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進発・B作戦集団

節目となる200000PVアクセスを突破致しました。ここまでこれたのも読者の皆様のおかげであります。今後も本作を宜しくお願い致します。


大陸歴438年新緑の月六日・ダンジョン周辺・B作戦集団


陽動作戦部隊であるA作戦集団が出撃を始めた頃、主力部隊であるB作戦集団も展開を完了していた。

木々の合間には第一及び第二死霊連隊のボーンウォーリアー、スケルトン、骸骨軽騎兵、ボーンマジシャンが整然と整列しており、その傍らでは火力支援大隊のボーンビショップや駆逐大隊のブラッディマンティスや偵察大隊のジンベルヴォルフと魔狼が出撃の時を待ち構えていた。

「……壮観ですわね」

「……そうですね」

出撃を見送りに来ていたアイリーンとマリーカは整然と展開する異形の軍勢の姿に感嘆の言葉を交わし、その後に圧倒された様に無言でその光景を見詰めているエメラーダに視線を向けた。

「……エメラーダ様、わたくし達も最初の頃は唖然としておりましたわ」

「……余りに状況が変化し過ぎて、それに置き去りにされてしまう感覚でしたね」

アイリーンとマリーカは達観に若干の諦念が混じった複雑な表情で圧倒された様に無言で眼前の光景を見詰めるエメラーダに声をかけ、それを受けたエメラーダは小さく頷いた後に口を開く。

「御救い頂いてから今に至るまでアイリス様には驚かされ通しですわ」

「私も同じでしたわエメラーダ様、これは夢なのでは無いかと何度も自問自答致しましたわ」

「正直言うと今でも夢なのでは無いかと思ってしまう時があります」

エメラーダの万感の言葉を受けたアイリーンとマリーカが感慨深げに頷きつつ相槌を打っているとダンジョン守備隊指揮官に任命されたイライザとダンジョンが襲撃された際の要人護衛隊長に任命されたイレーナが3人の所に歩み寄り、それに気付いた3人が視線を向けるとイライザが深く一礼した後に口を開いた。

「……各勢力のB作戦集団派遣要員が集合を完了致しました」

「……アイリーン様、エメラーダ様、向かいましょう」

イライザの報告を受けたマリーカは頷く事で応じた後にアイリーンとエメラーダに声をかけ、アイリーンとエメラーダは悠然とした動作で頷く事でそれに応じた後にマリーカと共にイライザとイレーナに先導されて集結した異形の軍勢の傍らに設けられた各勢力からの派遣要員の集合場所へと移動した。

集合場所にはカッツバッハが指揮するヴァイスブルク伯国亡命政権からの派遣要員のミランダ、アナスタシア、ユーティリア、ゼーリア、マリアリーゼ、イレーゼ、ラリッサ、サーシャ、ティアナ、セレーナ、システィーナ、ラナ、テオドーラ、マリーナ、ラスティア、ディリアーナ、エウレーネ、フィリアス、ラーナディア、オクタヴィア、ジュリアンナ、アレリアとクーリア率いる女戦士傭兵隊からの派遣要員、ルイーズ、リリー、アン、メアリー、スージー、ジーン、ルース、サリー、ヘレン、ペギー、ネル、リズ、マート、グレース、アルフ、ジェーク、ランディ、ローナ、リタ、メイビス、エミリーが集合して出撃に備えており、アイリーン達は最初にクーリアの所に歩み寄った。

「……アイリーン様、マリーカ様、エメラーダ様、出撃前の激励と見送りまことに痛み入ります」

近付いて来るアイリーン達に気付いたクーリアが穏やかな表情で延べた後に深く頭を垂れると他の女戦士達も同様に頭を垂れ、それを目にしたアイリーンは典雅な笑みを浮かべながら口を開いた。

「……クーリア様や女戦士の皆様は自ら進んでアイリス様の傘下に入って下さいました。ならば私達にとっても皆様方は心強い盟友でございます。その盟友が出陣なさるのですからこうして御見送りさせて頂きますのは当然の責務ですわ」

アイリーンがそう告げるとマリーカとエメラーダも大きく頷いてその言葉に同意し、クーリアと女戦士達はもう一度深々と頭を垂れる事によって謝意を示した。

クーリアと言葉を交わしたアイリーン達はその後にカッツバッハ達の所へと移動して激励の言葉をかけ、カッツバッハ達がクーリア達と同じ様に深々と頭を垂れていると2体の死霊騎士、マントイフェルとクノーベルスドルフが姿を現した。

……間モ無クアイリス様ガ到着ナサレマス……

マントイフェルが厳かな口調で告げるとカッツバッハ達とクーリア達は直立不動の態勢を取り、アイリーン達も少し離れた所へと移動して威儀を正した。

一同が整列を終えて数拍の間を置いた後に目の前にミリアリアに抱え上げられたアイリスが姿を現し、その姿を目にしたカッツバッハとクーリアが鋭い口調で号令を発した。

「「敬礼!!」」

カッツバッハの号令が響くと同時に一同は流麗な動作で敬礼を行い、アイリーン、マリーカ、エメラーダは深く頭を垂れ、ミリアリアの腕のアイリスは鷹揚な笑みを浮かべて片手を掲げる事でそれに応じた。

ミリアリアはアイリスの応対を確認した後に名残惜しさを感じながらアイリスを降ろし、アイリスはミリアリアを愛しげに一瞥した後に皆を見渡しながら口を開いた。

「……先程A作戦集団は出撃を開始したわ、次はあたし達B作戦集団の番になるわ」

アイリスはそこで一度言葉を区切り、傍らに控えるアイリーン達に視線を向けながら再び口を開いた。

「出撃に先立ち要員を派遣してくれたリステバルス皇国亡命政権及びヴァイスブルク伯国亡命政権、そして女戦士傭兵隊に感謝を述べさせて貰うわ、各勢力の忠節魔王として嬉しく思うわ」

アイリスはアイリーン、マリーカ、クーリアを順に見ながら出陣に対する謝礼を述べ、それを受けた各人は深々と一礼した後に口を開いた。

「勿体無い御言葉を頂きました事、深謝の念に堪えませんわ、我等リステバルス皇国亡命政権にとりアイリス様は大恩ある御方、協力します事は当然の事でありますわ」

「我等ヴァイスブルク伯国亡命政権もその意見に全力で同意致します。アイリス様より頂きし数々の大恩を考えれば、この程度の事は忠節では無く責務であると思っております」

「……我等女戦士傭兵隊はアイリス様やアイリス様に御味方される方々にこの身を捧げております、我等の槍働きにて更なる我等の忠節を表明させて頂く所存であります」

各勢力の代表は迷い無い口調でアイリスの賛辞に対する感謝の意を表し、アイリスは鷹揚に頷いた後に不敵な笑みを浮かべながら口を開く。

「……それじゃあ早速襲撃計画の最終確認を始めるわ、列を崩して魔画像の前に集合して頂戴」

アイリスがそう告げると同時にアイリスとミリアリアの前にラステンブルク猟兵部隊の野営地の状況が記された巨大な地図の魔画像が具現化され、B作戦集団に所属する女エルフ達と女戦士達は魔画像の周囲に移動して真剣な表情で地図を覗き込んだ。

「現在ラステンブルクの猟兵部隊約3000名は野営地の東西南北に設けられた外哨拠点に各1個小隊程の部隊が詰めた他は全員が野営地で野営中よ、この前の襲撃で少しは懲りたみたいで警戒態勢はそれなりに敷いてるけど厳重と言う程では無いわね、猟兵団本部らしき所は3ヵ所確認されてるけどかなり隣接してるわ」

アイリスが地図を覗き込む一同に対して使い魔達により掌握した野営地の状況を説明し、一同が鋭い表情で頷いていると4ヵ所の外哨拠点に向けて伸びる4本の青い矢印が出現した。

出現した青い矢印を目にした一同の間に緊迫した空気が流れ、アイリスは不敵な笑みと共に言葉を続けた。

「……襲撃の第一歩は東西南北の外哨拠点に対する攻撃よ、半誘導式魔導爆弾ゴリアテの突入後にボーンビショップとボーンマジシャン隊の射撃支援を受けつつ4個戦闘団が突入して速やかに外哨拠点を制圧して貰うわ」

アイリスが襲撃計画を説明しているとスケルトンホースに曳かれたゴリアテが20台程姿を現し、それを目にした一同が若干顔を引きつらせかけながら頷いたのを確認したアイリスが小さく指を鳴らすと新たな青い矢印が出現して野営地へと突入した。

「各戦闘団は外哨拠点の制圧後は速やかに野営地への攻撃を実施、ラステンブルク猟兵部隊がその対応に忙殺されている隙をついて円盤形態になったブラッディスケアクロウが低空高速飛行で野営地に突入するわ」

アイリスの言葉に呼応する様に黒く塗装された空の荷馬車8台を搭載した円盤形態のブラッディスケアクロウが映し出された魔画像が具現化され、それを目にした一同から小さく感嘆の声が上がる。

「円盤形態のブラッディスケアクロウには現時点で用意する事が出来た誘導式魔導爆弾ミステル8発全弾が搭載されているわ8発中6発は猟兵団本部とおぼしき地点を目標として設定し、残る2発には集積された物資が目標として設定されているわ」

((……うわぁ))

アイリスの説明を聞いた一同は顔を引きつらせかけながら頷き、それを確認したアイリスは誇らしげに微笑みながら言葉を続けた。

「……各戦闘団はブラッディスケアクロウの攻撃によって混乱する野営地に総攻撃を実施、敵が組織的交戦能力を維持している場合はあたしが率いる戦闘団も戦闘に加入し連中を完全に粉砕するわ、敵が逃走した場合は散開させた駆逐大隊のブラッディマンティスと偵察大隊のジンベルヴォルフと魔狼、そして分裂した吸血球獣による伏撃を併用しつつ残敵掃討戦を実施、遺棄された敵の物資が残っている場合はそれも頂くと言うのが大まかな襲撃の流れになるわ」

アイリスの説明に合わせる様に前後を続けた4本の矢印は野営地で合流して野営地の画像を粉砕し、それを目にした一同は鋭い表情で頷きながらアイリスに視線を向けた。

「……以上が襲撃の流れよ、続いて部隊編成を発表するわ、部隊はあたしの率いる戦闘団を含めた5個戦闘団よ」

一同の視線を受けたアイリスは不敵な笑みと共にそう告げながら指示棒を手に取り、北の外哨拠点に伸びる青い矢印を指し示しつつ言葉を続けた。

「北外哨拠点を襲撃するの戦闘団はカッツバッハが指揮するカッツバッハ戦闘団になるわ、所属するのはユーティリア、テオドーラ、マリーナ、ラスティア、ディリアーナ、フィリアス、ラーナディア、オクタヴィア、ジュリアンナ、同戦闘団には第一死霊連隊のボーンウォーリアー1個大隊とボーンマジシャン1個小隊、そして火力支援大隊のボーンビショップ1個小隊が配属されるわ」

「……承知致しましたアイリス様、必ずや任務を完遂致します」

アイリスが北外哨拠点襲撃部隊カッツバッハ戦闘団の編成を告げると指揮官のカッツバッハは鋭い表情で決意の言葉を述べ、アイリスは頷く事で応じた後に東外哨拠点に伸びる青い矢印に指示棒を向けながら言葉を続けた。

「東外哨拠点を襲撃する部隊はミランダを指揮官とするミランダ戦闘団よ、所属するのはアナスタシア、ゼーリア、マリアリーゼ、イレーゼ、ラリッサ、サーシャ、ティアナ、セレーナ、システィーナ、ラナ、同戦闘団には第一死霊連隊のスケルトン1個大隊とボーンマジシャン1個小隊、火力支援大隊のボーンビショップ1個小隊が配属されるわ」

「御下命慎んで拝領致します。全身全霊を賭して任務を貫徹致します」

アイリスが東外哨拠点襲撃部隊、ミランダ戦闘団の概要を告げると指揮官に任ぜられたカッツバッハは深く一礼した後に力強い言葉で決意を述べ、アイリスは小さく頷いた後に南外哨拠点に伸びる青い矢印を指示棒で示しつつ言葉を続ける。

「南外哨拠点を襲撃する部隊はクーリア率いるクーリア戦闘団になるわ、所属するのはルイーズ、リリー、アン、メアリー、スージー、ジーン、ルース、サリー、ヘレン、ペギー、配属部隊は第二死霊連隊のボーンウォーリアー1個大隊とボーンマジシャン1個小隊、火力支援大隊のボーンビショップ1個小隊よ」

「ハッ了解致しましたアイリス様、我等の槍働き、御覧下さいませ」

アイリスが南外哨拠点襲撃部隊、クーリア戦闘団の概要を伝えると指揮官のクーリアが凄味のある微笑と共に抱負を述べ、アイリスは不敵な笑みと共に頷いた後に西外哨拠点に伸びる青い矢印に指示棒の先を向けながら言葉を続けた。

「西外哨拠点を襲撃するのがネルが指揮するネル戦闘団よ所属するのはリズ、マート、グレース、アルフ、ジェーク、ランディ、ローナ、リタ、配属部隊は第二死霊連隊のスケルトン1個大隊とボーンマジシャン1個小隊、火力支援大隊のボーンビショップ1個小隊になるわ」

「……全力を持ってアイリス様が御下命を完遂致します、我等の槍働き、存分に御覧下さいませ」

アイリスが西外哨拠点襲撃部隊、ネル戦闘団の編成内容を伝達すると指揮官に任ぜられた歴戦の女戦士ネルが深く頭を垂れながら決意の言葉を述べ、アイリスは鷹揚に頷いた後に口を開いた。

「……あたしはアイリス戦闘団を率いて予備隊となるわ、所属するのはミリア、エウレーネ、アレリア、メイビス、エミリーよ、配属部隊は火力支援大隊のボーンビショップ1個中隊と駆逐大隊及び偵察大隊で火力支援と敗走する敵部隊への伏撃が主な任務になるわ」

アイリスが予備隊となるアイリス戦闘団の編成と任務を伝えるとミリアリアをはじめとした所属要員は頷く事でそれに応じ、アイリスはそれを確認した後に直立不動の状態で控えるマントイフェルとクノーベルスドルフに視線を向けながら口を開いた。

「マントイフェル及びクノーベルスドルフは各々の連隊を率いて野営地を包囲、散開した駆逐大隊及び偵察大隊と共に敗走する敵部隊への伏撃を実施して貰うわ」

……御意……

……全力ヲ尽クシマス……

アイリスの指示を受けたマントイフェルとクノーベルスドルフは深々と頭を垂れながら返答し、それを聞いたアイリスは頷いた後に皆を見渡しながら口を開いた。

「……編成は以上よ、各戦闘団の指揮官には1体づつ使役獣を配付し、運用に関しては一任するわ、カッツバッハ戦闘団には双角龍、ミランダ戦闘団には地炎龍、クーリア戦闘団には双鞭龍、ネル戦闘団には硫黄龍を配布するわ、各指揮官は該当使役獣のカプセルを受領して頂戴」

アイリスの指示を受けた各戦闘団の指揮官はアイリスの所に歩み寄ってカプセルを受領し、それを確認したアイリスはボールトを掲げて皆に示しながら言葉を続けた。

「最後に魔力捜索妨害擲弾ボールトを配布するわ、少量の魔力を充填して投擲すると魔力捜索を妨害する効果がある白色の泡を大量に発生させられるわ、数が少ないから申し訳無いけど各指揮官に4個づつ、各員には1個づつしか配布出来ないわ」

((……いや、十分多いんですけど))

アイリスからボールトの説明と配布数を聞かされた一同は何とも言えない表情になりながら心の中でツッコミを入れながら配布されたボールトを受領し、それを確認したアイリスはアイリーン達の傍らに控えるイライザとイレーナに視線を向けながら口を開く。

「……それじゃあ行って来るわ、留守は頼んだわよ」

「お任せ下さい」

「凱旋を御待ちしております」

アイリスの言葉を受けたイライザとイレーナは表情を引き締めながら言葉を返し、アイリスは頷いた後に魔王に相応しい凄惨な笑みと共に口を開いた。

「……それじゃあそろそろ行きましょう。破壊と殺戮に満ちた凄惨すてき惨劇パーティーを始める為に」

「「敬礼!!」」

アイリスの宣言を受けたカッツバッハとクーリアが鋭い口調で号令を発すると一同は流麗な動作でアイリスに敬礼を送った。

その後、B作戦集団は出撃を開始し、アイリーン達に見送られながら暗い木々の奥へと消えて行った。

出撃を開始したアイリス率いる異形の軍勢、その軍勢が引き起こした惨劇は後世こう呼ばれる事になる。


……アイリスの包囲戦アイリス・ポケットと……



A作戦集団の出撃を見送ったアイリスは自身が指揮するB作戦集団に戻り襲撃計画の再確認と編成を行った後に出撃を命じた。

出撃したB作戦集団はアイリーン達に見送られて暗い森の中を進み、時計の針は新たな惨劇、アイリスの包囲戦アイリス・ポケットの開始に向けて進み始める……


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