表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/161

進発・A作戦集団

今後も本作を宜しくお願い致します。

大陸歴438年深緑の月六日ダンジョン周辺・A作戦集団


アイリスから要員選定を要請された各勢力は直ちに派遣する要員を選定してアイリスに報告し、アイリスはそれを確認した後に出撃を命じた。

夜の帳に包まれたダンジョン周辺にはA作戦集団に所属するボーンウォーリアー、骸骨軽騎兵、ワイト、ボーンビショップ、装甲火蜥蜴、ジンベルヴォルフや魔狼が集結しており、リステバルス皇国亡命政権からA作戦集団への参加を命じられたサララはヴァイスブルク伯国亡命政権からの参加者であるミリーナと共に集結した異形の軍勢を見詰めていた。

「……何度見ても思ってしまうな、凄まじい光景だと」

「……ええ、アイリス様が魔王なのだと改めて実感出来る光景ね」

サララとミリーナが集結した異形の軍勢を見ながら感嘆の呟きを交わしているとリステバルス皇国亡命政権よりA作戦集団へ派遣されてきたクラリス、イストリア、メルクリアス、ローザンナ、リーアン、アークティア、マーメリア、アドリアーナ、セレスティア、アントーネ、リリーネ、アレッサ、リリサーナが転位魔法により到着し、それから数拍の間を置いた後にヴァイスブルク伯国亡命政権からの派遣要員であるエルザ、カリン、ミスティア、ティリアーナ、イスティリス、サリアナ、イリナ、リリナに女戦士傭兵隊からの派遣要員であるヴァル、べティ、ダイナ、バブズが到着し、それを確認したサララとミリーナは各々の部下達の所へと移動した。

サララとミリーナが各々の部下(ヴァル以下の女戦士達はミリーナの指揮下で行動)を掌握しているとA作戦集団を指揮する闇神官リリアーナが転位魔法で到着し、それを確認したサララとミリーナは鋭い口調で号令を発した。

「「敬礼!!」」

サララとミリーナの号令が響くと同時に一同は流麗な動作でリリアーナに敬礼を送り、リリアーナは典雅な一礼でそれに応じた後に皆を見渡しながら口を開いた。

「皆様、これより進発致しますがその前に今回の襲撃計画の確認を行います、此方に集まって下さい」

リリアーナがそう言うとリリアーナの前にロジナ候国軍の野営地を記した魔画像が具現化され、サララとミリーナは鋭い表情で頷いた後に各々の部下達と共に魔画像を囲んだ。

「現在判明している敵の野営地の状況です。野営の外周に1個小隊程の軽装歩兵と1個分隊程の魔導士及び中弩砲1門を配備した外哨拠点が野営地の東西南北に2ヶ所づつ構築されています。野営地にいるのは魔曲騎士団に中隊規模のラステンブルク猟兵部隊、そして大隊規模の軽騎兵に複数の中隊規模の軽装歩兵、魔導士、弩砲兵を加えた部隊で戦力は4000強と推測されています」

サララ達とミリーナ達が魔画像を囲んだ事を確認したリリアーナが指示棒で魔画像を指し示しながら野営するロジナ候国軍の概況を伝えた後に小さく指を鳴らすと南及び西に存在する4ヶ所の外哨拠点に向けて伸びる4本の青い矢印が出現し、それを目にしたサララ達とミリーナ達の間に静かな緊迫感が生じた。

「第一撃として南及び西の外哨拠点に対して奇襲攻撃を実施します」

リリアーナが攻撃計画を説明しているとその後方に転位魔法によってスケルトンホースに牽かれた空の荷馬車が20台程姿を現し、サララ達とミリーナ達が戸惑いの表情を浮かべているとリリアーナが荷馬車を示しながら口を開く。

「奇襲攻撃に使用する半誘導式魔導爆弾ゴリアテです。アイリス様がこれ迄の戦いの結果入手した空の荷馬車に爆裂魔法と簡易自走魔法を組み込んで製作された物です。ある程度の距離までスケルトンホースにて牽引した後に切り離し、その後は簡易自走魔法を使用して目標に突入して爆裂魔法を作動させます。簡易自走魔法ですから複雑な機動は不可能ですが固定目標に対してはそれなりの効果が期待出来ます。より複雑な自走魔法と威力を増した爆裂魔法を組み込んだ誘導式魔導爆弾ミステルも製作されたのですが少数しか用意出来ずB作戦集団のみでの運用になります」

「……なあ、ミリーナ殿、私は今、アイリス様と戦わなくて良かったと、心の底から思っているんだが」

「……奇遇ですねサララ殿、私も全く同じ意見ですよ」

リリアーナの説明を聞いたサララとミリーナは達観と諦念が混ざった表情で言葉を交わし、他の者が同じ様な表情で頷く中リリアーナは更に言葉を続けた。

「ゴリアテの突入後、同盟者フェデラートゥスの魔龍様と氷鳥龍による上空からの攻撃とワイト部隊による攻撃準備射撃が実施され、その支援を受けつつ4ヶ所の外哨拠点を攻撃し粉砕します。その後は敵の本隊に対する牽制攻撃を続けてその動きを拘束してアイリス様が率いるB作戦集団の作戦を援護していきます。基本的に牽制拘束が我々の任務ですので無理な強攻は不要です」

リリアーナが作戦の概要を説明した後に皆を見渡し、サララ達とミリーナ達が鋭い眼差しで頷くのを確認した後に再び口を開いた。

「それでは攻撃部署を発表致します。攻撃部署は全般支援を行う本隊及び4ヶ所の外哨拠点を攻撃する甲から丁までの4個作戦群です。本隊は総指揮官の私にクラリス、アレッサ、リリサーナ、イリス、リリアが所属し指揮下の部隊はワイト中隊、突撃大隊、偵察大隊となります」

リリサーナから本部に所属する事を告げられたクラリス達は頷く事でそれに応じ、それを確認したリリサーナは南の外哨拠点に伸びる青い矢印を指示棒で示しながら言葉を続ける。

「南の外哨拠点の1つ、目標甲を攻撃する部隊が甲作戦群になります。この部隊はサララ様に指揮を執って頂きます。所属するのはイストリア、メルクリアス、ローザンナ、リーアンになります。各作戦群にはボーンウォーリアー1個中隊、骸骨軽騎兵及びボーンビショップ各1個小隊が配属されます」

「承知しました、全力を尽くします」

リリアーナが甲作戦群の編成を告げるとサララは迷い無い口調で返答し、リリアーナは頷いた後に甲作戦群の隣の青い矢印に指示棒を向けながら言葉を続けた。

「もう1つの南の外哨拠点、目標乙を襲撃する部隊が乙作戦群になります。指揮官はリリーネ、所属するのはアントーネ、アークティア、マーメリア、アドリアーナ、セレスティアになります」

「了解しました。非才の身ではありますが全霊を尽くします」

リリアーナが乙作戦群の編成を告げると指揮官に任ぜられたリリーネが瞳に決意の光を宿しながら言葉を発し、リリアーナはそれを聞いた後に指示棒の先を西外哨拠点に伸びる矢印の1つに向けながら口を開く。

「続いて西の外哨拠点の1つ、目標丙に対する襲撃を実施する部隊である丙作戦群の編成を発表します。指揮官はミリーナ様、所属するのはエルザ、カリン、ミスティア、ティリアーナ、イスティリス、サリアナとなります」

「了解しました。必ずや任務を全う致します」

リリアーナが西外哨拠点襲撃部隊の1つ、丙作戦群の編成を告げると指揮官のミリーナは静かな口調で決意の言葉を述べ、リリアーナは頷いた後に最後の青い矢印を指示棒で示しながら言葉を続けた。

「残る西外哨拠点、目標丁を攻撃する部隊が丁作戦群です。指揮官はヴァル、所属するのはダイナ、バブズ、べティとなります。人員は少な目ですが即席の混成編成よりは気心の知れた者同士の編成の方が有効であろうと判断し、この様な編成となりました」

「御配慮感謝致します、我等が働き御覧下さいませリリアーナ様」

リリアーナが最後の部隊、丁作戦群の編成を告げるとヴァルは凄味のある微笑と共に決意の言葉を述べ、リリアーナは頷く事で応じた後に各作戦群の指揮官達を見渡しながら口を開いた。

「各作戦群の指揮官には使役獣を1体づつ渡しその運用を一任致します。内訳は甲作戦群にラビットドラゴン、乙作戦群にメタルゴーレム、丙作戦群に狂機獣、丁作戦群に光壁龍となります。各指揮官は該当使役獣のカプセルを受領して下さい」

リリアーナの言葉を受けた各作戦群の指揮官達は指定された使役獣のカプセルを受け取り、それを確認したリリアーナは威儀を正しながら言葉を続けた。

「作戦計画の概要は以上です、それでは出撃に先立ちアイリス様より激励の御言葉を賜ります」

リリアーナの言葉を受けたサララ達とミリーナ達は即座に整列して直立不動の姿勢を取り、リリアーナはそれを確認した後に胸元のシャドウアメジストに囁きかける。

「……アイリス様、A作戦集団出撃準備完了致しました、激励の御言葉をお願い致します」

リリアーナがシャドウアメジストにそう囁きかけてから数拍の間を置いた後にアイリスがミリアリアと共に転位魔法で姿を現し、それを確認したサララとミリーナは即座に号令を発した。

「「敬礼!!」」

サララとミリーナの号令を受けた狐人族の女達と女エルフ達と女戦士達が流れる様な動作でアイリスに敬礼を送ると同時にリリアーナが深く頭を垂れ、アイリスは少々ぎこちないものの最初の頃と比較すると遥かに滑らかな動作で答礼した後に鷹揚な笑みと共に口を開いた。

「これよりA作戦集団には出撃して貰う事になるわ、貴女達が出撃したらあたしが指揮するB作戦集団も出撃するわ、同盟者の魔龍には既に襲撃計画の概略を伝えていて、作戦の直前にここから出撃して貴女達を支援する予定になっているわ、それと、貴女達への餞別も用意したわ」

激励の言葉を述べていたアイリスは一度言葉を句切ると握り拳程の大きさの物体を掲げ、一同の視線がその物体に集中する中言葉を続けた。

「これは魔力捜索妨害擲弾ボールトよ、少量の魔力を充填してから投擲すると捜索用の魔力波を撹乱する効果がある白色の泡を大量に発生させる事が出来るわ。発生時間は少ないけど泡は白色で大量に出るから簡易的な煙幕としても使用する事が可能よ、急いで作ったからA作戦集団に配布出来るのは40個くらいしかないけど」

((……十分多いんですけど))

アイリスから物体、魔力捜索妨害擲弾ボールトの概要と個数を告げられた一同が相変わらずのアイリスの規格外な力に微妙な表情になりながら内心でツッコミを入れているとアイリスが転位魔法でボールトの入った木箱をリリアーナの前に出現させ、リリアーナは恭しく一礼した後に口を開いた。

「……アイリス様、重ね重ねの御配慮感謝致します。それではゴリアテと頂きましたボールトを各作戦群に配布した後に出撃させて頂きます」

「……そう、了解したわ」

リリアーナの言葉を受けたアイリスは鷹揚に頷いた後に一同を見渡し、表情を引き締め威儀を正した一同を穏やかな眼差しで見詰めながら口を開いた。

「……出撃しなさい、そして全員欠ける事無く戻って来なさい」

「「……敬礼!!」」

アイリスの激励の言葉を受けた一同はその言葉を胸に刻み込みながらサララとミリーナの号令の下アイリスに敬礼を送り、アイリスは悠然とした動作で答礼した後にリリアーナに出撃を命じた。

アイリスの命を受けたリリアーナは20台のゴリアテを5台づつ各作戦群に振り分けた後にボールトを各員に配布(各作戦群指揮官に4個、残る全員に1個)し、それらの受領が終了した後に一同を見渡しながら厳かに告げた。

「……只今よりA作戦集団進発致します」

リリアーナが厳かに出撃を告げると異形の軍勢は次々に前進を開始し、アイリスはミリアリアと共に前進するA作戦集団を見送った。

サララ達とミリーナ達はアイリスの前を通る際には頭の敬礼で敬礼を送り、アイリスとミリアリアは答礼を返しながら粛々と遠ざかるその背中を見送った。

「……始まったわね」

「……ああ、そうだな」

遠ざかるA作戦集団を見送ったアイリスの発した呟きを聞いたミリアリアは相槌を打ちながら自分の腰に装着されたボールトに視線を向ける。

(……アイリスは数が少ないと言っていたがこれ程の物を各員に配布出来る等規格外にも程があるな、まあ、それがアイリスらしいと言えばアイリスらしいんだが、何時も何時も、そしてこれからもアイリスには驚かされ続けるんだろうな)

ミリアリアがボールトを見ながらアイリスの規格外な力と出逢ってから今に至るまでのアイリスとのやり取りを噛み締めているとアイリスがミリアリアの方に視線を転じ、その視線を受け止めたミリアリアは自分の頬に仄かな熱が籠るのを自覚しながら口を開いた。

「……次は私達の番だな」

「……ええ、そうね」

ミリアリアの言葉を受けたアイリスは嬉しそうにニコニコしながら応じた後にミリアリアに歩みより、ミリアリアは頬を更に赤らめさせながらその身体を抱え上げた。

ミリアリアに抱え上げられたアイリスは甘える様にミリアリアの胸元にもたれかかりながら転位魔法を唱え、刹那の間を置いた後に具現化された魔法陣が2人の姿を掻き消した。



大陸歴438年新緑の月六日夜、アイリス率いる異形の軍勢が行動を開始した。闇神官リリアーナ率いるA作戦集団はアイリス率いるB作戦集団の作戦遂行を援護すべく進発してロジナ候国軍の野営地を目指し、アイリスはミリアリアと共に出撃準備を整えたA作戦集団を訪れ、激励の言葉と餞別を送った後にその出撃を見送った……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ