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惨劇・啄木鳥作戦編・封鎖

PVアクセス240000を突破致しました。今後も本作を宜しくお願い致します。

大陸歴438年深緑の月十八日・ダンジョン周辺・三国連合軍司令部


ヴァイスブルク男爵領国到着後直ぐ様ダンジョンに向けて前進を開始したダンジョン攻略部隊、三国連合軍は強行軍に近い進撃を続けた末に十八日払暁に先鋒部隊として進んでいたヴァイスブルク男爵領国軍第一騎士団第二中隊とリステバルス王国軍軽騎兵2個中隊が攻略目標であるダンジョンの入口を発見し、その報せを受けたリキメロスは即座に先鋒部隊にダンジョンの封鎖を命じた。

リキメロスの命を受けた先鋒部隊がダンジョン入口を取り囲み簡易的な木柵を張り巡らせていると後続部隊が陸続と到着してその作業に加わって行き、ダンジョン入口が簡易的な木柵によって完全に取り囲まれ、それとほぼ同時に司令部が設置され作戦会議の為に大長以上の各部隊指揮官が召集された。

「現在着々とダンジョンの封鎖態勢が整いつつあります。敵の姿は全く確認出来ずダンジョンに籠城していると思われます」

「……愚かだね、僕達の進撃に慌てふためき憐れな程滑稽に右往左往しているみたいだね」

下級幕僚から封鎖態勢の順調な進捗を告げられたリキメロスはダンジョンに籠城する残党を蔑みながら視線をポポフに向け、ポポフは追従の笑みを浮かべて頷きながら魔通信機を取り出して起動用の魔力を注いで起動させた。

「……イライザッ!数名をつれて貴賓室へ向かえっ!!マリーカ様やアイリーン様を御護りせよっ!!」

「……了解しましたっ!!エリーゼッ!テオドーラッ!来いっ!!」

「……エメラーダ様を御迎えに向かえっ!!急ぎ貴賓室にお連れしろっ!!」

起動された魔通信機からは飛び交う怒号の様な号令と復唱のやり取りが流され、それを聞いた出席者達が魔通信機の向こうで繰り広げられているであろう残党達の狼狽え振りを思い描いて悦に入っているとリキメロスが嘲笑を浮かべて魔通信機を見据えながら言葉を続ける。

「……滑稽だねえ、内情が僕達に筒抜けだと言うのにそれに気付く事無く右往左往、流石は高慢女の部下達だよ、見苦し過ぎて反吐が出そうだね」

リキメロスは嘲笑と共に魔通信機の向こうで右往左往しているであろう残党達を罵倒し、それを聞いたミュラが頷く事で賛意を示した後に口を開いた。

「それでは今後の作戦について発表致します。ダンジョンの封鎖態勢が整った後にリキメロス様がダンジョン内に簡易転位門を作成して突入部隊を突入させて残党どもを一層します。突入部隊はヴァイスブルク男爵領国軍、ラステンブルク伯国軍、我軍から各1個中隊を突入させる予定です。現在ヴァイスブルク男爵領国軍がダンジョンに潜入させた間諜により食堂、多目的ルーム、そしてラステンブルク伯国軍の捕虜が収監されている牢屋にゲートジュエルが設置済です」

ミュラがそう言っていると下級幕僚達がメッサリーナとアグリッピーナからもたらされた情報によって製作されたマスタールーム階層の地図を広げ、出席者達が地図中に記されたゲートジュエル設置箇所を確認していると更に説明が続けられた。

「突入の流れとしてはヴァイスブルク男爵領国軍の間諜達が収監されている捕虜を救出した後にリキメロス様がゲートジュエルを起動させ、その後に我軍の2個小隊が食堂より、ヴァイスブルク男爵領国軍の2個小隊が多目的ルームより、そしてラステンブルク伯国軍の2個小隊が牢屋の簡易転位門より突入して速やかにダンジョン内を制圧致します。一方ヴァイスブルク男爵領国軍の間諜は突入部隊と合流した後に協力者の案内を受の下戦乱の元凶達が籠る貴賓室へ突入して元凶どもを捕縛し、そいつ等を引き摺りダンジョンの主等と嘯いております蝙蝠女の所へ乗り込む予定であります。突入部隊の残りは突入態勢を整えて待機し、要請があり次第突入、万一追加戦力が必要とされた場合は適宜部隊を突入させる予定です」

ミュラから突入作戦の概要を告げられた出席者達は広げられたマスタールーム階層の地図を見ながら大きく頷き、それを確認したリキメロスは自信に満ちた笑みを浮かべながら口を開く。

「我軍からは近衛騎士大隊の1個中隊が突入し、僕が自ら指揮して突入するつもりだよ」

リキメロスが自らリステバルス王国軍突入部隊を指揮する事を告げられた出席者達は思わずどよめき、リキメロスは軽く右手を掲げてそれを鎮めた後に自信に満ち溢れた笑顔と共に言葉を続けた。

「作成した簡易転位門を維持するのはダンジョン内の方が感嘆だし、自惚れでも何でも無く僕は強い、だから僕自らダンジョンに突入して高慢女達に自分の身の程をきっちりと教えてやるつもりだよ」

「御見事なる決断でありますリキメロス様、私もヴァイスブルク男爵領国軍突入部隊を指揮してダンジョンに突入し、戦乱の元凶マリーカを捕縛する所存でありますっ!!」

リキメロスの宣言を受けたポポフが即座に追従の声をあげると出席者達もポポフの勢いに乗せられた様に頷いてリキメロスの突入参加に賛同し、その様子を目にしたリキメロスは満足気な笑みを浮かべて頷いた後に突入準備を命じた。


ダンジョン・マスタールーム階層・牢屋


三国連合軍の出現を受け慌ただしく迎撃準備に終われるマスタールーム階層、その一角に設けられている捕虜収監用の牢屋には前の戦闘の際に捕虜となったラステンブルク伯国軍猟兵部隊の2人の中隊長が収監されていた。

三国連合軍の出現によって引き起こされた混乱は牢屋の中からも察せられ、前もってメッサリーナとアグリッピーナから三国連合軍の接近を示唆されていた中隊長達は漸く牢屋暮しから逃れる事が出来る事に安堵しながら言葉を交わす。

「……どうやら到着した様だな」

「ああ、その様だな、俺達をさんざん虚仮にしてくれたアバズレどもの慌てふためいている姿が目に浮かぶぜ、今度はこっちがたっぷり仕返ししてやる番だな」

中隊長達が救出とその後の反撃に思いを馳せながら言葉を交わしていると廊下に繋がるドアの鍵が外れる音が響き、それを聞いた中隊長達は一瞬身体を強張らせたが開かれたドアからメッサリーナとアグリッピーナが姿を現すと緊張を解き安堵の表情を浮かべながら口を開く。

「驚かせるなよ……いよいよと言う訳か?」

「はい、先程ダンジョンの封鎖が概成したとの連絡がありました。私達が皆様を救出した後に連絡を送り、それを合図として製作された簡易転位門を利用して突入部隊が突入して来ます」

中隊長に声をかけられたメッサリーナは微笑と共に返答し、それを受けた中隊長達が力強く頷いていると廊下に繋がるドアが軽くノックされる音が響いた。

「……どうする?」

「……問題ありません、協力者です」

メッサリーナと会話をしていた中隊長とは別の中隊長が突然のノックに警戒の表情を浮かべながらアグリッピーナに声をかけるとアグリッピーナは静かな口調で返答し、中隊長がその言葉に頷いているとドアが開かれて苦渋に顔を歪めたヒルデガントとレリーナが入室して来た。

「……エメラーダ様が貴賓室に到着しました。アイリーン様やマリーカ様も在室しています」

入室して来たヒルデガントは苦渋の表情でエメラーダ達が貴賓室に避難した事を伝え、続いてレリーナが同じ様な表情で口を開く。

「……イライザ様とイレーナ様を含めた数名が護衛として貴賓室に残っています。他の騎士の方達はマリーカ様の命により武器庫に、侍女はアイリーン様の命により貴賓室と食堂に別れて集合している最中です」

「……変な話ねえ、ダンジョンの主だとか言ってた蝙蝠女はどうしてるのよ?」

レリーナの説明を聞いたメッサリーナは嘲笑を浮かべながら説明の中に出てこなかったアイリスの様子を尋ね、それに対してヒルデガントが顔に浮かぶ苦渋の色を更に色濃くさせながら口を開いた。

「……アイリス様はマスタールームに籠ったままです。敵の出現から今に至るまで何の指示も出ていません」

「……今までこんな事無かったから、皆、凄く混乱して戸惑っています」

ヒルデガントが苦渋の表情で告げるのに続いてレリーナが途方に暮れた様な表情で言葉を続け、それを聞いたメッサリーナは勝ち誇った笑みを浮かべながら口を開く。

「……怖じ気付いちゃって部屋で震えてるみたいね、いい気になって偽善者面してた割にざまあ無いわね」

「……随分あっさりと本性が出たみたいね、そんな輩に媚び諂い尻尾を振ってチヤホヤしてた気分はどう?」

メッサリーナが勝ち誇った表情で告げたのに続いてアグリッピーナが冷たい眼差しでヒルデガントとレリーナを見据えながら問いかけ、それを受けたヒルデガルドとレリーナは言葉に詰まりながら俯いてしまう。

「……さあて、蝙蝠女の本性がさらけ出された所でそろそろ始めるとしましょう」

メッサリーナは俯いてしまったヒルデガントとレリーナの姿を見ながら高らかに宣言し、それを聞いたアグリッピーナは鍵束を取り出して中隊長達が収監されている牢の鍵を開けて格子戸を開いた。

「……ふう、やっと出られたな」

「……全く、こんな所に放り込んで放置しておくとは呆れた野蛮人どもだな」

牢から出てきた中隊長達は安堵の表情と共に呟き、それを聞いたアグリッピーナは頷きながら鍵を使って中隊長達の足に装着されていた鉄球付の足枷を外して中隊長達を完全に自由の身にした。

戒めから解き放たれた中隊長達は軽く身体を動かして自由の身に事を実感し、その後にその内の1人がメッサリーナとアグリッピーナに視線を向けながら口を開いた。

「……さて、それじゃあ始めるとしようか、アバズレどもの滅びの宴を」

中隊長の言葉を受けたメッサリーナは頷きながら牢屋の片隅に置いたゲートジュエルの髪飾りに視線を向け、アグリッピーナはそれを確認した後に魔通信器を使ってリキメロスへの突入要請を始めた。


ミリアリア居室


三国連合軍の出現により無人となったミリアリアの居室、その室内の一角に置かれた執務机の上にはアイリスから手渡された使役獣のカプセルが小さな木箱に入れられ保管されていた。

木箱に入れられていたカプセル、そのカプセルが突然眩い閃光と共に爆ぜ、強烈な閃光が治まった室内には異様な外見の物体が鎮座していた。

脚も目も無く多数の大きめの突起物に覆われた物体は息吹を感じさせる様に小さく蠢きながら居室内に鎮座しており、マスタールームでアイリスと共に魔水晶でその様子を見ていたミリアリアは蠢きながら鎮座する物体の外見を怪訝そうに見詰めながらアイリスに話しかける。

「……随分変わった外見をしているな、吸血球獣もかなり特異な外見だったがコイツはそれ以上だな」

「……そうね、この子はコネクトゲート、転位魔法等の空間操作系魔術を感知するとそれに介入する事が出来るわ、勿論自分から空間操作魔法を仕掛ける事も可能よ」

ミリアリアの言葉を受けたアイリスは頷きながら鎮座する物体、コネクトゲートの説明を行い、それを聞いたミリアリアは初めてメッサリーナ達と会談した際のアイリスの様子を思い出し得心の表情を浮かべつつ言葉を続けた。

「……あの時サイクロプスをしていたのは、この為だったんだな」

「……単純に魔力を遮断しても良かったんだけどそれじゃあ面白く無いでしょ?今回も先手は相手に譲ってあげてあの子にはその後に行動して貰うつもりよ」

ミリアリアの言葉を受けたアイリスは魔王に相応しい凄絶な笑みを浮かべながら言葉を返し、ミリアリアは小さく頷いた後に使い魔達から送られて来ている三国連合軍の映像を見据えつつ口を開いた。

「……いよいよ始まるな」

「……ええ、素敵な惨劇パーティーになる様期待しましょう」

ミリアリアの言葉を受けたアイリスは凄絶な微笑と共にそれに応じ、それから2人は静かに三国連合軍の映像を見詰めた。


ダンジョンの封鎖を終えダンジョン突入に向けて動き始めた三国連合軍、哀れな彼等はまだ知らない、自分達の動静が筒抜けとなっている事に、三国連合軍の命を受け突破口を作り収監されていたラステンブルク伯国軍の捕虜を救い出したメッサリーナとアグリッピーナ、哀しき2人はまだ知らない、順調に進んでいる作戦、その裏側に待つ巨大な陥穽の存在を、そして自信に満ち自らダンジョンに突入する事を告げた三国連合軍司令官リキメロス、愚かな彼はまだ知らない、自身が主導して実施するダンジョン攻略作戦、啄木鳥作戦、その悲惨な結末と三国連合軍が辿る事になる悲惨な末路を……



大陸歴438年深緑の月十八日、ダンジョン周辺に到着した三国連合軍は直ちにダンジョンの封鎖を行いつつ作戦会議を行い、その結果三国連合軍司令官リキメロス自らが突入部隊と共にダンジョンに突入する事が決定した。

突入作戦の概要を決した三国連合軍はメッサリーナとアグリッピーナに収監された捕虜の救出を命じ、メッサリーナとアグリッピーナは協力者となったヒルデガントとレリーナを従えて救出を成功させた。

遂に本格的に動き始めたダンジョン突入作戦、啄木鳥作戦、三国連合軍は必勝の念に沸きつつ作戦を進めて行く、作戦の末路と自分達を待ち受ける陥穽に気付かぬまま……


ミリアリア「……なあ、このコネクトゲートなんだが」

アイリス「……勿論違うわよ、だってイ○隊員を右往左往させたりF―4EJに地面を這わせたり61式戦車に空を飛ばせたりしてないもの」

ミリアリア「……戦闘機を地面に這わせたり、戦車に空を飛ばせたりするのはかなりインパクトあったよな……ただイ○隊員の右往左往ぶりの方が凄かったからそっちの方がインパクトあるよな」

アイリス「……あのリアクション、軽くコントだったわね」


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