表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/161

反攻作戦・台風(タイフーン)

ブックマークが380を突破致しました今後も本作を宜しくお願い致します。

ダンジョン周辺・ミリアリア戦闘団


アイリスとブランデンブルグ中隊によって突入部隊が一蹴された後も突入部隊を装った増援要請は継続され、ダンジョンを包囲している三国連合軍は請われるままに増援部隊の投入を続けていた。

頻繁な増援要請に訝しさを覚え始めながらも増援部隊の投入を続ける三国連合軍、その背後に巨大な災厄が近付いていた。

三国連合軍がダンジョンを包囲する前に出撃して野営していた異形の軍勢は3個戦闘団(カッツバッハ、サララ、ミリアリア)に別れて各々が定められた部署に向けて前進し、配置が完了した後にカッツバッハとサララが軍議に参加する為にアイリスから渡されていた簡易転位アイテムを利用してミリアリア戦闘団の本部に移動した。

カッツバッハとサララが本部に到着すると周囲には第一親衛連隊・親衛連隊旗アイリス(LSSA)に所属する10体を超えるダークマンティスが展開しており、その光景を目にしたサララは呆れと感嘆が相半ばする溜め息をついた後に傍らのサララに話しかける。

「……今に始まった事では無いが、この様な光景を見ていると改めてアイリス様の御力の凄まじさを実感するな」

「……ああ、そるにしても戦いが重なる度に恐ろしい勢いで戦力が強化され続けているな、ヴァイスブルクが陥落した頃はこの様な状況になるとは思いもしなかったな」

サララの言葉を受けたカッツバッハはヴァイスブルク陥落直後の状況から激変してしまった状況に感慨を抱きながら応じ、それから2人は木々の合間に擬装されて設置された本部の天幕へと入った。

天幕に入るとミリアリアとLSSA指揮官の死霊伯爵ハウサー、それにメイド服姿のリスティアとイリリアスが2人を迎え、リスティアとイリリアスが少々ぎこちない手付きで木製のコップに簡易魔法瓶のアイスティーを注いでカッツバッハとサララにそれを手渡しているとミリアリアが静かな口調で口を開いた。

「……先程アイリスから連絡があった、マスタールーム階層に突入して来た敵部隊を殲滅し、三国連合軍司令官のリキメロスとヴァイスブルク男爵領国軍第一騎士団長のポポフを捕縛したそうだ、マリーカ様とアイリーン様が面通しを行い、間違いなく本人だと確認出来たそうだ」

「……司令官自らが突入した挙げ句に捕縛されるか、我々はこんな連中に敗れたのだと考えると情け無くなってしまうな」

ミリアリアの言葉を聞いたサララは司令官とは思えない軽挙の挙げ句に無惨な末路に行き着いてしまったリキメロスへの侮蔑に、彼を含めたリステバルス王国に敗北してしまった事に冠する忸怩を滲ませた呟きをもらし、それを聞いたミリアリアはゆっくりとかぶりを振りながら口を開く。

「……サララ殿、リステバルス戦役の際はロジナ候国の根回し等もありアイリーン様の陣営に加わった部隊は貴殿の騎士団を含めた5個騎士団に過ぎず、更にロジナ候国軍等も援軍に加わっていた、その戦力差で数ヵ月に及ぶ籠城戦を成し遂げた貴殿等の力量に疑義を挟む余地は無い」

ミリアリアがそう言うとカッツバッハもゆっくりと頷いてその意見に同意し、その様子を見たサララが表情を緩めながら頷いていると地面に淡く輝く五芒星の魔法陣が形成された。

「総員、気を付けっ!」

形成された魔法陣を目にしたミリアリアが発した号令を受けて一同が威儀を正していると、形成された魔法陣を通ってアイリスがマリーカ、アイリーン、エメラーダ、そして各々の護衛騎士達を伴って姿を現した。

「……敬礼!!」

ミリアリアが放った鋭い口調で号令が響くと同時に本部にいた一同は流麗な動作でアイリスに対して敬礼を行い、同時にアイリスに随伴していた者達も敬礼(マリーカは深く頭を垂れ、アイリーンとエメラーダはカーテンシー)を行った。

「……楽にして頂戴、現時点における彼我の状況と作戦の最終確認を行うわ」

一同の敬礼を受けたアイリスが鷹揚に答礼した後にそう告げるとアイリスの目の前に彼我の状況が記された地図の魔画像が具現化され、それを確認した一同がその周囲を囲むとアイリスが指示棒でダンジョンを包囲する三国連合軍を指し示しながら口を開いた。

「……現在三国連合軍はダンジョンの包囲を継続中よ。突入部隊を装った援軍要請に応じて増援部隊を突入させ続けているけど流石に不審に思い始めてるわね、まあ、最初に突入して来た連中を含めれば2個大隊相当の部隊が突入してるんだから不審に思わなきゃどうかしてるわね、連中の兵力はこれまでダンジョンに突入して来た部隊を差し引いて約1万と推測されるわ」

アイリスがダンジョンを包囲している三国連合軍の概況を告げると一同が鋭い表情で頷き、アイリスはそれを確認した後に三国連合軍の一角に指示棒を当てながら更に言葉を続ける。

「……現在三国連合軍は大きく分けて3つの集団になっているわ、この集団はラステンブルク伯国軍の猟兵部隊を中心にリステバルス王国軍の一部が加わっていて兵力はダンジョンに突入した部隊を除いて約3000になるわ、この集団を甲集団と仮称するわ」

アイリスはラステンブルク伯国軍を主力とした集団、甲集団の概要を説明した後に指示棒を移動させて三国連合軍の一角を指し、一同の視線がそこに集まったのを確認した後に言葉を続けた。

「この集団はリステバルス王国軍にヴァイスブルク男爵領国軍が参加する事で形成されているわ、ただし、ヴァイスブルク男爵領国軍のエルフ騎士については殆どがダンジョンに突入しているから現在はリステバルス王国軍の集団と言っても差し支えないわね、兵力はダンジョンに突入した部隊を除いて約2500、この集団を乙集団と仮称するわ」

アイリスからヴァイスブルク男爵領国軍が加わっていた部隊、乙集団の概要を伝えられた一同は頷く事で伝えられた概要を把握した事を告げ、アイリスはそれを確認した後に指示棒を移動させながら更に言葉を続ける。

「最後の集団はダンジョンの出入口周辺を封鎖している連中でリステバルス王国軍のみで編成されているわ、兵力はダンジョンに突入した部隊を除いて約4500、近衛騎士っぽい連中がいるし、あの御目出度い司令官もいたからこの集団が主力部隊ね、この集団を丙集団と仮称するわ」

アイリスは三国連合軍主力部隊、丙集団が展開する辺りを指示棒の先で叩きながら概略を告げ、それが終了した後に魔王に相応しい凄味のある笑みを浮かべてサララに視線を向けつつ口を開く。

「……サララ戦闘団には甲集団に対する襲撃を実施して貰うわ」

「……御下命謹んで御受け致します。全力をもってアイリス様の御信任に応える所存であります」

アイリスから甲集団に対する攻撃命令を受けたサララは深く頭を垂れながら決意の言葉を述べ、アイリスは頷く事でその言葉に応じた後にカッツバッハに視線を向けて口を開いた。

「……カッツバッハ戦闘団には乙集団に対する襲撃を実施して貰う事になるわ」

「……承知致しました。全力を以てアイリス様の御命令を完遂させて頂きます」

アイリスから乙集団に対する攻撃命令を受けたカッツバッハはサララと同じ様に深く頭を垂れながら返答し、それを聞いたアイリスは傍らに立つミリアリアに視線を向けて言葉を続けた。

「……あたし達は丙集団に対する襲撃を実施するわ、襲撃にゆり丙集団を牽制拘束し、甲、乙集団を撃破したサララ戦闘団及びカッツバッハ戦闘団が到着した後にこれを叩き潰すわ」

「了解した、では戦闘団の指揮をアイリスに返還させて貰うぞ」

アイリスから丙集団への襲撃実施を告げられたミリアリアは頷きながら応じた後に戦闘団の指揮権をアイリスに返還し、アイリスは頷く事でそれに応じた後に一同を見渡して言葉を続けた。

「……これより反攻作戦、台風タイフーン作戦を発動するは各戦闘団は現配置部署より攻撃開始線に向けて前進を開始しなさい、攻撃開始線到達後は作戦発動まで待機、作戦発動は日没後、作戦目標は三国連合軍の撃滅になるわ、各員の奮闘と全員の帰還を祈っているわ、各員は所定の行動を始めて頂戴」

「……敬礼!!」

アイリスが反攻作戦、台風タイフーン作戦の発動を宣言するとミリアリアが鋭い口調で号令を発し、一同は流麗な動作でアイリスに対する敬礼と一礼を送った。

一同の敬礼と一礼を受けたアイリスは鷹揚な動作で答礼した後に解散と出撃を命じた。

アイリスの出撃命令を受けたサララとカッツバッハは指揮する部隊の元に簡易転位アイテムを使用して移動して行き、アイリーン達もサララ達を激励(アイリーンとエメラーダがサララ戦闘団、マリーカがカッツバッハ戦闘団)する為にそれに同行した。

「……それじゃあ、あたし達も行きましょう」

「……ああ、そうだな」

一同を見送ったアイリスは小さく伸びをしながら傍らのミリアリアに声をかけ、ミリアリアが相槌を打つと甘える様にミリアリアにもたれかかりながら言葉を続けた。

「……ちょっと疲れちゃったわ、運んでくれる?」

「……っぐ……わ、分かった、そ、それ位御安い御用だ」

アイリスの要望を受けたミリアリアは一度言葉に詰まった後に笹穂耳まで真っ赤になりながらもその要望を受け入れた後に少しぎこちない動きでアイリスの身体を抱え上げ、抱え上げられたアイリスが嬉しそうに微笑みながらミリアリアの胸元にもたれかかっているとミリアリアが真っ赤な顔で声をかけて来た。

「……アイリス、ありがとう」

「……何時も言ってるでしょ、あたしは目覚めた魔王として好き勝手にやっているだけよ、でも、ありがと、ミリア」

ミリアリアの感謝の言葉を受けたアイリスはその言葉を噛み締めながら穏やかな表情で言葉を返し、それを受けたミリアリアは小さく頷いた後にアイリスを抱えたまま天幕の外へと出た。

アイリスを抱えたミリアリアが天幕の外に出ると周囲を固めていたダークマンティス達が一斉に鎌を掲げてアイリスに向けて頭を垂れ、アイリスが鷹揚に頷く事で応じているとハウサーとリスティア、イリリアスが天幕から姿を現し、それに気付いたアイリスは視線をハウサーに向けながら口を開く。

「ハウサー、準備は大丈夫かしら?」

……問題アリマセン、アイリス様、LSSAハアイリス様ノ御下命ガアリ次第、直チニ出撃可能デアリマス……

……どうやら宴の時間の様だな、魔王アイリス……

アイリスの言葉を受けたハウサーが深々と頭を垂れながら返答していると、上空に姿を現した同盟者フェデラートゥスの魔龍がアイリスに向けて語りかけ、アイリスは頷いた後に魔王に相応しい凄惨な笑みと共に厳かに告げた。

「全軍、攻撃開始線に向け前進を始めない、愚か者どもを蹴散らし、踏み潰し、喰らい尽くす為に」

……御意、LSSA、前進ヲ開始セヨ……

アイリスの号令を受けたハウサーは厳かに前進を命じ、それに呼応して木々の合間に散開していた異形の軍勢が動き始める。

LSSAに所属するボーンナイト、ボーンウォーリアー、骸骨軽騎兵、ボーンビショップ、レッサーヒュドラは続々と木々の合間を進んで行き、それと平行して第一突撃大隊の装甲火蜥蜴アーマーサラマンダーや第一火力支援大隊第一中隊所属のワイト達も前進を開始する。

攻撃開始線に向けて前進するアンデッドと大型モンスターにより木々の合間を埋め尽くされ、アイリスはミリアリアの腕の中で前進を続ける異形の軍勢を見送った。



突入部隊を殲滅したアイリスはダンジョン外に展開している自軍の下へと向かい、突入部隊の殲滅と反攻作戦、台風タイフーン作戦の開始を高らかに告げた。

作戦開始を受けた異形の軍勢は直ちに攻撃開始線に向けて前進を始め、突入部隊の壊滅と司令官リキメロスの捕縛と言う凶報を知らぬまま無為に時を過ごす三国連合軍を襲うべく木々の合間を進み始めた。

ダンジョン突入作戦、啄木鳥作戦、完全なる失敗に終わり、アイリスは戦果を拡大する為、全面反攻作戦、台風タイフーン作戦を発動する……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ