きながら前進を命じた。

隊長の命令を受けた前進を始めたワンウッド傭兵隊、彼等の命運はその瞬間に決定された。

宝箱に入れられた呪いが仕込まれた武器とそれが契機となって生じた犠牲、最後の警告とも言える光景を無視して進む彼等はそうとは知らぬ内に、新たな惨劇の犠牲者の中に自分達の名を加えていた。



ダンジョンを進むワンウッド傭兵隊、進撃する彼等に異形のダンジョンは強烈な洗礼を与える、宝箱に入れられた呪いが仕込まれた武器とそれによって生じた犠牲、その陥穽は異形のダンジョンから侵入者達に送られた最後の警告だったが侵入者達は胸中に生じた微かな疑念や警鐘ごとその警告を無視して更なる進撃を続ける。

最後の警告とも言うべき陥穽を無視して突き進むワンウッド傭兵隊、彼等が進む先に待ち受けているのは新たな惨劇……


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