発動、台風(タイフーン)作戦・サララ戦闘団編
更新が遅れ申し訳ありませんでした。この様な状況にも関わらずブックマークが390を突破しました。これからも本作を宜しくお願いします。
ダンジョン周辺・サララ戦闘団
アイリスから反攻作戦、台風作戦の発動命令を受けたサララはアイリーン、エメラーダ、クラリス、イレーナと共に簡易転位アイテムを利用して出撃の時を待つ自軍の下へと移動した。
サララ達が転位するとアイリス率いるアイリス戦闘団に派遣されたリューシェンカ、カティアナ、ジェリアナにクラリスとイレーナを除いたリステバルス皇国亡命政権所属の騎士達と、ヴァイスブルク伯国亡命政権から派遣されたミリーナ、イスティリス、サリアナ、ミスティア、ティリアーナエルザ、カリンに女戦士傭兵隊より派遣されたルイーズ、リリー、アン、メアリー、スージー、ジーン、ルース、サリー、ヘレン、ペギー、そして第一死霊連隊長のマントイフェルと第一火力支援大隊第二中隊長のリュースがサララ達を出迎え、サララは一同を集合させた後にアイリスから渡された魔画像起動用アイテムを使用して彼我の状況が記された地図の魔画像を具現化させながら口を開いた。
「……先程アイリス様より反攻作戦、台風作戦の発動命令が御下命された。我々の目標は三国連合軍の一部、甲集団だ」
サララがそう告げると三国連合軍の一角が拡大されてサララ戦闘団の作戦目標であるラステンブルク伯国軍を主力とした集団、甲集団の配備状況が一同の前に晒され、サララは魔画像を見下ろしながら現時点で判明している甲集団の状況の説明を始めた。
「甲集団はラステンブルク伯国軍猟兵部隊を中心として兵力は約3500、2個猟兵団相当の猟兵部隊にリステバルス王国軍の軽装歩兵と軽騎兵が加わっている。ダンジョンに面した方面はそれなりに警戒されているが背後の警戒はかなり緩い、我々の接近に気付いている様子は皆無だ」
サララの説明を聞いた一同は真剣な眼差しで魔画像を見詰めながら頷き、サララはそれを確認した後に自軍に関する説明を始めた。
「我が戦闘団は第一死霊連隊、第一駆逐大隊、第一偵察大隊、第一火力支援大隊第二中隊によって編成されており、これにアイリス様より拝借した使役獣のラビットドラゴン、双鞭龍、地炎龍、硫黄龍、狂機獣が加わっている。我々は2個作戦群を編成して甲集団を背後より攻撃する」
サララが攻撃計画を告げるとそれに呼応する様に甲集団を指向した2本の青い矢印が地図上に表示され、サララはその内の1つを指しながら言葉を続けた。
「第一作戦群はボーンウォーリアー1個大隊に骸骨軽騎兵、ボーンビショップ各1個小隊、そして第一駆逐大隊のブラッディマンティス1個中隊と第一偵察大隊のジンベルヴォルフ1個中隊で編成される。指揮官はミリーナ殿でミリーナ殿が率いるヴァイスブルク伯国亡命政権軍の皆に我軍のイストリア、メルクリアス、カリアーナ、ローザンナ、リーアン、アークティアが加わる形となる。ミリーナ殿、宜しく頼む」
サララは第一作戦群の編成と配属人員を告げた後に第一作戦群の指揮官となったミリーナに声をかけ、ミリーナが穏やかな微笑を浮かべながら頷いたのを確認した後にもう1つの矢印を示しつつ言葉を続けた。
「続いて第二作戦群の編成及び人員配置を通達する。第二作戦群の編成は第一作戦群と同一であり、指揮官はルイーズ殿とし配置人員は女戦士傭兵隊の者達とする」
「承知しました、我等の槍働き御期待下さい」
サララが第二作戦群の編成及び人員配置を告げると第二作戦群の指揮官に任命されたルイーズが精悍な笑みと共に口を開き、サララは頷く事でそれに応じた後に残る者達を見渡しながら言葉を続けた。
「残る者達は私の指揮の下予備隊として待機して貰う、尚、リュース殿の第一火力支援大隊第二中隊には全般火力支援部隊として第一、第二作戦群に対する火力支援を実施して貰う事になる」
……承知シタ、愚カ者達ノ慌テフタメカセテヤロウ……
サララの言葉を聞いたリュースは楽し気な口調で応じ、サララがその言葉に頷いているとアイリーンが口を開いた。
「……サララ様、此度の作戦にはクラリスとイレーナも参加させて下さいませ、エメラーダ様も賛成しておりますわ」
サララがそう言うとエメラーダがたおやかな笑みを浮かべながら頷き、それを確認したサララはクラリスとイレーナの引き締まった表情を一瞥した後に口を開いた。
「了解しました。クラリスとイレーナにも我が戦闘団に参加して貰います。両名は第一作戦群に参加してミリーナ殿の指揮下に入ってくれ」
サララの言葉を受けたクラリスとイレーナは頷く事でそれに応じ、サララはそれを確認した後に皆を見渡しながら言葉を続けた。
「……作戦計画は以上だ、それではこれよりアイリーン様より御言葉を頂く、総員、気を付けっ!!」
サララが言葉の終わりに号令を発すると一同は一斉に直立不動の態勢を取り、それを確認したサララが同じ様に姿勢を正しながらアイリーンとエメラーダに視線を向けるとアイリーンが典雅な動作で一礼した後に口を開いた。
「……皆様の勇姿を拝見する事が出来る、あの生地獄の日々にはこの様な刻が来る等、夢想すら出来ませんでした」
アイリーンの言葉を受けた一同は己が受けた艱難辛苦の日々を思い出しながら思わず頷き、その様子を目にしたアイリーンはたおやかな笑みと共に言葉を続ける。
「ですが私達は今こうしてこの場に立っております。生地獄の日々から救われ、リステバルス皇国亡命政権を樹立して怨敵と相対する事が出来る、これはただ偏にアイリス様の御恩情と御配慮であります、アイリス様は義理に感じる必要等無いと仰って下さいますが、我々リステバルス皇国亡命政権にとりアイリス様より賜った御恩情と御配慮は何物にも代える事が出来ぬ絶対の恩顧でございます」
アイリーンは一度言葉を区切って一同を見渡し、一同の引き締まった表情を確認した後に力強い口調で言葉を続けた。
「……故にこの戦いはアイリス様より賜わりし絶対の恩顧に対しての謝意を示す戦いになります。アイリス様の恩顧に応える奮戦敢闘を期待しております。皆様の凱旋、お待ちしております」
「……敬礼!!」
アイリーンが激励の言葉を終えると一同がサララの号令の下流麗な動作で敬礼を送り、アイリーンが典雅な一礼で答礼するとサララが鋭い口調で号令を発した。
「……これより編成区分毎に出撃するっ!第一作戦群にラビットドラゴンと硫黄龍、第二作戦群に狂機獣と地炎龍を配布する、各群指揮官は配属使役獣を受領し、態勢が整った後に出撃せよっ!!」
サララの指示を受けたミリーナとルイーズはサララの所に歩み寄って各作戦群に配属された使役獣のカプセルを受領し、それを確認したアイリーンとエメラーダがクラリスとイレーナに視線を向けながら口を開いた。
「……クラリス、行きなさい」
「はい、行ってまいりますアイリーン様」
「……イレーナ、武運を祈っておりますわ」
「ありがとうございます。エメラーダ様、行ってまいります」
アイリーンとエメラーダの激励を受けたクラリスとイレーナは微笑と共に応じた後にミリーナ達に合流し、その後に一同が動き始めた。
サララが動き始めた一同を見送っているとミリーナがサララに視線を向けて敬礼を送り、サララは微かに頬を緩めさせながら答礼を反した。
ミリーナ達とルイーズ達は黄昏に包まれ始めた木々の合間に消え、それから暫くすると異形の軍勢が茜色に染まる木々の中を進み始めた。
先ず動き始めたのは第一偵察大隊に所属するジンベルヴォルフの集団であり、その集団を尖兵として第一、第二作戦群が前進を開始した。
両作戦群に所属するアンデッドと大型モンスターの集団は血に塗れた様な茜色に染まる木々の合間を粛々と進み、アイリーンとエメラーダはサララと共に進撃を開始した異形の軍勢を見送った。
「……歴史は私達を何と呼ぶのでしょうか?」
「……決して良い呼び方では無いでしょうね」
エメラーダが粛々と進む異形の軍勢を畏敬の視線で見送りながら呟くと、アイリーンは静かな口調でそれに応じ、その後にたおやかな笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「……望む所ですわ、絶望だけしか無かった生地獄の日々から私達を御救い下さったのは、アイリス様のみ、アイリス様の恩顧に報いる事によって得る罵詈雑言は、私達にとって美辞麗句と同じですもの」
アイリーンが静かに告げた言葉とたおやかな笑みからはアイリーンの強固な覚悟と意志が感じられ、それを感じ取ったエメラーダは同じ様に穏やかな笑みを浮かべて頷いた後に進撃する異形の軍勢へと視線を戻した。
反攻作戦、台風作戦、発動された作戦に従いサララ戦闘団が進発していった。
その目標はラステンブルク伯国軍猟兵部隊を主力とした集団、甲集団、素早く戦闘区分を整えたサララ戦闘団は戦闘区分毎に出撃を開始し、激励に訪れたアイリーンとエメラーダに見送られながら粛々と黄昏に包まれた木々の合間を進んで行った……